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Don't Think Twice, It's All Right

幼い頃のボクはメソメソ、うじうじをいつまでも引きずる子供で、嫌なことがあったり悲しいことがあると、ほっておくといつまでもそのことで鬱ぎこんだり、泣いたりしてる、つまるところ、ものすごく女々しい奴だったわけだ。

ボクがそうやって煮え切らない言動をとってる時、親父がやってきてすごく怒るのだけど、その怒り方がちょっと変わってた。

笑え!今すぐ笑え! と怒るのだ。

今から10秒数える。10秒で笑えへんかったら、怒るぞ。と脅してくるのだ。

鬱陶しいことこの上ない。こっちはただでさえ気分が悪いのに、笑うことを強要される。ダブルバインドってやつだ。下手すると精神がおかしくなる。子供でもこれはなかなかキツイ。笑わないとゲンコツが飛んでくる、笑わないと泣かされる。なんで、ボクは仕方なしに笑う。

ハハハ。小さい声。少し顔を引きつらせながら、泣いてるのか笑ってるのか自分でもよくわからない。

すると、親父は、もっと笑え、腹から笑わんかいと、さらに強要してくる。

ボクもだんだんヤケクソになってきて、さっきより数段大きい声で、ハハハハハハと、声に出す。すると、たいてい親父も笑い出して、ボクもどうでもいいやという気になってだんだん本当に笑ってしまう。強制でも笑ってると、なぜか楽しくなったりするものだ。

面白いから笑うってのは当たり前だけど、笑うから面白い、笑うから愉しく思えるってのもこれまた真理なのかもしれない。

子供の頃は、こんなことがしょっちゅうあった。ボクが泣いたり、拗ねたり、怒ったりしてると、必ず、笑え!と怒られ、直ぐに笑うことを強制されてきた。

でも、いつからかはわからないけど、ボクは多分人よりも随分と切り替えの早い人間になってた。どれだけ怒ったり、気分が悪くなったり、落ち込んだりしても、すぐに切り替え、それらを忘れてしまうことが出来るようになってた。

何があっても寝て起きたら気分を改められるのだ。僕をよく知るひとは、そういうところの精神的なタフさというか鈍感さはすごいねと褒めてるのか貶してるのかよくわからない評価をしてくれている。

親父のあの不条理な教育?がどこまで、こういう性質の形成に役立ったのかは、よくわからない。でも多分全く無関係ではないんだろうと思う。なので、ボクは良かったと思ってる。ボクに仮に子供がいたとしても、まぁ、そんな不条理な要求を突きつけようとは思わないけど。

そりゃ嫌なことも悲しいことも怒り心頭に発することだって、いくらでもある。でも、そんなものにいつまでも感情をかき乱されてたらそれは損だ。さっさと気分を切り替えて、次の楽しいことを考えたほうが良いに決まってる。

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