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消費者とフィナンシャルアドバイザーのマッチングプラットフォームSmartAssetが資金調達ほかー6/20週注目のFintechニュース

こんにちは。Z Venture Capitalの湯田(twitter: yudamasak1)です。
今週もフィンテックに関するニュースをお届けします!
なんとなく今回は調達件数多かった印象あります。

資金調達

1. SmartAsset/消費者とフィナンシャルアドバイザーのマッチングプラットフォーム

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設立:2012/米国NY
調達金額:$110M/SeriesD
主要投資家:TTVCapital、Javelin Venture Partners、Contour Venture Partners、Citi Ventures、New York Life Ventures、North Bridge Venture Partners、CMFG Ventures他
URL:
https://smartasset.com/

SmartAssetは消費者とフィナンシャル・アドバイザーとのマッチングサービスと住宅ローンや税金計算ツールを提供している。今では月間4,500万人以上が利用するプラットフォームとなっている。消費者はサイトに訪れ、いくつかの簡単な質問に答えると、数分以内にニーズに合った3人の候補者とマッチングされる。プラットフォームにはアメリカ全土から何千人ものアドバイザーが連携しており、消費者の近くで自身にフィットしたアドバイザーがマッチングする。消費者はアドバイザーのプロフィールを見た上でオンラインで予約し電話などで退職に備えた積立などの相談ができる。Smart Assetは銀行口座やクレジットカードの比較、税務計算ツールなども提供し、あくまで消費者の最善の意思決定を支援することを焦点においたサービス設計をしているという。2018年6月にシリーズCを調達して以来、収益を10倍に増やし、年間経常収益(ARR)で$1億を超え、今回ついにユニコーン企業となった。

コメント:オンラインの金融商品仲介サービスは海外でいくつも存在していますが、フィナンシャル・アドバイザーとのマッチング機能がここまでフィーチャーされているサービスは珍しいように思います。元々IFAが存在するアメリカならではの部分があるとは思いますが、コロナパンデミックによる消費者の経済不安が専門家への相談ニーズを押し上げたのが背景にあるのではないかと推察します。また、様々な金融商品を提供する金融サービス仲介業ですが、実は住宅ローン、あるいは生命保険に特化したサービスから始まっているものが多いです。Smart Assetも元々住宅ローンの購入意思決定を支援する計算ツールを提供していました。これらの金融商品は高額であり購入する際に他のことについても考えが及ぶので、入り口としてここを抑えると横展開しやすいのでしょう。近い将来、日本においてもSmart Assetのような発展をする企業が出てくるだろうと注目しています。

参考:https://www.businesswire.com/news/home/20210624005332/en/SmartAsset-Raises-110-Million-in-Series-D-Funding-Bringing-its-Valuation-to-Over-1-Billion

2. DataRails/SMB向けFP&Aツール

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設立:2015/イスラエル
調達金額:$25M(43.5M)/SeriesA
主要投資家:Zeev Ventures、Vertex Ventures Israel、Innovation Endeavors、Vintage Investment Partners他
URL:https://www.datarails.com/

DataRailsはSMB向けに脱Excelの財務レポーティングツールを提供するイスラエルのスタートアップだ。実装に数か月かかる既存のレガシーソリューションの数分の1のコストで数週間以内にすぐに使用できる。同社は4月に18.5Mを調達していたが、今回追加で25Mを調達し、シリーズAを43.5Mでクロージングした。評価額は開示されていないが北米市場を中心に、数百の顧客を抱えており、累計調達額は$55Mとなった。2020年にARRは5倍に拡大したという。DataRailsの成長の背景には、昨年のパンデミックとリモートワークの普及によりSMB事業者も積極的に事業管理のためのソフトウェアを採用し始めたことが追い風になっている。しかし財務報告や管理をする部門が使用する適切なデータ統合ツールがなく、Excelを複数使う運用となっているのが現状だ。そこでDataRailsは、Excelからあらゆるものを分析および視覚化するのに役立つ、より汎用的な製品を作成した。財務チームは使い慣れたExcelと既存のモデルを引き続き使用しながら、Excelデータはリアルタイムに構造化されたデータベースに変換される。そしてダッシュボードを見ながらノーコードでグラフやプレゼンテーションを簡単に作成できる機能などにより、財務管理プロセスの作業を減らし、意思決定に集中する環境の構築を実現している。

コメント:アメリカを中心にFinance as a Serviceと呼ばれる領域は盛り上がっていますね。FP&Aの領域はエンタープライズ向けのANAPLANが上場していますが、現在はSMB向けのSaaSが増えてきている状況です。SMB向けサービスとしてはplanfulというスタートアップも有名です。日本においても今後徐々に浸透してくると考えていますが、DataRailsのようにExcelをベースとしたオペレーションフローにいかにシームレスに入り込むかというのが重要な要素となりそうですね。

参考:https://techcrunch.com/2021/06/21/datarails-books-25m-more-to-build-better-financial-reporting-tools-for-smbs/

https://www.accesswire.com/641342/DataRails-Secures-185-Million-Series-A-Led-by-Zeev-Ventures-to-Bring-Enterprise-Level-Financial-Planning-Solution-to-SMBs

3. Yield/固定レートのDeFiレンディング

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設立:2020/米国San Mateo
調達金額:$10M/SeriesE
主要投資家:Paradigm、Framework Ventures、Symbolic Capital Partners、CMS Holdings、Variant、DeFi Alliance他
URL:
https://yield.is/

