新型コロナウイルスに関係する内容の可能性がある記事です。
新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として 厚生労働省 首相官邸 のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
見出し画像

企業文化と意思決定

Executive Summary
この記事では、Googleの事例分析を通じて、企業文化と意思決定に関する考察をします。

3つの問い
1. 新しい価値観の中で人々に求められるプロダクトとは何か?
2. 企業が生き残るために必要な経営とは何か?
3. 企業や人々にとって理想の文化や働き方とは何か?

2つの分析 - Googleの事例
1. どのような企業文化があったか
2. どのような意思決定が行われたか

6つの企業文化
A. User First(ユーザー至上主義)
B. Best of Best(最高を目指す)
C. Don’t be evil(邪悪になるな)
D. Open & Free(オープン&フリー)
E. Data Driven(データ主導)
F. Long Term(長期的視点)

+ 60の意思決定の具体例

はじめに

こんにちは、Plug and Play VenturesのYuin(@yuintei)です。米国VCのベンチャーキャピタリストとして日本国内の投資を担当しています。

この記事の目的は、Googleの企業文化と意思決定を分析し、経営に関する様々な問いに答え、私たちが行動に移すための洞察を得ることです。読者は幅広く想定しています。経営者や投資家の方、現場で数多くの意思決定を行っているマネージャーや社員の方、新しい組織を立ち上げる方、新しい組織に移られる方などです。

本文に入る前に、なぜ私が「今」「Google」「企業文化と意思決定」を分析するかをご説明します。

なぜ今?

新型コロナウイルス感染拡大による世界的危機の中で、企業経営や人々の働き方に至るまで、様々な領域でパラダイムシフトが起きようとしています。その中で、次のような問いが立てられています。

3つの問い
・新しい価値観の中で人々に求められるプロダクトとは何か?
・企業が生き残るために必要な経営とは何か?
・企業や人々にとって理想の文化や働き方とは何か?

今このような問いに答えようとする取り組みに意味があると考え、この記事を執筆するに至りました。

2019年末には、共同創業者であるラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンが、Alphabetの最高経営責任者を退任することが発表されました。1998年の創業以来、20年以上にわたって同社やインターネット業界全体、スタートアップのあり方そのものにまで影響を与えてきた二人の決断は、一つの節目であると言えます。

これまで、Googleに関する多くの書籍が翻訳・出版されてきました。2000年代には、ジャーナリストがこぞってGoogle成功の秘密を解き明かそうとしました。2010年代には、エリック・シュミットやラズロ・ボックらのインサイダーが回顧録の位置づけで著書を出版しました。

同社に関して私たちが入手できる情報が出尽くした今、Googleに関する書籍は今後ほとんど出版されないでしょう。したがって、これまで出版された書籍を横断的に分析してエッセンスを抽出するには、今が良いタイミングであると考えました。

なぜGoogle?

一企業としてここまで影響力を持つ企業は他にないからです。ベンチャーキャピタリストとして仕事をする中で、スタートアップに対して問われる「Googleが似たような事業を始めたらどう戦うのですか?」という質問にしばしば遭遇します。この質問が妥当性を帯びるほど、ビジネスの世界においてGoogleという企業が持つ影響力は強大です。働きたい会社ランキングでは常に最上位に位置し、その企業文化や働き方は高い注目を浴びています。

研究開発の世界でも同様です。2019年末、Googleが量子コンピュータで量子超越性を証明したと発表がありました。計算科学の歴史を塗り替えるかもしれないとして、様々な議論が巻き起こされました。勤務先のシリコンバレー本社に出張中、Googleplex(本社ビル)を訪れる機会があったのですが、キャンパスにいる最中にこのニュースが発表され、衝撃を受けたことを覚えています。

私自身がGoogleという企業に魅了されているからというのも理由の一つです。仕事もプライベートも、Googleプロダクトなしの生活は考えられません。Googleプロダクトの進化は、現在進行形で続いています。その多くが、私たちの期待を超えるものです。彼らの企業努力によって、今後どれだけ豊かな世界が実現されるでしょうか。事業領域の全体像を見ても、ユーザーの一人として夢が膨らむばかりです。Googleという企業を深く理解することで、彼らが引き続き牽引するであろう情報革命によって、世界がどのように変わっていくか展望が見えてきます。

一方、Googleが批判の対象になることも少なくありません。肥大化したプラットフォーマーとして独占的な利益を享受している点は、他のBig Techと同様に指摘されています。創業者が大切にした思想を、創業者が去ったあとも永続的に守ることは可能なのでしょうか。

なぜ企業文化と意思決定?

私は、企業経営を次のような構造で捉えています。

企業は、経営が体現したものである
経営は、あらゆる意思決定の連続である
意思決定は、企業文化に影響を受ける
企業文化は、創業期の原型に影響を受け続ける

Googleの歴史や経営をテーマとした書籍は多く存在します。独自の企業文化を経営に具体化する過程として、様々な意思決定を事垣間見ることができます。

今日行うたった一つの小さな意思決定が、企業の運命を大きく変えるでしょう。企業を、無数の意思決定によってもたらされた経営の結果であると捉えた場合、Googleの成功は奇跡と言ってもよいはずです。同じように、全ての企業が、小さな意思決定の積み重ねによって奇跡を起こす可能性を秘めています。

意思決定の根幹をなすものとして、スタートアップから大企業に至るまで、企業文化に対する注目が高まっています。経営における企業文化とは、どのような位置づけでしょうか。

「文化は戦略を簡単に打ち負かす」と言われる。文化は組織の信念を表すもの、仕事に意義を与えるものだ。リーダーは当然、文化にこだわる。ベンチャー創業者は、どうすれば企業が大きく成長しても文化的価値観を守れるかを知りたがる。大企業の経営者は、文化を変革するツールとしてOKRやCFRに目を向け始めている。求職者やキャリアを伸ばそうとする人たちのあいだでは、自分にあった企業文化があることを最も重要な企業選びの基準とする傾向が広がっている。
ジョン・ドーア『Measure What Matters』
簡単に言えば、文化とは価値観と信念であり、企業内での仕事の仕方、その正しいスタガについての知識である。要するに強固で前向きな企業文化は絶対的に必要である、ということだ。...企業文化の価値観に従っている人、すなわち知的な企業市民は、同じような状況で一貫した行動を取る。これは経営者が堅苦しいルール、手順、規定から生じる非効率に悩まされずに済むことを意味する。...経営陣は、信頼の基盤となる共有の価値観、目標、手法を開発し、育てていかなければならない。
アンディ・グローブ『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』

