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プロジェクションマッピングの歴史・意味をまとめてみた

プロジェクションマッピングとは何か、を探るために、その言葉の意味から歴史まで整理しました。

プロジェクションマッピングってなんだろう?という人も、もっと詳しく知りたい、もしくは、マッピングを企画してみたいという人にも、読んでもらうと、わかりやすくまとめました。

プロジェクションマッピングの意味


プロジェクションマッピングを、英語に戻すと、projection と mappingという2つの言葉でできています。

まず、projectionは、projector(プロジェクター)という言葉も使われている通り、「投影」という意味です。

これに対して、mappingは、どうかというと。

よく使われるのは、map=地図という意味の名詞ですが、ここでは、動詞で使われています。

そのまま言ってしまえば、「地図する」ということですが、これは、つまり、地図にするために、現実世界のデコボコを地図に反映させることを言います。

つまり、プロジェクションマッピングとは、平面である映像の画面に、デコボコの情報を入れておくことによって、現実世界のデコボコに対応した映像が投影する、ということです。

かつては、スクリーン(平面)に投影するしかなかったものから、現実世界のどこにでも投影できるようにした。

この世界のあらゆるものをスクリーンにしてしまったんですね。
私たちの世界の見え方を変えたという意味で、画期的な発明です。

これが、プロジェクションマッピングという手法が、映像業界に起こした進化でした。


プロジェクションマッピングの歴史

最も早いプロジェクションマッピングは、今からおよそ50年前。

1967年にビートルズが、1969年にディズニーランドが、実施しました。

この時点で、プロジェクションマッピングという言葉は、なかったのかもしれませんが。

ビートルズは、1967年にリリースされた「Blue Jay Way」という曲のミュージックビデオの中で、ジョージ・ハリスンの顔の上に、映像を投影しています。


偶然なのか、プロジェクターの限界だったのか、ディズニーランドでのプロジェクションマッピングの方も、顔(人間ではないですが)への投影でした。

当時、新オープンとなったホーンテッドマンションのアトラクションに、
設置されていた胸像の顔の部分に、人間の顔を投影していたようです。

この映像は、2016年に撮影されたもので、
1969年のものとは違いますが、内容は同様のものだったようです。


この後に続いたのが、アートの分野でした。

いまふうにいうと、メディア・アーティストのMichael Naimarkが、
人間の存在感というものを、1980年にアートな実験にしました。

同じ部屋で撮影した映像を、投影しているにもかかわらず、ものにはリアルな感覚あり、人間は存在感が不安定になる。

タイトルのdisplacementとは、「置き換え不可能」を意味しています。

人間は置き換え不可能なのかどうかの実験と言えるのではないでしょうか。


さらに、1990年代に活発になったのが、
プロジェクションマッピングの生活面での活用のための研究でした。

たとえば、Ramesh Raskarという研究者は、オフィスの拡張・遠隔地との接続を提案しました。

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"THE OFFICE OF THE FUTURE"より引用

これは、現在ではVRやMRの分野で研究されていることですね。


ここまで見てきたことをまとめると、プロジェクションマッピングは、三種類に分けられます。

変化系:エンターテインメント=すでにあったものを別のものに変身させる
具現化系:生活への応用=目の前にないはずのものを生み出す
実験=上の二種類のどちらかを人間が見た時に、どう感じるのかを実験する

この次の大きな動きは、このプロジェクションマッピングがビジネスに大々的に応用される時です。

ただ、これは2010年前後まで待つこととなりました。これは、技術の発展とそれを成立させる経済性の問題。この兼ね合いを実現できたのがこの時代だったということでしょう。


ディズニーランドのホーンテッドマンションからは、すでに40年以上が経過した2011年。プロジェクションマッピングのパイオニアだった、ディズニーが、満を辞して、発表した作品がこちらです。


シンデレラ城へのマッピングです。

変化系の、分かりやすい例ですね。

この前後から、海外でのプロジェクションマッピングの使用例が一気に増えた時代でした。たとえば、2010年にNokiaは、こんなプロジェクションマッピングを使ったプロモーションを行っていました。

インタラクティブなコンテンツになっております。

こちらも、見慣れた建物が別のものに変わる、変化系ですね。


そのほかの事例では、毎年、フランスで行われている光の祭典、Fete des Lumieresの中で、2008年にプロジェクションマッピングが使われました。

さらに、見慣れた建物が別のものに変わる、変化系ですね。


その一方で、具現化系の例でいうと、2013年公開のトム・クルーズ主演のSF映画「オブリビオン」でセットで使われたものがあります。


さらには、2016年、Audi Q7のCMもそうですね。
(実際の撮影した映像のみ使用しているらしいです。)

こちらは、何もないはずの雪山に、様々なイメージを生み出しています。


このように、様々なプロジェクションマッピングが発達していった中、1つのエポックメイキングのように、取り上げられるのが、NokiaのボーダフォンのCMでした。

こちらが公開されたのは、2011年。


こちらがなぜエポックメイキングだったのか。

それは、見慣れた電話を変化させる変化系と、その置かれた台の上に様々なイメージを生み出す具現化系。この2つの合わせ技だった、これが1つの理由だったのです。


ここまで海外の事例だけで話を進めておりますが、この間、日本はどうだったのかも、最後に少しだけ説明いたします。


日本のプロジェクションマッピングについて

1967年のビートルズと1969年のディズニーとの間の1968年に、キラージョーズというクラブの壁面全てにサイケデリックなイメージを具現化することが行われています。


海外では、変化系からはじまったプロジェクションマッピングの歴史が、日本では、具現化系から始まったのは面白い違いですね。


もちろん、変化系も行われております。最も有名なものの1つが、2012年の東京駅ですね。


そのほかにも、2008年、USJで行われたクリスマスのショー


現在、日本において、プロジェクションマッピングといえば、
NAKEDとteamLabという2つの会社が有名ですが。

実情を見てみると、NAKED=変化系(東京駅もNAKEDです。)

すでにある建物を変化させているものが多いですね。


それに対して、teamLab=具現化系

空間から作り、そこにないものを生み出す仕組みですね。


こうやって見ていくと、具現化系と変化系は、それぞれの仕方でどんどんと発展してきているのですが、その2つを混ぜた事例というものは意外と少ないのかもしれません。

そういう意味でも、Vodafoneの事例は秀逸だったのではないでしょうか。

そして、日本でももちろん、この2つを混ぜようとした例はあります。

こちらを、見ていただくとわかるのですが、Vodafoneと同じスクリーン構造なのです。真ん中に変化させるものがあって、その周りを具現化用のステージが広がっている。

それなのに、Vodafoneほどのインパクトを残すことができなかった。

その理由は、見てもらうとわかるのですが、「ケツ」を変化させることが少ないのです。せっかくの変化対象である「ケツ」をほぼほぼ真っ白なスクリーンと同じように使ってしまっています。

これでは、勿体無い限りです。

やはり、インパクトを与えるには、変化と具現化の両方を駆使することが必要ということがわかります。


最後に、SUGOIのプロジェクションマッピングの事例もみてください!



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