見出し画像

<ラグビー>アイルランド対オールブラックス、イングランド対オーストラリア、プレビュー

アイルランド対オールブラックス

日時:2021年11月13日(土)15:15キックオフ
場所:アヴィヴァ・スタジアム、ダブリン
レフェリー:ルーク・ピアース(イングランド)
アシスタントレフェリー1:マシュウ・カーレイ(イングランド)
アシスタントレフェリー2:クリストファー・ライドレイ(イングランド)
TMO:トム・フォーレイ(イングランド)

オールブラックス:( )内はキャップ数。
ジョー・ムーディ(55)、コーディ・テイラー(65)、ネポ・ラウララ(38)、ブロディー・レタリック(90)、サムエル・ホワイトロック(130,キャプテン)、イーサン・ブラカッダー(8)、ダルトン・パパリイ(11),アーディ・サヴェア(57)、TJ・ペレナラ(77)、ボーデン・バレット(100)、セヴ・リース(16)、アントン・リエナートブラウン(55)、リエコ・イオアネ(45)、ウィル・ジョーダン(11)、ジョルディ・バレット(34)
(リザーブ)
ダン・コールズ(78)、カール・ツイヌクアフェ(24)、タイレル・ローマックス(13)、ツポウ・ヴァアイ(10)、アキラ・イオアネ(11)、フィンレイ・クリスティー(5)、リッチー・モウンガ(30)、デイヴィット・ハヴィリ(13)


アイルランド:( )内はキャプ数。
アンドリュウ・ポーター(38)、ローナン・ケラファー(14)、タデュク・ファーロング(50)、イアイン・ヘンダーソン(64)、ジェイムズ・ライアン(38)、カエラン・ドリス(10)、ジョシュ・ファンデルフリアー(33)、ジャック・コーナン(21)、ジャミソン・ギブソンンパーク(11)、ジョニー・セクストン(100,キャプテン)、ジェイムズ・ロウ(7)、バンディー・アーキ(32)、ギャリー・リングローズ(35)、アンドリュウ・コンウェイ(26)、ヒューゴ・キーナン(14)
(リザーブ)
ロブ・ハーリング(22),、キアン・ヒーリー(110)、フィンレイ・ビールハム(17)、タデュク・バーニー(23)、ピーター・オマーニー(77)、コナー・マリー(90)、ジョエイ・カーベリー(25)、キース・アールズ(94)

プレビュー:
オールブラックスのイアン・フォスター監督は、ふがいない勝利だったイタリア戦については、若手の経験値を増やすことと選手層の厚みを増すという観点から、ポジティブに捉えている。ただし、ハイボール処理のミスやラッシュアップディフェンス対応ができなかった選手については、評価を下げざるを得ないものとなった。

この試合で脳震盪となったSHブラッド・ウェバーは、スコッドから外れることとなり、急遽NZからアーロン・スミスを招集した。しかし、アイルランド戦には間に合わず、最終のフランス戦でのメンバー入りが想定されている。とはいえ、この試合で先発するTJ・ペレナラとリザーブのフィンレイ・クリスティーが好調を維持しているので、スミスのプレーはないかもしれない。

不満の残るイタリア戦でアピールできたのは、16番HOダン・コールズと11番WTBセヴ・リースの2人だけとなった。また、CTBデイヴィット・ハヴィリは、ザ・ラグビーチャンピオンシップの後から調子を落としている一方、リエコ・イオアネが13番CTBとして好調なため、ウェールズ戦で13番だったアントン・リエナートブラウンが12番に移動し、リエコを13番に入れた。また、この関係で空いた11番にリースが滑り込めたとも言える。

その他のポジションは、完勝したウェールズ戦のメンバーと同じになっており、注目されたSOの先発争いもボーデン・バレットが10番、リッチー・モウンガがリザーブ22番となった。LOのリザーブは、ツポウ・ヴァアイとジョシュ・ロードの2人だけしかいないが、さすがに経験値の多いヴァアイが19番に入った。

フォスター監督は、「(BKの変更は)コンビネーションを考慮した結果だった。また、これまでと異なることに挑戦することと、チームにとって少し変えることが良いと考えた」、「アイルランドは、今シーズンのシックスネーションズや先週の大勝した日本戦からわかるように、チームが強化されていることに注目している」、「アイルランドのホームに大観客を集めてのゲームとなるので、我々には大きくわくわくするようなモチベーションになっている」と述べている。

アイルランド代表のアンディ・ファレル監督は、新興勢力の日本を木っ端みじんに叩きのめしてチーム力の強さを確信できたと思う。そして、このオールブラックス戦に向けて、勢いを得ることもできた。

先発の交代は最小限の1人だけとなった。4番LOイアン・ヘンダーソンと19番タデュク・バーニーでローテーションした。リザーブは,前週の日本戦で初キャップを得たHOダン・シーハンに代えて,16番にロブ・ハーリングを入れた。その他は日本戦から変更はない。