特に、創業初期の企業文化の醸成が肝心です。なぜなら、強固に作り上げられた企業文化は、将来にわたって影響を与え続けるからです。同時に、意図しない方向に醸成された企業文化を是正するのは極めて難しいとも言えます。

チームの文化はサワードウパンのようなものだ。スターター(創業者)がパン生地(新来者)に菌(文化)を植え付ける。イースト菌と乳酸菌(チームメンバー)が発酵(成長)すると、美味しいパン(チーム)のできあがりだ。スターターが強ければ、新来者が持ってくる望ましくない菌(文化)に耐えられる。
成功しているソフトウェア会社(Google・Apple・Microsoft・Oracle)を見ると、どの会社も全く異なる文化を持っていることがわかる。それは、創業者や初期の従業員が作った文化がルーツとなっているが、会社が成長・成熟する中で、その文化も進化・変化している。しかし、そのアイデンティティは失われることなく、プロダクトの開発方法・社員への接し方・競合との戦い方などのように、あらゆる側面に浸透しているのである。
ヴィントン・サーフ『Team Geek』
たいていの人が職を探す時に重視するのは、職務や責任、会社の実績、業界、報酬などだ。リストのずっと下のほう、おそらく「通勤時間」と「自由に飲めるコーヒーの質」の間くらいに「文化」が出てくるかもしれない。だがスマート・クリエイティブはリストの一番上に文化を持ってくる。実力を発揮するには、どんな環境で働くかが重要だとわかっているからだ。新しい会社やプロジェクトを始める時、検討すべきいちばん大切な項目が文化であるのはこのためである。
ジョナサン・ローゼンバーグ『How Google Works』

企業文化を浸透させ、継続的に人を巻き込むには、効果的な形で明文化する必要があります。

この種のミッションが個人の仕事に意味を与えるのは、それが事業目標ではなく道徳だからだ。歴史上極めて大きな力を振るった運動は、そこで求められたものが独立であれ平等な権利であれ、道徳的な動機を持っていた。こうした考え方を拡張しすぎたくはないが、革命を起こすのは利益や市場シェアではなく理念だと行っていいだろう。
ラズロ・ボック『WORK RULES!』

とはいえ、失敗を避けるために当たり障りのない企業文化を明文化したり、覚えることも望めないような単語の羅列では意味がありません。

ちょっとした思考実験をしてみよう。あなたがこれまで働いたことのある会社を思い出し、そのミッションステートメントを言えるか、試してみるのだ。できただろうか?それを信じているだろうか。信頼できるか。会社と従業員の行動や文化をそのまま反映しているだろうか。...「当社の使命は、従業員の知識と創造性と献身を通じてお客様と比類なきパートナーシップを築き、価値を生み出し、それによって株主に最高の結果をお届けすることです」というのはどうか。何とも見事に必要事項をすべてそろえている。お客様、よし!従業員、よし!株主、よし!このミッションステートメントはリーマン・ブラザーズのものだった。少なくとも2008年に倒産するまでは。
エリック・シュミット『How Google Works』

たった2人のスタートアップから始まり、今や大企業となったGoogleも、企業文化を作り・浸透させ・維持することに苦しみながらも注力してきました。

シュミットは2007年5月、「去年一番頭を痛めたのは、規模の問題だった」と振り返った。「グーグルの成長はあまりに速い。急いで人を増やすと、それまでのやり方を見失う恐れがある。一つの本社にまとまっていないエンジニアの集団など、どうすれば上手く管理できるんだ?時差を乗り越えるにはどうすればいい?どうすれば企業文化を維持できるんだ?
エリック・シュミット『Googled』

分析の概要

資料に用いたのは以下の書籍です。

1. The Search(邦題:ザ・サーチ グーグルが世界を変えた)
2. The Google Story(邦題:Google誕生 ガレージで生まれたサーチ・モンスター)
3. Planet Google(邦題:プラネット・グーグル)
4. What Would Google Do?(邦題:グーグル的思考)
5. Googled(邦題:グーグル秘録)
6. In The Plex(邦題:グーグル ネット覇者の真実)
7. Team Geek(邦題:Team Geek Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか)
8. How Google Works(邦題:How Google Works 私たちの働き方とマネジメント)
9. Work Rules!(邦題:ワーク・ルールズ! 君の生き方とリーダーシップを変える)
10. Measure What Matters(邦題:Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR)

※原書の発売日順です
※記事中の出典は上記の番号に対応します

今回の分析は、次の仮説に立ちます。

Googleが成功したのは、優れた意思決定をしてきたからであり、その背景には優れた企業文化が存在する。

技術・運・タイミングなど、意思決定とは関係なく成功に寄与した要素もあるようにも見えます。しかし、これらも突き詰めると意思決定に起因していることが分かります。

技術:スケーラブルな技術チームを採用してきたという一連の意思決定
:運が巡ってきたときに実行に移せる体制を築いてきた一連の意思決定
タイミング:なぜ今この事業、なぜ今この戦略なのかという一連の意思決定

1. どのような企業文化があったか

Googleの企業文化がどのようなものかを知るための最も身近な方法は、「Googleが掲げる10の事実」を読むことでしょう。説明文の一言一句に、Googleが大切にする価値観が表現されています。2004年の上場時に株主に宛てて送られた「創業者からの手紙」にも、彼らの信念が色濃く現れています。

Google が掲げる 10 の事実

「Google がこの「10 の事実」を策定したのは、会社設立から数年後のことでした。Google は随時このリストを見直し、事実に変わりがないかどうかを確認しています。Google は、これらが事実であることを願い、常にこのとおりであるよう努めています。」

