山茶花の花言葉は貴方が一番美しい
山茶花は散る。
街路の花が落ちているのを見た。色で椿かと思ったが、よく調べると椿と山茶花はそっくりらしい。
椿は丸ごと落ち、山茶花は開いて落ちる。地面に落ちた時、花がそのまま残っているのが椿で花弁が散っているのが山茶花。ちなみに葉は山茶花の方が一回り小さくとげとげしているようだ。
いや、分からんくない?
とりあえず、見たのは山茶花であろうと思い込んでいる。
椿と似ているせいで知名度が低く山茶花は目立たない。知るまで山茶花など気づかなかったが山茶花の花言葉は「困難に打ち勝つ」「ひたむきな愛」「愛嬌」「永遠の愛」「あなたがいちばん美しい」らしい。
随分綺麗な花言葉だと思ったら、冬の始まりに咲き、冬の終わりに散るからのようだ。困難に打ち勝ち、永遠の愛を誓うなんて素敵だと思う。
それが日本のあらゆるところに名も知らぬまま植えられているなんて少し不思議な気がしてならない。ほとんどの人間は道端に植えられている花に目なんて向けない。花言葉なんて、調べる人も少ないんじゃないだろうか。
ただ、ふと。目についた時。散った花弁がいつかの雨で浮いた姿が、深緑の葉が混じるその様が、綺麗だと思い足を止めたくなったのだ。
困難に打ち勝つ人生でありたいと思う。冬の厳しい寒さから抜け出し春の温かな日差しに歓喜の舞を踊り、夏の花火のように華やかに弾け、秋の夜長に目を伏せるような人生でありたい。
今の私の人生はきっとまだ冬のままで、春に向けて足を動かしているのだと思う。テーブルの上に置いた450円の苺パックから心ときめく春の匂いがする。鼻を掠める度に幸福の香りに笑みが零れる。
そんな、いつまでもときめく気持ちでいられるような日々でありたい。日常の有り触れた景色で変化に気づき、心躍る日々のまま生きていきたい。そうすると心に余裕を持ち続けなければならない。心に余裕を持つには金銭の余裕と精神の余裕が必要だ。
それが、どれほど難しいのか、大人になってから気づく。
花を愛でていたいし好きな食べ物を好きなタイミングで食べたい。太陽に目を細めていたいし月を見て美しさに涙を流していたい。私の人生は私だけの物で、誰かの肩を借りて幸福を得るのではなく、自分の手で掴んでいきたいのだ。
お姫様になってみたかったけど、選ばれるのを待つのではなく、選ぶ側になりたい。王子のポジショニングの方がいい。
ヒロインじゃなくヒーローになりたい。前に立ち仲間を助け手を伸ばす側でありたい。カメリアが落ちるのを見て、山茶花との違いを分かるようになりたい。
そんな、人生でありたい。
などと思いながらも新しい物語を紡ぎ出すのだ。