通算対戦成績は、1905年以来、オールブラックス29勝、アイルランド2勝、1引き分け。直近の対戦は、2019年RWC準々決勝で、オールブラックスが46-14で圧勝した。

これまでオールブラックスにとってアイルランドは,負けなしの安全パイのチームだったが,最近は2敗しているように,楽観視できない相手になっている。また,ウェールズ戦に完勝としたとはいえ,相手が1.5軍メンバーだったことを考慮すれば,オールブラックスにとってこのアイルランド戦が,Aチーム同士による北半球チームとの最初の真剣勝負になる。

そのため,両チームともに現時点での最強チームを編成し,互いに長所短所を知り尽くしていることから,ザ・ラグビーチャンピンシップのワラビーズやスプリングボクス戦に次ぐ,ライバル同士の好ゲームが期待できそうだ。

アイルランドは,元々FW戦とPGで勝ってきたチームだが,NZ人のジョー・シュミット前監督によって,パス&ランでも得点できるチームに成長し,前週の日本戦でもその変身ぶりを遺憾なく発揮した。しかし,そうしたゲームでは一日の長があるオールブラックス相手には,さすがに日本戦のような,SOジョナサン・セクストンが自由自在に動けるゲームはできないだろう。そして,オールブラックスのSOは世界NO.1かつ引き出しの多さでは北半球のSOの比ではなく,さらに自らのスピードとステップは超一流というボーデン・バレットだ。

また,アイルランドのBKには,オールブラックス入りの可能性が消えたため,活躍の舞台をアイルランドに移した11番WTBジェイムズ・ロウや12番CTBバンディー・アーキがいることからは,単純にオールブラックスの方がレベルは上だと言える。さらに,リザーブを比べれば一目瞭然で,リッチー・モウンガは,世界NO.2のSOであり,デイヴィット・ハヴィリは,オールブラックスでなければ,先発メンバーの一員として動かせないBKの選手になっているスキルの高い選手だ。

FWも,アイルランドは重量級のFWを揃えているが,BKレベルのハンドリングスキルの高い選手はいない。オールブラックスのリザーブの16番HOダン・コールズは,BKのようなステップとパスを屈指する他,20番FLアキラ・イオアネはセブンズでも活躍した能力を持っている選手だ。さらに,トライゲッターとなる両WTBセヴ・リースとウィル・ジョーダン,さらにハイボールに強いだけでなく,SOもできるパス&ランの能力に加え,正確かつ距離の出るゴールキッカーであるFBジョルディ・バレットは,北半球でプレーしていたら,とっくにスーパースターになっている選手だ。

こうした点を比較すればわかるように,普通に戦えばオールブラックスに負ける余地はない。しかし,テストマッチには普通でないことが起きる。もし普通でないことが起きても,オールブラックスが柔軟性を発揮して勝てば,今シーズンの成長は確実になり,2023年RWC優勝がより近づいたと言える。


イングランド対オーストラリア

日時:2021年11月13日(土)17:30キックオフ
場所:トウィッケナム、ロンドン
レフェリー:ヤコ・パイパー(南アフリカ)
アシスタントレフェリー1: AJ・ジェイコブズ(南アフリカ)
アシスタントレフェリー2:ピエール・ブロウセット(フランス)
TMO:スチュアート・ベリー(南アフリカ)

オーストラリア・ワラビーズ:
アンガス・ベル、フォラウ・ファインガア、ジェイムズ・スリッパー、ロリー・アーノルド、アイザック・ロッダ、ロブ・レオタ、マイケル・フーパー(キャプテン)、ロブ・ヴァレティニ、ニック・ホワイト、ジェイムズ・オコナー、トム・ライト、ハンター・パイサミ、レン・イキタウ、アンドリュウ・ケラウェイ、カートリー・ビール
(リザーブ)
トール・ラトゥー、トム・ロバートソン、オリヴァー・ホスキンス、ウィル・スケルトン、ピート・サム、テイト・マクダーモット、ノア・ロレシオ、イザイア・ペタイア

イングランド:
エリス・ジェンジ、ジェイミー・ジョージ、カイル・シンクラー、マロ・イトジェ、ジョニー・ヒル、コートニー・ロウズ、サム・アンダーヒル、トム・カリー、ベン・ヤングス、マーカス・スミス、ジョニー・メイ、オウウェン・ファレル(キャプテン)、ヘンリー・スレード、マヌー・ツイランギ、フレディー・スチュワード
(リザーブ)
ジェイミー・ブラミアー、ベヴァン・ロッド、ウィル・スチュアート、チャーリー・イーウェルズ、アレックス・ドンブランド、サム・シモンズ、ラフィ・カーク、マックス・マーリンズ

