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「学ぶことの障害」のない社会をめざして - OPEN LAB「アクセシビリティ研究」をスタートします

こんにちは。LITALICO社長室 チーフエディターの鈴木悠平です。

昨年度1年間、社会的マイノリティに関する「知」の共有と深化を目的とした、 未来構想プログラム「LITALICO研究所 OPEN LAB」を企画・運営してきました。

今回、OPEN LABでの取り組みを踏まえて、「学ぶこと」にまつわるさまざまな障害と、それらを解消するための方法を調査・分析・共有する、「アクセシビリティ」に関する研究プロジェクトをスタートします。

このnoteでは、アクセシビリティ研究がいま社会に必要とされている理由や、プロジェクトの進め方をお話します。

研究プロジェクトに関わってくれる人も大募集しておりますので、関心を持ってくださった方は、ぜひご参加ください。

障害や病気、経済的・地理的理由によって「知」から排除される問題

発達障害や精神障害、LGBTや子どもの孤立、格差や貧困…。ここ10年ほどで、こうした「社会的マイノリティ」領域に対する認知や関心はずいぶん高まりました。

当事者の方々が自ら声をあげたり、当事者を取り巻く状況を改善しようとするNPOや企業が提供するサービスも増えてきています。

また、社会的マイノリティについて考えることを目的としたイベントや勉強会も多く行われるようになってきました。

ですが、まだまだ困っている当事者の方々に、その情報や便益が十分に届きにくいという課題があります。

たとえば、そうしたイベントや勉強会の開催地は、ほとんどが東京をはじめとする大都市圏に集中しています。地方在住のマイノリティ当事者にとって、自分がよりよく生きていくための知識を得たり、同じ経験や関心を持つ仲間とつながったりする機会はまだまだ少ないと言えるでしょう。

障害・疾患がある方の中には、治療中のため働けていなかったり、自分に合った仕事や働き方の機会がまだまだ少なく、収入や雇用形態が不安定だったりと、経済的に脆弱な立場にある方も少なくありません。社会課題を扱うスクールやオンラインサロンがあっても、高額な参加費がハードルとなり、社会的マイノリティ当事者が実質的に排除されてしまう、という経済格差の問題もあります。

また、さまざまな障害・疾患がある方の特性を踏まえた「合理的配慮」を実施しているイベントや勉強会は、まだまだ少ないのが現状です。

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「マイノリティ支援をうたっているイベントで、バリアフルな状況になっているのを目にすると、とても複雑な気持ちになります。なぜ当事者が参加できない状況になっているのだろう、と…。」

そんなことを私に話してくれた方がいました。

マイノリティ当事者の方が安心して参加できる空間づくりのためには、さまざまな特性を踏まえたアクセシビリティ対応を標準化していく必要があると考えています。


OPEN LABにおけるアクセシビリティの実践とそこから見えてきたこと

学ぶことにまつわる「障害」はさまざまです。

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こうした課題に対応するため、昨年度はまず自分たちの実践として、通年の講義プログラムの中で、以下のようなアクセシビリティ対応を徹底してきました。

・会場聴講だけでなくオンライン受講・アーカイブ視聴も可能に
・事前に講義資料をPDFで受講生に共有
・講義中のトーク内容を「UDトーク」によりリアルタイム文字起こし
・経済的な困難さがある方向けの無料参加枠「スカラーシップ制度」
・多目的トイレや休憩スペースの確保

こうした環境整備を全講義において標準化、その上で、事前に相談いただいた内容に応じて、一人ひとりの困りごとに大して個別の「合理的配慮」を行いました(具体的には座席や聴講スペースの調整などのご相談をいただき、対応いたしました)。

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※文字起こしアプリ「UDトーク」でのトーク内容のリアルタイム文字起こし・スクリーン投影の様子。スタッフを配置して文字校正も同時に行っています。

こうした取り組みに対して、受講生からはさまざまな声をいただきました。

「体調の波が大きいので、これまでは『チケットを買っても参加できないかもしれない…』とイベントや勉強会のチケット購入を躊躇していた。オンライン受講のオプションがあるのはとても安心」

また、文字起こしや資料共有といった取り組みは、聴覚障害のある方だけでなく、さまざまな認知特性のある方にとっても有用であるとのフィードバックをいただきました。

「資料が事前にあると、心の準備ができるので安心して受講できる」
「じっくり勉強したいので、アーカイブ動画を繰り返し見られるのはありがたい」
「口頭でのトーク内容が入ってきづらいので、文字情報を追えることで理解しやすかった」

また、「こうしたアクセシビリティ対応に力を入れた学ぶの場があること、それをあらゆる人に届けようとするメッセージを出してくれたことが嬉しい」という声もいただきました。

私たち自身も、1年間のOPEN LABの運営のなかで、来てくれた人たちを「歓待する」雰囲気づくりや、受講生と「共に対話し、場をつくり合う」という姿勢を大切にしてきました。

