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『keep on/前田愛』の楽曲分析|解放感のないサビに満足するのはなぜ?

第2回の楽曲分析は『keep on/前田愛』。


私の趣味サイト【第10話「どーでもいーいですよー」:ゆーじの自由時間】で『デジモンアドベンチャー』の再放送を観てることを書いたのですが、『keep on』はデジモンのアニメの2つ目のエンディングテーマソング。

ちょうどエンディングテーマがリニューアルされて、久しぶりに聴いてみたら「良い曲だなー。そう言えば子供もこの曲なんか好きだったんだよなー」ということを思い出したので、今回選んでみました。

今回もいち部分に絞って楽曲分析していきましょう。

※ココで書いているキーやコード、専門用語の使い方は間違ってる可能性もあるのでご了承を。。。

『keep on/前田愛』にグッとくる理由は“自分とリンク”するから

まずは何でこの曲が好きなのかを言語化しておきましょう。

好きな理由を一言で表現するなら「柔らかいのに力強い」とでも言えばいいのかな?

ヘンな言葉なんだけど、こんなニュアンスの言葉が自分の中ではしっくりくる。

曲の流れとしてはAメロは明るい感じで、Bメロは力をためてる感じ。

それを受けて「サビが来る!」ってなった時に、通常は解放感が欲しい。目の前がパッと開ける明るさをコッチは求めてる。

でも、この曲はサビで解放感がない感じ。自分が求めてる答えではないんだけど、でもそれがすごく良いのよ。

浮遊感とまでは言わないけれど“曖昧さ”がある。けれども、そこ(メロディ)に“意志の強さ”みたいなものを感じる。

私は考えることが好きで、曖昧なものとか分からないものが興味深いし、でも決断は大事だと思ってるから、答えは出さないといけないこともわかってる

この曲はどこか自分の価値観とリンクする部分がある気がするから、グッとくるんだろうね。

さて、この曲を好きな理由が分かったところで、楽曲分析していきましょう。

まずは『キー(調性)』を確認していきます。

キーは短3度で転調する

この曲は途中で転調するんですよね。

イントロは『キー:Aメジャー』でAメロとBメロは『キー:F#メジャー』、そしてまたサビで『キー:Aメジャー』になる。

短3度で行き来してる転調ってことですね。

短3度の転調は調べてみると、比較的『統一感がある』というか、変化はしてるけれどそこまで劇的に変わるような印象はないのかな。

けれども、どこかダイナミックで華やかさみたいな印象も私は受けます。

相反するような部分もある気がするけれど、しっかり共存しているので、その辺りが分かるとこの曲の本質に近づけるかもしれません。

では、サビの解放感がない理由を探るために、サビのコード進行を確認してみましょう。

コード進行にⅠがない?

『キー:A』のダイアトニックコードはコチラ。


ディグリー:Ⅰ-Ⅱ -Ⅲ -Ⅳ-Ⅴ-Ⅵ -Ⅶ
キー A   :A -Bm -C#m-D -E -F#m-G#m


コレを踏まえた上でサビのコード進行を見てみるとこんな感じ。


(F#m)いまこそ(D)飛び立つ(E)勇気を (C#m7)持って
(F#m)心の羽 (Bm)広げて (D)まだ見ぬ(E)未来へ


ディグリーネームで見ると『Ⅵ-Ⅳ-Ⅴ-Ⅲ-Ⅵ-Ⅱ-Ⅳ-Ⅴ』。

これを見る限り、まず『Ⅵ』から始まってることで、感傷的な雰囲気が出てるのかなと。

マイナーから始まってることで、少なくとも明るい始まりではないですね。

あと特徴的なのは『Ⅰ』を使ってないところ。

やっぱり『Ⅰ』を使わないと着地した感じが弱いのかな?

私が感じた浮遊感みたいなものは『Ⅰ』を使ってないというところが関係しているのかもしれません。

ちなみに、サビの後の「la la la...」の部分は『Ⅰ(A)』のコードを使っていて、ココで落ち着く感じがするかな。

コードを分析すると“曖昧さ”の理由が見えてきた気がします。

続いて、メロディを見ていきましょう。

メロディから伝わる力強さ

メロディはこんな感じ。
※)ド・ファ・ソに「#」が付きますが、ここでは調号を省略します


いまこそ(ド・ファ・ソ・ファ)飛び立つ(レ・ファ・ソ・ファ)
勇気を(ミ・ソ・シ・レ)持って(レ・ド・ド)


注目なのはモチーフの繰り返しが3回続くところ。

この部分の始まりの音を見ると『ド・レ・ミ』になってる。

1音ずつ上に上がっていくメロディラインが、“力強さ”の理由なのかなと。

コードに対する音を見ても、『5th(ド)・1st(レ)・1st(ミ)』でストレートでまっすぐな印象を受ける。

この地に足のついた感じが“意志の強さ”を感じさせたのかもしれません。

また、このメロディラインはオクターブ上がってます。

“ド”から始まってオクターブ上の“レ”が最高音。

私が感じた“ダイナミックさ”は、この音域の広さが理由のような気がします。

“ド”から“ド”に行くんじゃなくて、その1つ上の“レ”に行く辺りも、『元の自分を乗り越えていく』みたいな感じもしてグッとくる。

ちなみに、この曲を作ったのは木根尚登さん。言わずと知れたTM NETWORKのメンバーの1人。

ここまで狙ってメロディを作ったのかは分かりませんが、そう感じてしまうほどの説得力はありますよね。

ついでに、この部分の歌詞は「飛び立つ」と言っていて、まだ「飛び立ってはない」んですよね。

グッと足に力を入れた時の「やってやるんだ!」感が出てて、これから未来を生きていく『選ばれし子供たち』の心情が見事に描写された歌詞と楽曲なんだなということが分かりました。

ということで、ここまでの分析結果をまとめておきましょう。

まとめ

『keep on/前田愛』の楽曲分析結果


・『Ⅵ』から始めることで感傷的な雰囲気に
・“解放感のなさ”や“浮遊感”を感じたのは『Ⅰ』を使っていないから
・“力強さ”を感じたのはメロディが1音ずつ上がっていくところから
・コードに対するメロディの当て方がストレートだから“意志の強さ”を感じる
・オクターブを超えるメロディラインから“ダイナミックさ”を感じる


「作曲をする時はサビから作りましょう」みたいなことをよく耳にするけれど、こうして楽曲分析をしてみると、その理由が良く分かった気がした。

サビは一番伝えたい部分だし、ココをどう見せるかで曲全体の印象が決まってくる。

この見せ場のためにAメロやBメロでどう演出するかを考える必要があるし、逆算していった方が構成がしっかりする。

特に私は感覚で曲が作れないタイプだし、いかにプロットを組むかも表現の一つとして重要。

今のところフル尺の曲を作る予定はないけれど、もし作る機会があるときは曲構成も意識しながら作りたいなと思います。

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