40過ぎた既婚女がシェアハウスのドミトリーでひとり暮らしすることになった

4X歳、結婚して10年以上。共働きで、家賃を含めた家計は折半、家事も折半して生活している。双方の同意により子供はもたず、友達のような感覚でずっと仲良く暮らしてきた。

……と思っていたのは私だけだったようで、ある日、小さな諍いをきっかけに突然「この家を出ていけ」と言われた。この十数年私に抱えていた不満という不満が爆発したようで、とにかく離婚したい、今すぐ出ていってほしいと繰り返す夫を前に私は、急には無理だから1週間後にまた話し合おう、と返すしかできなかった。

1週間、粛々と生活をしつつ様子を伺っていたが、夫の気持ちが変わらない気配を察知したので並行して家探しも進めておいた。1週間後に「出ていって欲しい、という気持ちは変わらないか」と聞いたところ「変わらない」と即答された。

ちょうど世の中はコロナ禍のピーク、緊急事態宣言が発動された頃である。状況が状況なので内見を中止している不動産業者も多く、もしかしたら少し引っ越しまで時間がかかるかもしれない、と伝えたが「できるだけ早急にしてくれ」と言われただけだった。ああ、私が感染するかもとか、もしかしたら既に感染していて業者の人にうつしてしまうかもとか、そういうことを全く考えられないほどこの人はただただ私への嫌悪感しか頭に無いのだろうな。と諦めにも似た気持ちになり、翌日には内見に行って部屋を決め、その週末に引っ越しをした。夫には、離婚となるとふたりだけの問題ではなく家族なども巻き込むことになるから勢いでは決められない。しばらく別居してよく考えてから結論を出すのでも良いのではないか、と提案し、なんとか受け入れてもらえた。「まあ再構築なんて絶対無理だけどね」という感想付きではあったが。

今は引っ越してから2週間が経過したところである。このnoteを始めようと思ったのは、思いのほか楽しい今の暮らしを記録する場が欲しいなと考えたからで、別居に至った経緯や理由、夫への想いなどは特に記すつもりは無い。これまで書いてきたことは私という人間のプロフィールとして軽く前置きさせていただいた次第である。というわけで以下からが本題。


シェアハウスという選択肢が出てくるまで

家を探す、と一口に言っても私には大問題があった。40過ぎにして貯金が1円もないのである。生まれ育った家庭の事情もあるし、自らの愚かさのせいでもあるが、とにかく本当にお金がない。

夫はもともと恵まれた家庭で育ち、かつコツコツと貯めるタイプなので自分の貯金はずいぶんあるようだったが、私は常に困窮していて折半の家計を払うのが精一杯で、夫婦としての貯金ができないことを彼はずっと気にしていた。そこで結婚数年目から、月に1万円(ふたりで2万円)だけでも貯金に回す、という仕組みを整えてくれていたのだった。

夫はその、ふたりで貯めた100万程度のお金を全部くれてやるからその金で引っ越して離婚して欲しい、と言ってきた。私は夫と再構築をすることが最大の目標であるため、その提案を受け入れるわけにはいかなかった。お金を貰って綺麗さっぱり家から出ていってしまったら、もう二度と戻れない気がしたのだ。

家計として毎月払っている額は、1万円の貯蓄分も含めて8万円。諸事情で固定で支払わなくてはいけないお金がその他にかなりあるので、8万円を払うのが私にとってはギリギリだった。毎月の給料から固定費と家計を払うと1万円残るか残らないか、くらいの暮らしをしていた。つまり家を出たら、家賃+光熱費+食費(家で食べるのは夜だけなので、夕飯代)合わせて8万円以内に抑えないと生計が成り立たないということになる。職場は東京なので、都内でその値段で住居を探そうとなるとなかなか厳しい。

幸いなことにどんな汚くて古い家でも平気で住める図太さを持ち合わせているので、寝る場所さえ確保できればなんでもよかった。まずは敷金礼金0円で古いアパートを探してみた。6畳の和室、トイレ共同、キッチン無し、風呂無し……くらいの条件でようやく、5万弱の物件があるかなという程度。洗濯はコインランドリーを探すにしても最低限冷蔵庫は必要だろうし、そうなると荷物を運ぶのに赤帽かなにか頼むしかないだろう。ボストンバッグ1つで家を出る、くらいが理想だったのだが、アパートを借りるとなるとどうしても大掛かりになってしまう。

ある程度家具が備わっている場所、ということで次に思い浮かんだのはネットカフェだった。しかしコロナの影響で続々と営業自粛が始まった上、費用面でもネットカフェは厳しかった。調べると所謂ネットカフェ難民用にマンスリーユースプランなどもあるのだが、わりといい値段になってしまう。食費を考えると8万円を越えてしまうのは明らかだった。

家具があって……身一つで引っ越せて……安いところ……。行き詰まったとき、ふとひとりの友人のことが脳裏をよぎった。何度か遊びに行ったことのある彼女の家は、シェアハウスだった。彼女が、家電もあるし安いんだよ〜と言っていたことを思い出した。これだ!

