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「控えめ」がちょうどいい

さて、お稽古初日。

袱紗(ふくさ)、古帛紗(こぶくさ)、扇子、菓子切り、懐紙、袱紗挟み(ふくさばさみ)というお稽古に必要な6点セットを準備して、いよいよ本格的なお稽古が始まった。

この日は七夕。『平家物語』にも登場する乞巧奠(きこうでん)という七夕の原型みたいな行事があって、そこで梶の葉っぱに芸が上達しますようにとお願いごとを書いていた習わしにちなんで、梶の葉を使ったお手前が行われた。

水指(茶釜に入れたりお茶碗を洗うための水を入れておく容器)の上に、よく洗って水に浸した梶の葉を蓋のようにのせる。葉蓋点前(はぶたてまえ)というらしい。もちろんまだ私はお客さんとしてお茶をいただくだけなのだけれど、亭主の所作とともに濡れた葉っぱがつやつや光って、じっとりする暑さを忘れさせてくれた。

お菓子は織姫と彦星が描かれたカラフルでかわいらしい干菓子。外はあいにくの雨。2人はちゃんと出逢えるかなーと空の上を思いながら、2ついただく。

床の間には、そろそろ始まる祇園祭の船鉾が描かれた掛け軸と、先生が庭から採ってきたという草花。2種の細かな草花が散らされており(名前はなんだっけな…)その中心に要のように、ムクゲの花が一輪だけ。メリハリのきいた組み合わせ。こんなふうに生けられるのはもちろん、全てをお庭から調達できるというのも素敵だよなぁと眺めていると

「紫陽花も終わってしまい心配でしたが、なんとかお庭のお花でできてホッとしています」

と先生。いやいや素敵すぎます!とツッコミたくなるほどの謙遜ぶりだ。

加えて、茶道のお花は、満開に咲いているものは避けるのが基本だそう。ムクゲはそれほど気にしなくても良いが、華やかな椿などは特に気を遣うんですよ、と教えてくれた。

そういえば、お菓子を食べる時も、2、3切れに切って、ささっと手速く食べるのが良いらしい。細かく切ってゆっくり味わって食べるのが上品だと思いきや、そうじゃないのね。仰々しいのを嫌うというか。なんか、かっこいいな…。それって東京下町育ちの私的には「粋」と言いたくもなるが、少し違う気もする(いやいやかなり違いますよとも言われそうな…)

お花もお菓子も態度も。なんでも控えめがちょうど良い。

”映える”ことはいいことだ!”キャッチーな‘’ことはいいことだ!

的な時代において、この感覚はとても新鮮。けれど、これは一昔前には当たり前の感覚だったはず。この「控えめさ」に無性に惹かれるのは、たぶん私の中にある日本人のルーツ的ななにかがくすぐられるからなのかも。

🍵私は茶道の初心者です。ここでは茶道の作法やハウツーではなく、私が日々のお稽古で感じたことを綴っていきます。自分の備忘録として、また茶道に興味のある人やこれから茶道を心得てみたい人の少しの参考になればと思います。もしも情報部分での誤りがあれば教えてください。みなさんと一緒に学びを深めていけたらと思います🙇‍♀️



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