見出し画像

今までになかった本屋さんのつくりかた Lunch#86 中西功さん

東京の吉祥寺に変わった本屋さんがあります。そこの本屋さんは両側の壁一面が本棚になっていて、その本棚が小さいスペースに区切られています。およそ100前後の小さいスペースからなる本棚。

あるスペースは、歴史ものばかり、あるスペースは絵本ばかり、あるスペースは科学の本ばかり。

そんなふうに、それぞれのスペースの特徴がバラバラになってます。これが、この本屋さん、「ブックマンション」です。

この不思議な本屋さんを作った中西さんに話を聞いてきました。中西さんのポイントはこちら。

・無人本屋のつくりかた
・誰に聞いたらいいのかを把握する
・自分が作るよりブックマンションへ


まずは、無人本屋のつくりかた、です。


私が、中西さんの存在を知ったのは、あるイベントでした。オールユアーズの木村さんとブックマンション・無人本屋のオーナーの中西さんのトークイベントでした。

そこで、無人本屋という奇妙な本屋の形をしりました。


無人古本屋さんは、東京の武蔵野市、三鷹駅から歩いて13分という場所にあります。この場所で、人のいない古本屋さんが、すでに6年間も営業しているのです。

しかも、本を盗まれたことがないというのですから驚きです。


もともと、中西さんは本屋が減ってきている時代の流れをどうにかしたいなと考えていたというのです。本、特に本屋というものは、自分が知らない世界に偶然出会えるチャンスがたくさんある。

目的の本を探しにいったのに、全然違う本に魅了されて、全く別の本を買ってしまったなんて経験をお持ちの人もいるかもしれません。

こんな経験があるように、ネットショッピングでは味わえない偶然の出会いを、本屋さんは与えてくれます。

この体験を増やしたくて、本屋を増やそうと考えたのですが、当時の中西さんは会社員で昼間はずっと会社にいます。


本屋を増やしたい、ということと、自分がお店にたてない。この2つの条件から考え出されたのが、無人の本屋さんでした。

そして、無人の本屋さんであれば、誰でも真似することができる。つまり、本屋を増やすことができる、と考えたのです。


中西さんの考え方はとてもシステマチックです。ここからはどうやれば、無人の本屋が失敗しないか、と考え始めます。


まずは、買った人がストレスを感じないようにすることを考えました。というのも、善良なお客さんが買ったのに、店の前を通る人に泥棒扱いされたらたまったもんじゃありません。

そのストレスをなくすために、ショッピングバッグをガチャガチャで購入してもらうことにしました。さらに、そのバッグを派手な黄色にしたのです。

そうすると、派手な黄色い袋を持っている人は、本を買った人と一目でわかるようになりました。


次は、本を盗まれにくくすることでした。つまり、そんな気が起きないようにさせること。

そのために、必要なのがこの駅からの不便さでした。

駅から徒歩13分もかけて本を盗みに来る人なんて、そんなにいないだろう、という仮説だったそうです。もしくは、そこまでして盗みに来たなら仕方ないとも言えるかもしれません。


こんなふうに、目の前にある条件、中西さん自身が社会人であること、誰でもできる本屋さんであることから、人がストレスを感じないようなシステム、そして、悪い心が起きないようなシステム。

そういったシステムを1つづつ組み立てて完成したのでした。


次は、誰に聞いたらいいのかを把握する、です。


これだけシステマチックにしっかりと考えている中西さんですが、すごい考えていますね、なんて言葉をかけると。

何も考えてないですよ。本当に周りの人がやってくれるんです。

このような謙虚な言葉が繰り返し出てきます。


というのも、吉祥寺のブックマンションを作るときでも、自分の力より周りの人にかなり助けられたそうです。

たとえば、建物の内装のペンキ塗りなどはクラウドファンディングでメンバーを集めたそうですが、いざペンキ塗りなどの作業が始まると、中西さんは何もすることがなく、買い出しくらいしか仕事を与えられなかったそうです。発案者なのに。

