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寺嶋由芙オフィシャルインタビュー⑦ソロアイドルとフェミニズム。

さて、最後は、仙台からZOOMで参加してくれた、アメイジング・カイコマンさんです。

軽くアルバム聞いたんですけど、曲順が大人っぽいですね。最後の方にかけてっていうのだと思うんですけど、「#ゆーふらいとⅡ」、「仮縫いのドレス」の並びとか、いいバトンだなって感じがしたし、「冬みたい、夏なのに。」からの「君も好きだったんだね、夏」からの「君にトロピタイナ」でだんだんテンション上がってる感じ、ポジティブな感じを受けましたね

寺嶋:確かにポジティブな1枚になった気はしています。

大人ぽくも前向きっていうか、そういう感じがしました。

ありがとうございます。

「いい女をよろしく」とか、寺嶋さんの言動とかもそうですけど、フェミニズムとかそういうものに対する意識っていうのが高いように思えるんですけれどもご自身でそういった自覚っていうのがあったりとか、意識的な言動を心がけていたりとかっていうことありますか。

寺嶋:そんなにめちゃくちゃ、今「フェミニズム」って言われてるものに詳しい訳ではまだないから、語れるほどではないんですけど、とはいえ自分が女なので、やっぱり気にはなるというか。あんまりうちの親とかが女の子だからこうしなさいって言ってきてそれで育ったとか、それに抑圧されてきたみたいな気持ちはそんなにないんだけど。とはいえやっぱり女性でアイドルをやってると、若くてかわいい時期が華だみたいなものにどうしてもとらわれがちな仕事ではあるし、それを売りにしてきた仕事でもきっとあるから、年齢もそうだし、女性であることもそうだし、ビジュアルのこととかもそうだし、いろんなものによって道が狭められちゃったりすることが嫌だっていう気持ちと、でもそれを売りにしてきた「アイドル」っていうものへの憧れがあるからこそ自分もそこを目指したっていう気持ちと、なんかその折り合いをどうつけていくかみたいなのが自分の中で今1個テーマかなとは思ってます。

やっぱ何て言うんですかね、若い女の子を売りにするみたいな感じのアイドル業界があると思うんですけど、そういうのに若い女の子とかそういう価値観だけじゃなくて、それを更新していくみたいなそういう存在のような気もするんです

寺嶋:嬉しいです。

今、Negiccoさんもみんな結婚したりしているじゃないですか。でもまだ現役で全然活躍してるし、人気もあるしっていうの、そういうアイドルの方も増えてるような気もしますし、若くなきゃ駄目みたいなものは、今は少し前よりは是正されてるような気はするんですよね。コロナのあの持続化給付金のアイドルさん向け、同業者に向けた動画っていうものがあったじゃないですか。あれとかも、それこそアイドルっていう職業が割と搾取されがちっていうか、そういう中で権利を持つ労働者として、アイドルっていう存在を捉えているからできたものだと思うんですけど。そういう中でアイドル業界が改善すべき点とか、あとはちょっと今持ってる課題だったりとか、逆に最近こういうことよくなってきたなって思うこととかあったりしますかね

寺嶋:権利を持つ労働者だっていうことをアイドル本人がまだちょっと自覚が足りなかった部分もきっとあったし、アイドルを運営してる人たちも、どうしてもその意識が薄くて、というのもアイドルって自分で曲を作ったりとかっていうことが基本的にしないっていうか、そうそう、誰かにプロデュースしてもらったり、楽曲提供してもらったりそれこそ衣装も作ってもらって、いろんなものを与えてもらって、それらを武器として、ファンのみんなが、アイドルだよかわいいよっていうことで認めてくれて、ステージに立てるみたいな仕事なので。例えば何かアイドルになるための検定とかがあって、その資格を持ってたら必ずアイドルになれるとかっていうことではないから、すごく不安定な存在だなっていうのは自分でも思っているんですよ。こっからここまでの人がアイドル、例えば17歳から20歳までの人がなれるとかも決まってるわけでもないし、職業としてのルールが確立してない中で、2010年以降バーッて増えたから。すごくそこが曖昧なままきちゃってるゆえに、アイドル側も、「活動させてもらってるけど私本当にアイドルなのだろうか」みたいな、引け目だったりとか、もしかしたら自覚のなさだったりとか、いろんな部分があったし。アイドルを運営する側にも、「俺らがやってやってるんだぜ」みたいな気持ちがなきにしもあらず、そして誰かが辞めちゃってもメンバーを追加して他の子入れればいいやみたいな使い捨てみたいな思考を持っているような活動をしてきたところもあったりして、代わりがいる仕事になっちゃってたからこそ、お互いに雑になっちゃってた部分を直していけたらいいなと思って。私はありがたいことに早い段階でソロになったから、広い意味では代わりはいるけど、ある程度その、自分のコミュニティの中では、スタッフさんもすごい自分を大事にしてくれるし、ゆふぃすとのみんなも、大事にしてくれる、割とオンリーワンなところにいさせてもらえたからこそ、芽生えた意識な気がしてて。これが例えば何十人の大所帯アイドルの中にいたら、もうちょっとそこに気がつくのが遅かったと思うし、ソロアイドルだからこそ、贅沢な環境だからこそ、次の視点を持てたみたいな部分はあるのかなと思ってます。


今業界で、この流れはいいんじゃないかなみたいなプラスの面とかってあったりします?