1. Focus on the user and all else will follow.

 ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる。
2. It’s best to do one thing really, really well.
 1 つのことをとことん極めてうまくやるのが一番。
3. Fast is better than slow.
 遅いより速いほうがいい。
4. Democracy on the web works.
 ウェブ上の民主主義は機能する。
5. You don’t need to be at your desk to need an answer.
 情報を探したくなるのはパソコンの前にいるときだけではない。
6. You can make money without doing evil.
 悪事を働かなくてもお金は稼げる。
7. There’s always more information out there.
 世の中にはまだまだ情報があふれている。
8. The need for information crosses all borders.
 情報のニーズはすべての国境を越える。
9. You can be serious without a suit.
 スーツがなくても真剣に仕事はできる。
10. Great just isn’t good enough.
 「すばらしい」では足りない。

これらの「10の事実」に、資料から読み取れる情報も加味した上で、私たちが企業経営において参考にできるよう6つの企業文化に一般化しました。

6つの企業文化
A. User First(ユーザー至上主義)
B. Best of Best(最高を目指す)
C. Don’t be evil(邪悪になるな)
D. Open & Free(オープン&フリー)
E. Data Driven(データ主導)
F. Long Term(長期的視点)

2. どのような意思決定が行われたか

リーダーにとって、意思決定ほど難しい仕事はない。「決断」の形容詞として「困難な」がよく使われるのはこのためだろう。...戦略を立て、最適な人材を採用し、ユニークな企業文化を醸成するというのはすべて、「意思決定」というあらゆる事業と経営者にとって最も重要な活動のための準備なのだ。
ジョナサン・ローゼンバーグ『How Google Works』

6つの企業文化は、あらゆる企業にとって普遍的なものでしょうか?
私たちの意思決定や企業経営には、どのように活かせるのでしょうか?

Googleの意思決定の事例(全60事例)から、紐解いていきましょう。

A. User First(ユーザー至上主義)

画像2

Google

マネタイズを急がない

「製品化へのロードマップについてはわかりました。でも、収益化へのロードマップはどうなっているのですか?」メイヤーの答えはけんもほろろだった。「そういう考えをしてはいけない」と彼女は言った。「私たちは、ユーザーのことだけを考えればいいんです。ユーザーが満足してくれれば、収益は後からついてくるものです」(6)

ユーザーにとっての理想を追求する

広告システムそのものに、広告の「品質」を管理する機能を組み込むという前代未聞の試みだ。より優れた広告を提供する広告主に経済的インセンティブを与え、効果の単価を下げる一方、不出来な広告の単価を高くするという形で罰則を科した。...ペイジとブリンは最初から、グーグルが広告を掲載するのはユーザーがそれらを役立つ機能と認めた場合に限るという理想主義的な考え方を持っていた。(6)
グーグルはすでに広告承認プロセスの導入を検討し始めていた。広告は掲載前に審査すべきだという点では社内の意見は一致していた。唯一の反対意見を述べたのはラリー・ペイジで、彼はユーザーを夢中にさせるには検索直後に一瞬で広告を表示させる必要があり、審査はその邪魔になると主張した。それに審査に必要な労働集約的プロセスは、グーグルらしいスケーラビリティの考えと相容れないものだった。(6)

優れたサポートではなく優れた製品に注力する

「グーグルには、より優れた製品を提供すればあれこれ文句を言ってもユーザーはそれを使うはずだという強い信念がある」とグリフィンは言う。「サポートがないことが気に入らなかったり、誰かと直接話しをしたいと思うこともあるかもしれない。だからといって利用をやめたりする?より優れた製品を作り出している限り、サポートは差別化にはならない」(6)

ユーザーにとって有益な製品を出し続ける

社内の人間でさえ全てを把握するのは至難の業だった。...ブリンとペイジにとっては、こうしたペースの速さに社員が注意を乱されたり、混乱したり、あるいは莫大なコストが掛かったりするとしても、ユーザーのメリットになるサービスを提供するという第一義的な目標を優先する必要があった。彼らはしばしばグーグルは自らの限界を超えてしまったのでないかとか、あまりに多くの敵を作りすぎではないかと尋ねられることがあったが、自分たちの決定基準は収益でも、広告主でも、あるいは社員ですら無いと答えた。(6)

ユーザーの価値向上を最優先にする

リック・クラウはユーチューブのプロダクト・マネージャーとして、世界第三位のアクセス数を誇るサイトのトップページを担当していた。当時問題だったのは、サイトにログインするユーザーの割合が極めて低かったことだ。ログインしないと、動画を保存する、チャンネルに登録すると言ったユーチューブの重要な機能を使えない。つまり世界中の何億人というユーザーが、ユーチューブの利用価値をほとんど理解していなかったのだ。...カマンガーはグーグルCEOのラリー・ペイジに相談した。ペイジはログインに関する目標を、グーグルの全社OKRに採択することを了承した。(10)

ユーザーの要望を聞く

Gメールの第一世代のユーザーにとって、...メールをどう管理するかを他人に指示されたくはなく、感情をストレートに表した。...後に、Gメールチームの誰もが「家族や友人、あるいはパーティで出会った見知らぬ人にGメールの仕事をしていることを話すと、決まって『削除ボタンが欲しい。わからないのかい?削除ボタンが欲しいんだ』と言われた」経験があると振り返った。この問題の解決は実に簡単だった。削除ボタンが追加されたのである。(3)

B. Best of Best(最高を目指す)

画像3

Google

最高の人材獲得を目指す

ペイジとブリンは、グーグルを成功に導くには、世界でトップレベルのエンジニアや科学者を集結させる必要があるという強い信念を共有していた。彼らの野心的なビジョンに全身全霊を捧げてくれるような専門家集団だ。何らかの方法でそうした専門家集団を特定し、グーグルのような新興企業に来てもらえるように説得する必要があった。(6)
...人格と同じくらい重要なのは、候補者がおもしろい人物かどうかだ。同僚と一緒に、ロサンゼルス国際空港(LAX)で六時間足止めを食らったとしよう。その同僚と楽しく会話をしながら過ごせるだろうか。有意義な時間になるだろうか。それとも退屈な相手との会話を避けようと、さっさと機内持ち込み荷物を明けてタブレットを取り出し、メールなどのチェックを始めるだろうか。...グーグルでは面接のフィードバック・シートの四つのセクションの一つとして「グーグルらしさ」という項目を設け、LAXテストを採用プロセスの中に正式に取り込んでいる。(8)

