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能力主義とか「頑張れば報われる」という考えについて

能力主義とか「頑張れば報われる」という考えは、元々は好きになれる考えでした。

学校の勉強はできた方だったし、習い事を頑張って表彰されたこともありました。

翻訳の世界は、成果物の質と量で評価され、能力主義と結びつきやすいのもある程度理解できます。

しかし、私のキャリアは…。

就職活動では、発達障害のこだわりの強さや衝動的発言から対人コミュニケーションに支障をきたしやすく、面接が高いハードルでした。

最初に正規就職した職場では、パワハラ的指導や差別発言が飛び交う環境で、適応障害に近い症状になりました。

その後、フリーランス翻訳者としての自立を目指したものの、翻訳会社のトライアルになかなか受からず、案件がマッチせず、困難を極めました。

そこで、障害者手帳を取って再就職することにしました。身体障害者に比べ、精神・発達障害者を拒む企業がいかに多いか、痛感しました。障害者雇用での就職活動を始めて内定が出るまで、およそ10か月もかかりました。

それでも、健常者と同等の仕事内容や給与水準で採用する企業に出会えたことに、希望を感じました。でもその職場は、翻訳能力が数か月で要求水準に達しなかったという理由でクビになりました。

それからは全く再就職できず、履歴書に空白期間を作らないようにするため、フリーランスのライター・翻訳者を名乗るようになりました。

実家の両親の援助がなければ、これまでやっていくことができませんでした。

これまでの人生で不採用だったのは200~300社くらい。就職できても、どの職場にも定着することができませんでした。

私は、こういう体験をしていくうちに、どうも能力主義の考えを手放しで肯定できなくなってきました。

成功者は「頑張る」ことで偏見に囚われる。彼らは、本人が自分の「苦労」や「努力」を正当化したい(報われたい)ために、一つの価値観(たとえば偏差値)だけを長年目指すうちに他の価値が見えなくなってしまうために、本人の無意識のうちに偏見が強化される。

しかし、運や偶然を捨象し、すべてを本人の頑張りや能力に帰する社会は、人を切り捨てがちな社会であり、故に脆弱性が高くなる。成功に限らず、失敗したり自分含め家族がいつそこから逸脱するか、というのもまた偶然や運に左右される。

価値観の多様性がますます求められ、SDGsが目指されている。このことも、能力主義的な社会の限界が明らかになってきたからだろう。

「私は偏見をしていない」と言い切るのではなく、偏見は自分の中にもあると自覚し、自分の正しさで人を切り捨てず想像力をもって自分の価値を相対化するマインドセットがこれからの社会ではますます必要になる。

若宮さんのような影響力のある起業家から、こういう発信がされることを、心強く思います。

ある条件にはまらない人ははじき出され、能力を磨き、実績を作るベースは与えられない。元々そのようなベースを与えられた人に有利な仕組みになる。

結局は「有名大卒の健常者の男性で、個性が強すぎないこと」が「成功の条件」に結びついていないでしょうか。

そして与えられたベースで成功した人はピンとこない。

私は、当事者目線の声にならない声を必死であげるようになりました。自分の体験を、解決すべき社会の課題に結び付け、「変わろうよ」と呼びかけました。

私の発信は、真の多様性の尊重を目指す運営がなされ、そんな運営に共感した人が集まるSNSで広がっていきました。他のSNSなら、「努力もしないで周りにばかり求めるな」という攻撃が殺到し、つぶされていたでしょう。

発信すればするほど、様々な機会や人に恵まれるようになりました。

それからというもの、人生の再起をかけてやることも決まりました。

これからの私は、リンクトインのネットワークで得た海外の最先端の情報やキーパーソンに関する翻訳まとめ記事を発信し、日本を本気で変えたいと思う人に役立ててもらおう、と考えています。日本の主要メディアがカバーしない海外の最先端情報(ビジネス、IT、ダイバーシティ、社会課題など)の翻訳まとめ記事の定期購読マガジン。

でも、なんとか這い上がって成功したとしても、バイアスを強める主張には絶対与しないと決めています。

かつて、車いすの乙武洋匡さんが『五体不満足』で世に出た後、「障害者でも頑張れば乙武になれる。社会や構造の問題ではなく、本人の努力だ」と言わんばかりの主張が一部でされるようになりました。

現実には、障害の影響で過酷ないじめやハラスメントにあったり、仕事が続かない、といった人が、見えないところに多くいます。生きづらさから抜け出せない人は、上のような主張に苦しむようになりました。

いまの乙武さんは、このことへの反省から、生きやすい社会にするための発信をされているとのこと。

私も変えたい。


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