ノイズを楽しむ

ノイズキャンセリングの技術は年々向上しており、現在ではワイヤレスのノイズキャンセリングイヤホンが当たり前になってきているどころか、ノイズキャンセリング機能そのものを主機能とする耳栓代わりの商品まで登場している。

ノイズキャンセリングと私

私がノイズキャンセリングイヤホンと出会ったのは、もう10年以上も前になる。

2007年当時、使用していた『SONY WALKMANシリーズ』のMP3プレイヤー『NW-S718F』には、ノイズキャンセリング機能が搭載されていた。

しかしこの機能、付属のイヤホンを使用しないと機能しなかったのである。


そしてその付属イヤホンが、イケてなかった。


当時はaudio-technica社製のイヤホンやヘッドホンを愛用していて、音質そのものを優先させたかったため、購入時に一度使用したきりノイズキャンセリング機能を使うことはなかった。もちろん、その機能の良し悪しなど全く覚えていない始末だ。
(当時のSONYは音声圧縮規格だけでなく、こういうところも独自規格路線で進めていたっぽいことが離れる原因となったのだがそこは割愛)


そして2011年、改めてノイズキャンセリング技術に触れる。


『NW-S718F』はデバイスとイヤホンがセットとなった技術であったが、この頃になると、イヤホン単体でノイズキャンセリング機能を搭載したものが出回るようになっていた。

大学まで電車通学に縁が無かった私は、毎日の電車通勤の煩わしさに少しでも対抗すべくノイズキャンセリング機能付きのイヤホン『ATH-CKS90NC(多分これ)』を初めて購入した。

当時の技術ではまだまだ完全なノイズ消去とはいかないものの、電車のノイズがかなり低減されて驚いた事を覚えている。

当然『ATH-CKS90NC』のノイズキャンセリングの実力には十分利用価値を感じていた。

しかしながら、イヤホンがカナル型(私はインナーイヤー型派)だったことと、何より単四電池を使用しないとノイズキャンセリング機能が使えないということがとても煩わしく、使用頻度は徐々に減っていった。

使い勝手を求めてワイヤレスイヤホンを模索

2015年頃からは、音質よりも取り回しを重視して様々なBluetoothイヤホンを試す事になる。

以前は家でもヘッドホンやイヤホンを使用することが多かったのだが、この頃には、家ではスピーカー外ではイヤホンという使い方になったため、イヤホンに求めるところは音質よりも使い勝手が優先された。


そして2017年。『iPhone + AirPods』の組み合わせは衝撃的だった。


外で使う分には十分な音質でありながら圧倒的な使い心地。そしてワイヤレスイヤホンにしては珍しいインナーイヤー型。

以降、現在に至るまでお気に入りの製品となっている。

その後、『AirPods』発売から約3年、ノイズキャンセリング機能を搭載した『AirPods Pro』が登場する。


この時は相当悩んだ。


一度諦めてしまったノイズキャンセリング機能が、私史上使い勝手最高の製品に追加されたのだ。機能的には申し分ない。

が、未だ購入には至っていない。

先に少し触れたが、私はインナーイヤー型派だ。耳垢の特性上、カナル型は、、受け入れられない。

オープンイヤーイヤホンが教えてくれた『ノイズ』の心地よさ

そして現在。

普段使いには『AirPods』を使用しているのだが、散歩やジョグの際にはAfterShokz社の骨伝導オープンイヤーイヤホン『Aeropex』を併用している。

オープンイヤーイヤホンなるものを初めて使用したのだが、これには驚いた。

ノイズが聞こえるという心地良さ
耳を塞がない開放感

元々は、ランニング時に『AirPods』の落ちそうな不安感(実際は滅多に落ちない)が嫌で、スポーツ用のワイヤレスイヤホンを探していた。

その際に『Aeropex』を見つけ、骨伝導イヤホンは気にはなっていたけど使ったことがなかったので試しに購入してみたのだ。

オープンイヤー型は、外部の音がダイレクトに聞こえてくる。

実際、車や自転車の音がクリアに聞こえてくるため、危険を察知しながら安全に走ることができる。これはスポーツ用としては申し分ない性能なのだが、やはり特筆すべきはノイズを楽しめるということ。

一般的にイヤホン自体の優先度は「音楽>環境音」なのに対し、オープンイヤー型イヤホンは「音楽<環境音」である


この優先度の違いが、思いのほか良かった。


街や自然の中を歩いている際、BGMやラジオを流しながらでも様々な環境音を楽しむことができる。皆がノイズとしてキャンセルしてしまう、川のせせらぎ、鳥のさえずり、子供達の話し声。

通常のイヤホンともイヤホン無しの状態ともまた違って、音のバランスがちょうどいい。


ノイズを消し去って音に集中することも良いが、たまには、ノイズ自体を楽しむというのもアリだと感じた今日この頃。

・・・

(追記)
↓ポッドキャストでも話しております。いつもどおり前談長めです。

【#118】ノイズキャンセリングも良いけど、オープンイヤーで環境音をベースに音楽などを楽しむというのも良きです。

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