スピードを重視する

病的な短期なせいか、それともスピードが製品の成功に不可欠な要素であることを以前から確信していたためかは定かではないが、ペイジはグーグル創業当初から開発中のあらゆる製品やサービスにより速いスピードを要求した。...グーグルのログの解析結果はまさにスピードへの執着が正しいことを裏付けた。...スピードが上がれば、利用頻度も増えることが明らかになっている。...スライドショーが3倍速く動くようにすると、改善策について発表があったわけでもないのに、実施当日の「ピカサ」サイトのトラフィックは40%増加した。(6)

常識を疑う

...グーグル独自の理想的なブラウザを開発できないかという会話も始まっていた。ピチャイのチームは、今の世代のブラウザには欠陥があると考えていた。...今やウェブはブラウザを通じて閲覧できる情報を掲載するだけでなく、アプリケーションを実行するプラットフォームとして機能することを期待されていた。...グーグルのエンジニアたちは、まったく新しいブラウザとはどんなものになるべきか非公式に議論し始めた。(6)

目標を10倍大胆にする

...Gメールの例を考えてみよう。それまでのウェブベースのメールシステムの最大の問題はストレージの少なさで、通常は2〜4メガバイトしかなかった。新しいメールを受け入れるスペースを開けるため、ユーザーは古いメールを削除しなければならなかった。...Gメールを開発する過程で、グーグルのリーダーたちは100メガバイトのストレージを提供することを検討した。飛躍的なサービス向上だ。しかし2004年にプロダクトが一般にリリースされた段階では、100メガバイトの目標は消滅し、忘れ去られていた。というのも1ギガバイトのストレージを提供することにしたからだ。(10)

社員に最高の待遇を与える

理想的な職場とはその社員だけが享受できる特典をたっぷり与え、圧倒されるほど大量の知的指摘を提供してくれる場所であるべきだという創業者たちの信念...その省庁となったのが食事の無料サービスだ。健康的な食事をたっぷり取りながら、社員同士が心を通い合わせて仕事に関する革新的なアイデアを共有する。(6)

専門領域で最高を目指す

グーグルは1990年代末、検索プラットフォームを拡大するために、たった一つのことに集中した。最高の検索サービスの実現である。その指標として5つの軸を設けた。①スピード②正確性③使いやすさ④網羅性⑤鮮度である。グーグルはユーザに正しい答えを届けることにところんこだわっていたため、ユーザの回答に不満があるときはライバルの検索サイトですぐに検索できるように、検索結果のページの一番下にはヤフー、アルタビスタ、アスク・ジーブスなどへのリンクが表示されることもめずらしくなかった。(8)

全社員で最高の面接を行う

グーグルでは「信頼できる面接官プログラム」を立ち上げた。本当に面接がうまく、それが好きな人ばかりの精鋭チームで、面接の大部分は彼らがこなす(その結果として、パフォーマンス・レビューでは高い評価を受ける)。...この結果、面接をすることは面倒な仕事ではなく特権になり、全社員に面接の質が底上げされた。(8)

制約を超えて最適な役割を与える

とびきり価値のある人材については、その利益を組織の制約より優先しなければならない。スタンフォード大学を卒業すると同時に、共同創業者たちに採用されたサラー・カマンガーが良い例だ。サラーはアドワーズの開発に貢献し、その後プロダクト部門で数年間働いた。ただサラーをゼネラルマネジャーに昇進させ、責任を拡大すべきタイミングになったとき、社内にふさわしいポストがなかった。そこで経営陣は彼のためにユーチューブの責任者という新たな役割をつくった。(8)

C. Don’t be evil(邪悪になるな)

画像4

Google

信念を貫き困難な道を選ぶ

当時、ウェブサイトを運営していた人々の多くは、技術的に洗練されているとはいえなかったので、自分たちのサイトがクローラにアクセスされるとびっくりした。スタンフォード大学のアドレスから頻繁にアクセスされていることを知って、大学が自分たちから情報を盗もうとしているのではないかと疑う人もいた。...そんなことがあった後でさえ、ペイジとブリンは膨大な人口に奉仕するためには自動化された大規模なシステムが必要であるという信念を曲げなかった。手作業で除外リストを作成するなどというのは邪道以外の何物でもなかった。(6)
「ジュー・ウォッチ」という反ユダヤ主義のウェブサイトをめぐり...小さな危機が降りかかった。グーグルの検索窓に「Jew」という単語を入力すると、検索結果リストの戦闘に表示されるのがたいてい、この差別的なウェブサイトだったのだ。「ジュー・ウォッチ」を検索結果から除外すべきだという批判が高まった。...自分の個人的な哲学に基づいて検索結果を操作することは許されないと、ブリンは結論づけた。「自分の思想信条を押し付けるべきでないと思う。テクノロジーの世界では、そういうやり方はよくない。」(6)

顧客に不利益を被らせない

...異なる入札モデルを考案した。落札者に入札価格をそのまま支払わせるのではなく、時点の入札額より1セントだけ多く払ってもらうという方式だ。たとえば、ジョーが10セントで入札し、アリスが6セント、スーが2セントだった場合、落札するのはジョーで実際の支払い単価は7セント。次点のアリスは3セント払って、2番目に有利な位置を獲得する。これで誰もが落札しても払いすぎる心配をせずに、入札に参加できるようになった。(6)

誤った判断を社員が防ぐ

この日エリックは、広告システムにある修正を加えることの是非を議論するミーティングに参加していた。その修正を加えれば、かなりの会社の収益に貢献する可能性があった。そこでエンジニアの中心メンバーのひとりが、拳でテーブルを叩きながらこういった。「こんなことはやるべきじゃない。邪悪になるぞ」。会議室は突然静まり返った。...それから長く、時には激しいやり取りが続いた末に、修正は見送られた。(8)

