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<ラグビー>WRが,交代選手の人数に関する新ルール導入を検討

参考とした記事
https://www.nzherald.co.nz/rugby/news/article.cfm?c_id=80&objectid=12349254

イギリスのザ・テレグラフ紙によれば,WR(世界ラグビー協会)は,スーパーラグビーなどのデータを元に,交代選手数を削減することを検討している。これによって,さらにアタッキングラグビーが導入される道が開かれるほか,現行ルールで発生している怪我も防止できると見ている。

これに対して,イングランド監督のエディ・ジョーンズが,さっそく支持するコメントをして,現行の8人を6人に減らすべきとしている。
「我々はラグビーゲーム全体を縮小する方向に向かうべきだ。また,ゲーム全体にもっと余裕を持たせるようにしなければ,(アメリカの)NFLのようになってしまうだろう。」
「私としては,交代選手は6人にすべきだ。また,レフェリーのゲームへの判断や関与を少なくしたい。特にTMOに対するレフェリーの関与は整理できるのではないか。」

元イングランド代表HOブライアン・ムーアも,交代選手の削減は安全につながる,現在のルールでは多くの大きくフレッシュな選手が途中参加して,疲労した相手に激しい当たりをしている,と述べている。また,元イングランド代表CTBジェレミー・ガスコット及びレフェリーのナイジェル・オウウェンスも,同じような意見を述べている。

WRチーフメディカルオフィサーのエンナ・ファラヴェイ医師は,参考となる良いデータから試行すべきと述べる。ただし,3人のFW1列はスクラム要員として必要だとしている。
「基本的に(削減するには)限界はある。」
「現実的な課題は,9番や10番のような専門的なプレヤーを除く形で,削減するか否かということだ。そうした場合は,よりユーティリティープレヤーを交代要員に入れる必要がある。」

「(交代選手数が削減された場合は)大きな選手は,現在の55分よりも80分間をフルでプレーすることになる。その結果,最後の20分間をプレーできるためには,10kg体重を重くすることは不要となるだろう。」
「体重を減らすことは,選手の怪我を増加させる可能性もあるが,一方では,選手がこれに適用できれば,よりスピードアップができるだろう。また,より軽い選手はより機動的になり,仕事量も多くなると思う。」

「議論になっているのは,交代選手が爆発的な当たりをしないことから,いかにして怪我を減らせるかだ。」
「しかし,そもそも交代選手数を最初に増やした理由は怪我防止だったので,選手数削減問題は,簡単に解決できるものではないとも考える。」

【個人的見解】
昔は,先発する15人だけで最後までプレーをし,怪我による選手交代すら認めてもらえませんでした。大怪我をして退場となった場合は,そのチームは1人少ない人数で試合をした他,今なら交代するような怪我(肩の脱臼や足首の捻挫等)でも,走れないのでゴールポスト下に立って,中央にトライするのを防がせるなんていう蛮行もあったのでした。

その後怪我による交代が認められ,その人数も少しずつ増えて行きました。さらに,戦略的選手交代というルールができ,怪我でなくとも選手交代ができるようになりました。当初はリザーブが7人(FW4人+BK3人)でしたが,PRは左右2人必要ということで8人になって現在に至っています。

このリザーブの人数増とは別に,ラグビーがプロ化してから長期間専門的に身体を鍛えることができたことから,アメフトのように選手のフィジカルが年々増強され,その結果不要なほどの激しい当たり合いによる深刻な怪我が発生するケースが目立ってきました。

また,選手個々のフィジカル強化によって,本来のラグビーの面白さであるパスやランでトライを取りに行くのではなく,旧弊とも言える巨大なFWだけによる押し合いへし合いと,それによって相手チームに反則をさせ,PGで得点するという,全く本来のラグビーの理想からほど遠い,ラグビーらしくないゲームが近年に蔓延しています。

その顕著な結果が,2019年RWC優勝の南アフリカのラグビーでした。また,南アフリカに加えて,2019年RWCのイングランドのように,アタックよりもディフェン中心のプレーで,オールブラックスのようなアタックを中心にするチームに勝利してしまう事例も発生していました。

これらの傾向は,ラグビー本来の面白さ(トライを取り合う)を甚だしくスポイルするだけでなく,ラグビーが世界のメジャースポーツに発展し,TV視聴という経済的効果を得るためには,逆効果と言えるでしょう。いやラグビーは経済(金儲け)とは無関係だという,日本の大学ラグビー(アマチュア)信望者からの反論があるかも知れませんが,誰がなんと言おうとも,ラグビーは(見ても,プレーしても楽しい)エンターテイメントとしてのスポーツであり,旧日本軍のような偏向した精神論で語るべき対象ではありませんし,今や立派な経済原理の一つとなっているのです。

そのため,WRとしてはルール変更により,本来のラグビーの面白さを取り戻そうとしていますし,現在のNZのアオテアロアもそうした試行をしていますが,NZラグビーは元々アタックとランニングプレー中心ですので,敢えて試行ルールを採用しなくとも本来のラグビーを十分プレーしていたと思います。また,アオテアロアを見れば再確認できるように,NZラグビーは,世界一面白くて楽しい,理想とするラグビーの姿を具現しています。

しかし,最近南アフリカが,(ランニングラグビー中心の)スーパーラグビーから抜けて,(FW・キック・ディンフェス偏重の)英国のラグビーリーグに参加することを検討しているとの報道からは,本来のラグビーの面白さを取り戻す方向とは逆に向かっている感がぬぐえません。チームにとっての勝利至上主義も関係しているのでしょうが,WRの試行ルールを是非とも採用して,ラグビー本来の面白さを取り戻すことを目指して欲しいと強く思います。

ラグビーは,キックのみで得点するサッカーと同じでは当然ありません。何よりも創意工夫を凝らし,素晴らしい総合的なスキルのプレーによるトライを取り合うスポーツとして,その存在意義があるのですから。


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