寺嶋:アイドル側がちゃんとしかるべきところに相談する、したっていう案件が増えてきたのは、勇気のいることだし名前とかも出ちゃうからそこまでのことができないっていう気持ちはもちろんあって、我慢してる子今でもいっぱいいると思うけど、良かったと思うし、そういうおかしなことがあったらちゃんと専門の人が助けてくれるんだぞっていう事例がちょっとずつ見えてきていることは良いなと思っています。それは多分、アイドル業界がそうなってっていうだけじゃなくて、アイドルじゃないところで働いてる普通にいろんなお勤めをしている女性の方が、パワハラとかセクハラにちゃんと物申すようになったりとか、そういう訴えがきた時に、それはよくないことだねって言ってちゃんと賛同してくれる男性の人が増えたりとか、だからアイドルの世界の中だけのことじゃなくて、世の中がちゃんとそういうふうになってきたから、アイドルも言いやすくなったっていう部分はあるかなと。アイドルだけが頑張っても駄目なことだなと思うので。

確かに前だったら無視されていたような、問題にならなかったような発言とかが今はもうこれは駄目だよねっていうふうに、世の中全体が変わっていったりというのもあると思いますし、アイドル業界も当然社会の中で一部なので、社会全体が変わっていったら、それに引っ張られてっていうちょっとずつ良くなっていってるっていうような感じでいいですかね?

寺嶋:そう思います。社会の中の一部だからこそ、給付金の動画を出したみたいなところに繋がる。

搾取される存在ではないっていうか、ひとつのちゃんとした仕事だし、労働者だよっていうことですよね。

寺嶋:そういうふうに思って、誇りを持ってやっていきたいし、思ってもらえるように活動していきたいなと思ってます。

(女性に限らずですけど、)寺嶋さんの、働き方とかの意識で、もともとあったものなのか、それとも大学とかで、トミヤマ先生の授業受けてらっしゃったときがきっかけなのかをお伺いしたいんですけど。

寺嶋:大学きっかけがすごく大きいと思います。トミヤマ先生の講義を受けるまで、あんまり女性が女性であるから損をすることがあるってことに気がついてなかった。それが当たり前だと思ってて。もちろん男性が男性だからこそ困ってることとかもきっとあるけど、その性差にあんまり気がついてなくて、のほほんと生きてきていたので、大人になって、女性だと例えば出産のことがあるから就職で採ってもらいづらいとか、大学入学するときも女性の方がちょっと合格点を高く設定されてるとか、そういう問題とかがいろいろわかるようなってきたのが大学生の頃で、おかしくない?っていうふうにちゃんと気付ける環境を、もらえて良かったなと思ってます。多分そこで気がついてないと、20代でアイドルやって、みんながちやほやしてくれたとしたら、女で得してるって安易に思うことの方が多いまま大人になっちゃったかもしれないから。気づけて良かった部分ではあると思いますね。


トミヤマ先生の名前を出したので、「サバイバル・レディ」を聞いたんですけど、ちょっとセーラームーンっぽいなと思いました。

寺嶋:私もそう思ってました!(笑)

ちょっとだけ聴いたので、がっつり聴いたわけじゃないので、なんとなくの印象ですけど、なんかセーラームーンっぽいって思いました。

寺嶋:セーラームーンって偉大なんですよ。私、ちょうど世代なので思うんですけど、女の子たちがああやって地球のために戦ってた姿ってすごい大事なことだったんだなって、今わかるし。私これはトミヤマ先生に言ってないんだけど、セーラームーンのテーマソングの中で、「乙女のポリシー」っていう曲があって、それがもうめちゃくちゃ好きで、「サバイバル・レディ」は「乙女のポリシー」みたいな曲になったらいいなっていうのをすごく思ってたんです。そしたら、まさにそういう箇所をもらったから!ぴっと凛々しく、なんですよ。

セーラームーンっててよく考えると、それ以前に女性が戦うみたいな感じのものなかったかもしれないし、あったとしても戦隊モノの1男性チームの中の紅一点みたいな感じではあったかもしれないけど、

