新しいIRミーティングの形~投資家1人とIR担当者複数で対話する場~
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新しいIRミーティングの形~投資家1人とIR担当者複数で対話する場~

みなさん、こんにちは。スパークスの清水裕です。

先日、ストックウェザー社が企画した「SDGs意見交換会」にメインスピーカーとして参加しました。
相手方は上場企業のIRやESGの担当者。2回のセッションに分けて意見交換した企業数は合計17社。

通常、IRのスモールミーティングでは「一社の上場企業が、複数の投資家に説明する」という形式で行われますが、今回の意見交流会はこれを逆にした形。
「一人の投資家(私)が、複数のIR担当者と対話する」という流れです。

新しいIRミーティングへの参加を通じて気付いたことをシェアさせていただきます。

※約4分で読める内容です。

イベント概要

今回の「SDGs意見交換会」は、株式情報サービス企業のストックウェザー社による、SDGsの本質を理解してもらうことで企業の意識を変える、というプロジェクトの一環で2日間企画されたイベント。
ストックウェザー社が企画を練っているときに、某IR担当者から「スパークスの清水の話を聞きたい」というご意見があったそうで、お声がけいただきました。
余談ですが、推薦くださった方は、noteの記事を読んで私に興味を持ったとのことで、noteというメディアの持つ可能性を感じる出来事でした。

参加者は主にIRやESGに携わっている方々。
参加企業の規模は時価総額で言うと数千億円の企業も参加されていましたが、多くは1000億円未満ということで、いわゆる中小型株がメインのイベントでした。

1日目

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2日目

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気付き3点:熱量、混乱、渇望

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意見交流会を通じての気付きを3点にまとめて共有します。

一つ目は熱量の高さです。
全編を通して参加者の方々が非常に前向きに参加されていることが印象的でした。
途中退出される方もほとんどなく、参加者同士が対話をする場面も発生するなど、情報収集に対する意欲や横のつながりを求める姿勢が感じられる内容でした。
ストックウェザー社の準備が(お世辞抜きで)入念だったということも大きな理由でしょうが、やはり背景にあるのはサステナビリティに対しての関心度が急速に高まっていることがあげられます。

また、イベントに参加された方々がみなさんオープンな雰囲気の方が多かったことも熱量の高さにつながったと感じています。サステナビリティに関心のある方は他者に寛容な傾向があると感じますが、今回の参加者にもそのような傾向が見られ、楽しく交流することができました。


気付きの二つ目はサステナビリティ対応の現場で混乱が生じているということです。
サステナビリティについては新しい概念や用語が次々に生まれる状況であり、情報を持っていても、それが整理されていない状況にあるという様子が見受けられました。
それを端的に表すのが「SDGsについて対応をするとしたら何から手を付ければいいのか?」という質問です。
おそらくSDGsについて基本的なことはすでに理解されているのでしょう。その上で、範囲の広さや、自社の状況との整合性などを考えて、どこに向かって第一歩を踏み出せばいいのかがわからなくなっているという状況と推察されます。

私からは「まずは自社の強みを深掘りすること」ということと「フィードバックが必要であればIRミーティングで投資家に尋ねてみる」というアイデアを伝えさせていただきました。
参加者の中には「投資家に質問する」という発想をお持ちでなかった方もいて「非常に参考になる」というコメントをいただきました。


三つ目のポイントはアイデアを渇望しているということです。
先ほどの「投資家に質問してみる」ということも含め、提示させていただいたアイデアへの反応が非常に良いことに嬉しい驚きを覚えました。
Teamsの画面上で見える「頷き」や「表情の変化」などの反応の大きさは、私のオンライン会議経験で過去最高レベルだったように感じました。

その中でも、最も響いたメッセージを次の項目で紹介します。

最も響いたメッセージ

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「植林や清掃活動は投資家に評価されません」

2回のセッションともこのようなコメントをさせていただいた瞬間が一番大きな反応となりました。
「やっぱりそうかぁ」という苦笑いのような心情が画面超しに感じられました。
みなさん、植林にしても清掃活動についても「どうも、投資家が評価しないらしい」という意見を一度は耳にしてらっしゃるのでしょう。
その上で「環境や社会に貢献しているはずの活動が、なぜ評価されないのかがわからない」というすれ違いが苦笑いの背景にあるのだと思われます。

私が植林や清掃活動を評価しない理由。
それは、企業にはそれぞれの存在意義や強みを発揮することで世の中に貢献してほしいからです。
誰でもアクセスできる課題に取り組むのではなく、自分達の視点から社会課題を発見し、独自のリソースでそれを解決することを期待します。

もちろん、製紙会社が植林をすることや、清掃用具会社が清掃活動をすることは本業に関連するので評価に値します。
一方、本業で木材使用がほとんどない企業が、サステナビリティ活動の説明の最初に「植林」を紹介していたら、「本業の追求が甘いのではないか」という憶測につながってしまいます。
また、本業に関係ない活動は業況が悪化した場合にコスト削減として休止に至る可能性があるという点も、中長期視点で評価しにくい理由です。

企業側はなぜ「植林」を検討するのか。それは単にアピールのためだけではありません。
ITサービス系の企業からの質問は以下のようなモノでした。

「ESGというフレームワークで考えると何か環境面での貢献を示したいが、そもそも自社の活動においては温室効果ガスの排出量が少ないので削減する余地も少ない。少しでも貢献するために植林をすることについて、どう思うか?」

非常に真摯な態度だと思います。

ここで考慮すべきは、IRの場面では「排出量が少ないこと」自体が大きなアピールポイントになるということです。
温室効果ガス排出が多い企業に対して、投資家は対応コストが膨大になる可能性を懸念しています。一方で排出量が少ない企業は対応コストという面でリスクが低いため、投資家の懸念は一つ減ることになります。

更に、発想を変えれば自社の活動の中からSDGsへの貢献ポイントが見つかるのではないでしょうか。
私から提案したアイデアは以下のような点です。

①自社の温室効果ガス排出量を計測する。
排出量が少ないことを証明するということです。これで自信を持って脱炭素社会を渡っていけます。

②他社への啓蒙活動をする。
取引先や顧客企業に対しても温室効果ガス計測を促すということです。計測のサポートをすることも顧客サービスになるかもしれません。また、排出量が少ない企業との取引を優先することは、ESG投資家からの評価を高めることにつながります。

③脱炭素社会への移行に貢献する。
カーボンニュートラル対応が進む中で、温室効果ガスの排出量が多い産業の規模が縮小し、その結果として雇用調整が行われる可能性があります。そこで、雇用調整の対象となる人員を受け入れて再教育することは、脱炭素へのスムーズな移行に貢献することになります。雇用を新産業にシフトさせるということは「ジャストトランジション(公正な移行)」という表現で注目度が高まってきている考え方であり、積極的に取り組む姿勢はやはりESG投資家から評価されることにつながるでしょう。


おわりに

以上、SDGs意見交流会の参加報告でした。

ストックウェザー社からは好評につき、第二弾も検討しているというお話をいただきました。
多くのIR担当者と交流できる良い機会ですので、今後も積極的に参加していきたいと考えております。

最後までお読みいただきありがとうございました。


※内容は個人の見解を元に書いているため、スパークス全体の見解とは異なることがありますのでご了承ください。

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スパークス・アセット・マネジメント(https://note.sparx.co.jp/)所属。サステナブル投資チーム、ファンドマネージャー。投資対象はESGを軸とした経営改善企業を中心とする。対話を通じてその活動をサポートすることでステークホルダー価値と経済価値の両立を目指す。