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【かんたん量子力学⑫】量子生物学

みなさん、こんにちは!この記事は、ふしぎな小さな世界を探求するする「かんたん量子力学」シリーズの第12回目です。私たちの目には見えない、原子よりもっと小さな世界では、とってもびっくりするようなことがたくさん起こっています。このシリーズでは、そんな不思議な世界について理解を深めていきます。


はじめに

今回は「量子生物学」という、生き物の不思議を新しい目で見る研究について紹介します。

量子生物学って何?

量子生物学は、生き物の中で起こっている小さな世界の出来事を、量子力学という物理学の考え方で説明しようとする新しい分野です。簡単に言えば、生き物の中にある「量子の不思議」を探る研究なんです。

これまで私たちは、量子力学は目に見えないとても小さな世界の話だと思っていました。でも、実は私たちの身の回りの生き物たちの中でも、量子の力が働いているかもしれないんです。それを調べるのが量子生物学なんですね。

量子生物学の面白い例

では、具体的にどんなことを研究しているのか、いくつか例を挙げて説明しましょう。

1. 光合成と量子コヒーレンス

植物が太陽の光を使ってエネルギーを作る「光合成」。この過程で、量子の力が働いているかもしれないんです。

光合成では、光を吸収してエネルギーを運ぶ分子があります。この分子の中で、エネルギーがどう伝わるかを調べると、まるで量子の世界でよく見られる「重ね合わせ」のような現象が起きているんです。これを「量子コヒーレンス」と呼びます。

例えるなら、エネルギーが一つの道だけでなく、複数の道を同時に通っているようなものです。この方が効率よくエネルギーを運べるんですね。植物は、この量子の力を使って、とても効率よく光合成をしているのかもしれません。

コヒーレンスについての補足説明

「コヒーレンス」という言葉は、「まとまり」や「調和」という意味があります。量子の世界では、波のようなものが「まとまって」動く状態を指します。

身近な例で説明すると、コヒーレンスは合唱団のようなものです。合唱団では、みんなが同じリズムで、調和して歌います。これが「コヒーレント」な状態です。一方、雑踏の中のおしゃべりは、みんながバラバラに話していて、「インコヒーレント」(まとまりのない)状態といえます。

量子コヒーレンスでは、粒子や波が互いに関係を保ちながら、まとまって振る舞います。光合成の場合、エネルギーを運ぶ分子たちが、まるで息を合わせて動いているような状態になるんです。これによって、エネルギーをスムーズに、効率よく運べると考えられています。

普通なら、分子の中をエネルギーが伝わるときに、いろいろな障害にぶつかってエネルギーが減ってしまいます。でも、量子コヒーレンスが起きていると、まるで障害物をスイスイ通り抜けるように、エネルギーが効率よく伝わるんです。

このように、「コヒーレンス」は、量子の世界で粒子や波が協調して動く様子を表す重要な概念なんです。

2. 鳥の方向感覚と量子もつれ

渡り鳥は、地球の磁場を感じて方向を知ることができます。でも、どうやって磁場を感じているのか、よくわかっていませんでした。

最近の研究で、鳥の目の中にある特別なタンパク質が、量子もつれという現象を使って磁場を感じているかもしれないという考えが出てきました。

量子もつれって、離れていても二つの粒子がつながっているような不思議な現象です。鳥の目の中で、この量子もつれが磁場を感じ取るアンテナのような役割をしているんじゃないか、と考えられているんです。

3. 酵素反応と量子トンネル効果

私たちの体の中では、たくさんの化学反応が起きています。その多くは「酵素」というタンパク質が手伝っています。

実は、この酵素の働きの中に、量子トンネル効果が関係しているかもしれないんです。量子トンネル効果は、普通なら越えられない壁を、粒子がすり抜けてしまうような現象です。

酵素反応の中で、水素原子が別の分子に移るときに、この量子トンネル効果が使われているんじゃないか、という研究があります。これが本当なら、私たちの体の中で、毎日たくさんの「量子の魔法」が起きていることになりますね。

量子生物学が教えてくれること

量子生物学の研究は、生き物の仕組みを新しい目で見ることができる、とてもワクワクする分野です。でも、まだまだわからないことがたくさんあります。

この研究が進むと、生き物がどうやって効率よくエネルギーを使っているのか、どうやって正確に化学反応を起こしているのか、もっとよくわかるようになるかもしれません。そして、その知識を使って、新しい薬や、自然の力を真似た新しい技術を作れるかもしれないんです。

例えば、光合成の仕組みを真似て、もっと効率のいい太陽電池を作ったり、鳥の方向感覚を参考に、新しいGPSシステムを作ったりできるかもしれません。

まとめ:量子生物学の未来

量子生物学は、まだ始まったばかりの若い研究分野です。でも、生き物の中に隠れている「量子の不思議」を探ることで、私たちの生命に対する理解がもっと深まると期待されています。

これからの研究で、もっともっと驚くような発見があるかもしれません。みなさんも、生き物の不思議を新しい目で見てみませんか?きっと、今まで気づかなかった「生命の魔法」が見えてくるはずです。

かんたん量子力学:シリーズ概要説明

私たちの身の回りには、スマートフォンやコンピュータ、LEDライトなど、最新技術を使った製品があふれています。これらの製品の多くは、「量子力学」という物理学の一分野に基づいて開発されています。量子力学は、私たちの目には見えない、原子やそれよりも小さな粒子の世界を記述する理論です。この世界では、日常的な感覚では理解しがたい不思議な現象が起こります。

「かんたん量子力学」シリーズは、この不思議で魅力的な量子の世界への探検の旅にご案内します。本シリーズは、社会人の学び直しを前提に量子力学を初めて学ぶ方から、より深い理解を求める方まで、幅広い読者を対象としています。


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