見出し画像

【論文紹介】レビュー論文からみたハンドボールにおける運動連鎖

ハンドボールの科学は毎週金曜日に公開!
院生時代の研究テーマが「ハンドボール選手の投球動作の3次元動作分析とバイオメカニクスを活用した指導法の構築」であったので,主にハンドボールの投げる動きに関しての記事が多くなっていくかと思います!しかし,ハンドボールの科学ですから,幅広い分野の研究を紹介していきたいと考えています.是非,明日の練習に!指導に!活かしてください!

文献情報

タイトル
Systematic Review and Meta-Analysis on Proximal-to-Distal Sequencing in Team Handball: Prospect for Talent Detection ?

著者
Ben Serrien
Jean-Pirre Baeyens

ジャーナル
Journal of Human Kinetics (2018)

結論


ただの体力と競技力だけでタレント発掘してはいつまたっても原石は見つからないのかも知れませんね・・・

方法


・文献14本をレビューおよびメタ分析
・検索キーワードは投球に関わることと3次元分析に限った(詳細は論文を読んでください)


わかったこと!著者の主張!


・P-D sequenceは角速度では確認されるが,線速度では確認できない文献もある
・肩の最大内旋角速の発生タイミングはボールリリスとほぼ同時か,むしろその後に発生する
・動きとしては骨盤の回転,上胴の回転に続いて上肢の動きが発生する.
・タレント発掘の観点で考えると,P-D sequenceの具合を評価することは重要である
・↑の観点もしくは技術が適用されているコーチや選手のタレント発掘は,熟練者のデータとユース・ジュニア世代の選手との比較へと常げることができないが,有益である.
・これらの有効であるとされる運動パターン(P-D sequence)を発揮できる若い選手,恐らく,新しい技術の発見や怪我の防止に関しても優れている可能性があると著者は述べている.
・スポーツにおける早熟なタレントを説明するためには,事前準備されたコーディネーションと制御運動(内在的なダイナミクス)と特定のタスク間に密接に適合することが提案する.

P-D sequenceとは?


 Proximal-to -Distal sequence,いわゆる近位部から遠位部にかけての連続性,すなわち運動の連鎖性(Kinematic chainとも呼ばれる)のことです!数多くの研究で,熟練したピッチャーや槍投選手などの投動作で確認されているパターンのことを意味します.関節の線速度や角速度,エネルギーフローなど,多くのパラメータからその特徴が述べられており,同じく投動作であるハンドボールスローでもいくつかの論文でそれが確認されています.しかし,様々な研究で,ハンドボールにおける投球動作では運動連鎖を引き起こさない,というよりも途中で連鎖性が崩れることが確認されています.肩の動きに続き,肘の動きが急激に入るのが従来,言われていたパターンですが,ハンドボールにおいては肩と肘の角速度や洗足のピークタイミングが同時,むしろが逆転するケースすら報告されています.これは未だにハッキリとした理由は明らかになっていません・・・

まとめの前に先行研究のまご引きっ♪


・野球のピッチング動作において,適当ではない体幹の回転は,より高い肩の内旋トルクの増加(Aguinaldo et al., 2007)や肘の外反トルクの増加(Aguinaldo and Chambers, 2009 ),より高い肩の近位部に対する関節力と肩の外旋角の増加(Oyama et al., 2014)に影響するとされている.
・同様に野球のピッチング動作において,Urbin et al. (2013) は,スライド脚の接地(前に踏み出す脚の接地)から骨盤の最大回転までの局面,最大骨盤回転から最大上胴回転までの両局面の時間が増えることが,傷害リスク要員(最大の肩と肘のトルク)の減少へと繋がると述べている.
・↑はボール速度の低下をもたらす可能性がある
・最大角速度の発生タイミングの観点から,Wagner et al. (2014) は骨盤の回転,上胴の回転,体幹の前傾,肘の伸展,肩の内旋,前腕の回内,肩の屈曲の順にそのピークが発生していたことを報告している.
・van den Tillaar and Ettema (2011) は,ボールの重さを変える制限をかけ,ハンドボールの投球動作を調査している.
・van den Tillaar and Ettema (2009a)は,投球腕に対する制限をかけて同様に調査している.
・Wagner et al. (2012a) は,選手のレベルを3つに分け,調査したところ,レベル間にP-D sequenceのパターンの違いを発見し,低いレベルの選手は体幹の回転よりも前に主に体幹の前傾が発生してしまうことを報告している.
・Serrien et al. (2015) は,性差があるかを検討し,各キネマティクスパラメータの発生タイミングに違いがあると述べている.
・van den Tillaar and Cabri. (2012) は男女差はほぼないと主張している.
・Marshall and Elliot. (2000) は肘の動きよりも前に肩の動きがピークとなったことから,ハンドボールの投球動作では,常時P-D sequenceが見られるわけではないと述べている.
・van den Tillaar and Ettema (2009b)は,角速度で見ると肩から肘にかけてそのピークが発生したいたが,線速度では逆になっていたことを報告している.
・前腕の回内外の見ているのは,Wagner et al. (2010b)とWagner et al. (2012a)のみ.
・Zhang et al. (2018)はコーチは投球動作を評価する際,腕の軌道を見ることが重要であると示唆している.
・Wagner and Muller (2008) は,投球動作のトレーニングを調査している.
・異なるP-D sequenceパターンのある運動をすることは,タレント発掘でジュニア・ユース期に適用することは有益である可能性がある (Wagner et al., 2014).
・タレント育成プログラムでは,バリエーション豊富なトレーニングプログラムを通じて,アスリートが自分自身のコーディネーション力の可能性を探れるように努力すべきである(Schillhorn et al., 2010, 2012).


まとめ
ただの体力と競技力だけでタレント発掘してはいつまたっても原石は見つからないのかも知れませんね・・・

ハンドボールを徹底的に学び合えるオンラインスクール「kocs(コチ)」では,ハンドボールの投球動作に関する情報としてZOOMでセミナーしたりしてます!!もし,ご興味があれば,Facebookにてご連絡ください!また,公式Instagram,Twitterアカウントもあるので是非フォローを!


それでは!


 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?