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フアランポーン駅の思い出。

バンコクから帰って来てしまった。
ここ数日の東京はバンコクに比べて涼しい気がする。
こっちの方が雨の時間が長いからかな。風も強いし。

次バンコクを訪れるのはいつになるだろうか。
チェンマイに行ったことがないので次こそは行こうと思っているが、そろそろ新しい国にも行ってみたい。
そう考えると、次のバンコクの見通しなんて立たない。

僕が初めてバンコクの地に足を踏み入れたのは、実は空港ではない。
フアランポーン駅だ。
当時、マレーシアのペナン島の対岸バタワース駅から直通の寝台特急が走っていた。
(今は国境駅で乗り換えないといけないらしい。マレーシア側の鉄道が電化して新型車両が走っているため)
だから僕にとってバンコクの最初の景色はフアランポーン駅だった。

それ以来、バンコクに行くと必ず立ち寄っていた。
この駅から僕はアユタヤやノンカイ、ウボンラチャタニにも行った。
タイ国鉄にはバスや国内線にはない旅情がある。
だから僕はタイ国鉄が好きだ。

そんなタイ国鉄の中心駅が来年をめどにバンスー新駅に移転するらしい。
移転後のフアランポーン駅は博物館としての利用が検討されている。
確かに駅舎築100年を超えているらしい。
第二次大戦中も連合国軍の爆撃を免れているのでその価値は十分にある。
でももしかしたら僕が次、この駅に来た時に列車の姿はないかもしれない。
全く違う景色になってしまっているかもしれない。

そう思って、今回も特に用事はなかったが来てしまった。

当時バタワースからの客車は2両しかなく、ハジャイで増結してバンコクに向かった。
食堂車で初めて食べたグリーンカレーはとにかく辛かった。
でも残すのももったいないのでなんとか食べ切ろうと思ったが、一緒についていた野菜炒めの青唐辛子を食べた瞬間、瞬殺され白旗を上げてしまった。
辛い記憶しか残っていない。
そんな記憶のあと、夜が明けて昼頃にバンコクに着いた。
バンコクはクアラルンプールやペナン島のジョージタウンとは全然違った。
トゥクトゥク、お坊さんや仏教寺院。国王陛下(ラーマ9世)の肖像画、そして反政府デモの景色。
あの路線はイスラム教国から仏教国へ眠っている間に移動できるとても面白い路線だった。
とにかく何もかもが違った。衝撃的だった。

当時は、こんなボードで次の電車の表示をしてた。

そう考えるとあれからまだ5、6年くらいしか経っていない。
あの頃ほどの衝撃を得ることはもう無くなった。
当時に比べてバーツもかなり強くなってしまい、「安い」という感覚も失った。
新型車両も出て来て、タイ国鉄の食堂車では火が使えなくなった。
当時のようなグリーンカレーはもう食べれない。
レンジでチンした美味しくない料理が出てくるだけだ。
旅情は少しずつ「便利」「綺麗」という言葉に置き換わってしまう。

でも、それでも、僕はタイが好きだしバンコクが好きだしフアランポーン駅が好きだ。
大好きだ。

まだこの駅に電車が到着するうちに、もう一度来れたらいいな。
もう一度、この駅に到着した時のあの景色が見たい。見に行かなくちゃ。


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