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<ラグビー>高校ラグビー第101回花園大会展望と,オールブラックスのことなど

1.第101回高校ラグビー花園大会

まず,高校生ラガーマンの元父兄として,3年弱息子以上に高校ラグビーにのめり込んだ経験から,全ての高校ラガーマン,父母と家族,そしてコーチを始めとする関係者の皆様には,新型コロナウイルス感染という予想外の障害がある中,ここまで一所懸命に高校ラグビーを支えていただいたことに感謝申し上げたい。

そして,惜しくも花園出場が叶わなかったチームの皆様には,同じ思いをした者としてその悔しさを共有したい。実際,息子が高校3年のときの決勝を1点差で負けた後,約半年間はメンタルの低下に苦しんだ思い出がある。必死になった分だけ,夢が実現しなかった反動とショックも大きくなるものだ。

今年は,息子の母校である東京高校は,東京都予選第2地区決勝で目黒学院に粉砕されてしまった。一時は花園でベスト8まで入ったこともあったが,ここ数年は決勝までいくのが精一杯になっている。残念だが,これも栄枯盛衰のならいとして,仕方ないと思うしかない。

出場校一覧:
旭川龍谷 札幌山の手 青森山田 黒沢尻北 仙台育英 秋田工業 山形中央 磐城
茗渓学園 桐生第一 昌平 流通経済大柏 國學院久我山 目黒学院 桐蔭学園
日川 飯田 開志国際 富山第一 航空石川 若狭東 静岡聖光学院
中部大春日丘 関商工 朝明 光泉カトリック 京都成章
常翔学園 東海大大阪仰星 大阪桐蔭 報徳学園 御所実業 近大和歌山
米子工業 石見智翠館 倉敷 尾道 大津緑洋
坂出第一 城東 松山聖陵 高知中央
東福岡 佐賀工業 長崎北陽台 専大玉名 大分舞鶴 高鍋 鹿児島実業
読谷

この中からベスト16(1月1日に試合をするチーム)を予想すれば:
秋田中央 昌平 茗渓学園 流通経済大柏
國學院久我山 目黒学院 桐蔭学園 京都成章
常翔学園 東海大大阪仰星 大阪桐蔭 御所実業
尾道 東福岡 佐賀工業 大分舞鶴

さらにベスト8(1月3日に試合をするチーム)を予想すれば:
流通経済大柏 桐蔭学園 京都成章 常翔学園
東海大大阪仰星 大阪桐蔭 御所実業 東福岡

ここまでが,素人が予想できる限度だと思う。ここから先は,実際に試合を重ねてみないとわからない。高校生は,大会期間中に試合を重ねる毎に大きく成長するから,試合当日にならないとわからないことが大きいのだ。またそこが,花園の面白さだとも思う。

本当は東京勢に頑張ってもらいたいが,最近の結果から見ればやはり難しいと言わざるを得ない。その中で,関東勢として桐蔭学園と流通経済大柏の活躍に期待したい。そして何よりも,この大会で活躍し,将来の日本代表が期待されるレベルの選手には,大学ラグビーで4年間を無駄に過ごすことなく,リーグワンのチームに入って実力を高めてもらいたい。

引退後のことを想定して,大学卒業資格を得たいのなら,通信教育など様々な方法が今はあるし,プロ契約ならそうしたことが十分可能だ。とにかく,大学の生ぬるい環境で才能を浪費してしまうことだけは避けてもらいたい。既に,ワーナー・ディアンズという良い先例ができた。優秀なラガーマンは皆,ディアンズの後に続いて欲しい。


2.オールブラックスのことなど

WR(ワールドラグビー)は,2022年1月1日から,国代表資格基準を変更し,前の代表から3年間代表としてプレーしていない選手は,本人・父母・祖父母の母国の代表資格を,1回に限り新たに得られることにした。