D. Open & Free(オープン&フリー)

画像5

RANDI LYNN BEACH / AP Images

危機時に無償開放する

東日本大震災が発生してすぐ、グーグルは被災者の安否情報を掲載する「パーソンファインダー」というウェブサイトを立ち上げた。...さらに、写真共有サービスの「ピカサ」を利用して、行方不明者の氏名が記された張り紙の写真をユーザーが撮影してオンライン上にアップできるようにした。...最終的に、このサイトには60万人を超す人の氏名が掲載され、多くの人が家族や親戚、友人の消息を知るのに役立った。また、グーグルはグーグルマップを活用して災害の記録を残した。 (6)

社員を前向きに卒業させる

APMプログラムは2年間。...私をさらに驚かせたのは、5年後にまだグーグルで働いているであろうと考えている人間が1人もいなかったことだ。マリッサ・メイヤーはその事実を冷静に受け止め、そもそも彼らを採用した理由もそうした野心にあると主張した。「それがラリーとサーゲイが社員に求める遺伝子なの」と彼女は私に言った。「彼らが社外に去ることが私たちの損失になるとは思わない。どこに言っても、彼らの中にはグーグルのDNAがある」(6)

社員との開かれた対話を定期的に行う

全世界の情報を集めて整理するというブリンとペイジのミッション...がすべてのグーグル社員に一体感をもたらしたことも確かだった。毎週金曜日の午後4時30分には「TGIF」と呼ばれる全社ミーティングが開かれた。...時間の経過とともにTGIFも変化し、もっと組織的で生産性の高い進行方向がとられるようになった。...TGIFのクライマックスは何といっても、どんな質問でも許される質疑応答の時間だった。質問は「ドリー」と呼ばれる社内ツールを使って集められ、社員のウェブ投票によって最も人気のある質問がいちばん上に表示された。ブリンとペイジは一見敵対的な質問にも平然と対応し、気を悪くすることなく真剣そのものの態度で回答した。(6)

一部のプロダクトを戦略的に無償提供する

グーグルアナリティクスとして知られる高機能の無料解析ツールに進化するまでには、まだ長い道のりが待っていた。...彼はペイジのところへ行き、サービスを無料にすることを提案した。...結局ペイジは折れ、2005年11月にグーグルアナリティクスはついにサービスを開始した。(6)
グーグルドキュメントには、マイクロソフトの製品にはない、ある大きな強みがあった。無料だったことである。...誰もがあっという間に熱心なユーザーと化した。...シレスの眼力の確かさは、はからずも最大のライバルによって証明された。2010年に、マイクロソフトはオフィスのオンライン版を無料で提供し始めたのだ。(6)
...2004年にネット上に画像を保存するサービスを提供するピカサというサンタモニカの企業を買収した。...グーグルの他のサービスと次第にシームレスに統合されていったこともあり、着実にユーザー数を伸ばした。ピカサに保存された数十億者画像はグーグルの機械学習のために利用された。フリッカーと違って、グーグルは「プロアカウント」に月額料金を請求することもなかった。(6)

オープンソースにする

2005年に「アンドロイド」という小さなモバイルOSの会社を買収したときも、それをオープンソースにすべきか否かをめぐり、経営陣で議論になった。アンディ・ルービンをはじめとするアンドロイド出身組は当初、クローズにすべきだと考えていたが、セルゲイはその逆を主張した。なぜオープンにしないんだ?アンドロイドをオープンにしたほうが、細分化されたモバイルOSの世界で一気にスケールすることができるじゃないか、と。...オープンソースを選択したアンドロイドは驚異的な成長を遂げ、そのおかげでグーグルはパソコンからモバイルへというプラットフォームの変化にスムーズに対応できた。(8)

なるべく制限をなくす

端末と一緒に回線契約が付いてくることを快く思う消費者はいない。それはグーグルらしくなかった。それよりも、グーグルが優れた携帯端末を開発し、SIMロックフリーにしたほうが賢いやり方ではないかとルービンはかなげた。そうすれば消費者は一つのキャリアに縛られず、端末と海鮮を自由に組み合わせられるようになる。...モバイルの世界によって良いことは、グーグルにとっても良いことなのだ。...グーグルの運営委員会はこのプランへの指示を表明した。(6)

改善案は現場に聞く

GMやエクソンのような企業ならネクタイを締めた人たちがずらりと並ぶ委員会を設置し、コンサルタントを雇って、「こうすることになった」と言って社員に指示を出すだろう。だがグーグルでは社員にこういった。「いちばんよくわかっているのは毎日現場で働いているみなさんだ。どこに無駄があるか教えてほしい」。このプロセスのためにウェブ上にツールを設け、社員を無駄遣い探しに参加させて、結果を報告させた。...「指示を書いたメモを渡されたわけでも、トップダウンで決められたわけでもない。皆が同じ価値を共有しているから、理解するのも早い。」(6)

フラットな組織を作る

管理職に直接報告する部下を最大7人に制限する「7人ルール」を導入している企業は多い。一方グーグルはその逆で、一部では最低7人としている(ジョナサン・ローゼンバーグがプロダクト・チームの責任者だったときには、直属の部下が20人もいた)。というのも、直接報告する部下が多いほど、組織がフラットであることを意味するからだ。(10)

社員に自由と期待を与える

上意下達の逆は、グーグルの実践する「20%ルール」かもしれない。これは技術者に週一日、本業以外のプロジェクトに自由に取り組むことを認める制度だ。2001年にはポール・ブックハイトが20%ルールに基づき、「カリブー」というコードネームのプロジェクトをスタートさせた。それは今、世界最大のウェブベースのメールサービス「Gメール」となっている。(10)

社員の不平不満を聞く

...その日のミーティングでは不平不満が飛び出す。ソフト開発者が使っているマシンが遅すぎる。マッサージのスケジュール管理用の社内オンラインカレンダーが使いづらい。本社近くに設置されている信号が切り替わるタイミングが悪く、通勤時に長く待たされる。日本向けのグーグルの地図で地名が英語に訳されていない。ペイジはどんな不平不満であっても、あまりに些細で訴えるのも気恥ずかしいのではと思われるような愚痴であっても、機嫌を損ねず我慢強く耳を傾ける。(3)

