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<ラグビー>2024年シーズン(9月第三週)

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)

〇 コイントスの表裏の確率は50%と信じられているようだが、現実は違うようだ。実際に研究・実験した人の話によれば、最初に上にした方が出る確率が約51%となっているので、投げる前に上になっている方を選択した方が当たる確率が高いそうだ。
 
〇 昔の宇宙論では、ブラックホールの存在自体だけで世間ではたいそう話題になり、ブラックホールという言葉が、宇宙物理学から離れて流行語として使われるようになった。一方、今やそれ以上に不思議なダークマターとかダークエネルギーというのが確認されているが、世間では話題になっていない。なぜだろうか?それはさておき、昔宇宙はエーテルに満たされていると言われていたが、現在ではこのダークマターとダークエネルギーに満たされているようだ。最新の研究では、宇宙全体のうち、約68%はダークエネルギーで、約26%がダークマターになっており、残る僅か5%が、我々に認識できるバリオンという既知の物質である。
 
 なお、ダークマターとは、光や電磁波などに反応しないが、そこにある質量=重力から存在が推定されている物質のことである。またダークエネルギーとは、同様に我々の認識可能な測定装置では測量されないが、そこにあることが推定されている巨大なエネルギーを意味している。ダークとは、英語で「暗闇」という意味だが、ブラックホールの「ブラック」が文字通りに「黒い」イメージなのに対して、ダークマターやダークエネルギーの「ダーク」は、色彩的表現よりも「未知・不知」という意味で使われている。そのため、世間に喧伝される対象になり辛かったのだと思う。しかし、その影響力は、ブラックホールの比ではないくらいに大きい。


1.ザ・ラグビーチャンピオンシップ(TRC)(第5週結果)

オーストラリア28-31オールブラックス(HT14-28)


 オールブラックスは、連敗した南アフリカ戦を踏まえ先発4人とリザーブ2人を入替れた。6番FLワレス・シティティは継続して先発しているが、NO.8が良いという意見が多数を占めている。また13番CTBも、評価を下げているリエコ・イオアネが継続して先発したが、若手のビリー・プロクターを起用すべきとの声がある。11番WTBケイリブ・クラークが怪我から戻った他、ウィル・ジョーダンがFBから14番WTBに移動し、FBは南アフリカ戦でリザーブからの活躍ができなかったボーデン・バレットが先発に戻った。

 しかし、試合当日、FBボーデン・バレットが病気のため欠場し、FBにウィル・ジョーダン、14番WTBセヴ・リース、23番ハリー・プランマーにそれぞれ交代した。1番PRにイーサン・デグルートが怪我から復帰し、18番PRにパウリシオ・トシが入った。PRフレッチャー・ニュウウェルとBKルーベン・ラヴが怪我で欠場となっている。

 オーストラリアは、1番PRジェイムズ・スリッパーが、ジョージ・グレーガンの持つ最多キャップ記録を抜く140キャップを達成した。7番FLフレイザー・マクライトがTRC初登場となった他、12番CTBハンター・パイサミとFBトム・ライトがそれぞれ怪我から復帰した。アルゼンチンに大敗したゲームの責任を問われたこととなった、SHジェイク・ゴードンとSOベン・ドナルドソンはメンバー外となり、SHニック・ホワイトとSOノア・ロレシオのコンビが復活した。

 試合は、オールブラックスが17分までに3トライを重ねて0-21とリードし、続けてオーストラリアが反撃した後、相互にトライを取り合って前半を14-28とオールブラクスがリードする。ここまでは、これまでの負けた試合同様に、オールブラックスは前半に良いゲームをできていた。ところが、後半は44分にPGで14-31として、オールブラックスが勝利を確実にしたと思われたが、その後シンビンを続けて2人出すなど、これまでの負けた試合同様に酷い内容になってしまった。その結果、オーストラリアから一方的に2トライを連取され、3点差まで迫られたが、どうにかかろうじて逃げ切った勝利となった。

 オーストラリアは、時間切れで勝利を逃したものの、FW3列の活躍により、アルゼンチン戦の大敗からチームが持ち直したことを示すゲームとなった。一方、今年もブレディスローカップ保持を決めたオールブラックスだが、後半残り20分にディフェンスが崩壊してしまうという今シーズンの悪癖が修正できておらず、この日も前半の貯金を維持することでどうにか辛勝したという酷い内容となっていた。