この恩恵を受けるのは,フィジー,トンガ,サモアの南太平洋諸国で,特にこの中でもっとも弱いとされているトンガは,マラカイ・フェキトア,チャールズ・ピウタウ,イズラエル・フォラウ,ナガニ・ラウマフィー,ヴァエア・フィフィタらを代表に入れることができる。これだけでも,ジュニアオールブラックスレベルに実力が増大するので,(トンガの出場は確定していないが)2023年RWCのプールマッチで対戦する可能性がある,南アフリカ,アイルランド,スコットランド,(おそらく)ルーマニアは,相当なダメージを受けることになる。

また,サモアにも,たとえばジュリアン・サヴェアや(引退撤回して)ソニービル・ウィリアムズが入ることも可能であり,他にはスティーブン・ルアトゥア,ベン・ラム,ジョージ・モアラ,ジェフェリー・トゥマガアレン,リマ・ソポアガ,ジョシュ・イオアネ,ヴィクター・ヴィトーらのそうそうたるメンバーがいるので,トンガ以上に強化されるだろう。RWCで同じプールになるイングランド,日本,アルゼンチン,(おそらく)アメリカは,今から心配でたまらないだろう。日本も,サモアとアメリカには楽勝と計算できないことになる。つまり,チーム毎の実力差が縮まり,より競った試合が多くなって,RWCはもっと盛り上がることになるだろう。

残るフィジーは,現在でも十分実力がある上に,セタ・タマニヴァルやワイサケ・ナホロが加入すれば,得点力が1.5倍増える。RWCで同じプールになる,ウェールズ,オーストラリア,おそらくジョージアとポルトガルにとっては,毎試合が厳しいものになる上に,特にウェールズとオーストラリアにとっては,楽勝と思われていたベスト8入りが簡単ではなくなってしまう。

そして,オールブラックスだ。今年南アフリカ,アイルランド,フランスに完敗して,2019年RWC前まで維持していた世界一のチームというステータスが,名実ともに一気に下落してしまった。その責任は,ひとえにイアン・フォスター監督とそのコーチ陣にあると思うし,ここから挽回するためには,スコット・ロバートソンという新たな発想のできるコーチを導入することが一番だと思う。実際,NZ国民の80%は,フォスター解任,ロバートソン就任を要求している。

一方,選手についても,いろいろと考えるべきものがあるように思う。ポジションの順を追って考察したい。

まず,HOだ。ダン・コールズが35歳ということで引退を迫る意見も多いが,幸いにコールズは怪我でプレーできなかった期間が数年あるため,その分選手寿命を延ばしている。そのため,少なくとも2023年までは機能すると思う。また,本来とっくにコールズを圧倒しなければならないコーディ・テイラーが伸び悩んでいることから,コールズの出番はまだまだ多くなる。なお若手では,サミソニ・タウケイアホやアサフォ・アウムアが出ているが,2023年までに優勝チームに相応しいHOに成長できるかは,やや不安が残っている。

PRは,今回の北半球遠征で,セットプレーのみならず機動力でも完全に負けてしまったポジションだ。もうジョー・ムーディ,ネポ・ラウララ,オファ・トゥンガファシ,カール・ツイヌクアフェ,アツ・モリ,アンガス・タアアヴォといった選手は上がり目がないので,早期に世代交代した方が良いかも知れない。しかし,次の世代として,ジョージ・ボウワーやタイレル・ローマックスに期待しているが,彼らも伸び悩んでいる。また機動力という点では,ハリケーンズのアレックス・フィドウがオールブラックス入りできる力はあるが,セットプレーが成長していない。その点では,セットプレーの強いイーサン・デグルートが機動力を備えることに期待したい。

LOは,申し訳ないが,HOコールズのように怪我で長期欠場した期間がなかったサムエル・ホワイトロックは,引退の時期が近づいたと思う。一方のブロディー・レタリックは,少なくとも2023年まではトッププレヤーとしてやれるので,今シーズン出てきた,ツポウ・ヴァアイとジョシュ・ロードの早い成長を強く願う。そして,それまでの期間を埋めるのはスコット・バレットになる。個人的に期待していたパリパリ・パーキンソンは,怪我が多すぎてオールブラックスは無理かも知れない。その代わりに,ブルーズのサム・ダリーは,来シーズンの活躍次第では,オールブラックスが近づくだろう。