たまに、ペンキが中西さんのズボンについたりすると、やった感出さないでください、なんていじられるほど。


ほかにも、小学校の時の技術の時間で、中西さんがどうしてもできないことがあった時に、近くの女子が手伝ってくれてなんとか完成したり、いつも周りの人に助けてもらっていたそうです。


中西さんは、そもそも自分でなんでもしようと思わない、できるはずがないと教えてくれました。


そして、それは小さい頃からなんとなく、できていたのだと思いますが、新卒で入った会社のメンターの方にもそれを徹底的に教えられたそうです。

それは、問題に対して、誰に聞けば教えてくれるのかを把握しなさい。というものでした。

つまり、問題にぶつかった時に、なんでも自分で解決しようとするのではなく、周りの人の力を借りれるように、準備しておきなさい。

そんなふうに教えられたそうです。


最後は、自分が作るよりブックマンションへ、です。


無人本屋さんが順調に稼働していった時に、中西さんは2件目の本屋さんを作り始めます。

当初からブックマンションという考えがあったわけではなく、自分の本屋をやろうと考えていたらしいです。

どんな本屋にするかの参考にしようと、次のような趣旨のツイートをつぶやいてみたそうです。本屋をやろうと思っていますが、皆さんが好きな本屋さんはどんな本屋さんですか?

そうすると、全国で素敵な本屋さんの情報が集まり、それだけではなく、多くの人が本屋さんをやりたいと思っていることがわかったそうです。


その時に、中西さんは、自分が本屋さんをしたいという事実と、それからたくさんの人も本屋さんをやりたいという事実を合わせてみます。

そうすると、一人でやるよりも、みんなで本屋さんをやったほうがいいのではないだろうか、という考えにたどり着いたのです。

それも、共同オーナーのような形ではなく、それぞれが好きに個性を発揮させられるブックマンションという形で。


こんなやり方どうですか、って実験を世の中に投げかけてみる。そんな思いでブックマンションを作ったのだそうです。

それは、こんな考え方やシステムがあるよ、って世の中に補助線を引くような感覚です。そうするとあとはその補助線から、いろんな人がアイデアを持ち寄って、中西さんが思いもよらなかった使い方が生まれていったそうです。

たとえば、ブックマンションでは、小学生の本屋の店主がいます。そこには小学生の女の子のお気に入りの本が並べられているのですが、それをみた妹さんが、自分で描いた絵本をそこで販売したそうです。


すると、その親戚や友人などとは全く関係ない人が、この絵本素敵ですね、とかっていったそうです。

ブックマンションを始めた時に、まさか小学生が店主になるなんてことも、小学生のオリジナル絵本が売れることも、もちろん考えてはいなかったそうです。


ただ、こんなふうにしたら、可能性が広がるかもしれない、という実験をやってみて、それを面白がる人が集まってくる。そのさきはどうなるかわからないけど。それでも、自分が考えてもいなかった面白さがそこに出てくる。

そんなふうにして、確信があるわけではないけど、多分こうしたらいいんじゃないかなっていう実験の結果、ブックマンションが生まれたのです。


こんな経緯で誕生したブックマンションに入ると、両側の本棚にびっしりと飾られた本の様子に圧倒されるのですが、それ以上に驚かされるのは、スペース1つ1つが、全く異なる「色」をしているところです。

スペースの1つ1つが、全く異なる本屋さんとなっていて、それぞれの個性の表現になっていて、とても幸せな感情を覚えます。

もし吉祥寺に行くことがあったらぜひ寄ってみてほしい場所です。


2020.3.24 中西功さん
吉祥寺にて


ここまで読んでいただきありがとうございます。 この世界のどこかにこうして私の文書を読んでくれている人がいる。それだけで、とても幸せです。 サポートしていただいたお金は、また別の形で素敵な人へのサポートとなるような、そんな素敵なつながりを産んで行きたいです。