見出し画像

「予防歯科」という潜在需要マーケティングの成功例を目の当たりにしちゃった件

わたしが子どもの頃って、歯医者さんは「虫歯を削ったり、歯を抜いたりする場所」だった。

だから常に歯医者に行くときは痛いことをされるし、痛いと騒いだら怖い先生が鬼のような形相で怒るしで、とにかく嫌な場所だった。

だが、大人になって、息子が生まれてから通い始めた歯医者は、その昔のおそろしいイメージを覆す明るいイメージの歯科だった。

1.幼いころの嫌な記憶

歯医者は当たりはずれがある。と思う。

幼いころにお世話になった歯医者さんは申し訳ないが私にとって「ハズレ」だったのだと思う。

私が小さいころ、上の前歯の乳歯が、まだグラついてもいないのに、無理やり抜かれた。めちゃくちゃ痛かった。血がいっぱい出た。そして、なかなか新しい歯が生えてこず、やっと出てきたと思ったら、すごく出っ歯に生えてきた。

乳歯なんて、ほとんどの子どもが自然に抜けるのに、あんなことする必要があったのか?と今でも疑問だし、わたしの予想では保険点数稼ぎなのではないかと推察する。

無理やり前歯を抜いたせいか分からないが、その後、出っ歯気味に生えてきた前歯は私のコンプレックスになり、ずっと口元が気になり続けて生きてきた。

なので、結婚して新しい土地に引っ越してきて、新しい歯医者を開拓する勇気がなかった。なので、地元に住んでいたママ友に聞いて、ここなら間違いなさそうだという歯科にかかることにした。

2.大繁盛の歯科


もう15年ほど前になるが、結婚してこの町に越してきてから、ママ友に教えてもらった歯科に今でもお世話になっている。今は親子でお世話になっているこの歯科は、とにかく昔から繁盛しまくっていた。

行くたびに規模が大きくなり、医師もスタッフも増員している。

歯科は美容室と同じくらい大量にあり、顧客(患者)の奪い合いがかなり大変だと聞く。廃業する歯科もあると聞くし、患者さんの奪い合いで、通常営業ではやっていけないから、日曜祝日も開いていたり、夜遅くまでやったりしている歯科も多い。我が家の周辺でも歯科は数えきれないほどあるし、実際シノギを削ってやっているところもあるだろう。

それでも、ここの歯科は繁盛が止まらない。

そして繁盛する理由がいつもあるなぁ、と感心する。

3.歯科の新ジャンル「予防歯科」との出会い


大繁盛の理由の一つは「予防歯科」という概念だ。

今でこそ珍しくもない「予防歯科」という概念だが、この概念を作り、ぶち上げたことこそが歯科の革命だと思う。

今までの歯医者は、虫歯になったか、歯が抜けて入れ歯が必要になるかしないと需要がない。なので歯医者は「コトが起こるのを待つ」しかなかった。かといって虫歯を作るために「チョコレートをたくさん食べましょう」ともいえないし、「歯を磨かないほうがいい」とは言えない。なので、手ぐすね引いて待っているしかなかった。

今のようにネットもなかったし、歯の健康についての情報もあまりなく、ほおっておいても定期的に虫歯の患者さんがやってくるので困らなかったかもしれない。

しかし今の時代は虫歯予防の知識くらい、ググれば速攻出てくる。ケア用品も整っているし、ちょっとやそっとでは虫歯にならないのだ。

しかし「予防歯科」は、従来の歯科医の「虫歯を治す」という使命を根本から覆した。

そもそもみんな、虫歯になりたくてなっているわけではない。虫歯はなったら治らないから、仕方なく削って詰め物をするだけだ。当然入れ歯だって、したくてしているわけではなく、歯が抜けてしまって困ったから入れているだけ。

そもそも「自分の歯が健康であるのが一番」という潜在的欲求を見事に掘り出して商品として提供したのが「予防歯科」だ。

「虫歯にならないように定期メインテナンスをする、それでもなったら治療する」という視点で、定期的に歯科に通い、カスタマーとしてお金を落とす。さらに虫歯など歯のトラブルはもちろん、矯正歯科など審美系のことまでトータルにサービス提供することが出来る。

