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買取保証により持続可能な消費スタイルを提案するCroissant

Masaki Yuda@Z Venture Capital

こんにちは！Z Venture Capitalの湯田です。

みなさんは、商品を購入する際に、その商品の将来の価値について考えたことはありますか？高価なブランド商品を購入する際に、その後の再販価値が保証されているとしたら、もっと安心して買い物ができるのではないでしょうか。今回は、そのような新しい買い物体験を提供するアメリカのスタートアップ、Croissantについてご紹介します。

※今回の記事も、現在Z Venture Capitalでインターンをしているmomokaさんに調査の協力をして頂きました。


会社概要

Croissantは2022年にアメリカで設立されたスタートアップです。現在のバリュエーションは$84Mで、総資金調達額は$48M（直近の2023年に$24Mを調達）となっています。

サービスの特徴

Croissantは、Guaranteed Buybacks™という概念のユニークなサービスを提供しています。彼らは、100万点を超える様々なアイテム（主に有名ファッションやハイブランドの商品）に対して最大75%の買い取り保証を行います。顧客は買い物中に商品の将来の再販価値を知ることができ、再販価値を考慮した上で購入を検討できます。これにより、低品質の商品や使い捨ての商品ではなく、高品質な商品に対してより多くの消費を促し、持続可能な消費を促進、循環型社会への貢献を目指しています。

CroissantはデータサイエンスとAIツールによって、リアルタイムに商品の買い戻し価値を生成しています。アプリを使うと、ユーザーの電子メールをスクレイピングし、過去2年間の全てのeコマースの購入履歴を取得し、過去に購入した商品の買取価格が表示されます。

出典：CROISSANT HPより
https://croissant.com/merchants

顧客は購入後に商品をCroissantアカウント内で流動資産として管理することができ、ワンクリックで簡単に再販できます。具体的には、Croissantアプリ内の「コレクション」としてGuaranteed Buybacks™にアクセスでき、預金口座のように機能します。また、顧客が販売ボタンを選択すると、数回のタップでアイテムを無料で発送できます。買い取り依頼後に商品を返送すると、Croissant が商品状態を確認、現金もしくはストアクレジットで買い取り代金の支払いが行われる仕組みになっており、顧客にとっては売却の手間や取引の待ち時間を省くことができます。このようにCroissantは購入前から購入後の管理、そして再販まで一気通貫でサービスを提供することで新しい消費体験を作り出している点が特徴的です。

また、CroissantはChrome拡張機能も提供しています。この拡張機能を使うことで、顧客はオンラインショッピングの際にシームレスに商品の再販価値を確認できます。例えば54ドルの商品を購入する際に、Croissantはその商品の再販価値が24ドルであることを通知し、顧客は実際の支出が30ドルであると認識することで、購入決定に安心感を与えることができます。これをブラウザ拡張機能を用いて広範な購買時に適用させています。

それだけでなく、Croissantは小売業者に対しても多くの価値を提供しています。

  • 収益増加: Croissantの利用により、平均注文額（AOV）の増加や定価販売数の増加が期待できる。

  • 返品数の削減: 購入時に再販価値を考慮することで、返品数の減少が期待できる。

  • 市場での存在感の上昇: 再販価格とデータ管理が容易になり、循環型経済へ貢献しやすくなることでブランド認知向上に繋がる。

店舗への統合方法

Croissantは、小売業者が容易にサービスを統合できるよう、以下のような統合方法を提供しています。

  1. 製品カタログの同期:

    • 小売業者はCroissantとの連携を確立し、製品情報をCroissantに同期することができます。これにより、各商品に関するGuaranteed Buybacks™が計算され、顧客に表示されます。

  2. ウェブサイトへのトグルの統合:

    • Croissantが提供するAPIやウィジェットを使用して、製品ページとカートページにGuaranteed Buybacks™の情報を表示するトグルを統合することができます。これにより、顧客は商品の再販価値を簡単に確認することができ、購買意欲が高まります。

