お気に入りの英ファンタジー

 ファンタジーっていうと、普通は何を思い浮かべるだろう。魔法? 冒険? 動物のお話とか、ホラーっぽいのもある。もちろん、SFもファンタジーだし、単純に夢っていう考え方もあるかもしれない。

 私が英国ファンタジーに傾倒したのは、別に『ハリーポッター』のシリーズが原因だったわけじゃない。確かに壮大だし、楽しんで読んだし、映画も観た。一方で、個人的には4巻あたりから「ちょっとやりすぎかも」と思っていた。子ども向けにしては重たいというか、どちらかというとヤング・アダルトが前提かな、という印象だった。

 トールキンの『指輪物語』は格が違う。表現が豊かで、各シーンの描写も量が多い。多いけど、多すぎるという印象は絶対に与えない。これはヤングでもない。本当の文学だ。

 これに対して、私が好きな作家さんは、子ども向け、ヤング向けを中心に書いていた方だ。ダイアナ・ウィン・ジョーンズ。知ってる人は「ああ!」って思うかもしれないし、知らない人は「だれ?」ってなるかもしれない。

 神話ネタ、過去の児童作品や童話など、あらゆる物語からパーツを拾ってきて、不遇な子ども、ときには大人を幸せにさせてしまう。基本的にハッピーエンドが多い。ごく一部の作品を除いて。いろんな種類の魔法を、それぞれの作品シリーズごとに、まったく違う書き方で描き出した、ファンタジーの女王様。

 日本だと、有名どころはやっぱり『ハウルの動く城』。だけど、この作品、映画化された話と小説はまったく違う。小説ではきちんと筋が通っているところが、映画だとテーマまで変わってしまって、なんだか妙な話になってしまっている。ご本人によれば「魂を売った気分」とのことで、これは、もう、まったく別モノと言っていい。小説は本当におもしろい。
※この作品を挙げると「え、日本じゃないの?」と言う方も。ハウルの名前見て気づかないかな、と思うけれど、映画版ではハウルの本名も、名前の理由も明かされていない。個人的には3巻のチャーメインも大好き。

 結構、作品の数は多く、私もまだ全部読み切れたわけではないけれど、個人的に笑ったのは『うちの一階には鬼がいる!』とか『バビロンまで(は)何マイル(?)』とか。笑える部分はどの作品にもある。短編にもかなりおかしな作品があって、気楽に読んで笑えるようになっている。

 逆に少しわかりづらかったのは、『ダークホルムの闇の君』(割と構成が複雑)。ただ、これを読んでしまうと、続く『グリフィンの年』はかなり笑える。

 あとは、いきなり英語で読んでしまった "Dogsbody"がちょっと難しかった。これは、『星空から来た犬』の邦訳がある。いきなり裁判シーンから始まって、天体の名称やら、「伴星」みたいな単語が出てくるとか。まあ、星座と天体の知識と、星座物語の知識があれば、最初から英語でも楽しめるかもしれない。日本語で読めば、そんなに難しいとは感じないと思われる。

 "The Game"も本格的に星座と神話が絡むので、知識がないとちょっと難しい。『銀のらせんをたどれば』の邦訳もあるけれど、私はこちらは未着手。ストーリーはちょっと不思議で、理解できると「あ、この人が……」と繋がってくるのはおもしろい。

 『クレストマンシー』は個人的には、英語でも普通に読める印象。2冊目でいきなり舞台がイタリアに飛んだときは、「私、読めるか?」と思ったけれど、イギリス人の子どもが読めるように説明されているし、ロメジュリ的な設定で始まるので、そんなに理解しづらくもない。

 『ぼくとルークの一週間と一日』とかも、子ども向けのわかりやすい作品で、神話が絡んでも最後のほうになってから出てくるので、さほどわかりづらくない印象だった。

 世界中にネガティヴな空気感があって、なんだかこのまま世界が暗くなるんじゃないかと気分が落ちたときとか。ユーモアあふれる作品を手に取ってみると、気持ちが少し前向きになることがある。私にとっては、そんなユーモアの大切さを教えてくれた作家さんでもある。

 イギリスはファンタジー大国。各種神話が集まった場所で、他にも『ドラキュラ』とか、ディズニーのいくつかの原作とか、『パディントン』とか、ネズビットとかも。日本語に訳されている児童文学で、イギリスとは気づかずに読んでいる作品も結構あった。
 層が厚いのか、ロシアの政治家に「お得意のつくり話で……」なんて皮肉を言われるほどで、いくらでも出てくる。まだまだ私も研究中。


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