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沼の話しかできないオタクは危機感を持て

今までオタク以外とろくなコミュニケーションを取ってこなかったと自覚しているオタクである。なのでタイトルは自戒も込めてのものなのだ。

ここで言うオタクとは、漫画やアニメ、書籍にハマっているオタクとしている。けれどこの話は他のオタク、例えば鉄オタさんにも当てはまるのかもしれない。

私は小学校の頃一人で本を読んでいた(親の義理で声をかけてくれる子はいた)し、中学に上がって得たものはオタ友(オタクの友人)だった。それらはすべて過去完了形の関係性だが、その後の人格形成に大きな意味をもったのは言うまでもない。

高校に入ってもオタクの友人以外作らなかったし、大学に入っても何らかのオタクをしている人と仲良くなった。例えばアイドル、ゲーム、アニメ……。現在完了進行形の関係性を築いている人というのは高確率で、何らかの"オタク"だ。

そしてネットももちろんオタクコミュニティに没頭している。推しの情報が発表されれば共に墓に入り、尊さに泣き、公式の供給に感謝する。沼(自分の推しているジャンル)の浸かり心地は最高である。

オタクコミュニティで饒舌に話し、好きなもののことを語り、二次創作までしていたこともある。そんな私はある日社会人になった。なってしまった。

「雁屋さん普段お家で何されてるんですか?」

「家事を片づけたら漫画や本を読んでますね」

「漫画……本……読まないですね……」

はい、会話終了~。いやいやいや、人類に漫画も本も読まない人間存在する? するの? するわけないだろ? って当時の私は思っていた。

会話終了したら気まずいなと思った私は逆に相手のしていることを聞いてみるのだが、「ドラマとか……見てますね、適当に」なんて返ってきて適当に?? ドラマって俳優か作品を推してるから観るもんじゃないの? と困惑した。適当に観るって何? 適当にドラマを観ていたのとか実家で会話よりついているドラマの方がおもしろかったあの頃以来だわ!? みたいな面倒な困惑のしかたをした。

ドラマを適当に観ているらしいその人は本当に話題に乏しい人だった。好きなことをそれとなく尋ねても「特に……」みたいな返事しかない。でも私が好きなものを聞いてくるので話題を広げたい気持ちはあるらしい。

私もめっちゃ気を遣った。その人の年代でも知ってそうなドラマ化した小説の名前をあげたりした。『チーム・バチスタ』とか言ってみた。でもダメだった。「観たような気がするけど覚えてません」とか返ってくる。

絶対に職場の噂話なんてものはしない(◯◯さんが何を好き、くらいはよしとするけど)と決めていたので、本当に話題がなくなってしまった。

「結婚ってしたいですか?」

「死んでもしたくないです。◯◯さんは?」

「私もしたくないです」

あ、価値観の一致。でもそれだけ。

何だこれ。何だこれ。

やがてどちらからともなく、会話を諦め静かに仕事することになる。

北海道で地震が起きたときはその話をした。でもやがて話題がなくなった。えっやばくない? いろいろと。

ほぼ無趣味とオタクが出会うとこうなるんだなと思った。お互い話題を探ろうとしてニュースに落ちつくか、仕事の話だけするようになるか。

まあでもこれはいいんだ。仕事の話だけできればいいしね。それについては問題なかったし。あんまりにも人生が交差していなかったのは今思い出しても笑うけど。

というかこれは本当にどうしようもないと思う。人と話をするにしたってまったく人生が交差していないなら多少の苦労はする……し、私が出会ったみたいなほぼ無趣味の人は実在する。

それでも、かろうじて会話ができたのは仕事の用があったのと、ニュースをお互い知っていたからだ。

大人は何で必死にニュースを観るんだろうと思っていたけど、ニュースくらいしか万人に効く話題の特効薬がないからだったのだ。

だから大人は食事時にTVのニュースを流していたのか……。ワイドショーは本当におすすめしないけれど。

さらっとでいいから、ニュースアプリのトピックでも見ておくと違うと思う。

オタク以外の人間と会話するにはニュースを仕入れるといい。エンタメニュースじゃなくて普通のニュース。そうすれば時事に疎いということもなくなるし副産物的に会話ができる。ニュースで会話ができない相手は……まあ諦めていいと思う。

執筆のための資料代にさせていただきます。