市場

対象とするリセール（再販）市場は、世界だと1,300億ドル規模で急速に成長しています。しかし、小売業者がこの成長から直接利益を上げることは難しい状況です。これは、以下の理由によると考えられています。

  1. 複雑な再販プロセス: 小売業者は再販のためのマーケットプレイスリストを作成し、管理する必要があります。これは時間と労力を要し、専門的な知識も必要です。

  2. 価格競争の激化: 再販市場では多くの競合が存在し、価格競争が激化しています。これにより、再販価格が低下し、利益が減少する可能性があります。

  3. 在庫管理の課題: 再販のために商品を保管し、適切な状態で維持することは難しく、コストもかかります。

Croissantは、この課題を解決するために、小売業者が再販市場の成長を利用して新しい定価の販売を促進する方法を提供します。Croissantのプラットフォームを利用することで、小売業者は最小限の統合作業で再販市場から利益を得ることができ、定価販売の増加や返品の削減、AOVの向上といった効果が期待できます。

チーム

Croissantのチームは経験豊富なプロフェッショナルで構成されています。

  • Co-Founder and CEO: John Howard

    • KKRでのFintech専門のプライベートエクイティ投資家として、過去10年間にわたり電子商取引のポイントオブセールソリューションの増加を観察。Croissantを通じて、負債に基づく消費から資産所有への転換を目指しています。

  • Co-Founder and CTO: John Klose

    • 元Amazon、PayPal出身の技術者。

  • Head of Product: Vrishti Mongia

    • 元Meta、Moda Operandiの経験を持つプロダクトマネージャー。

実績

次に実績ですが、Croissantは設立から短期間で大きな成長を遂げています。ローンチ以来、再販された商品の見積もり精度は平均3セントの範囲内におさまる形となっており、顧客満足度も高い評価を得ています。Chrome拡張機能を通じて、顧客は購入時に商品の再販価値を簡単に確認できるため、心理的な安心感を提供できる点も評価を得ているようです。

導入ブランド

Croissantは、数多くの有名ブランドと提携しており、以下のようなハイブランドやファッションブランドが導入されています。

ハイブランド

  • Gucci

  • Versace

  • Tory Burch

ファッションブランド

  • Anthropologie

  • Aritzia

  • Birkenstock

  • Bloomingdale's

  • Coach

  • lululemon

  • Nike

  • Nordstrom

  • Patagonia

  • Reformation

  • REVOLVE

  • Saks Fifth Avenue

  • The North Face

  • UGG

まとめ

Croissantは、持続可能な消費を推進し、顧客と小売業者の双方に新たな価値を提供する革新的なプラットフォームとして急速に成長しています。これまでに多くの有名ブランドと提携し、高精度な再販価値評価を通じて顧客に安心感を提供しています。さらに、Croissantは小売業者に対しても収益向上や返品削減、市場での存在感向上といった多くのメリットをもたらしています。

このようなサービスは、日本においても同様のトレンドが考えられます。日本でもリセール（再販）市場が急速に成長しており、小売業者がこの市場から利益を得るための新しい方法が求められています。Croissantのようなスタートアップは、このニーズに応えることができ、持続可能な消費を促進する一助となるでしょう。

私たちも、このように購入の意味合いそのものを変革し、生産～消費のサイクルを変える革新的なスタートアップに投資することで、持続可能な経済の実現に貢献していきたいと考えています。LINEヤフーグループでもZOZO、アスクル、Yahoo!ショッピング、ヤフオクなど様々なEコマース事業を抱えています。Eコマース体験の向上や市場拡大においては、Croissantの成功事例を参考に、日本市場においても同様のビジョンを持つ企業を発掘し、支援していくことが重要と考えています。今後も引き続き、未来を見据えた投資を通じて、消費者と企業の双方にとって価値あるサービスを提供する企業をサポートしていきます。

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