 そうした中では、6番FLワレス・スティティとSHコルティス・ラティマーが良いプレーを見せており、世代交代に向けて朗報となった。また、数少ないプレーに波のないNO.8アーディ・サヴェアは、オールブラックス通算28個目のトライを記録し、これまでリッチー・マコウの持っていた27個のFW最多記録を更新した。サヴェアは、2027年RWCまでは間違いなくプレーし続ける中心選手なので、この記録はさらに更新されることだろう。

アルゼンチン29-28南アフリカ(HT26-22)


 南アフリカは、アルゼンチン遠征スコッドから主力7人を休養させたこともあり、前戦のオールブラックス戦から先発10人を入れ替えた。継続して先発となったのは、1番PRオックス・ノッチェ、NO.8ジャスパー・ウィーゼ、SOアンドレ・ポラード、13番CTBジェッシー・クリエルとなっている。

 なお、南アフリカ最多キャップ記録更新(127)がかかったLOエベン・エツベスは19番のリザーブになった。このエツベスに代わって4番LOで先発するサルマアン・モエラットが、シヤ・コリシ休養によりキャプテンを代行した。またリザーブは、得意とするFW6人+BK2人としているが、16番ヤンヘンドリクス・ウェッゼルズが、PR兼HOとしてリザーブ入りしている。

 アルゼンチンは、オーストラリア戦でリザーブから大活躍したホアキン・オヴィエドをNO.8に抜擢した。また、同様にオーストラリア戦で活躍したSHゴンサロ・ベルトラノウとSOトマス・アルボルノズのコンビを継続した。リザーブでは、18番PRにペドロ・デルガドが怪我のエデュアルド・ベロに代わって入り、初キャップとなった。19番LOグイド・プッティと20番FLファンマルティン・ゴンザレスが、共に50キャップを達成した。

 今週のメインイベントは、まさにこのゲームだった。また今シーズンで最も記憶に残るゲームになったといっても過言ではないだろう。ゲームは、開始早々から南アフリカが連続トライとPGで0-17とリードしたが、その後アルゼンチンは相手のシンビンを利して3連続トライを返し、26-17と逆転する。しかし、南アフリカも38分にトライを返して、アルゼンチンが4点差のリードで前半を終えた。

 後半は両チームともノートライとなったが、43分と50分に南アフリカが連続PGで26-28と再逆転した後、このまま南アフリカの勝利かと思われたが、底力のあるアルゼンチンは、68分のPGで29-28と再び勝ち越しを決め、そのまま逃げ切ってみせた。アルゼンチンは、負けるか引き分ければ南アフリカに優勝を決めさせた上、連勝記録を更新させるところだったが、ギリギリのところで踏ん張ってみせたのは、それだけチーム力があることの証明だろう。

 特に、後半20分以降は、優れたリザーブによって世界最強と見られる南アフリカに対して、68分に得点して勝利したことは、チーム力が世界王者に迫っていることを意味している。この勝利は、横綱南アフリカに対する三役格のアルゼンチンによる金星ではなく、既に大関となっているアルゼンチンの見事な勝利であった。これで、来週の最終戦が非常に楽しみになったが、もしかしたら、アルゼンチンが優勝するかも知れない。

<南アフリカが強くなった理由についての私見>
 今週の試合でアルゼンチンに惜敗したが、南アフリカは、2019年及び2023年のRWCを連覇し、また17連勝するなど、世界最強の座を維持している。もともと、フィジカルの強さを前面に出したシンプルなラグビーで、ラグビー強国としての歴史を持つ南アフリカは、1995年のラグビーの全面プロ化以降は、主力選手の多くが北半球のクラブチームとプロ契約することによって、国内でプレーする主力級選手が減少し、一時的に戦力が低下した。その後、数度にわたる改定を経て、現在は海外でプレーする選手に対する代表選出基準を廃止している。

