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「直感」文学 *羽があったとしてさ*


 「ねえ、もしもさ、人間に羽があったとしたら、私たちの生活は大きく変わっていたんじゃないかって思うの」

 そりゃそうだろう。僕たちは今羽のない人間として生きているのだから、羽が生えていたとするならば根本から大きく生活スタイルが変わってくるんじゃないかと思う。

 「そしたらさ、きっとどこまでも飛んでいくのよね。ああ……もう、そう考えただけでも、とっても楽しいの」

 どこまでも飛んでいく?まあ、そうかもしれない。だけど、もしどこまでも飛べる羽が僕にあったとして、僕は一体どこに飛んでいったらいいのだろう?

 今すぐに会いたい人?行きたい場所?それとも、雲の向こうだろうか。

 「私はきっと、知らない国へ行くわ。そして、たくさんの人たちと出会うのよ」

 まあそれも一つ、あるのかもしれないけど、それではあまり夢がないように思えるのは僕だけだろうか。

 そうだな……。僕だったらきっと、ただなんの意味もなく空を飛び、その風景を眺めているんじゃないかと思う。

 「ねえ、あなたはどう思う?」

 僕は本を閉じた。たとえ本の中の世界であっても、考えることは僕たちとあまり変わらないのだということを考えると、なんだか変な気分になる。

 今のところ僕は空を飛べないし、もちろん羽だって生えていないのだった。

 羽……。必要だろうか……?

 そんな疑問は、いつの間にか空高くへ消えていってしまった。

古びた町の本屋さん
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