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「フリースクールって経営成り立つの?」に答えます。

みなさん、こんにちは。
栃木県宇都宮市とさくら市にて、フリースクールミズタマリ・オハナを運営する、代表の土橋です。

今回は最近よく質問される「フリースクールって経営成り立ってるの?」という問いに回答します。

どちらかというと執筆や講演等においては、子ども達との関わり方や親御さんへの支援などの話がメインになるので、経営についてこうして綴るのは初の試みです。

まず結論からお伝えすると「事業収入だけでは成り立ちません」

利用するご家庭からお月謝をいただいているのですが、それだけでは成り立つ事業ではないのが現実です。2019年に始めたフリースクールはもう3年が経ちました。「成り立たない」と言っているにも関わらずどうして継続ができているのか、紐解いていきます。

1.運営体制について

「1日どのくらい開いてるの?」
「スタッフって何人くらい?」
「そもそもスタッフって給料払っているの??」

そんな疑問をお持ちの方もいらっしゃると思うので、まずはその説明からします。今回わかりやすくするために宇都宮の「ミズタマリ」についてだけお伝えします。

  • 開所日:(月)(火)(木)(金)の週4日

  • 開所時間:13:00~17:00

  • 1日のスタッフ数:2~6名

  • 1日の子どもの数:2~15名

  • 子どもの登録者数:30名弱

という感じです。
曜日によって子どもとスタッフの人数は変わります。

例えば人数が多い(月)(木)は
子どもは10~15名
スタッフは4~6名です。

最も少ない(金)は
子ども2~5名
スタッフ2~3名です。

子どもの人数に応じてスタッフを配置しています。
大学生などボランティアさんが1日に1,2名入ることもありますが、毎日安定するわけではないので、基本はスタッフで人数が足りるようにしています。

ご自身でフリースクールや塾などを経営している方は、この時点でもう感じているかもしれません。
「え、スタッフ多くない?人件費で赤字じゃ…」
「いや、もし利用料をしっかりめに取っているなら成り立つか?」

徐々にそうした疑問に答えていきます。
次はお金の話に入ります。

2.利用料、登録料

うちは月謝制にしており
週1~週4で選べるようになっています。

登録料(初回のみ):10,000
週1コース:13,000
週2コース:16,000
週3コース:21,000
週4コース:26,000

※希望があれば
さくら市フリースクールの併用もできるので
その場合、週5コース:32,000円となります。

他にもポイントがいくつかあります。

①後払い制
子どもによっては心身の不調が起こりやすい子や、その日の気分で来られない子もいます。特に不登校の状態にある子にはよくあることです。
「元々週2コース(月8回程度)で登録していたけれど、結果的に今月は月4回しか参加できなかった…」
そんな時には、相談の上、週1コース料金で対応するようにしています。ちなみにお休みになった際は振替も可能で、それができなかった際には、上記で述べたような対応をしています。

②コースは毎月変更可
①のこともあるので、極端な話、毎月でもコースは変更してOKです。子どもによっては、うちの他にも放課後デイに行く子や他フリースクール、また学校に週1、2日程度通っている子もいます。それに合わせて、うちの利用日数が増減することもあるので、柔軟に対応しています。

③家庭の経済事情への配慮
行政の就学支援を受けているなど、家庭の経済的事情で支払いが困難な場合、3割のみの負担で利用ができます。また生活保護を受けていたり、シングル家庭であったりなどの場合、相談・審査の上、全額免除ということもあります。宇都宮市で就学支援をする際に定めている基準を参考にしています。個人情報に関わることになりますので、これまで利用があったかどうかについては言及しません。
経済的事情によって、子ども達の学びや人とのつながりに差が出てしまうことを避けるためにこうした制度を設けています。

④きょうだいの減額利用
きょうだい2人目以降の場合、利用金額を8割に設定しています。きょうだい3人とも不登校というのも珍しくありません。ミニマムの週1利用だったとしても、13,000円×3人=39,000円です。みなさんの家庭でイメージしてみてください。もし週2で利用しようと思ったら、16,000円×3人=48,000円…家計への影響はとても大きいです。少しでもご家庭を応援したいと思っての制度です。

⑤無料体験
やはり体験してみないと、子ども達はフリースクールで過ごすイメージができません。体験は数回分無料としています。どの曜日に利用しようか迷っている場合、今週は(月)、来週は(火)のように体験曜日を変えるのもOKです。もちろん、見学面談も無料。もちろんLINE・電話でのお問合わせも無料。見学は親御さんだけ来てじっくり1時間ほど相談の時間になることもありますし、親子で来て20、30分くらい見学と少しお話をして終わることもあります。来る方の要望、状況に合わせて対応しています。