経営資料をオープンにする

全てを共有することを、自分のデフォルトにしてしまおう。グーグルの取締役会報告書が良い例だ。...毎四半期、エリックのチームは会社の現状についての詳細な報告書をまとめ、取締役会に提出する。...当然、こうした情報の大部分は一般に公表するようなものではない。だが取締役会が終わると、私たちはおよそ”当然”ではないことをする。取締役会に提出した資料を、全従業員と共有するのだ。(8)

全社員のOKRをオープンにする

もう一つ、透明性の具体例と言えるのがOKRだ。...すべての社員が四半期ごとに、自らのOKRを更新してイントラネットで公開することになっており、他の同僚がどんな仕事をしているかが簡単にわかる。...単に肩書と仕事内容の羅列ではなく、取り組んでいる仕事、大切に思っている仕事を自分の言葉でまとめたものだ。その社員が何にモチベーションを感じるかを確かめる一番手っ取り早い方法だ。(8)

E. Data Driven(データ主導)

スクリーンショット 2020-04-30 19.34.48

Getty Images

費用対効果の意識を徹底する

ブリンは社内で常に倹約をしており...アームストロングもすぐにその洗礼を受けた。あるとき、ファクスの購入を申請すると、設備担当部門の責任者から電話があり、「ラリーとサーゲイがどうしてファクスが必要なのか知りたがっている」と言う。...2人が次に知りたがったのは、ファクスのコストを正当化するだけの売上の見込みはあるのかということだった。(6)

必要なコストは惜しまない

グーグルが職場における生産性の阻害要因を取り除くためにたゆまぬ努力を続けていることだった。とりわけ彼が感銘を受けたのは、グーグルの会議室の利便性の高さだ。...社員が仕事以外に余計な労力を使わないようにあらゆる麺で配慮されていた。そうした努力により、数十万時間もの貴重な労働時間が節約されるのだ。...グーグルのこうした配慮は、他社では社員の貴重な労働時間を奪い、頭痛の種となっている様々な手続きや社内プロセスにも及んでいた。...グーグルは有意義なコストであると確信していた。(6)
...彼はユーチューブの当時の価値は6億〜7億ドルの間と見積もっていたという。...だが結局、買収額は16億5000万ドルまではね上がった。...「この企業は殆ど収益を上げていないが、ユーザーに受け入れられて急成長を続けており、その成長速度はグーグルが持っていたグーグルビデオというサービスを遥かに超えています。...「私たちは、ユーザーがユーチューブにもたらす成功に確実に関与できるように、迅速に行動するための付加部分も含めて16億5000万ドルという価格が妥当であると最終的に結論づけたのです。」(6)

データに基づいて製品開発の意思決定をする

それを実現する唯一の方法は具体的な数字を示すことだ。情報だけがエンジニアと同じ土俵で戦うことを可能にした。...「僕が言うんだから確かです」と言ってもなんの説得力もない。だからデータを使って彼らを説き伏せる必要がある。...「この新しいユーザー体験を導入したバージョンではページビューが11%増え、広告のクリック率も8%上昇した」といえばいい。データで武装すれば、製品に新機能を追加すべきかどうかを権力灯籠でなく数学的な計算に基づいて決定できるようになる。(6)

社員の最適な配属比率を決める

2005年頃から、グーグルはエンジニアたちの配属先を決める際に「70・20・10」という簡単な方程式を使い始めた。つまり、70%は検索か広告のどちらかの部門に、20%はアプリケーションのような重要な製品の開発に、そして残りの10%はそれ以外の何でもありのプロジェクトに配属された。...20%ルールの方がはるかによく知られていたが、エンジニアの配属先を決める「70・20・10」こそがグーグルの本当の魔法の方程式だった。(6)

OKRで定量的に人事評価する

グーグルが試したマネジメント手法の中でも、ベンチャーキャピタリストのジョン・ドーアが提案したアプローチは効果を発揮しているようだった。...グーグルにとって、定量化できるというのは大きな魅力だった。「グーグルはこれを採用した。それどころか、今や信奉しているといってもいいほどだ」とドーアは言う。...「数字の記載がなくては主要な成果とは言えない」とマリッサ・メイヤーは言う。OKRは野心に具体的な形を与えた...さらに、OKRはマネージャーだけでなく社内全体と共有されていた。...そこではペイジとブリンのOKRでさえ簡単に閲覧できた。...グーグルは2万人を超える大所帯になっても、社員の誰が何をしているか常に把握する能力を維持しようとしていた。(6)

データに基づき一度下した判断を覆す

陳はツールバーがユーザーに無視されているのは、それが何の価値も提供していないためだということに気付いた。そこで彼は、煩わしいポップアップのブロック機能をツールバーに追加する案を思いついた。...ブリンとペイジは...それを却下した。...だが陳はブロック機能を勝手に追加すると、それをこっそりペイジのパソコンにインストールした。その後しばらくすると、ペイジはブラウザの動作が速くなったと感想を述べた。...とにかく、これでペイジは疑念を捨て、機能追加を承認した。(その結果、ツールバーのダウンロード数は数百万回に達した)(6)
ブリンもあるアイデアにこだわり続けていた。加速度センサーを利用して、携帯電話を傾けるだけで連絡先リストを下にスクロールさせる機能だ。...だがエンジニアたちは、実際に便利というより、ユーザーにめまいを起こさせるだけだろうということを説明しようとした。「結局エンジニアに一度つくらせてみることになった」とエリック・チェンは言う。「良いユーザー体験ではないことをわかってもらうためにそれをサーゲイに見せた」。データを突きつけられたブリンは納得せざるを得なかった。(6)

社員の成功を定量的に評価する

グーグルアナリティクスがサイト運営者や広告主にアクセス分析の結果を提供しているように、人事部門は、「人事の決定に役立つデータ」を供給できるような数値指標を開発する。そのために「人事アナリティクスチーム」が設けられることになった。面接、採用、給与、勤務成績などの分野で実験とシミュレーションを繰り返し、グーグルの離職率に影響をもたらす要因を特定するために統計解析の方法論を確立する。(6)

