文末に「念で」をつけるとエスパーな生活になる

 夏。清冽な陽光が世界を照射している。そんな朝、眼が覚める。念で。

 朝の身支度、というのは個人差がある。というのもやはり、歯みがきのタイミングというのが十把ひとからげにできぬのであろう。おれはまず歯をみがき、顔をあらう。そうして整髪し、頭部における朝の身支度を完成させるのである。念で。

 さいきんフルグラ生活はじめました。念で。

 浅鉢皿にフルグラを投入する、念で。牛乳を混入させる、念で。ちなみにおれは牛乳派だが、妻はヨーグルト派である。匙ですくって食う、念で。フルグラを咀嚼する、念で。そんななかひとり息子はおにぎりを食う、念で。

 息子が洋服を着替えない。てめぇ。おい着替えろ、となんど命令しても頑固に着替えぬので、仕方がなくパジャマを脱がさしめ、着替えをさせる。念で。

 頃日。アマゾンエコードットというのを購入し(念で)、生活に導入した、念で。しかし、これがまったく活用できていない。やっていることといえば、リマインダーに「ようたくんが保育園に行く時間」を設定し、時刻がくると、そう口語告知をさせる、というだけである。なのでその時刻、アレクサはそう言ってくれたのである。念で。

 息子を自転車にライドさせる、念で。おれも自転車にライドする、念で。ペダルに足をかける、念で。ペダルを漕ぐ、念で。体幹をしようし、左右の均衡を保ちつつ、車輪の回転におけるジャイロ効果を発動させ、この地球の引力なども利用し、保育園まで自転車を運転する、念で。

 保育園に息子をあずける、念で。あにはからんやもう時間がないやないかっ! こら遅刻やねんで! つって急いで自転車を操作し、駅に向かう、念で。パークに駐輪し、電車に乗車すべく、駅を駆けのぼり、改札をとおる、念で。なんとか乗車し、冷気の充溢した車内でようやく生きた心地がする。念で。

 駅から会社に行く、念で。箱型昇降機がくるのを待つ、念で。会うひとに(……おはようございます)を、直接脳内に伝える、念で。デスクに座り、各客人からのメッセージなどを感じ取る、メールで。いま世界ではどのような事態が勃発しているのか、を調査する、ネットで。社内の連絡や士気を高める、朝礼で。そうしてまた一日がはじまる、念で。

 そんなことを日記にかいてみた、念で。

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