この歯科でお世話になるようになって、予防歯科という考え方は、患者にとっても歯科にとってもメリットがあるサービスだなぁといつも感心する。

4.予防歯科のwin-winなメリット

わたしの通う歯科は、「歯のお掃除」といって、3か月に一度、歯周病チェックや歯科衛生士が歯石をとってくれる定期サービスを薦めている。

わたしたち素人が磨くと、どうしても歯の奥や歯茎の境目の磨き残しが出てしまう。

わたしなんて歯磨きが面倒なので結構雑にやっている。でも定期的にそこに通えば、しっかり歯石を除去してくれて、虫歯のチェックなどもしてくれる。

もし虫歯になりそうな歯があっても、3か月スパンで行くので、下手に削らず、なるべく自分の歯を使うようにケアをする。

それでも進行するようなら、最低限の治療を施す。そうやって老人になってもなるべく自分の歯で過ごしましょう、という考えだ。

その考え方は、その歯科の継続的な売り上げにも、患者にも双方のメリットがある。

4ー1 患者囲い込み

予防歯科という考えはとても合理的だし、さらに歯科にとっても、定期的に通ってくれる患者の存在はありがたいはずだ。

定期的に通うことで、他の歯科に逃げないし、囲い込みになる。

患者側も、時期になったらお知らせをもらうことで、継続的にメンテナンスをしてもらうことができる。

4ー2 歯科衛生士だけで完結する

定期メンテナンスの場合、前回からの経過チェックと歯のお掃除だけであれば、歯科衛生士に丸投げで、歯科医が稼働する必要がない。

私の通う歯科には常に優しくて丁寧な歯科衛生士がたくさんいる。だから、歯科医は虫歯や大きな治療に集中することができる。これはかなり効率の良い方法だと思う。

4ー3 患者の子どもも通える丁寧なケア

わたしのような主婦は、当然よい歯科であれば子どもも連れて行きたくなる。そのときに、できれば優しいお姉さんが優しくケアしてくれたらいいなと思うわけだ。

そのニーズを完全につかみ、うちのビビりすぎる息子でもなんとかなるくらい優しいお姉さんが、怖がる子どもに「これから、こうするよ」など、これからすることを優しくガイダンスして、恐怖心を和らげるようにしてくれている。

こちらの歯科は衛生士の教育がピカイチで、嫌な人に当たったことがない。だから子供も安心して預けられるし、丁寧さも満足だ。

子供が患者になれば、大きな不満がなければ、たいてい大人までそのまま通うことになる。だから先の長い患者をゲットすることになるのだ。

親子で通えば連れて行くのが楽なので一緒に通うことができる。当然売り上げも2倍。

5.何事も、潜在ニーズを掬いあげれば勝機はある

歯科は、美容室と同じ位の件数がひしめき合っていてめちゃくちゃ競争が厳しいと聞く。

ただここの歯科はいつも大繁盛で、全く予約が取れないくらい流行っている。

それもこれもやはり、こうだったらいいのになと言う患者のニーズにしっかりと応えているからではないだろうか。

・できるだけ削らず、自分の歯を残しましょうと言うポリシー

・定期メンテナンスで歯科医も患者も安心な仕組み(かつ患者が逃げず、売り上げが上がる仕組み)

・定期メンテナンスすることで、歯科医ではなく歯科衛生士で完結することができる(コストダウンと効率化)

・子供も安心して連れて行ける通いやすさと丁寧さ

こういった部分は、患者から大きな声で要望があるわけではなく、それを叶えているところに自然と人が集まるようなものだ。

だからこの歯科に来るといつも、商売が上手いなと感心してしまうのだ。
 
人の潜在ニーズを見つけると言うのはなかなか難しいものだが、何かの折に私も参考にしたいといつも思っている。

今日もお読みくださりありがとうございました!


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?