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書評:『稼げる農業 AIと人材がここまで変える』

『稼げる農業 AIと人材がここまで変える」日経ビジネス著、日経BP社

農業の担い手不足が永らく問題となっている。それは、農業が「3K(きつい、きたない、きけん)」だけでなく、儲からないというイメージが人々の間に広く行き渡っているからだ。本当に農業は儲からないのか。この本では、農業で成功した経営者の生の声を通じて、農業の可能性を実感させてくれる内容となっている。

この『稼げる農業 AIと人材がここまで変える』というタイトルの書籍は、2017年(平成29年)1月16日に東京国際フォーラムで開催された「農業イノベーション2017〜日本の農業を成長産業にするために」というシンポジウムでの講演や座談会をもとに作成された。
シンポジウムには、当時の自民党の農林部会長である小泉進次郎氏や会長代理の福田達夫氏などの政治家だけでなく、様々な農業関係者が出席し、農業の可能性について討議を重ねた。

シンポジウムの参加者は、自らが実践している取り組みを紹介している。農業を「儲かる」ようにするためには、次の点が重要と言う。

  • 優秀な人材を採用し、教育していく人材育成の仕組みを作ること

  • 国内だけでなく、海外にも農作物を販売し、市場を広げていくこと

  • 最新の情報技術を活用し、農作業を効率化、省力化させること

  • 農業生産だけでなく、加工、流通、小売、飲食といった食にまつわる業界との連携すること

上記のうち、他業界と連携することの重要性は、『フードバリューチェーンが変える日本農業』(大泉一貫、日本経済新聞出版社)という書籍でも強調されている。

登壇された農業関係者の話は、消費者が求めるものを作るとか、人材が企業力の基礎になるとか、農業に限らずどの業界にも宛はなる内容で示唆に富んでいる。その中で特に印象的だったのが、アイリスオーヤマの大山社長の話だ。

アイリスオーヤマは、宮城県を拠点とする会社で、使いやすくユニークな生活雑貨を製造販売するメーカーである。個人的には、この会社が米を販売していることは知らなかった。コメ事業を始めた理由を大山社長は、2011年の東日本大震災で壊滅的な被害を受けた東北の復興をしたいという強い想いからだと説明している。地域を思う使命感が素晴らしいと思う。
しかし、ただ米を農家から仕入れて販売するのではなく、低温での精米手法によるおいしさの維持やパッケージサイズの見直し、米の種類によって最適な水加減を提示する炊飯器の開発など、様々なイノベーションを導入した。消費者目線に立った徹底的な分析や検討があれば、新しい商品が生み出せることを示している。

農業に関心がある人だけでなくても参考になるところが多い一冊です。

『稼げる農業 AIと人材がここまで変える」日経ビジネス著、日経BP社


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