話を元に戻しますが
現在利用者は30名ほどいます。
最も多い利用コースは週1
次に週2と続きます。
①~⑤の対応がありますので
総利用者数がほぼ変わらなくても
毎月収入は変わります。
ざっくりとですが
250,000~300,000円です。

さてさて、段々とみなさんも
「なるほど~」と思いつつ
「収入はわかったけど、支出は…?」
となっている方もいると思います。

「そもそも月の収入30万円って
1人の給料分くらいしかないのでは…?」
と思っている方もいらっしゃるのではないかと。

では次は支出についてお話します。

※箸休めにフリースクールの写真を載せます。

ボランティアさんと一緒にクッキーづくりにチャレンジする子ども達。お菓子作り、料理に取り組む中で化学も学べますし、段取り力、考える力もつけられます。

3.人件費など支出について

先程説明した内容では全く納得がいかない方もいらっしゃるのではないかと思います。
「1人の給料分くらいしか収入がないなら、やりくりできるわけないじゃん…!」と。

支出について、ざっくりとまとめます。

・家賃光熱費:10,000~30,000円
・消耗品費:5,000~15,000円
・人件費:400,000~450,000円(社員2名、パートアルバイト3名)
計:450,000~500,000

ざっくりですがこんな感じです。
ミニマムの収入支出をとって計算すると

250,000円(収入)-450,000円(支出)
-200,000

赤字です。
約20万円が赤になっています。

ここでみなさん思いますよね?
「え、じゃあどうやって運営してるの…」と。

4.「寄付」という存在

答えは「寄付」「助成金」です。

寄付は企業・団体からいただくこともありますし
個人からいただくこともあります。
法人全体で昨年1年間で
約300~400万円ほどの寄付をいただきました。

これまで寄付は
有限会社坂田新聞店
光陽エンジニアリング株式会社
株式会社キッズコーポレーション
有限会社ロケットウェブ
一般社団法人宇都宮市医師会
の企業のみなさんよりいただいております。

助成金は民間企業・団体からいただいています。
1つの助成金で50~400万円と
金額には幅があります。
ちなみにフリースクール事業では
昨年今年と2年間
日本労働組合総連合会(連合栃木)さんより
助成金をいただいています。

「あれ、行政の助成金は?」
毎回聞かれる質問です。
実は「栃木県はありません」が回答です。

おとなり、茨城では
県から1団体年間100万円程度の助成が
フリースクールに入っているそうです。

他県ではそうした前例もありますし
官民連携でフリースクール運営されている例もあるので
制度としては無理なことはないはずなのですが
栃木県はまだまだその面では
腰が重たいというのが現状です。

「ロビーイング」と言って
政府・行政へ制度づくりのための働きかけも
しているのですが、まだ時間はかかりそうです。

他の収入としては
他事業収入や講師謝金などもありますが
額の大きさで言えばやはり
「寄付」「助成金」の2つが大きいです。

昨年1年間の売上が約1100万円ほどでしたが
事業収入:寄付:助成金
=3:4:4
くらいの割合です。
(これはフリースクール以外の事業も含めた全体の数字です)

寄付をいただくにあたっても
クラウドファンディングを利用したり
マンスリーサポーター(継続寄付)を集めたり
裏側には様々な動きがあります。

民間団体からの助成金をもらうにも
申請書1枚でもらえる簡単なものはほぼ存在せず
たくさんの書類と準備をし
審査を通ればやっともらえます。
申請書を出すところから数えれば
1~6か月と時間がかかることが普通です。

ちなみにこれらの労働時間は
もちろん上記の人件費に含まれていませんし
親御さんの見学・相談対応や手続き関係
また緊急対応などそうしたことについても
上記の支出には含まれていません。

私たちはやっと年間1000万円ほどの
予算規模になったばかりの
まだまだまだまだ小さなNPOです。

どうにも予算が捻出できない分については
代表の私が体力でなんとかカバーするしかありません。

※とは言え、これはこれで私は楽しんでいますし、自分がやりたくて始めたことなので、同情してほしいわけでもなんでもないです。「NPO法人キーデザイン」というのは私にとって子どものように大切な存在です。言葉通り、命がけでやっています。あくまで実情を伝えたいという思いでこのようなことも書いています。

