もしも明日、大好きが消えたら

「月がきれいですね」での応募です。


▼あらすじ

海外旅行から帰ってきたメイ。
大好きだった彼氏に会いに行くと「好き」を伝えてくれず、とても不安に思う。

「どうして、好きって言ってくれないのー!!」

そう叫ぶメイの目の前に男が現れる。

「や、好きとかなくなりましたからね。なんて素晴らしいんだ、この国は」
そんなことをメイに言う男、恋愛超否定主義のリョウ。

ーーー『好き』という言葉を知るのはこの日本で私たちだけ。

そんな状態からメイが導き出した恋愛の答えとは?

▼登場人物


メイ(25)

リョウ(30)

タマキ(25)

女子高校生(17)

男子高校生(17)

▼シナリオ

ここから「月がきれいですね」のオリジナルシナリオになります。

○空港・中

空港を歩く人々。

メイ「日本、たっだいまーーー!!」

アロハシャツを着て、サングラスを頭に付けているメイ。
メイは、空港をバックに自撮りをする。その写真を彼氏のタマキに送る。

LINEの画面

メイ『マイダーーリン♡メイちゃんのご帰国ですよ💋♡』

メイ「送信っと!」

LINEの画面

タマキ「おかえり!家で待ってるぜ!」

メイ「すぐ行く♡お土産いっぱいあるよ♡♡」

タマキ「待ってるぜ」

メイ「…って、迎えに来てくんないのかーい!ま、いっか」

LINEの画面

メイ「あいらーびゅ!ダーリン!」

メイ、ニコニコしながら、キャリーケースを引き、歩いて行く。

○電車・中


電車の中で携帯の待ち受け画面である、タマキとのツーショット写真をニヤニヤしながら見るメイ。
その目の前で、カップルが手を繋いでいる。そして、隣には女子高校生と男子高校生が2人で座っている。
電車の端には、リョウが扉に寄っ掛かり、本を読んでいる。

女子高校生「明日って部活、休みだよね?」
男子高校生「うん。それが?」
女子高校生「なんか用事とか…あったりする?」
男子高校生「別に暇だけど」
女子高校生「あの!もしよかったら…さ!映画…見に行かない?」
男子高校生「映画?…いいよ」

2人を熱い視線で見つめ、手の拳をぎゅっとするメイ。

メイ「(小声で)いいぞいいぞぉ〜」

男子高校生「…ていうか、なんで俺?」
女子高校生「…え」

メイ「(小声で)ハッ!!」

男子高校生「何ていうか…」

メイ「(小声で)オゥゥゥ」

男子高校生「なんで俺なのかなって」

メイ「(小声で)戻っちゃったぁ…」

女子高校生「あ、あのね私…」
男子高校生「もしかしてお前…俺のこと……アレだったりする?」

メイ「アレってなんやねん!!」

2人の目の前に立ってるメイ。

メイ「がんばれ、恋する乙女!」

電車のドアが開き、降りるメイ。

メイ「アオ・ハル、だなぁ…」

携帯画面にキスするメイ。

○タマキの家

タマキの玄関に入るメイ。

メイ「マイダーーリン!!」

メイ、タマキのもとに走る。

タマキ「おう、おかえり!どうだった?バカンスは?」

メイ「ちょーーー楽しかったよ!!でも、大好きなタマキと行ったら、もーっと楽しかったのになぁ」

タマキ「“ダイスキ”ってなんだよ。英語かよ」

メイ「I LOVE YOU タマキ!I NEED YOU タマキ!」

タマキ「ハイハイ」

メイ「ねえ!ねえ!いつものは?」

タマキ「ん?」

メイ「ダイスキだよ!ギューッ!からのチュー!」

タマキ「ん?」

メイ「ダイスキのギューッ」

タマキ「ん…?」

メイ「え…?」

タマキ「ねえ、メイ、お土産見たい!」

メイ「う、うん…」

タマキの背中を見ながら、首をかしげるメイ。

○川辺

メイ「って、大好きって言えやーーー!!」

大声で叫ぶメイ。

目の前の猫に向かって

メイ「もう、どうして大好きって言ってくれないの…」

猫「ニャー」

今日のタマキの様子を思い出すメイ。

メイ「英語だったら、I LOVE YOUでしょうが」

後ろから突然現れるリョウ。

リョウ「ふっ」

メイ、リョウを睨む。

リョウ「なくなりましたからね、ダイスキ」

メイ「は?」

リョウ「2週間前からこの日本に、ダイスキって言葉はなくなったんですよ。ああ、なんて素晴らしい世界…。恋愛のない時代がやってくるとは…。すなわち、本当のメスとオスの共存の世界。全ての支配から自由な国の誕生だ。非常に素晴らしい」