FW3列は,多くの人材がいるが,安定して起用できるのはアーディ・サヴェアだけで,キャプテンのサム・ケーンもただのFLになってしまった。アグレッシブさだけであればイーサン・ブラカッダー,アタックだけならアキラ・イオアネとホスキンス・ソツツ,ブレイクダウンならダルトン・パパリイ,総合的な力はあるが全てに物足りないルーク・ジェイコブソンと,皆一長一短の中で,メンバーが固定できない。来シーズンの活躍次第だが,ソツツとジェイコブソンが安定すれば,サヴェアを7番,ソツツを8番,ジェイコブソンを6番にし,アキラ,ブラカッダー,パパリイの3人をローテーションで20番に使うのがベストではないだろうか。

SHは,まだまだアーロン・スミスだ。後継者となれるフォラウ・ファカタヴァが大きな怪我をしてしまい,2023年に間に合いそうにない。一方,TJ・ペレナラはパスの速さがないという致命的な弱点を持っており,ブラッド・ウェバーとフィンレイ・クリスティーに序列を越されたようだ。来シーズンにもっと良いSHが出てくることを期待したい。

SOは,いろいろあってもボーデン・バレットが一番という評価に落ち着いたようだ。ではリッチー・モウンガをどう使うのかという問題が出てくる。また,他にはジョシュ・イオアネ,スティーヴン・ペロフェタ,アイダン・モーガン,ルーベン・ラヴ,ファーガス・バークという才能ある選手がいる。

そこで,次のCTB,特に12番に良い選手がいないことが,今のオールブラックスの課題となっているが,いっそ,SOモウンガ,12番CTBボーデンにしたらどうだろうかと思う。また,先に挙げた若手のうち,ペロフェタとモーガンは12番の適性をもあるので,来シーズンの活躍次第では,テストマッチレベルで12番をやらせてみたい気がする。

なお,13番CTBについては,現在では,リエコ・イオアネが一番だ。最初はCTBが心配だったが,テストマッチを経験していくうちに安定感が出てきた。WTBとしてのスピードもあるので,これからも活躍してくれそうだ。リエコに次ぐ選手としては,アントン・リエナートブラウン,ジャック・グッドヒュー,デイヴィット・ハヴィリ,クイン・ツパエア,ピーター・ウマガジャンセンら多くの選手がいる。ブルーズに入ったリーグから移籍のロジャー・ツイヴァサシェックは,ブルーズでは12番をプレーするようだが,個人的にはイズラエル・フォラウのようにバックスリーが適所だと思う。

バックスリーのうち,FBはジョルディ・バレットで決まりと誰もが思っている。もし代わりにプレーするとすれば,スティーヴン・ペロフェタ,ジョシュ・イオアネ,ボーデン・バレットらが浮かんでくる。ウィル・ジョーダンは,ジョルディ同様に不動の位置にあるWTBなので,彼の14番は動かしがたい。残る11番は,現時点ではセヴ・リースだろう。そして,ジョージ・ブリッジはオールブラックスに呼ばれることはなくなりそうだが,代わりにレスター・ファインガアヌクが上がってくるだろう。さらにカレブ・クラーク,エテネ・ナナイセツロ,コナー・ガーデンバショッップ,そしてツイヴァサシェックが入ってくるかも知れない。

ということで,2021年シーズンを終えた段階で,2023年RWC開催時に期待の若手が十分成長していると仮定して,独断的なオールブラックスの23人を選んでみた。

ジョージ・ボウワー,ダン・コールズ,タイレル・ローマックス,ブロディー・レタリック,ツポウ・ヴァアイ,ルーク・ジェイコブソン,アーディ・サヴェア(バイスキャプテン),ホスキンス・ソツツ,アーロン・スミス(キャプテン),リッチー・モウンガ,レスター・ファインガアヌク,ボーデン・バレット,リエコ・イオアネ,ウィル・ジョーダン,ジョルディ・バレット
(リザーブ)
アサフォ・アウムア,イーサン・デグルート,アンガス・タアアヴォ,ジョシュ・ロード,アキラ・イオアネ,ブラッド・ウェバー,ルーベン・ラヴ,ロジャー・ツイヴァサシェック

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