「そんな大変な思いしているくらいなら、利用料上げれば?」
そう考える方もいらっしゃるかと思います。

※箸休めにフリースクールの写真を載せます。no.2

普段、外出・運動の機会が減る子ども達。子どもによっては月1回も外出しないことも。フリースクールでスタッフと信頼関係ができてくると、自然と散歩にもついてきます。そして時にいきなり走り出すなんてことも。(笑)

5.できるだけ利用料をおさえたい理由

利用料をあげることはやろうと思えばできます。
フリースクールを始めた当初は
週1:8,000円
週2:11,000円
で運営しており
子どもの人数が増えるにつれて
スタッフ数も増やす必要が出て
経営が難しくなったため
2021年に今の料金にあげた経緯があります。

私自身は、法人設立2016年9月から
2021年3月まで報酬をいただいていません。

その間の月謝等の収入は
アルバイトスタッフの給与を中心に
使わせていただいていました。
私自身はアルバイトなどで食いつないでいました。
(いやー、なかなか大変でした。)

これまで赤字でずっと運営し続けてきましたが
実はこの2023年6月より値上げの決断をしました。
すでに保護者の方にも説明をし、ご理解いただきました。
感謝の気持ちでいっぱいです。
※2023年5月30日に本文内容を一部変更しています。

今回の変更で
週1:18,000円
週2:24,000円
週3:27,000円
週4:34,000円
となりました。

私達としては苦渋の決断でした。
ですが、場所があっても運営が継続できなければ意味がありません。そしてボランティアだけで運営できるほど、簡単な事業でもありません。運営資金が必要です。今回は悩んで悩んで悩んだ結果、このような結論に至りました。

このお月謝の金額で、やっと収支が
トントンになるくらいの計算です。
子ども達の学びや成長のために
内容を充実させていくためには
より大きな資金が必要です。

そこは私たちもご寄付や民間の助成金等を活用して、どんどんブラッシュアップしていきます。もちろん行政から援助がもらえるようにロビーイング活動も続けます。

読んでいる方のご家庭の子ども2人が
不登校になったことを考えてみてください。
もしうちで用意している「きょうだい割」も
なかったことを考えると
フリースクールに週4、2人通わせることで
なんと、毎月68,000円かかることになるんです。

「うちは関係ないし」と思う方もいますよね。

「不登校」という言葉を聞いて
遠い世界の話と考える親御さんも多いと思いますが
実際には99%の親御さんが
「まさかうちの子が…」とおっしゃるんです。
どの家庭にも起こりうることなんです。

文科省の調査でも、2021年度の不登校の児童生徒数は全国で約24万人と出ており、小学生100人に1人、中学生で24人に1人という計算です。ここ数年はずっと増加し続けています。

教員不足や労働環境の悪化などの学校の諸課題を解決できないでいる様子を見ると、教員個人が、一人ひとりの児童生徒に寄り添った関わりをできる環境になっていくかというとその見込みは薄いです。これからも不登校の子ども達は増えていくでしょう。教員個々の努力によって可能になることもあるでしょうが、限度がありますし、最近は教員自身が精神的にまいってしまい休職・退職ということも増えてきています。

がんばる先生ほど疲弊するし、先生が手を抜くと孤立する子どもが増えていく。まさに負のループです。国が教育に予算をがっつり割く、人材不足の解消・労働環境の改善をするなどしないと、このループは断ち切れません。

長くなりましたが、つまるところ
どんな子どもも不登校になる可能性があります。
そして学校外の学びの場を利用する場合には
家庭が費用負担をすることになる
地域のほうがまだまだ多いです。

想像してみてください。
急にあなたの子どもが不登校になった。
フリースクールを利用するには
毎月5~10万円の出費が必要らしい。
あなたは即決できますか?

月1~3万円となれば
ちょっと可能性が出てきませんか?
「いろいろ工面すればなんとか…」
と考えるチャンスが生まれませんか?

そうした各家庭の経済的理由で
子どもの学びや人とのつながりを奪いたくない
その思いで今値上げをしない選択をしています。

栃木県の最低賃金も高くなり
パートアルバイトの時給がアップしましたが
それも企業(NPO)努力でなんとか踏ん張っています。

普段子育てや家庭を守ることに奮闘する親御さん
そして生きることに精一杯な子ども達の
表情を思い浮かべて
「一緒にがんばっていきましょう」という思いで
法人運営しています。

もう1つここでしっかり伝えておきたいことがあります。
「あそこのフリースクールは入会金で5万円かかるけど…」
「あそこは週2の利用だけで4万円かかるよ」
とおっしゃる方もいるのではないかと思います。

