暗黒ビズは常に雨とともに

雲がまばらな夕焼けの空だった。
その空の下を一人の男が歩いている。人気のない田舎道をきれいな夕焼けを見ながら歩くのは独り占めするかのようで男は好きだ。
男は警棒に付着した血をティッシュで拭く。2キロほど後方で転がってる奴はあっさりと情報を吐いた。
「おかげで珍しく早く終わったな」
男は赤色に染まったティッシュを放り投げ口笛を吹きながら歩く。


空は薄紺色に変わっている。男は電車の高架下を歩く。駅の方向から仕事帰りのサラリーマンらしき人影がこちらに向かって歩いてきた。
その時、冷たい感触が男の額に当たった。
男は空を見上げる。直後、土砂降りの雨が打つように降り注いだ。一気にシャツまで濡れた男は舌打ちをした。
「ツいてねえ!通り雨かよ!」

視線を空から戻したその時、男は自分の胸を赤色の光が照らしていることに気付いた。
「アァ?」
男が声を上げたと同時に乾いた音がした。紺色の空を背景に男の背中から血が赤い花の様にように噴き上げた。

「ア…」
男は胸から絶え間なく流れ落ちる血を押さえながら正面を見る。サラリーマンがサイレンサー付きの銃を構えていた。
「私は雨宮流平。依頼によりあなたを殺します」
言い終わるなり銃弾が再び男の胸を貫通した。男は倒れ足元の水たまりに赤色が混じり広がっていく。
雨宮は男の首筋に手を当て頷くと、立ち上がり片手で合掌した。彼が名乗るのは殺す側としてのせめての礼儀だ。合掌した手から雨水が流れ落ちた。


「リストの一人目を完了しました。確認を兼ねて後の始末をお願いします」
雨宮は専用の端末でクライアントに連絡を付けオフにした。
リストにはまだ十名弱の名前が連なっている。先は長い。

雨宮は黒色の雨空を見上げる。水滴が頭から流れ落ち続ける。
「今日こそは晴れたまま仕事できるかと思っていたが、また雨が降ったか…」
雨宮流平(仮名)、彼は非合法探偵兼アサシンにして雨男だ。彼が“ビズ”をする時は必ず雨が降る。


【続く】

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