これまでの取り組みや受講生の声から見えてきたのは、アクセシビリティは単に技術や情報だけの問題ではないということです。

障害・疾患の種別だけでは見えてこない、一人ひとりの具体的な困りごとと、それに応じた対応を追求していくこと

事前のアナウンス、当日の柔軟な参加方法の確保、事後のフォローなど、場やコミュニティの運営全体をデザインしていくこと

そうした取り組みや姿勢が参加者にも伝わるよう、継続的にコミュニケーションをとっていくこと

学びの場におけるアクセシビリティは、そうした細やかな対話と工夫の積み重ねによってこそ実現し、あらゆる人の「学ぶ権利」が保障できるのだと思います。


アクセシビリティ研究を通して明らかにすること、社会への還元方法

これまでお話したOPEN LABの取り組みや、講義の運営を通して集まった声を踏まえ、また更に追加での事例調査を分析を行い、学びの場のアクセシビリティに関する総合的な視点や知見を届けていく学術研究をスタートします。

■研究を通して明らかにすること
・学びの場へのアクセスを阻むさまざまな要因や困りごとの調査・分析
・それぞれの困りごとに対応するソリューションの調査・分析
・アクセシビリティ施策を必要とする人に「届ける」ための、場のデザインや運営方法に関する知見の整理

■社会への還元方法
・研究結果の学会発表、論文投稿(日本語・英語)
・誰でも使える運営ガイドライン・ノウハウ集の無料公開(日本語・英語)

これまでご紹介した事例を個別事例で終わらせないために、「学術研究」という手法で、知見を客観的に整理・分析していき、研究結果を学術界だけでなく広く一般の人たちが利用できるためのノウハウ公開までを目指してプロジェクトを進めていきます。

OPEN LABのアクセシビリティ研究にかかわるメンバーを募集します!

これからスタートするアクセシビリティ研究プロジェクトも、これまでのOPEN LABの講義運営と同様、さまざまな方にオープンに関わっていただきながら進めていきたいと思っています。

「Slack」というチャットツールを使いながら、さまざまな人たちの経験・知見を集め、対話を重ねながら研究を進めていきます。ご関心のある方は、以下のリンクからSlackのワークスペースにぜひ参加ください。

https://join.slack.com/t/openlab-org/shared_invite/zt-ed3qrxci-irfbRdzQOSQzzD5c4UQFvA

研究プロジェクトのかかわり方はさまざま。

①自分や身近な人の「困った」事例を共有する
②参考になりそうな資料や事例を共有する
③リサーチャーとして、集まった事例や資料を系統的に整理し、分析する
④研究成果を広げるための制作物デザインやメディアへの発信を進める
⑤事務局としてプロジェクトの運営をサポートする

まずはボランタリーに、それぞれのペースで①②の観点から情報提供やディスカッションに参加していただければ幸いです。

その後、集まった事例を整理・分析し、私とともに具体的に学術研究を深めていってくれる方(③のリサーチャー)を適切なタイミングで募集・採用します。リサーチャーとなった方は、学会発表や論文等の執筆にオーサーシップを持っていただきます。必要に応じて一定の研究経費予算を確保する予定です。

分析がある程度段階で、研究成果を世に広めていくためのパンフレット制作やウェブ発信なども行っていこうと思います。その際、④⑤の役割に関しては、一定のファンディングを行った上で有償のお仕事として担当者を募集する可能性がございます。

まずはフラットに、さまざまな方にご参加いただきながら、知見や事例を交換していければと思います。ぜひお気軽にSlackにご参加ください!

https://join.slack.com/t/openlab-org/shared_invite/zt-ed3qrxci-irfbRdzQOSQzzD5c4UQFvA


LITALICO研究所OPEN LABについて

今回のnoteでは、アクセシビリティ研究についてのご紹介が中心となりましたが、OPEN LABの講義内容にご関心のある方は、以下もぜひご覧いただければ幸いです。

LITALICO研究所OPEN LAB特設サイト

昨年度の講義のダイジェスト動画(無料公開)

OPEN LABの講義レポートや運営報告をまとめたnoteマガジン

まずはアクセシビリティ研究を中心に参加者を募集しますが、同じSlackワークスペースで、今年度の講義運営についても少しずつ議論・準備を進めていきます。OPEN LABに関わり!という方は、お気軽にSlackワークスペースにご参加ください。

https://join.slack.com/t/openlab-org/shared_invite/zt-ed3qrxci-irfbRdzQOSQzzD5c4UQFvA

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文筆家/インターミディエイター® 閒-あわい-を掬って書いたり編んだりしています。 LITALICO 社長室チーフ・エディター/ウェブマガジン「アパートメント」管理人/NPO法人「soar」理事

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さまざまな分野で活躍する当事者・専門家・起業家の方々を講師としてお招きし、社会的マイノリティ領域の課題や解決策、未来のビジョンを受講者の皆さんと共に考える学びの場です。 障害や病気のある当事者の方、経済的な困難さや遠方におられる方も参加できる、「オープン」な知のプラットフォームとなるよう、講義における合理的配慮や情報保障を徹底します。 このマガジンでは、OPEN LABの講義情報や取り組みについてご紹介します。

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