道徳的な判断基準も定量化する

...経営陣は、道徳を数値化して判断を下そうとした。検閲の弊害と中国進出の利点を比較衡量することにより、結論を導き出そうとしたのだ。頭の中にバランスシートを作成し、損失の項目には検閲の要素を記し、利益の項目には、中国における情報流通の促進、インターネット利用の拡大、検閲を減らすという自社の決意などの要素を記した。その結果、総体的に考えれば、道徳上の「黒字」を計上できると判断された。シュミットの表現を考えれば、「邪悪度を検討した結果、中国で一切サービスを提供しない方がもっと邪悪だと考えた」のである。3人がそろって、中国進出にゴーサインを出した。(6)

トップが全社員のOKRを把握する

アンディ・グローブの考案した管理方法は概念的にはシンプルだが、その実行には厳格さ、熱意、明晰な思考、意識的コミュニケーションが必要だ。目標のリストを作って年2回チェックすればよい、といった単純な話ではない。...ラリー・ペイジは四半期ごとに丸2日を確保し、一人ひとりのソフトウェア技術者のOKRを自ら精査していた。...会社が大きくなっても、ラリーは四半期のはじめにリーダーシップ・チームの目標についてマラソン会議を開いた。(10)

切りのいい数字を目標にする

...ユーチューブ年次リーダーシップ・サミットの会場で、...壮大なストレッチ目標を発表するというのだ。「1日あたりのユーザーのソウシチョウ時間を10億時間にする」と(シンプルさには強いインパクトが有る。切りのいい数字というのはまさにそうだ)。...ただ10億時間というBHAGを設定して以降、何をするときでも必ず視聴時間への影響を検討するようになった。目標への進捗を遅らせるような変更をする場合には、その遅れがどのくらいか細かく見積もった。そのうえで実施前に社内的合意を得るようにした。(10)

仮説検証を繰り返す

まず仮設を立ててデータを収集し、その仮設を修正するというサイクルを繰り返すのだ。...「グーグルでのアイデアは、天才の頭から生まれて、受け入れてくれる膨大な数のユーザにすんなり届くものではない。それどころか、アイデアが生まれるとずたずたにされ、再定義されてはずたずたにされ、試作されてはずたずたにされ、社内ユーザー向けにリリースされてはずたずたにされ、再構築・再リリースされてはずたずたにされ、更に改良が加えられて(中略)リリースされ、そこでもやはりブロガーやジャーナリストやライバル会社によってずたずたにされるのだ。」(3)

採用委員会でデータに基づいた採用判断をする

このためグーグルでは、採用の判断を採用委員会で決定する仕組みを作った。誰かを採用するには、委員会の承認が必要だ。推薦者が誰であるかは関係ない。委員会の判断は縁故や誰かの意見ではなく、データにもとづいて決める。委員会のメンバーになる条件は、他の条件を一切排除して「会社にとって何が最適化」だけを基準に判断できること。それだけだ。(8)

まず自分たちで試す

わが社はまた「ドッグフーディング」という不適切な名前のついた、テクノロジー企業によく見られるテクニックを用いている。グーグラーが先頭を切って新製品を試し、フィードバックするのだ。ドッグフーダーは誰よりも早くわが社の自動運転車に試乗し、日常的な利用法について有益な意見を述べた。こうして、グーグラーは何が怒っているのかを学び、チームは早期の貴重なフィードバックを手にする。(9)

F. Long Term(長期的視点)

画像7

Getty Images

十分な議決権を確保する

グーグルの場合、一般投資家が買うクラスA下部には1株あたり1票の議決権があるが、ペイジやブリンのような創業者とグーグル幹部らに保有者が限定されたクラスB株には1株あたり10表の議決権が付与された。クラスB株の大部分はペイジとブリンとシュミットによって保有されていたため、株式保有数が全体の50%を下回った場合でも、ブリンとペイジは会社の意思決定権や支配力を失わずに済む。(6)

インフラのスケーラビリティを確保する

「彼らは私に、何をするにせよ、500台や5000台でなく、5万台のマシンに対応できるようにしておけと言ったんだ。ほんの2.3年でそのくらいの台数には達するので、大規模なスケーラビリティを実現できるように今からシステム構築をしておく必要があるとね。彼らの言う通りだったよ」(6)

マクロ動向を捉える

マイクロソフトは、グーグルがウェブベースのアプローチでデスクトップに縛られた従来型の製品を切り崩そうとすることを脅威に感じていた。だが、それこそまさにグーグルの取った戦略だった。...懐疑派は、「オフラインのとき(ネットにつながらない場合)はどうするんだ?」と彼を問い詰めた。シレスや彼の同僚たちからすると、それはきわめて近視眼的な質問だった。ある意味で、電気を使うのが悪いと言って電化製品を非難するようなものだ。彼らは当然のことながら、クラウドはいずれ電力と同じくらい全国のいたる所に普及するだろうと考えていた。(6)

サポートのスケーラビリティを確保する

...ペイジにもっと人を増やすように直談判した。彼はそれに対し、そもそもサポートが必要だという考え自体が馬鹿げていると答えた。「なぜそんなことをしているんだ?」と彼は言った。1人ひとりのユーザーの質問に直接回答するというまったく拡張性のない仕事をする代わりに、ユーザー同士で助けに合わせて、お互いの質問に回答させればいいじゃないか!...結局はペイジの提案を実行に移し、「グーグルヘルプフォーラム」と呼ばれるシステムが誕生した。...驚いたことに、このシステムはうまく機能した。(6)

競合がいても長期的な勝利を信じる

その年の前半、グーグルを売り込むために私のオフィスにプレゼンに来た2人のパワーポイントは、スライドわずか17枚。しかもそのうち数字が含まれていたのはたった2枚だ。...ウェブの検索エンジンとしては18番手と、かなり出遅れていた。スタート次点で競合企業とこれだけ差があるというのは、ふつうなら致命的であり、テクノロジーの世界ではなおさらだ。だがラリーはそんな現実などお構いなしに、既存の検索市場のお粗末さ、どれほど改善の余地があるか、今後どれだけの成長が見込めるかを熱心に語った。ラリーもセルゲイも事業計画などなくても、自分たちが最終的勝者となることを微塵も疑ってなかった。(10)