DeFi(分散型金融)は世界で急速に拡大している分野であり、従来の金融要素をどんどん取り込むようになっている。Yieldは2020年初頭に設立された、DeFiによって固定金利の貸付を実現するスタートアップだ。これまでユーザーは変動金利での貸し借りしかできなかったが、固定金利の貸付はDeFiの中でも比較的新しいイノベーション領域とされている。Yieldが提供する商品は、従来の金融業界のゼロクーポン債に似ている。一定額のトークンを借り手が割引価格で販売して資金を得ることができる。固定金利のレンディングを提供しようとする暗号通貨スタートアップはYield以外にも出てきており、3月にはElementと呼ばれるスタートアップがAndreessen Horowitz等から$4Mの資金調達を行ったことが発表された。調査会社のMessariは、「DeFiイノベーションの次の波」として、Yieldと、NotionalFinanceおよびyUSDと呼ばれるプロジェクトを挙げている。

コメント:DeFiはFintechの次の大きな波と言えると思います。あらゆる金融機能のルールを塗り替えることが予想されており、毎週ニュースの量が増えています。この領域に関心のある起業家の方がいたらぜひお話したいです。

参考:https://decrypt.co/74300/defi-yield-fixed-income

<その他資金調達>

オンライン決済の統合APIを提供するオランダのMollieが$6.5 billionの評価額で$800Mを調達

韓国の金融スーパーアプリTossを提供するViva Republicaが$7.4 billionの評価額で$410Mを調達

英国の信用スコア企業Clearscoreが$700Mの評価額で$200Mを調達

消費者向けクレジット企業Upgradeが$3 billionの評価額で$200Mを調達

メキシコのSMB向けクレジットプラットフォームKonfioがシリーズEで$125Mを調達

住宅金融プラットフォームLowerがAccelをリード投資家にシリーズAで$100Mを調達

香港の暗号通貨金融サービス会社AmberGroupが、1億ドルを調達しユニコーンへ

自動車金融プラットフォームLendbuzzがシリーズCで$60Mを調達

ホワイトレーベルのクレジットカードプログラムを提供するDeserveがシリーズDで$50Mを調達

Square元幹部が立ち上げたオーストラリアの中小企業向けペイメントサービスZellerが$400M AUDの票額で$50M AUDを調達

STOプラットフォームを提供するSecuritizeがシリーズBでモルガン・スタンレー等から$48Mを調達

運送業界版Squareを提供するRoadSyncがシリーズBで$30Mを調達

個人投資家向けBloombergAtom Financeがソフトバンクのラテンアメリカファンド等から$28Mを調達

英国とEUの5,000+の銀行を接続するオープンバンキング企業Voltが、約26億円を調達

機関投資家向けのホワイトレーベル仮想通貨レンディングプラットフォームTesseractが$25Mを調達

パリを拠点とする仮想通貨市場データプロバイダーKaikoが$24Mを調達

SMB向けFP&Aツールを提供するDataRailsが$25Mを調達

アメリカの移民向けモバイルバンキングサービスMAJORITYがシードラウンドで$19Mを調達

暗号通貨コンプライアンスおよびリスク管理プラットフォームTRMLabsがシリーズAで$14Mを調達

住宅購入の全額キャッシュオファーを実現するAccepti,incがデットとエクイティで計$90Mを調達

市の料金、通行料、税金を支払うことができるアプリを提供する自動車保険Cauraが、約4億6,000万円を調達

インシュアテックに熱視線 オンライン保険サービス「百保君」が数億円調達

Tiger Globalが印フィンテックBharatPeへの投資に向け交渉中、バリュエーションは約2750億円

<IPO>

オンライン完結住宅ローンBlendが$3.3 billion以上のIPOを計画

<M&A>

VISAがスウェーデンのオープンバンキングプラットフォームTinkを€1.8 billionで買収

投資プラットフォームStashが金融教育アプリPayGradeを買収

Cross River Bankがオンライン貸付市場のデータプロバイダーPeerIQを買収

金融機関のコミュニケーションツールを提供するSymphonyが音声トレーディング技術Cloud9 Technologiesを買収

海外Fintech関連

Revolut losses widen as profitability in 2021 hangs in balance

Affirmが集団訴訟に直面、「追跡が困難な支払いや、高額の料金をもたらす」と主張

Verizonが、10代の若者にモバイルバンキングのオプションを提供することで、金融業界にさらに参入

中国アント、信用情報の共有を国有企業と協議=関係者

国内Fintech関連

コインベース、日本参入暗号資産交換業者に登録

Apple専用の「あと払いプランApple専用」を提供(ペイディ

会計ソフトのフリー、法人カード事業に参入

日本拡大を狙うStripe。パートナー戦略とローカライズ強化

住信SBI銀、定額自動振替サービス開始貯金箱のような利用狙う

三菱UFJ銀、決済データで商談仲介12月開始

読み物

DeFi-ing the rules of traditional finance

Why Facebook Is Still Playing Catch-Up In Payments

Introduction to the Open Banking Phenomenon

Sifted-Report-The-Payments-Revolution

Embedded Finance 101: The bridge connecting Tech and Financial services

メルカリ暗号資産参入の深層「NFT」で流通革命狙う

矢野経済研究所、生命保険領域における国内InsurTech市場に関する調査結果を発表

最後に

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