長津結一郎

研究者/九州大学大学院芸術工学研究院助教。すこしまとまった文章をどこかに書いておこうと…

長津結一郎

研究者/九州大学大学院芸術工学研究院助教。すこしまとまった文章をどこかに書いておこうと思った時に書きます。 研究室ウェブサイト:https://ynagatsu.com/

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  • 村川拓也公演「Pamilya(パミリヤ)」リサーチ

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このマガジンについて

このマガジンは、2020年2月22日〜24日に、福岡きびる舞台芸術祭「キビるフェス」のプログラムとして上演予定の、下記の作品の制作プロセスについて、ドラマトゥルクの長津の視点からときどき綴っているものです。 村川拓也(京都)『Pamilya(パミリヤ)』 演出:村川拓也 ドラマトゥルク:長津結一郎 出  演:ジェッサ・ジョイ・アルセナス 公演日時:2020年2月22日(土)19:00      2020年2月23日(日) 19:00      2020年2月24日(月祝)

    • ネットワークになるアクター:マルレーベル『一等地』

      「全編を通じて、舞台上に存在する人は、そこにあるものの存在を確認します。」と、当日パンフレットには書かれている。地下鉄七隈線「櫛田神社前」駅が直下に開業しアクセスが至便となった、福岡中心部にあるビルの4階に位置するぽんプラザホール(福岡市)で、マルレーベル『一等地』が2023年11月10日に初演された。 本作は、舞台上にいる人とモノとの関係、もしくはホール内にあるそのほかの様々な事象と共にある、演劇を用いて創出された時間そのものだった。 マルレーベルは福岡を拠点としたプロジ

      • パラリンピック開会式は批判されてもいいが

        昨日、東京パラリンピックが開幕し、開会式が行われたが、このことはある意味では批判されても良い出来事だと思う。 私は文化政策・アートマネジメントの分野の研究者で、特に障害のある人の表現活動についてはいくつか本や論文にも書いてきた経緯がある。この開会式をはじめ、オリンピック・パラリンピックの文化プログラムには多くの友人・知人、お仕事を通じた関係者が多数関わっている。 開会式はリアルタイムでは見られなかったのだが、録画したものを先ほど見終えた。(オリンピックの開会式とどうしても

        • 他者への想像力と、それを伝える、そのことの権力

          11/13、14とロームシアター京都で、2月に制作に携わった「Pamilya(パミリヤ)」の記録映像上映会を行っている。11/15(本日)の13:30からが最終回。 https://rohmtheatrekyoto.jp/event/60447/ きのう(11/14)はとにかく、上映後のレクチャープログラムとして企画した、龍谷大学のカルロス・マリア・レイナルースさんと、カルロスさんが紹介してくださった3人のフィリピンからの介護士たちの語りが、とんでもなく面白かった。いくつも

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        • 村川拓也公演「Pamilya(パミリヤ)」リサーチ
          21本

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          規範意識と、自己省察―村川拓也『ムーンライト』にみる「舞台と客席を使った表現」

          「抜粋」される時間 2020年10月31日・11月1日にフェスティバル/トーキョーのプログラムとして実施された村川拓也構成・演出による『ムーンライト』は、ピアノの発表会を題材とし、実在する人物の語りをもとにした舞台作品である。しかし今回の上映にあたっては、ピアノの発表会としても、実在する人物の語りとしても、どこか不完全な時間を観客は強いられることになった。  本作の構成はシンプルである。ひとりのアマチュアピアニストである中島昭夫の半生についての語りを聞くことと、その思い出に紐

          規範意識と、自己省察―村川拓也『ムーンライト』にみる「舞台と客席を使った表現」

          心の中で歌っている場合ではない。

          新型コロナウイルス感染症の芸術分野への影響は続いている。私が暮らす福岡県内でも被害は深刻で、個人で平均約44万円、事業所で平均632万円(!)の収入損失が出ているという統計が出ていることには本当に驚く。どこの地域でもそういうような状況なのだろうと思う。他の地域でも同じような状況だろうと思う。 もちろん、コロナウイルスの問題は芸術の問題にとどまらないし、芸術なんかよりもまず、という声が聞こえるだろうと思う。しかし、少なくとも福岡では2月下旬から自粛要請は強く聞こえており(通勤

          心の中で歌っている場合ではない。

          ライブハウスのこと

          ライブハウスに関する報道が加熱している。 そのときに思い出すのは、いつもあの場所のこと。 私は学生時代、とあるライブハウスに入り浸っていた。 きっかけはたしか路上ライブをはじめたころ。私は大学3年生のころ、茨城にある、JR常磐線快速の終点駅、取手(とりで)の地下連絡通路(ギャラリーロードと呼ばれていた)でギターや鍵盤ハーモニカで路上ライブをしていた。ひとりでしていたこともあるけれど、多くは友人と2人でやっていた。 いま思ってもいろんな出来事があった。はじめて作ったオリジナ

          ライブハウスのこと

          200224 『Pamilya(パミリヤ)』3日目

          10時入り。今日も村川さんとジェッサさんで稽古から。細かな段取りを確認していく。「ここの出演者は、ジェッサさんとエトウさんと、手さんです。それくらい、ここの手の動きは大事」「リハだとできるんだけどな、本番だと緊張しちゃうんかね」などと話しながら村川さんは、赤いCampusノートのメモをひとつひとつボールペンで塗りつぶしている。このやりとりを見るのも今日が最後か。 11時すぎに稽古終わり、11時半から「ジェッサさんに渡す時間」。受付まわりでは、連日届く花束やおやつなどが広げら