 その後、スーパーラグビーに参加していた各クラブチームは、ヨーロッパのリーグに移動したため、代表レベルの選手の大半が国外でプレーする状況となった。この結果、代表には常時トップ選手を選べることになったことに加えて、アウェイでの試合に対する選手たちの耐性が強化された。もちろん、代表としてチームが集まれる期間が短縮されるマイナス面はあるものの、それは表面化しないで済んでいる。その理由は、選手個々が常時長距離移動することに順化したことも一因だろう。

 また、現監督ラッシー・エラスムスは、「ボンブ(爆弾)スコッド」として、リザーブにFWを多く入れることで、疲労が多いFW8人のうち6人から7人は、80分間プレーする必要がなくなったことが大きく影響している。現行のリザーブ8人というのを最大限有効活用しているのが、このエラスムス監督だと言える(なお、WRではリザーブの人数について縮小する案も出ており、今後の動向が注目される。もし、縮小される場合は、南アフリカの強みは減少することになるだろう)。

 さらに、アシスタントコーチとして、現在のラグビー界でも有数のアタックコーチである元オールブラックスSOトニー・ブラウンを獲得したことが大きい。ブラウンのコーチングにより、それまでのフィジカル中心だったチームが、オールブラックスに並ぶインテリジェンスを獲得すれば、当然チームは強化されるだろう。

 この南アフリカに勝てるチームを、今回アルゼンチンが辛勝して見せたが、なかなか見つけることは難しい。なお、この他の勝てる候補となるのは、南半球ではオールブラックス(唯一南アフリカに対して通算で勝ち越しているチーム)、北半球ではアイルランド、イングランド、フランスしかない。そして、今年の残る試合予定は、アルゼンチン、スコットランド、イングランド、ウェールズとなっているので、次の山場はイングランド戦になる。

 なお、来年はブリティッシュアンドアイリッシュ・ライオンズのオーストラリア遠征があるため、英国4協会(イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド)は、ベストの代表チームが南半球に遠征できない。一方、南アフリカはフランスへ遠征するので、ここが最初の山場となる。その後は、来年のザ・ラグビーチャンピオンシップにおけるオールブラックス戦となるので、ホームで南アフリカを迎え撃つオールブラックスに期待したい。

2. パシフィックネーションズカップ結果

3位決定戦
アメリカ13-18サモア(HT6-10)


 サモアがスコアで先行した後、後半はアメリカの追い上げを受けて13-13の同点となったものの、77分のトライで最後に接戦を勝ち抜き、サモアが3位となった。惜敗となったアメリカだが、4位とはいえ、この大会は大きな収穫となっている。このまま順調にハイレベルでの試合を積み重ねていけば、2031年RWC地元開催までには、ティア1国チームに大敗しないレベルまでに成長できるのではないか。

決勝
フィジー41-17日本(HT10-10)


 日本代表のエディー・ジョーンズ監督は、日本の課題はラック周辺とキックチェイスのディエンスだと記者会見で述べていたが、明らかに課題となっているキッキングゲームへの対応は話題にしなかった。フィジーは、イングランドや南アフリカのようなキック主体のチームではないので、キックはあまり使ってこないと想定したのかも知れない。

 しかし、フィジー監督のミック・バーンは、元々キッキングコーチである。巧妙なキック戦術をフィジーに伝授していないはずはなかった。なお、日本代表は、リザーブ23番に怪我の高橋汰地に代わって濱野隼大が入り初キャップとなっただけという、完勝したサモア戦を継続するメンバーとなっている。これまで大幅なメンバー変更をしたきた中で、サモア戦の勝利がよほど嬉しかったのだろう。

 試合は、前半こそ10-10で競ったものの、セカンドジャージの黒を着たフィジーが試合の流れを常に握り続け、日本はディフェンスでどうにかこらえる時間帯が続いた。しかし日本は、前半37分のシンビンにより一人少ない影響もあり、後半残り20分となった時点で、ついにディフェンスが崩壊してしまった。ディフェンスに穴が開いた日本を、フィジーは自慢のアタック全開でトライを重ねていき、最後は余裕で日本に圧勝してみせた。

 大敗した日本は、13番CTBディラン・ライリーと11番WTBマロ・ツイタマの個人技で2トライを返すのがやっとだった上に、組織的なアタックが機能しなかったことに加え、パスミスなどからフィジーにトライを献上するという、まったくコーチングの成果が見えない自滅パターンを繰り返してしまった。また、80分持たない組織ディフェンスは、喫緊の課題だろう。