寺嶋:あと魔法少女的なものはあったかもしれないけど、セーラームーン、魔法の力だけじゃないからなっていう。

そうですよね、フィジカルでも強いっていうか、今プリキュアとかに繋がっていると思いますけど、そういうのも、もしかしたらあるかなって思います。

次の質問です。ソロアイドルとして活動されて、1人でやられてるじゃないですか。以前グループに所属していたけども今、ソロでやってるっていうのもあって、何か女性に限らずですけど抑圧されてると感じる人に存在してるだけで勇気を与えるような存在だと思うんですけど…

寺嶋:そうですか?(笑)だといいな。

そうだと思います。本当に救われてる人っていっぱいいるなと思います。
そういうことは意識されてます?


寺嶋:自分がそうなれてるかわかんないけど、団体の中にいると抑圧されちゃうことってあるじゃないですか。それこそ私がグループにいたときは、グループとしては尖ったことをして、アイドル業界の中でイチ抜けるためには、過激なことだったり、倫理的にどうなのっていうことをしてでも注目されなくちゃいけないって思ってた集団。その集団の中で私はすごく浮いてて、困ったなって思ってたし、正直あんまりメンバーともうまくいかなくて。でもそのメンバーとうまくいかないことを、“女の子って集まるとうまくいかないよね”、“女の子同士っていろいろあるよね”みたいなことにされちゃって、いやそうじゃないんだよ!って思ってたんですよ。別に女の子同士でも上手くやれることはいっぱいあるし、全然今私の周りもスタッフさん女性が多いけど、仲良くやらせてもらってるし、なんかそういう安易な、“女の子っていろいろあるよね”みたいなことで、アイドルグループの中の、私に限らずね、アイドルグループにいる子たちが本当の問題を見てもらえないのは、しんどいだろうなと思っているので。そういう意味でも、その、女だから〜みたいなことがなくなってきた今は、結構息がしやすくなってきているような気はするけど、そういうところを1個抜け出してソロになってみって思うことはやっぱり自分が納得してることが一番。心が穏やかに進んでいけることが大事だなと。例えば、これは実際あったこととかじゃなく聞いてほしいんですけど、例えばね、「アイドルをやってます、寺嶋さんのことを売るために話題が必要です、内容はいつも通りだけどなぜか10万円のCDを売りましょう」とか言われるとするじゃん。自分は全然納得してないけど話題性とか、何か採算がとかっていうことで、「10万円のCDをファンの人に売りましょう、ファンの人はあなたのこと好きだから高額でも買ってくれるに違いありません」みたいなことをされたときに、私は絶対に嫌だって言うし、やらないって言えるからいいけど、言えない職場環境の人もきっといる…みたいなことが、ソロだとそれがあんまりなく、進んでいける。自分がちゃんと納得して、作品作りもそうだし、売り方とかもそうだし、発信するものに関しても、私の意見を割と汲んでもらえる環境でやれてるのは良いんだろうなと思ってます。

わかります。やっぱり集団の中にいたりすると、自分はこれやりたくないんだけどなあと思ってても周りがみんな賛成だったりすると、反対の意見を表明しづらかったりとか。

寺嶋:言ったとしてもそんなに反映されなかったり、とかはある。そうするとその集団を自分が辞めるしかなくなっちゃうみたいな。

そうですね。居心地悪くなっちゃうと、つらくなっちゃうと辞めるしかないみたいな。

寺嶋:ソロだとそういったことがなくて、ありがたい。ステージに立つのは、私1人なんですけど、その作品作るにはいろんな人が関わってくれてるし、イベントするにもいろんな人が関わってくれてるから、その中に、そんなに意思疎通がずれてる人が今いないっていうのはすごい恵まれてるなと。
それはやめときましょうよ、みたいなひどいことを提案する人はいないし、私がもし道を外れそうになったら、ちゃんと「それはやめなさい」って言ってくれそうな人ばっかりなので。そういうところにちゃんとたどり着けたことが、ソロアイドルをやれている、秘訣じゃないですけど、支えかなというのは思ってて。多分オタクにも結構そういう人が多くて、例えばこうやって取材企画ですって言ったら、申し込んでくれる人って、今日みたいにちゃんと話を聞いてくれる人が多いし。「私はこれが好きです」って言ってやり続けていくと、それに賛同してくれる人とか、それを好きでいてくれる人が集まってくるのだなって思う。でもそれがゆえにコミュニティがちっちゃくなっちゃうのは良くないから、もうちょっと広げなきゃなっていうのも思うんですけど。


でも、やっぱり寺嶋さんの活動とかスタンスで、それはどうかな?みたいなことを言う人が周りにいないっていうのは、今までの活動だったりとか、 わかった上でファンになったりとか、活動を応援したりしてるっていう人が多いような印象があるんですよ。やっぱりゆふぃすともみんなまともな人が多いですし。