          200224 『Pamilya(パミリヤ)』3日目

          200223 『Pamilya(パミリヤ)』2日目

          10時すぎ、言われた時間より少しだけ早く現場入り。練習室の中では村川さんとジェッサさんが稽古をしているようだったので、ロビーでnoteを書く。そもそも今日はnoteを書くことの現場感をあげようと思って前乗りした節もある。11時すぎ、noteをだいたい書いたころ、長澤さんや豊山さんがやってくる。 12時、記録映像の撮影の方が来る少し前に村川さんがロビーに出てきて、「ごめん、13時まで稽古させて」と言う。記録撮影の方にお待ちいただく。現場での時間変更はまあよくあることだなあと思

          200223 『Pamilya(パミリヤ)』2日目

          200222 『Pamilya(パミリヤ)』1日目

          10時入り。パピオ全体が10時オープンなので、その少し前から待つべく向かう。地下1階の練習室前のロビーに着くと、村川さんがすでにきている。おはようございます、と言うと、なんとなくそことは離れた椅子に座る。舞台監督の浜村さんも来て、それぞれ別の場所に座る。照明の森脇さんも。制作の豊山さんが来て、村川さんの近くに来て何か打ち合わせをしている様子。ここは練習室なので、ほかにもさまざまな音楽や演劇・ダンス系と思われる人たちが待っている。 9時55分になって、パピオのスタッフの方が自動

          200222 『Pamilya(パミリヤ)』1日目

          200221 明日から本番

          きのうときょうは、ずっと会場であるパピオビールーム大練習室に通っている。わたしはほかの人と違って何の役割もないので、ぼんやり見ているだけで過ごしていたのだが、段取りのリハで呼ばれて以降、ちょこちょこ段取りを確認する要員になって舞台にあがったりして、緊張感がある。きょうは記録写真の撮影も入っていただいた(これも重要なアーカイブ)。 そして特にきのうからは、新型コロナウイルス関連でさまざまな報道、SNSなどでいろいろな声を聞いた。福岡市内では、地下鉄内で咳き込んだ人がいて、非常

          200221 明日から本番

          200218 全部できた

          職場でいろいろあってしまい、お昼過ぎから現場に行くはずが、夕方以降になってしまう。職場から現場に向かう電車の中でそのことを伝えるメッセージを制作の豊山さんに送ったところ、「長津さん、レンタルCDショップどこかご存知ですか」と言われる。欲しい音源があるという。そうねえ、と乗り換えの天神で降りてもう少し確認すると、特定の奏者のものだと言われ、いやそれはネットで買って落とした方がリーズナブルでは、と、カフェに入ってiTunesで落として送る。 仕事のやりとりを済ませ、19時少し前に

          200218 全部できた

          200216 ブックレットの入稿

          いよいよ今週末が公演。会場では今日も仕込みと稽古が夜遅くまで進んでいるという。一昨日と昨日は現場に行けなかったが、私も明日からは現場に足を運ぶ予定にしている。かといって役割があるわけではないのだけれど。定点観測をしている気分で、それをもとにあれこれ考えたりするのが仕事、と割り切って。 今回の活動をドラマトゥルクとしてやってみよう、と思ったことについては以前にも書いた。そしてその当初から構想していた、ブックレットが2/16に入稿になった。 ブックレットをつくるというアイディア

          200216 ブックレットの入稿

          200213 小屋入り

          実際に、演劇公演で使う劇場で準備を始めることを「小屋入り」という。 今回の演劇公演は3日間だけだが、その仕込みと、できあがった現場での稽古をすることで、あっという間に時間が過ぎてしまうもの。じっさい、今回の公演のための仕込みは少ないにせよ、客席を組み、照明を組み、音響(今回は最小限)を調整する。そして現場での稽古が始まる。 今回の「小屋」は、パピオビールーム大練習室。予約票に「財団」とあるのは、このフェスが福岡市文化芸術振興財団の主催だから。 福岡には劇場らしい劇場はほとん

          200213 小屋入り

          200209 滞在先最後の夜

          最近告知がすこしずつ届いているのか、「予約しましたよ」という声や、「公演かかわってるんですね、大変でしょう」という声などをよく耳にするように。関わり方がドラマトゥルクという形をとっていて、実際のところあまり大変なことはないのだが、それでも届いている感じがしてうれしくなる。 ドラマトゥルクといいながら、つくづく無責任に関わっている。行ける時行きたい時に稽古場に行き、適当に見たりしゃべったりして、邪魔しないように帰る。でもそんなもんなんだろうと思う。ブックレットの原稿は頑張って書

          200209 滞在先最後の夜

          「Pamilya(パミリヤ)」というタイトルと、それが現れた日のこと

          気づけば公演まで1ヶ月をきっている。日々ばたばたしていてなかなか書き残すことができないけれど、相変わらず村川さんと会うたびに飲みすぎているのは変わらない。 今日は、公演のタイトルである「Pamilya(パミリヤ)」という言葉が現れた日のことなど。 12月29日(日)。年末に集中的に稽古をはじめたころのこと。そろそろ個別チラシをつくらなくてはなあ、という話題が時折あがっていたころ(フェスの広報はもう始まっていた)。稽古場として使わせていただいている場所からJRの駅まで歩いて帰

          「Pamilya(パミリヤ)」というタイトルと、それが現れた日のこと