プレビュー:
オーストラリア・ワラビーズのデイヴ・レニー監督は、スコットランドに想定外の敗戦をしたことが痛い。やはりSOクエード・クーパーの存在は大きかったように思う。さらに、右PRアラン・アラアラトアとタニエラ・ツポウの2人が、前週の惜敗したスコットランド戦で脳震盪となり、症状は治まっているものの頭痛が残るため、欠場となった。いきなり右PR2人がいなくなったため、本来左PRのジェイムズ・スリッパーを3番PRに入れた。スリッパーの右PRは、2012年のオールブラックス戦以来となるが、ブランビーズでは右PRでプレーしているので、レニーは心配していない。

また、リザーブの18番には、初キャップとなるオリヴァー・ホスキンスを入れた。さらに、リザーブの17番PRにトム・ロバートソンが入り、16番HOには、2019年RWC以来となる、トール・ラトゥーが入っている。

その他では、15番FBにはジョーダン・ペタイアがハムスリングスで欠場するため、久々となるカートリー・ビールが先発し、スコットランド戦でFBだったアンドリュウ・ケラウェイは、本来の14番WTBに戻った。10番SOは、引き続きジェイムズ・オコナーが先発し、22番SOにノア・ロレシオが戻ってきた。クエード・クーパーの活躍で、陰に隠れたしまったロレシオだが、ここでの巻き返しを期待したい。ペタイアに代わり、23番にはイザイア・ペレーゼが入っている。

レニー監督は、「トウィッケナムは、最も手強いスタジアムの一つなので、我々は興奮している」と、イングランドへのリベンジに意気込んでいる。

イングランドのエディー・ジョーンズ監督は、先週のトンガ戦直前にSOオウウェン・ファレルがCOVID19陽性となってしまい、プレーできなくなったが、再検査の結果陰性となり、ワラビーズ戦には間に合った。そして、12番CTBのキャプテンとして先発させる。

10番SOには、トンガ戦で良いゲームを見せたマーカス・スミスを起用した。ジョーンズ監督は、将来性高いスミスにティア1との試合を経験させたいとしている。また、本来CTBのマヌー・ツイランギを14番WTBで先発させる。ツイランギは、2014年6月にNZダニーデンでオールブラックスに27-28で負けたゲーム以来の、2試合目のWTBとなるが、ジョーンズ監督は、ツイランギは11~14番のどこでもプレー可能だと気にしていない。

リザーブには、初キャップとなる17番PRベヴァン・ロッドと22番SHラフィ・カークが入った。また、リザーブはFW6人+BK2人となっており、SOはスミスとファレルに加えて、13番CTBヘンリー・スレードの3人でカバーする想定となっている。

ジョーンズ監督は、「世界チャンピオンである南アフリカに連勝したチームと対戦する」とワラビーズを警戒している。

イングランドは、2091年RWC準々決勝の40-16をはじめ、オーストラリアとの直近7試合を全勝しており、オーストラリアが最後に勝ったのは、2015年RWCのプールマッチまで遡る。

ワラビーズが強力FWのイングランドに対して、セットプレー(特にスクラム)の要となる右PRに怪我人が出て、不慣れな選手を先発とリザーブに起用することとなったため、これだけでワラビーズにとって致命傷になる可能性がある。また、これを見越したように、イングランドのジョーンズ監督は、若いマーカス・スミスを敢えて先発SOに入れて経験を積ませようとしているので、既に完勝という臭いをかぎつけているのかも知れない。

イングランドには、良いWTBが他にもいるなかで、フィジカル自慢のツイランギをWTBにしたことは、ワラビーズの両WTBにフィジカルで勝てるとの計算があったものと思われる。また、FWのリザーブを6人にしていることから、ジョーンズ監督はFW戦で勝負をかけるものと思われる。

対するワラビーズのレニー監督は、SOクエード・クーパー不在が影響してスコットランドに負けた上、右PR2人の欠場で窮地になっている。経験値の高いカートリー・ビールをFBに入れたものの、前週のスコットランド戦同様に、長期にわたってチームから外れていた選手が、いきなりチームに馴染むには時間がかかる。そういう点では、LOのアイザック・ロッダとウィル・スケルトンの2人には、2試合目となるので、イングランドFWに対抗することが期待できるが、イングランドがハイパント戦術を屈指してきた場合、ビールのハイボール処理にミスが出るようなら、イングランドの想定通りの試合運びが出来て、またもやジョーンズ監督が高笑いすることになりそうだ。

ワラビーズとしては、FW戦でイーブンの戦いが出来れば、得意とするBK勝負に持ち込める。また、イングランドのSOスミスに負けないくらいの才能がある若手であるノア・ロレシオが、NZ勢との戦いで得た貴重な経験値を発揮して、スミスの鼻を明かすようなプレーを見せてもらいたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?