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2021年1月の記事一覧

小説セラピー「風が聞こえる」(Aさんの物語)

小説セラピー「風が聞こえる」(Aさんの物語)

 思えば、人生は船旅に似ている。
 初めて乗った船は、まるで揺りかごのように私を優しく包み込みながら、この世界へと連れてきてくれた。大きくて、優しくて、だから私は安心して目を開けることができたんだと思う。
 目の前の世界は、美しかった。
 ただ、不思議なことに、私はここにいるのに、目の前の世界には私がいなかった。
 だから私は耳を澄ました。
 どこからか、私の声が聞こえないかと。
 旅は始まったば

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小説セラピー「父と金魚」(Sさんの物語)

 今だから言いますが、お父さん、私はあなたが嫌いでした。
 あなたはひどい父親でした。確かに戦争が始まる前のあなたは父として、一家の長として、そして私たち兄弟の遊び相手として立派だったのかもしれません。職場では慕われ、近所からは一目置かれ、なにより私たち家族から愛されていました。
 戦争があなたを変えたのでしょうか。
 あなたは開戦以後、極端に塞ぎ込んでしまいました。誰の言葉にも耳を貸さず、まだ幼

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小説セラピー「枯れ葉の上に」(サンプル)

 木枯らしの風が私の耳を痛めつける。
 仕事が終わり急いで家に帰ると、ポストにハガキが入っていた。
「……同窓会か」
 そこには年末にみんなで集まりませんか、と簡素な文書が印刷されているだけだった。小学校の同窓会に呼ばれたのは初めてだな、と思いながら私はそれを玄関のごみ箱に捨てた。
「ただいま」
 今年小学生になったばかりの娘が抱きついてくる。私はこの子が愛おしくて堪らない。
「ねえ、ママ、どうか

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