寺嶋:まともなんですよね、みんな。まともですね、真面目っていうか、まとも。それはとても誇らしいことだなと思います。

最後に、「みんな迷子」とか、「Last Cinderella」が、アイドルソングとしてのみじゃなくてYouTubeでシティポップ的な評価を受けているんですよ。由芙さんのアイドルとしての活動を知らない人も、曲だけ聴いてかっこいいみたいなことっていうのが起こっていると思うんです。僕の兄がちょっとCITY POPのDJとかやってて、CD渡したら、かけたりしてるらしくて。
アイドルとしての活動とはまた別に、楽曲だけ、1人歩きして評価されるっていうこは、どう思います?嫌だったりします?

寺嶋:全然嫌じゃない。めちゃくちゃ理想的だと思ってます。私が1人で発信できることって限度があるので。1人しかいないし、たまたまテレビ出てたのとか見て、かわいいなと思ってくれる人がどれぐらいいるかわからない。曲だけ耳にする機会で知ってくれるのはむしろチャンス。で、曲だけ楽しんでくれてもいいけど、何かの機会に、歌ってる人誰だろう?って調べて、本人までたどり着いてくれたらっていうのは、ルートとしてすごいありがたいことだと思っていて、だからこそ、たどり着いたときに嫌われない人でいたいなって思うんですよ。逆に、本人を好きでいてくれる人、このビジュアルなのか性格なのか、もしかしたら黒髪が好きなのかわからないけど、何かしらの要素で本人を好きになってくれた人が、「由芙ちゃんはすごくかわいいんだけど曲全然ダサいんだよね」みたいにならないようにも生きていきたい。

どちらかと言えば、自分も曲から入ったので。ジェーン・スーさんの作詞した、「カンパニュラの憂鬱」を聴いてかっこいいなと思ってからなので。

ありがとうございます。嬉しいです 。ジェーン・スーさんもそうだし、(西寺)豪太さんとか、佐々木さんとか中田さんとかいろんな方に楽曲提供いただいてるので、そのファンの方が聴いてくださることも、多い思うから、その時に「私の大好きな中田裕二さんが作曲をしたあのアイドル嫌な子だったわ」って思ったら悲しいじゃないですか。中田さんのファンが悲しまないように生きてきたいというか、(楽曲提供してくれた方が)“寺嶋さんに楽曲提供したんです”っていうのを、いつまでも胸を張って言えるように、別に自分がすごい人だからとかじゃなく、後ろめたさなくという意味で、楽曲提供したんですよって胸張って言ってもらえるようにはしてたいなと思います。

また共演したいミュージシャンの方とかの作曲家とか、作詞家の方とかっていらっしゃいますか?

ジェーン・スーさんにはまたぜひお願いしたいって思っています。まさに「OVER THE SUN」をすごい聞いてるんですけど、スーさんのたどり着いてる境地には、経験の差もあるし、全然私はそこまでは行けてないから。先をゆく人じゃないですか。そういう人から何か道しるべになるものをもらいたいというか。

今の寺嶋さんにスーさんの歌詞ってばっちりな気がしますね。もう1回やるなら今ぐらいのタイミングだとすごいいいかなっていう気はしますね。

「カンパニュラの憂鬱」のときと「猫になりたい!」のときは、私は直接お話はしてなくて。ディレクターの加茂さんが発注して、寺嶋由芙ってアイドルがいて、真面目なイメージで売ってるんで、それを裏切る大人の恋の歌をやってくださいとか。「猫になりたい!」のときも、オタクに追いかけられる存在じゃないですかある意味、その寺嶋由芙を、そうじゃなくて、好きな人を追いかけちゃうっていう女性像として書く、みたいな。私がいないところでそういう話が進んでいたので。次お願いするんだったら、もし可能なら一旦お会いするなり何かしら今の気持ちとか聞いてもらって、曲ができたらすごく光栄だなと思ってます。

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アメイジング・カイコマンさんより、感想いただきました!

今回は貴重な機会を頂き、ありがとうございます。
多少の緊張はありましたが、不安は全くありませんでした。由芙さんであれば真摯にお答えして下さるだろうという信頼感があったからだと思います。
私はリモートでのインタビューだったので、ゆっふるーむの延長のような、不思議な感覚がありました。
個人的な話ですが、地方在住ということもあってゆふぃすとの友達が少ないので、これを機にゆふぃすとの皆さんと繋がりができたらいいな、なんて勝手に思っています。Twitter(@AmazingKaikoman)でガンガン話しかけてもらってOKです!
また仙台にお越しいただける日を、名物のおいしいだいふくと一緒にお待ちしています。


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