『仲間/ケツメイシ』の楽曲分析|曲構成から伝わる物語性
第3回の楽曲分析は『仲間/ケツメイシ』。
実際は40分くらいのショートドラマで、それをギュッとしたMVですよね。
私は何となくこんな風なMVにしたのにも意味があるような気はしてますが…まぁそれは今回はいいや。
では早速、楽曲で気になったところを分析していきましょう。
※ココで書いているキーやコード、専門用語の使い方は間違ってる可能性もあるのでご了承を。。。
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『キー:B♭』はケツメイシの中でも多い調性
キー(調性)は『B♭(変ロ長調)』かなと。
調べると『G』というのも出てきたので自信がないですが…たぶんあってます。
【ケツメイシのキー(調性)一覧 : ケツメバカの自由時間 (blog.jp)】でまとめたように、ケツメイシは『キー:B♭』の曲は比較的多くて、印象的にはキラキラした感じの曲が比較的多いですかね?
もちろんそうじゃない曲もあるけれど、いずれにせよ感情を揺さぶる曲が多い気がします。
それで…楽曲分析をしたいのですが、今回は『曲全体の構成』について気になったのでそこをメインに書いていきましょう。
展開が多い曲構成
一般的な曲構成として、歌詞がある部分のメロディは『Aメロ-Bメロ-サビ』でだいたい3か所くらい。
多くても『Aメロ-Bメロ-サビ-Cメロ』の4か所くらいかなと。
でも【仲間】は歌詞の部分のメロディが『Aメロ-Bメロ-サビ-ラップ-Cメロ』で5か所ある。
別に怒ってなんかないよ~ (Aメロ)
頭 抱えないで まわりを見てごらん~ (Bメロ)
楽しい時だけが仲間じゃないだろ オレ達は~ (サビ)
お前の小さい背中見たかね~ (ラップ)
ただ前を向いて 走り続けた~ (Cメロ)
ケツメイシの多くの曲がAメロorBメロでラップ部分を兼ねていますが、この曲は『Aメロ・Bメロ部分』と『ラップ部分』を分けている。
だから構成が複雑というか展開が多くなってるのかなと。
じゃあ「なんでそんなことをしたのか?」を考えてみると、そこには何かしらの意図や理由があると推測できる。
実際の意図は本人たちしか分からないですが、私なりの見解を書いていきましょう。
「楽しい時だけが仲間じゃない」から読み解ける意図
【仲間】という曲を象徴しているフレーズはサビの「楽しい時だけが仲間じゃないだろ オレ達は」かなと。
上手くいってる時は仲間意識なんて勝手に芽生えるけど、本当の仲間と呼べる人物は『ダメになった時に一緒にいてくれるか?』だと思います。
歌モノはサビが一番伝えたい部分という原則に従うなら、「このサビを引き立てるために他のパートが必要だった」と考えるのが筋でしょう。
要はいろんなシチュエーション、ほとほと上手くいってない状態でも「仲間でいるよ」というメッセージが曲構成からも感じられる気が私はしました。
曲構成も表現の一部だと思う理由
似たような感覚で言うとMr.Childrenの【終わりなき旅】の曲構成みたいな。
『終わりなき旅』は曲中に9回も転調していて、これは「人生の浮き沈みを表現しているんじゃないか?」とも言われていますよね。
こんなイメージで、歌詞パートの構成を増やすことで「いろんなことがうまくいってない状態でも声を届け続ける」みたいなものを【仲間】からは感じ取れる気がしました。
1回しか出てこない2つのパートの対比が面白い
この曲が凄いなと思うのは、1回しか出ないパートが2つもあるのに印象深いところ。
頭 抱えないで まわりを見てごらん~ (Bメロ)
ただ前を向いて 走り続けた~ (Cメロ)
上記の2か所は曲中に1回しか出てきません。
ココに注目してみたら、ちょっと面白いことを発見したので書いてみます。
まず「頭抱えないで~」の部分ですが、コード進行は以下の通り。
コードネーム : Cm7 |Dm |Cm7 |B♭|Cm7 |Dm |E♭-C7 |Fsus4-F7 |B♭
ディグリーネーム: Ⅱm7|Ⅲm|Ⅱm7 |Ⅰ |Ⅱm7|Ⅱm|Ⅲ7-Ⅱ7|Ⅴsus4-V7 |Ⅰ
(Cm7)頭抱えない (Dm)でまわりを見てごらん
(Cm7)君が素直に (B♭)頼れば支えるから
(Cm7)つらい時はそっ (Dm)と後ろを見てごらん
(E♭)オレ達がうな(C7) ずいてあげるか (Fsus4)ら(F7)
(B♭)楽しい~
『キー:B♭』なので『C7』はノンダイアトニックコード、コレはいわゆるセカンダリードミナントでしょう。
『キー:F』の『V7』が『C7』ですからね。
また、sus4を使うことによって、より感情が高まる仕掛けもされています。
つまり【オレ達がうなずいてあげるから】という歌詞には『力強さ』みたいな、「頑張ってこいよ!」みたいな雰囲気が感じ取れますね。
続いて「ただ前を向いて~」の部分のコード進行。
長くなっちゃうので後半部分だけ抜粋します。
コードネーム : E♭-B♭ |F-D7 |Gm-Dm/F-E♭ |Dm7-Cm7|Fsus4-F
ディグリーネーム: Ⅳ-Ⅰ |Ⅴ-Ⅲ7|Ⅵ-Ⅲm/Ⅴ-Ⅳ|Ⅲm7-Ⅱ7|Ⅴsus4-F
( E♭)前も(B♭)見え (F)なくなっ(D7)た時のお
(Gm)前の(Dm/F)側(E♭)で
(Dm7)共に笑(Cm7)ってあげる (Fsus4)よ(F)
『D7』は『キー:B♭』のダイアトニックコードではないけれど、次の『Gm』から推測するに、『キー:G』のセカンダリードミナントだと思う。
んで『Gm』に行ったってことは、ココは一時的にGマイナーに調性がシフトしたのかな?