上記で述べた通り
子ども達を支えていくためには
そのくらいの料金をいただかないと
満足にまわせないのも事実です。
ここに書かれている料金より
高い月謝を徴収するフリースクールさんを
決して責めることのないように
お願いいたします。

ご家庭にもそれぞれにあるように
フリースクールにもそれぞれの
考え、やり方があるんです。

変えるべきは制度です。
声を届けるべき相手は国・行政です。
みなさん一人ひとりの力を集めて
「教育にお金をかける国」に変えていきましょう。

6.本来、「不登校」は「学校に行かない」という状態を示す言葉でしかない

「不登校」というのはあくまで、結果の状態を示す言葉でしかありません。本人の生きづらさがどこにあるのかについては、改めて個別具体に見ていく必要があります。

・先生から怒鳴られ、罵倒され、「自分はダメ人間なんだ」と毎日思ってしまっているかもしれない
・家の中でなんらかの問題を抱えているけれど、友達にも先生にも相談できずにいるかもしれない
・友達と表面的には仲良くしているようでも、本心を誰にも言えず、ずっと我慢する日々を送っているかもしれない
・生まれながらに識字が人より苦手だけれど、周りに気付いてもらえず「怠けるな」と言われ傷ついているかもしれない
・生まれながらに身体が弱く、みんなが普通にいられる環境でも常に何らかのダメージを蓄積しているかもしれない
・自分の性に疑問を感じているけれど、友達同士ではむしろそれを面白がる人が多く、自分の存在の根幹が揺さぶられているかもしれない
・仲の良かった友達にSNSで陰口を言われていることに気付いて、誰も信用できなくなっているかもしれない

子ども達は、大人が気付かないところで、たくさんの傷つき体験をしています。もちろん傷つき体験だけでなく、楽しい体験もあります。楽しい体験は周りに共有できても、傷つき体験は周りに共有しづらいのです。

「お前が悪い、と否定されるかもしれない」
「どうせ言ったって流されるだけだし」
「私は弱い人間だって思われたくない」
「親には心配かけたくない。元気な自分でいなきゃ」

そんな気持ちになるのです。
誰か相談できる人がいたり、休みたい時に自由に休める文化があったり。そんなことが身近にあれば良いのですが、公教育ではそれが難しいのが現状です。
私としては、先生たちすら余裕を持つことのできない環境にある公教育を受けて、日々傷ついていくくらいなら、いっそのこと学校の外に出て、多様な学びや人とのつながりを得たほうが良いくらいにも思っています。0か100か論だけでなく、週3学校、週2学校外という新たな登校スタイルを確立するのもありですね。

「不登校」=「問題」のように考えられることがまだまだ多いのですが、その年齢、個人の状況に応じた学習ができ、日常的に人と会いコミュニケーション能力を育んだり、自分の人生を形成していく機能が、学校外にあればなんら「不登校」でも問題はありません。
問題なのは、「不登校の子ども・家庭」ではなく、「不登校になったときに、それを理解することができず、かつ他の選択肢を用意していない社会」なのです。

私たちが利用料の値上げをしないのは
家庭の経済的格差によって
子ども達の学びや人とのつながりに
差をつくりたくないからです。

私たちが利用料をいただくのは
子ども達の安心安全をつくっていくために
充分な人と環境が必要だからです。
そのための資金が必要なので
無料で実施することができません。

本心としては
「無料でやってるし、登録も必要ない。朝でも夜でもいつ来てもいいよ!」
と言いたいんです。
それができず、自分の能力不足を痛感しています。

もっともっとできることを増やして
1人でも多くの子どもや親御さんに
安心を届け、学びや人とのつながりをつくり
一人ひとりが幸せになる社会をつくりたいです。

かなり長くなってしまいましたが
フリースクール経営の数字の部分から
私たちの考え方も含めて
伝えさせていただきました。

話せばきりがないのでこのあたりで
締めさせていただきます。

「もっと詳しく聞きたい」
「フリースクール、親の会やりたいんだけど」
という方は、ぜひ個別にご連絡ください。
下記にメールいただければ、私が直接対応します。

npokeydesign@gmail.com

あ、それと最後にちょっとだけ
よければあなたの力を貸してください。

「フリースクール、ちょっと応援してみようかな」
「子ども達のためになるなら」
そんな方は寄付でご支援をお願いしたいのです。
500円から寄付ができます。

最後、告知になってしまいました。
ここまでがんばって書いたのでお許しください。

最後まで読んでくださりありがとうございます🍀
みなさんの日々の意識や声掛けで
子ども達の未来は大きく変わります。

これから生まれてくる子ども達に
胸を張って残せる日本社会をつくっていきましょう。

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