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大正生まれの祖母が教えてくれたこと〜2ユーロのシャケフレーク

私の好きなフランス文化のひとつが、「マルシェ」。

フランスのおそらくどの街でも、パリではどの区でも、週に2、3度、通りいっぱいに運動会のテントみたいなのが張られて、マルシェが立つ。

野菜、魚介、肉、チーズなどの乳製品、オリエンタル系(ナッツや香辛料)、お花の基本形に加えて、食べ物の屋台もあるし、衣類や靴、小物などの服飾系、台所用品、手芸用品、ひいては家具なんかまでそろう。  

生鮮食品は、直接生産者と会話をしながら買い物をすることができる。
たとえばアボカドを買おうとすると、いつ食べるの?とか聞いてくれて、そのときに適した状態を見極めてくれる。

引きこもりがちでフランス語のコミュニケーションに飢えている私としては、Otto氏以外のフランス人と会話をする絶好の機会でもあるのだ。

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色とりどりの元気な野菜たちは、目の保養

私の住んでいる地区も、徒歩20分圏内に4つのマルシェが立つ。
月曜日以外、どこかしらのマルシェが立っているので、大変お役立ちなわけだ。

ところが、コロナのConfinement(外出禁止)で、街中のマルシェも閉鎖となってしまった。私がConfinement中に一番物足りなかったものはこれだ。

スーパーはやっているけどマルシェはやっていない。八百屋さんはやっているけど大行列。よって、スーパーで野菜を袋にいれて、無機質なはかりに載せてタグをはる生活。

Confinrment明け、満を持して、先々月からマルシェも再開された。

先週までは、野菜に触ることすらできなかったのに、今週からセルフサービス方式カムバック。自分でペタペタ野菜を触って、好きなものを好きな量だけ入れることができた。  
(フランス、毎日平均500人くらいコロナの新規感染者が出てるけど、大丈夫なのかな…)

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ただ野菜を選ぶ風景さえ美しい

さて、前置きが長くなったが、私は大抵火曜日に週の野菜をマルシェで買うことにしている。ということで、七夕の日の火曜日、相棒の愛犬みるぅを連れて家から徒歩10分くらいのマルシェに向かった。

今日はじゃがいも3キロと、パプリカ1色ずつと、デザート用のりんごと…なんて復唱しながらマルシェに到着してすぐ。
たまーに魚介系を買うお魚屋さん、特設スペースができている。 
なんだろう?と思って覗き込んでみた。

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鮭のアラ部分、隣には鮭の頭

最初1キロ12ユーロに見えたから、「高っ」と思って通り過ぎたのだが、なぜか頭から離れなくて100mほど引き返し、目をかっぴらいてもう一度よくみてみた。

「1キロ2ユーロ」

って書いてある。日本円で240円くらい。

フランスにきたらまず、日本のスーパーの塩鮭切り身1パック税抜398円(特売198円)という感覚は捨てなくてはならない。魚介系が高いのだ。
特に内陸パリでは、さらにお高め。私のような庶民にとっては、デイリーに買うことができない代物だ。

三陸生まれのDNA半分三陸人な私としては、心ときめくのは断然肉より魚なのに。

ここで2ユーロのアラを思わず目の当たりにして、一瞬、脳裏をよぎった言葉がある。

「魚は皮が一番栄養がある」/「魚に捨てる部分はない」

三陸の祖母からも、その祖母から産まれた母からも、耳にタコができるくらい聞かされてきた2フレーズだ。 

特に大正の終わりに生まれた祖母は、長年旅館の女将として経営から料理までを一手に担ってきたスーパーウーマン。3.11の大津波を乗り越えて、今なお三陸で一人暮らしをしているが、三陸の豊富な海の恵みを存分に受けてきたからか、齢93にしてお肌つるっつるんのぷるっぷるん。
ボトックスとかなしに、ナチュラルな状態でシワのなさと肌のハリを競ったら、90代の部で世界チャンピオンになれると本気で私は思っている。

その祖母から生まれた母も、歳の割にとても若い。私はこの表現が好きではないが、俗に言う、「美魔女系」と周りからよく言われたものだ。
彼女も、魚の目が一番好きなんだよねえと言って、煮付けなどの魚の頭から、ちゅるりんと目をほじくって食べてしまう。

そんな、尊敬する親子の教えは忠実に守りたい性分、このままでは捨てられてしまう部分をお買い上げすることにした。なんてったって2ユーロだし。

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予想以上に皮の部分が多めで、中骨の部分を選べばよかったかな…と若干後悔したが、祖母の黄金肌に近づくためにはそんな戯言を言ってはならぬ。淡々と魚用の包丁で身と皮を剥がしていく。

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コラーゲンたっぷり!

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油が多いので、一度さっと沸騰したお湯で湯がいてから、フライパンで煎る。
酒と白だしと塩を、味見しながら調味。

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最後に油を切って、

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じゃーん!!!

シャケフレークができた!自家製シャケフレーク。 
ご飯のお供、シャケフレーク。
お酒のお供、シャケフレーク。  

うれしすぎてシャケフレークを連発してしまった。
ちなみに、私のmacbookは所有者の私に忖度しているのか、「sake」で変換するといつも「酒」になって変換が面倒なので、「シャケ」フレークと呼ぶことにした。

捨てる部分はないので、皮の部分も同じようにしてちょっとゆがいてから、フライパンで煎ってカリカリにして、シャケの皮せんべいにトランスフォーム。 
これは私の調理中のつまみおよび、飼い主に似てお魚大好きなみるぅのおやつになる。

そして翌日、というか先程、炊き立ての白米に自家製シャケフレークをのせ、最後にbio卵の卵黄をオン。ランチにいただいた。

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これをご馳走と言わずしてなんと言おうか

三陸のおばあちゃん、元気かな。 
孫は異国でたくましく、ちゃんとあなたの教えを守っていますよ。

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ちなみに一番好きな市販のシャケフレークは加島屋の鮭茶漬け




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