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本当はない 自由意志

あなたは毎日、自分の意志に則って行動していると思います。
仕事をしなきゃいけなかったり、家事をしなきゃいけなかったり
ある程度の制限はあると思いますが、基本的には自分で決めて行動していますよね?

でも最近の脳科学によると、
「自由意志なんてものは無い!」
という説が濃厚らしいです。

自由意志とは何か?

「自由意志はない」という話をする前に、
そもそも「自由意志」とは何なのかを少し考えてみましょう。

自由意志の反対は、無意識です。
人は目的を持っていれば、それを実現させようと計画通りに行動します。
でも、常に意識的に行動するのは不可能です。

あなたはこれを読みながら何回まばたきしましたか?
そんなの数えてないですよね?
人は目の渇きを防ぐためにまばたきをしますが、
それは無意識の自分が勝手にやってくれます。
こういう無意識の行動がなければ、おそらく人間は生きていけないでしょう。

つまり、意識的に意図して行う行為が自由意志で、
意志に関係なく体が勝手に反応しちゃうことが無意識ということですね。

ただ、意識的な行動だと思ってることも、
実は無意識によって行っているのかもしれませんよ?


一瞬だけの自由意志

アメリカの生理学者ベンジャミン・リベットは、
1980年代、自由意志があるかどうかに関する実験を行いました。
それによると、人が何かをしようとする0.35秒前に脳は活動を始めている
(体を動かす準備を始めている)ことがわかりました。

その実験はこうです。
まず実験の目的は、「腕を動かす瞬間」と「腕を動かそうと思った瞬間」と「脳活動が起こる瞬間」を計測することです。

被験者の腕や頭に計測系を付けて、脳波や腕の動きのタイムを計測しました。
そして、被験者の目の前にはモニターが時間を示し点があり、どの時点で腕を動かそうと思ったのかを後で報告してもらいました。

その結果が分かったのがこの順番です。
①まず脳活動が起こり、
②腕を動かそうと思い、
③腕を動かす

つまり「腕を曲げよう」と思う前に脳活動はすでにスタートしていたということになります。
この時の脳は「補助運動野」という部位から「準備電位」という信号を発するのですが、
「準備電位」の発信から意志が生まれるまでは0.35秒。
そして腕が動くまでは0.2秒。

このことから、自由意志は「0.2秒」だけしか存在しないと言われました。
自由とはその行動を中断できることです。
そして中断は意志が生まれてから腕を動かす間までにしかできません。
(脳活動が始まってから意志が固まるまでの0.35秒という見方もありますが、どちらにしてもほんの一緒んですね)

行動は7秒前に決まってる

リベットの実験は1980年代のもので、現代の科学では脳活動の観察はさらに精密になっています。
脳科学者池谷裕二は、人の行動は7秒も前に決まってるという結果を実験で証明しました。

彼は被験者を、脳活動を可視化できる装置「fMRI」に入れ、ボタンの付いたレバーを握ってもらいます。
するとスクリーンに「k」「t」などのアルファベットが0.5秒間隔で次々映し出されます。
被験者は左右どちらのボタンを押すか決めた瞬間を覚えておいて、ボタンを押した後に、そのときのアルファベットを申告します。
これによって意思が生じた瞬間を測定できます。
それを検証すると、意思決定前に脳の補助運動野では準備活動を示す準備電位が測定されました。
さらに、それよりもはるか前に、前頭葉皮質の2カ所で活動があったのです!
前頭葉皮質の左側部が反応したときは左のボタンが押され、中央が反応したときは右のボタンが押されました。
この活動は被験者が申告した意志の7秒前に起こっていたのです。

行動しようという意志が生まれる前に脳がそれを決めているとしたら、
その行動は無意識の分野で決められていた、ということになります。

意志とは何か?

人間には全く意志がなく、全ての行動は無意識によって行われている。
むなしいことに、現代の科学はこのような結論に至っています。

人間の行動と言うのは全て無意識によって行われていて、無意識というのは、環境(体内環境も含む)への反応です。

でも、僕たちにはしっかりと意志を感じて意志にそって動いている感覚があります。
だとしたら意志の正体ってなんなんでしょう?

残念ながら意志の正体は、
「無意識の行為に理由をつけたもの」です。
(厳密にいうと、無意識を翻訳(=言語化)したもので、
無意識の中の翻訳できることだけ翻訳したもの)

つまり、腕を曲げるとき、
腕を曲げたいから曲げるんじゃなく、
腕を曲げてしまったあとに、
「腕が勝手に動いたんじゃない。腕を曲げたいと思ったから曲げたんだ」
言い訳するようなものですね。

意志を変える

意志は無意識の行為に対する理由付け。
そして、無意識は環境に対する単なる反応。

目が乾かないために無意識にまばたきをするのですが、意識的な行動もまばたきと一緒の無意識なものになってしまいました。

しかし考え方によっては、これは良いニュースです!
僕たちの行動が単なる環境の反応に過ぎないのなら、
環境を変えれば行動が良いものになる、
ということですね!

「自分を変えたいなら環境を変えろ!」
自己啓発本に書かれていそうな文句ですが、これは本当のことだったんですね。

自由意志がないのに、自分の意志で環境を変えるというのはやや矛盾した話ですが、できないわけではありませんよね?

僕たちはただ無意識で動く生物かもしれないけど、
文字や言葉という実態のないものに対して反応できる生物です。
やっぱり人間ってスゴイですね……

あれ??
いつの間に書き終わってる?
どうやら無意識のうちに書いていたようですね(笑)

参考
「読まなくていい本」の読書案内 橘玲
ずっと信じていたあの知識、実はウソでした!
WIRED
togetter
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