メイ「…」

メイ、ズカズカ川に歩き、川の水を被る。

リョウ「?!」

手に水を救い、リョウにも水をかけるメイ。

メイ「えいっ!悪夢が」

リョウ「冷たっ!いでしょう。初対面の人に向かって、一体何をするんですか」

メイ「いや、夢かなって」

リョウ「は?」

メイ「は?」

リョウ「まぁ、ある意味、夢のような世界ですよね。恋愛のない世界なんて」

メイ「…言ってる意味が全く1ミリも1ミクロもわかりませんが」

リョウ「恋愛なんてただの浪費でしょう。好きなんて、所詮は一時的なものですから」

メイ、電車の中の男子高校生と女子高校生を思い出す。

メイ「これはきっと夢ですけど!水は冷たかったですけど!でもでもでも仮にそうだったとしても、それでも人は誰かを好きになるんじゃないんですか?」

リョウ「そうだったとしても、それを伝える方法がないでしょう」

メイ「だからそれはぁ!…あれですよ、ギューとか、チューとか!あんなことやこんなこととか、です…よ…」

メイ、ふとタマキとの【ギュー!チュー!】やりとりを思い出す。

メイ「好き、じゃなかった…?」

リョウ「ふっ。そもそも“好き”という感情も言葉も概念も、恋愛すら、日本から消滅したんです」

メイ、泣きそうになりながら

メイ「なんでそんなこと言うんですかぁ!じゃあ、ハワイに戻ればいいってことですか…?」

リョウ「は…?」

メイ「でもあなたは知ってるんですよね?好きって言葉…?ちなみにあなたのことは大嫌いです!なんで、大嫌いなあなたにしか、大好きが通じないんですかぁ」

リョウ「あなたねえ…!無礼ですよ。恋愛なんて、何かの役に立つものじゃないでしょう」

メイ「そうかもしれないですけど、それでも私の全部なんです。ああ、この悪魔ー!」

リョウ「大体ねえ、日本には元々“好き!”なんて言葉、あってなかったようなものなんですから」

メイ「どっちなんですかぁ!この悪魔ぁ!」

タマキ「や、だから。隠語ってあるでしょう。“月がきれいですね”みたいな」

メイ「今、月出てませんけど」

タマキ、ため息をつく。
メイ、空を見ている。

○タマキの部屋

ハッと目を覚ます、メイ。
裸でタマキが隣で寝ている。衣服はベッドの周りに散らかっている。その衣服を見つめるメイ。

メイ「大好きがなくなったら…」
タマキ「んー…」

タマキ、起きる。タマキ、メイをギュッと抱きしめる。

メイ「今のギュッ、なんのギュ?」
タマキ「えー、なに?」
メイ「まぁ、もうなんでもいっか」

メイ、着替え始める。

メイ「ねぇ、タマキ。もし、大好き、って言葉がなくなったらどうする?」

タマキ「どしたの?急に」

メイ「ううん。そうなる前に彼女に伝えた方がいいよ。なーんてね」

メイ、鍵を机に置き、笑いながら、家を出て行く。

○コンビニ

走るメイ。
コンビニ前で、店を鏡代わりにして、髪を整えるメイ。

リョウ「いらっしゃいませー」

リョウのレジに行くメイ。

リョウ「…え、メイ?何、どしたの」
メイ「大好き!」

コンビニにいた客が手に持っていたお菓子を落とす。

メイ「…あ、あのですね…。別れてから今もずっと大好きです、私とやり直して下さい」

頭を下げるメイ。
顔を上げるとリョウが微笑んでいる。
メイ、顔が赤くなる。

○夜道

夜道を歩くリョウとメイ。

メイ「わー!見て見て、星が光ってる」
リョウ「だな。いや…月がきれいだな」

2人微笑み、手を繋ぐ。2人、月を見上げる。

END

▼ひとこと&補足

メイはリョウと昔恋人で、とっくに別れています。
ずっとリョウを引きずっていたメイは、タマキとセフレのような関係をずるずると続けています。

そして、空港のシーンから川辺のシーンまではメイが夢で見たものです。

夢を見たメイは「もし、ダイスキという言葉がなくなったら、大好きな人に気持ちすら伝えられない」ということに気付き、現実で一歩を踏み出しています。

恋をしている時、夢の中では言えるのに…!とか
夢の中で言えたらなぁ、と思うのが乙女心だと思います。
恋愛をしている時、なんでだか不思議と最初の1歩やあと1歩が不安ですっごく怖いんですよね。そんな気持ちに寄り添った、恋愛ガールや片思いガールの背中をひと押しできる作品にしたいなと思ってます。

▼お問い合わせ先

深月あかり:akari.3zuki@gmail.com

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