「橋」はこれからの建築のキーワード

少し時間が空きましたが、投稿します。大学院入試が終わり、無事合格したようなので、卒業論文、卒業設計に進みます。

さて、建築と都市について考えていることをいろいろ言葉にしていこうと思います。今回は「橋」について。

皆さんは「橋」についてどんなイメージをもっているでしょうか。小さな川をまたぐ小さな橋から、大きな河川をダイナミックに横断する大きな橋まで、そのスケールは様々。木でできているか、コンクリートでできているか、鉄で出来ているか、さらには紙でできている橋もあります。

川によって分断された二つの土地をつなぐ橋は江戸時代から物資を運ぶ交通の要衝であると同時に、商人による商売、芸人による芸能文化の発信地であり、繁栄地でした。橋はそれぞれの土地の玄関口であると同時に、人が集まる場所でもあった。

現在、世界はコロナウイルスによって分断されています。今まで普通に会えていた人たちと会えなくなり、インターネットによって情報は垣根なく飛び交っていますが、人がリアルに集まり、話す場所は消えかかっている。密閉空間は廃止され、複数の人間の生活を囲う役割を担っていた建築が、どんどん分解されていくでしょう。

人間は、限られた敷地の中により多くの人間を収容するべく、人は塔を作りました。その建築はスカイスクレーパーと呼ばれマンハッタンから東京へと世界各地の先進国都市を埋め尽くした。だが、人類の発展と権威の象徴ともいえる男性型建築に対する批判から、現代建築家は女性型建築、つまり洞窟型の閉ざされた空間を創造し始めた。地中に埋めて外観をなくす安藤忠雄さんの地中美術館、三次元曲面で白い洞窟を実現した伊東豊雄さんの台中メトロポリタンオペラハウスがその代表と言えます。

しかし、このような洞窟建築の内部空間は、洞窟たるが故に採光面でも局所的、通風面でも閉鎖的になりがちで、全体が明るく開放的になる空間にはならない。せんだいメディアテークに端を欲する建築の壁を廃し、透明性の限りを尽くす建築の必要性はコロナにより拍車がかかるといえます。

一方、川にかかる橋はなぜあれほどに美しいのか、私はずっとその理由を考えてきました。それは1.構造躯体が現れていること 2.川の上に浮遊していること 3.余計な機能がないことの三点が言えます。

1は建築の透明性につながる。2はコルビュジエのピロティに端を発する、建築を地面から切り離すイメージを感じる。そして3については、対岸へと人や車をつなげるという目的しか持たない、その謙虚さが橋を美しくしているのだと思います。

都市の歴史的観点で見ても橋は人が集まる場所だった。そして橋そのものの形態を見ても、近代建築、モダニズム建築の要素が含まれており、塔にも洞窟にも似ない性質を持つ。

まだ自分が理想とする建築の姿は見えていませんが、「橋とは何か」「つなぐものとは何か」「何と何をつなげば新しい建築が生まれるのか」これをしばらく考えてみようかと思います。

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