スケーラブルな仕組みを作る

ブリントペイジが世界中の情報の整理に乗り出したとき、二人は二つの基本事項を決めた。...一つは、検索結果の表示順を完全に数学的に決めることだ。グーグルではアルゴリズムが作り出した検索結果には「いかなる」人間も手を加えることはできない。...偏見なく検索結果を並べられる人間がたとえ存在したとしても、新たなウェブページが何百万、何十億と増えていくのに合わせてすぐに次々とーなおかつ安くー雇っていくことなどできない。...2つ目の基本事項...はウェブの拡大に合わせてグーグルのコンピュータを増やしていくということだ。グーグルの創業者二人は、物理的な制約で「すべて」を網羅するという野望を諦めたりはしないと心に決めていた。そのため、おそらく世界最大のコンピュータ群となるである大量のコンピュータをかき集めなければならなかった。(3)

採用では文化への適合を重んじる

Googleでは、文化の合致に明示的な手法を使っている。チームで働けそうになかったり、縦割りの環境が必要だったりする人には、面接者が赤いフラグを付けている。文化に合致しない人を採用すると、合致しない人をチームから追い出したり、合致する人を新たに探したりする手間がかかってしまう。いずれにしても、新しいメンバーがチームで上手く働けるようになるコストは高い。(7)

長期的なプロジェクトにはミッションステートメントを作る

数年前、GoogleがGoogle Web Toolkit(GWT)の開発をオープンソースプロジェクトに移行すると決めたとき...プロダクトが目指すこと(と目指さないこと!)を外部に知らせるために、ミッションステートメントが必要だとチームに伝えた。...ミッションステートメントを書くことで、認識の違いを明らかにし、プロダクトの方向性に合意した。ミッションステートメントを書かなければ、次第にプロダクト開発の速度が落ちていただろう。...チームがプロダクトに望むことをまとめることができただけでなく、将来的にコントリビュータとなってくれる人たちに何ヶ月も説明する必要がなくなった。これからは新来者に「Making GWT Better」を指し示すだけでいい。そこにほぼすべての答えが書いてある。(7)

可能性を見極め壮大な目標を立てる

グーグルXチームは新しいプロジェクトに取り組むかどうかを決める時、ベン図を使う。まず、それが対象としているのは、数百万人、数十億人に影響を及ぼすような大きな問題あるいはチャンスだろうか。第二に、既に市場に存在するものとは根本的に異なる解決策のアイデアはあるのか。...そして第三に、根本的に異なる解決策を世に送り出すための画期的な技術は(完全な姿ではなく、部分的なかたちでも)既に存在しているのか、あるいは実現可能なのか。(8)

総括

スクリーンショット 2020-05-02 19.10.17

冒頭の問いに立ち返ってみましょう。

3つの問い
・新しい価値観の中で人々に求められるプロダクトとは何か?
・企業が生き残るために必要な経営とは何か?
・企業や人々にとって理想の文化や働き方とは何か?

6つの企業文化、そしてそれらに基づく意思決定の数々の事例を見てきました。これからの時代、経営や現場に最も求めれるものは何でしょうか?

私は、ユーザー至上主義ではないかと考えています。

実際にGoogleにとっても、ユーザー至上主義は企業文化の中でも最も重要なものでした。

インターネットの世紀において、ユーザの信頼は、ドル、ユーロ、ポンド、円といった通貨と同じ価値があるとグーグルは考えている。企業が成功を続ける唯一の方法は、プロダクトの優位性を維持することだ。だからプロダクト戦略に関するグーグルの最も重視するルールはユーザに焦点を絞ることだ。ラリーとセルゲイがIPO時の創業者からの手紙に書いたように「エンドユーザに役立つことは、私たちの活動の中心であり、今後もナンバーワン・プライオリティでありつづける」
ラリー・ペイジ / セルゲイ・ブリン『2004 Founders’ IPO Letter』

特に創業初期は、プロダクトのユーザーから収益を上げるビジネスモデルではなかった(クライアントである広告主からの収益が中心だった)ため、直接的に利益をもたらさないユーザーの声を最優先するためには、ユーザー至上主義の文化を浸透させ、執着することが欠かせないものでした。

検索エンジンとして後発であったGoogleにとって、先行していた競合他社がクライアント(広告主)に迎合する姿勢を見せた中で、ユーザーを最優先として向き合い続けたことが、結果的に勝利への道となりました。創業者たちは、検索エンジンという熾烈な競争環境を勝ち抜くためには、必然的にユーザー至上主義が鍵となることを知っていたのです。

グーグルで「ユーザ」と言えば、私たちのプロダクトを使う人々を指す。一方「顧客」とはグーグルの広告枠を買ってくれたり、技術のライセンス契約を結んでくれる企業だ。両者の利益が対立することはめったにないが、対立が起きた場合、グーグルは常にユーザの側に立つ。業界を問わず、どんな企業もそうするべきだ。ユーザはかつてないほどの力を手にしており、質の低いプロダクトにはそっぽを向くからである。
エリック・シュミット『How Google Works』

彼ら自身がユーザー代表であった、つまり彼ら自身が欲しいと思ったプロダクトを作ったということも、この文化を醸成する背景となりました。

ユーザーに選ばれ続けなければ、長期的な成功を収めることは難しい。これはどのビジネスにも当てはまることでしょう。ユーザー至上主義が深く浸透し、社員が同じ方向を向いているとき、それはすなわち全てのステークホルダーの成功という正しい方向に向いていることを意味します。

最高のユーザー体験を実現する、世界を代表するような企業が、日本から今後さらに出てくることを願っています。私自身も、そのためにできることを続けていくつもりです。

Twitter
https://twitter.com/yuintei
Yuin's Notion for Entrepreneurs
https://www.notion.so/Yuin-s-Notion-for-Entrepreneurs-0fabcb14b29a4e72a8fb51ca258ab76c


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
ありがとうございます😊
28
ベンチャーキャピタリスト @ Plug and Play Ventures 米国VCの日本投資担当 ← Goldman Sachs | 投資領域 B2B SaaS Fintech Blockchain
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。