そして『E♭』でまた『キー:B♭』に戻ってきた感じ。
この部分は曲の雰囲気が一瞬変わって、エモーショナルですよね。
かと思ったら『Gm』『Dm/F』『E♭』『Dm7』『Cm7』でベースラインが1音ずつ下がっている。
ベースラインが下がっていくとどこか落ち着いていく感じがしますね。
前者と後者で対比関係が生まれている?
いま挙げた2つを比較すると、前者は『力強さ』を感じて、後者は『落ち着き』を感じる。
どこか対比してるような印象は受けます。
実際、コード進行も前者の【オレ達がうなずいてあげるから】はメジャーコードが主体だけど、後者の【お前の側で共に笑ってあげるよ】はマイナーコードが主体になってる。
これを踏まえた上で歌詞を見ると…
前者(Bメロ)
【頭 抱えないで まわりを見てごらん 君が 素直に頼れば 支えるから
つらい時はそっと後ろを見てごらん オレ達が うなずいてあげるから】
後者(Cメロ)
【ただ前を向いて 走り続けた お前の名前を叫び続けるよりも
前も見えなくなった時のお前の側で ともに笑ってあげるよ】
やっぱり何となく前者と後者で対比関係が見える気がする。
例えば、前者は『挑戦前(挑戦中)』で後者は『挑戦後(挑戦中)』みたいな。
いつの時も挑戦する時、決断する時は『孤独』というか、自分一人で決めるものだと思います。
でも、その挑戦は一人だけのものじゃないというか、応援してくれる『仲間』もいると気づかせてくれる。
それこそ「たとえ失敗しても仲間でいるよ(関係性は変わらないよ)」という、そんなメッセージを感じ取れます。
また、Bメロの後にサビとラップを挟んだことで、Cメロに至るまでに時系列というか『時間が経った感じ』が生まれてるのかな?という気もします。
もっと言うと、ラップの最後のパート【誰 何言おうが 俺たちは仲間】と
【ただ前を向いて 走り続けた】の間にはブリッジ(間奏)があります。
この間奏も『時間が進んでいること』を表現してるのかもしれない。
私はこの部分から「対比関係なのかな?」と感じ取りましたが、それは曲構成が少なからず関係しているような気はしています。
曲の展開が多いことで『奥行き』というか、『物語性』が生まれているのかもしれませんね。
まとめ
【『仲間/ケツメイシ』の楽曲分析結果】
曲構成が多いことで対比や比較を感じられる
間奏部分で時間の流れを表現できる
曲構成が多いことで物語性が生まれている
今回は曲構成に注目して楽曲分析してみました。
ずっと「いい曲だなー」「いい歌詞だなー」と何となくで聴いていたけれど、そこにはちゃんと狙いがあるし、ぼんやりでも何か感じ取ってたんだと思う。
いい音楽は言葉に出来る・出来ないは置いといて、何か理由があるんだと改めて感じたかな。
私は小説やドラマ・映画とかを観る時に構成が気になるタイプ。
部分部分の面白さももちろん大事だけど、全体的を振り返って『どんなことを伝えたいんだろう?』『メッセージは何だったのかな?』が伝わってくる時に面白さを感じやすい。
曲構成まではまだたどり着けないけれど、自由に作曲できるようになったら、こんなところも意識して作曲したいですね。
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