 惨敗した結果となった日本だが、5番LOワーナー・ディアンズの、80分間休むことなく継続した攻守にわたる献身的なプレーは、そのレベルの高さと運動量の多さから、世界トップレベルの選手であることを証明していた。おそらくティア1国ではLOではなく、6番FLを担うことになるだろうが、もしオールブラックスでプレーしていたら、大活躍していることだろう。

 なお、FBからSOに入った李承信は、アタックで良いプレーをみせていた他、ハイボール処理では大きなミスはなかった。しかし、80分プレーできるフィットネスはないので、60分で交代させるようにすべきだと思う。また、SO立川理道もよいプレーをしていたが、年齢を考えると2027年RWCでのプレーは想定できないので、エディー・ジョーンズ監督が日頃から唱えている世代交代のためには、別のSOを起用すべきだろう。

 こうしたことを考慮すれは、SO山沢拓也、11番マロ・ツイタマ、12番ニコラス・マッカラン、13番ディラン・ライリー、14番矢崎由高、15番李でスタートし、60分に矢崎をFBにして、14番にロングキックの蹴れる竹山晃輝を23番のリザーブから入れるのが良いと思う。なお、22番のSOのリザーブには、松田力也或いは高本幹也ではないか。

3.その他のニュースなど


(1)日本代表がウルグアイと対戦

 日本代表は、秋のヨーロッパ遠征中の11月16日、フランスでウルグアイと対戦する予定が決まった。前の週の11月9日にパリでフランスと、また後の週の11月24日ロンドンでイングランドとの対戦が既に決まっているが、その間にティア2国であるウルグアイとの対戦が決まったことで、日本代表は(もしそれまでに、ABの組み分けが出来ているのであれば)Bチームの選手が試合経験を積む機会を得られそうだ。

 なお、ウルグアイは、南米ではアルゼンチンの次に実力のあるチームと認められており、これまでにRWCへ出場したことも数回ある。アルゼンチン同様にフィジカルとキックを主体にしたチームなので、日本代表としては対戦しやすい相手だが、現在の世代交代と称する不安定なメンバー構成では、足元をすくわれる可能性が排除できないので要注意だ。

(2)クラシックオールブラックスのハイライトビデオ

 オールブラックスOBによるいわゆる華試合なので、派手なタックルは皆無の乱打戦となったが、その個人技に優れた選手たちによるトライ合戦は、ハイライトであっても見ていて楽しい。また、スクラムやラインアウトのセットプレーは、ラグビーリーグのようにゲーム再開の手段になっていて、烈しく競り合うことはないから、時間の浪費もない。もしかすると、これがラグビーという「ゲーム(遊戯)」の原点なのかも知れない。

(3)キャメロン・ロイガードが復帰間近

 スコット・ロバートソン新監督による新生オールブラックスの中心選手として期待されていた、23歳のSHキャメロン・ロイガードは、3月30日のハリケーンズ対ハイランダーズの試合で膝の大怪我を負ってしまい。長く欠場している。しかし、その後治療及びリハビリが順調に進み、既にカウンティーズマヌカウの練習を開始するまでになっている。

 ロバートソン監督のオールブラックスは、今シーズンは期待に応えられない苦戦を続けているが、その理由のひとつとして、ベテランのTJ・ペネナラや若手のコルティス・ラティマーのSHが、アルゼンチンや南アフリカ相手に期待に応えるプレーができていないことがある。そのため、次代のオールブラックスを担う才能豊かなロイガードの早期復帰が待ち望まれている。

 総合的なフィットネスを測定するブロンコテストでは、ボーデン・バレットと並ぶ最高値を記録しているロイガードは、このまま順調に行けば、10月5日にパーマストンノースで行われるカウンティーズマヌカウ対マナワツとのゲームで復帰する予定であり、その後の北半球遠征に帯同することが想定されている。今年の北半球遠征でオールブラックスは、イングランド、アイルランド、フランス、イタリアと4連戦するが、中でもフランスSHアントワーヌ・デュポンとロイガードとの対決は、特別な時間になることだろう。

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