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<芸術一般>ドレ「神曲」と4歳時の絵

先日、一時帰国してから2回目となる実家での荷物整理に行った。改めて、私の荷物、特に書籍の多さに辟易したが、帰り道の苦労を考えて、2冊だけを自宅に持ち帰った。

それが、ダンテ作ドレ挿画の「神曲」とニジンスキー「ニジンスキーの手記 肉体と神」だった。ニジンスキーについては、後日書く予定なので、ここは「神曲」の方をご紹介したい。もっと正確には、ギュスターヴ・ドレの挿画について書きたい。

ダンテ神曲表表紙

この表紙で、地獄の入口からこちらを振り返っているのが、作者のダンテ・アレギエリで、肖像画からはその気難しそうな精神がよく分かる。

ダンテ神曲肖像画

そのダンテが、古代ローマの詩人ウェルギリウスに案内されて、地獄、煉獄(地獄と天国の中間にある場所)、天国を旅する物語が「神曲」(原文からは、「神の喜劇」)だ。

有名な個所は地獄で、中世イタリアであった様々な事件(ゴシップの類)の主人公たちが、地獄のあちこちで罪を償っている姿をダンテは見ていく。そして、地獄の最奥で鎖につながれているのが、神に逆らった大天使ルシファーだ。

ダンテ神曲地獄ルシファー

この絵の右上にいるのが、ダンテとウェルギリウスで、中心に不機嫌そうにしているのがルシファー。天使よりも悪魔の親玉として描かれている。

そして、次に煉獄に行って、同じような悲惨な人々の姿を見たあと、天国へ行く。

ダンテ神曲煉獄

天国には、当然だけど、イエス・キリスト、マリア、聖人、天使が沢山いる。特に天使の姿が、とても美しい。

ダンテ神曲天国2

つい最近、TVドラマ「スーパーナチュラル」のシーズン13とシーズン14を見終えたばかりなので、こうした地獄・煉獄・天国の場面や、天使の姿は、妙に身近に感じられる。・・・そういえば、鳥の羽が落ちているのを見たら、近くに天使がいるという言い伝えがあるようだ。

ところで、この書籍と一緒に、古いアルバムもあった。いずれ自宅に移動する予定だが、とりあえず写真を撮ってきたものがある。

そのうちのひとつに、幼稚園を卒業したときにもらったアルバムがあって、その表紙を、園児が自分で描いた絵をプリントしている。なかなか気の利いた演出だと思う。

幼稚園卒園児のアルバム表紙2

3月の早生まれだから、これを私が描いたときは4歳だった。当時まだ珍しかったマジックを使って自由に描いていいと言われた私は、嬉々としていつものクレヨンと一緒に、現実と想像が混交した世界を描いた。

空には、黄色と緑のジェット機、人をぶら下げたヘリコプター、ゼロ戦のようなプロペラ機が飛び、黄色の枠に緑の雲が浮かぶ。地上は動物園で、4つの檻があり、一番左は雄ライオンと雌ライオンがいることがわかる。檻の外にある柵には、沢山の人々(妻曰く「あやつり人形みたい」)が見ている。

幼稚園卒園時のアルバム表紙1

裏表紙は、同じような黄色い枠の緑の雲がある空に、黒で上下につながったヘリコプター、緑の横につながったヘリコプター、黄色のちょっと大きなヘリコプターの編隊が飛ぶ。中央には、高さの違う窓が一つだけある黒枠の緑の塔が建っており、その右下にはUFOが着陸して、その周囲を人々が囲んでいる。

自画自賛になるが、4歳児で、このデッサン力、画面の構成力、物語性を描いたことは、結構凄いのではないかと思った次第。実際、幼稚園の先生から誉められた記憶があるが、その後芸術の世界に進むことはなかった。

また、卒園記念写真には、当時の私のクセになっていた、右側に身体と頭を傾け、さらに右目をつむった姿が映っている。そう、ちゃんと正面向いたり、両目を開けて写真撮られるのが、フラッシュがたかれるせいか、なぜか嫌だったのです。

その記念写真に先生が書いたメッセージが、「おおきくなったら、なにになりたいときいたら、ぼく、だいとうりょうっていってましたね。だいとうりょうになるつもりで、がんばってくださいね」と書かれていた。当時、アメリカ大統領ジョン・F・ケネディが暗殺されたニュースは、世界中に同時配信され、私のような4歳時の記憶にも強く残ったが、日本に大統領制がないことまでは、さすがに知らなかった。

では、あれから55年余が過ぎて、今大統領になったかい?と聞かれたら、当時と同じに身体と頭を右に傾けて、さらに右目をつむって、こう答えることだろう。人は理想どおりには成長しないようです。

「はい、水商売の方々に支払いをするときに、そういわれることがありますけどね・・・」

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