正直この「三密を避けましょう」と言われてる時期に大勢で暮らすシェアハウスに引っ越そうなんて、先住民からしたら迷惑以外の何者でもないと思うし自分としても抵抗があるが、背に腹は代えられない。必要必急な事情だったのだ、悲しいけれど。


シェアハウスの探し方

早速彼女に簡単に事情を話し、シェアハウスについて質問すると、一切無駄を省いた的確さでオススメのサイト、ハウスを選ぶときのポイント、買ったほうが良いものなどがLINEで送られてきた。持つべきものは頭の回転の早い友人である。

彼女と話をしていて気づいたのだが、普通に「ひとり暮らしをしよう」と思って物件を探すと、シェアハウスはまず選択肢に出てこない。独身時代に何度も引っ越しをしたが、SUUMOのような物件検索サイトでも、街の不動産屋さんでも「シェアハウス」をサジェストされたことは無かった。

シェアハウスというものは「シェアハウスに住もう!」と思った人が能動的に探すものらしい。私はたまたま友人がいたことでそのような選択肢が浮かんできたが、もし何らかのきっかけでここを読んだ人が、これからひとり暮らしを考えたときに「そういやシェアハウスってのがあるんだったな」と思い付く一助になれば良いなと思う。

友人から、シェアハウスを探すならここがオススメ、というかここ以外は微妙、と紹介されたサイトがこちら。

確かに、管理がしっかりしており、安心して契約できる業者の物件が載せられているように感じる。ここで見つけて、良いなぁと思ったある物件に見学を申し込んだ(非常事態宣言前)ら、コロナの影響でしばらく内見も新規契約も断っている、という丁寧な連絡がきた。超真っ当。超信頼できる。だいたいこんな時期にシェアハウスに引っ越そうなんて人間はマトモじゃないからな!ガハハ! 

……ちなみに友人に「このサイト以外は何がだめなの?」と聞いたら「うーん、なんか、ちょっと汚いっぽい部屋が多い」とのことだった。

結局、ここではないサイトで見つけた物件を契約するに至ったのだがそれは後述。でも確かに「汚いっぽい」は合ってたので友人の感覚はあながち間違いではないかもしれない。いずれにせよ、シェアハウスに住もう!となったら、サイトで検索→見学を申し込む→見学→契約、という流れがスタンダードのようだ。もしかしたら街の不動産屋さんに飛び込んで「シェアハウスに住みたいです」と相談したら出てくる物件もあるのかもしれないが、未経験なので有識者の方がいらしたら教えてください。


ドミトリーとは

さて、シェアハウスを探しているとひときわ安価な部屋が目に止まる。それがドミトリーである。

そもそもシェアハウスとは、複数人で暮らす家に共有のリビングや浴室、トイレなどがあって、それぞれのパーソナルスペースとして個室がある形式だ。つまり実家のような構造で、風呂やリビングで家族とかち合うことはあるが自分の部屋にいればひとりの時間を確保できる。

ドミトリーというのはこの「自分の部屋」が更に相部屋となっている物件だ。たいていは部屋の中に二段ベッドが置かれており、上段と下段に入居する。もしかしたらきょうだいのいる家庭に育った方は、物心つくまで子供部屋は二段ベッドだったという方もいるかもしれないが、その生活を他人とするわけだ。

上記の参考記事の通り、ドミトリーを選ぶと自分のパーソナルスペースはベッドの上だけになる。

しかし賃料が圧倒的に安い。例えば新橋駅から徒歩2分とか、池袋駅から徒歩3分とか「そんなところに人が住んでるのか!?」というような立地の物件で家賃40000円なんて部屋がゴロゴロある。ベッドはもともと付いており、もちろんシェアハウスなので基本的にはこの値段に光熱費等も全て含まれている。(物件によっては洗濯機1回100円とか、別途かかる場合もあるが)

私はガサツで人の気配などが気にならないだけでなく、狭い空間が異常に好きで、旅行のときはわざわざカプセルホテルを選ぶほどなので、立地が良く家具が不必要で賃料が安いドミトリーは、今の自分にうってつけだった。シェアハウスを調べ、ドミトリーの存在を知ってからは通勤に便利な都内の一等地のドミトリーに的を絞って見学依頼を出しまくった。そうして辿り着いたのが今暮らしている家である。


物件探しをはじめて1週間。見学に行った翌日に契約し、引越したのが更に1週間後。住み始めてから2週間。この1ヶ月の間に環境が激変した。

この汚く狭く小さな二段ベッド(ちなみに下段)で食事も着替えも何もかもする生活は、もともと引きこもり体質の自分にはかなり向いていてわりと楽しく暮らしている。

シェアハウスを探していて感じたのは、特にドミトリーについては実際の暮らしぶりを知ることのできる情報が少ないということだ。自分はそれがちょっと不安だったので、荷物はどうしてるの? 食事は? ゴミは? 掃除は? などなど、ここはドミトリーに住む人間がどのように暮らしているかを淡々と記録する場にしていきたいなと思う。

特に私は料理と食べることが一番の趣味なので、食事について思考錯誤している毎日を残しておきたい。夫と暮らしていた家では調理器具や調味料も豊富にある中でやりたい放題だったのだが、ここに来て様々な制約が生まれた中で、それでも美味いものを食いたい、という欲求が今のこの生活を楽しむ原動力となっている。

明日以降は、自分のスペース(二段ベッド下段)を整えるまでの流れと、食事についてを綴っていきます。まずは導入まで。

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