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IR担当者がファンドマネージャーに期待していること ~GPIFのアンケート結果の考察~

スパークスのファンドマネージャー、清水裕です。
私は日本株に投資をするファンドの運用をしているため、頻繁に上場企業のIR担当者とミーティングをしています。

では、IR担当者はファンドマネージャーやアナリストに対して具体的にどのようなことを期待しているのでしょうか。

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が上場企業に行っているアンケート結果に「機関投資家に期待すること」というページがありますので、こちらカテゴリー別にまとめた上で、私なりの理解を述べていきたいと思います。

※3分ほどで読み終わる内容です

運用機関の体制についての要望

まず、運用機関側の体制について「投資判断と議決権行使の統合」を望む意見が見られます。
この背景には運用機関の組織が縦割り化していることの弊害があると考えられます。

私が所属するスパークスは会社規模が大きくないのでファンドマネージャーが投資判断と議決権行使の両方を行いますが、大手運用機関の場合、投資判断はファンドマネージャー、議決権行使はESG担当、と分業制になっていることが一般的です。
では分業体制で「ファンドマネージャーがポジティブ」、「議決権担当がネガティブ」という真逆の判断をすると、どうなるでしょう。
ポジティブな投資判断によって大量に株を取得して、議決権行使の際に多数の反対票を入れるという事態を引き起こしてしまいます。

上場した以上、企業は株主を選べない仕組みにはなっていますが、本音では「経営方針に賛同できないならそんなに株をたくさん買わないで」と言いたい場合もあるのではないでしょうか。
いずれにせよ、投資判断と議決権行使の担当者が違うことが、コミュニケーションを難しくしている様子が感じ取れます。

対話目的を明らかにしてほしいという意見

次に、「質問の背景を明確にしてほしい」という意見があがっています。
ミーティングの際に認識のズレが起きないようにするという目的のためで、対話をより意味のあるモノにしたいという前向きな姿勢が感じられます。

ここでは明らかにして欲しいポイントとして①投資スタンス、②投資で重視するポイント、③面談で重視するテーマ、の3点が記されています。

我々スパークスのサステナブル投資チームではIRミーティングの冒頭に「対話方針」を提示するようにしています。
この対話方針には我々がIRミーティングにおいて重視していることや、スチュワードシップ責任を果たす上で、企業側にご理解いただきたいことなどを記しています。
対話方針のご説明をすると「考え方が理解できるので助かります」というようなご意見をいただくことが多くあるため、質問の背景を明確にするというニーズがあることについて、私は日々の活動の中で実感しています。


フィードバック・提案を求める声

企業が望むこととして一番多かったのが「フィードバックや提案が欲しい」という意見です。

具体的にフィードバックや提案を求めている点として以下のような項目が挙げられています。

・資本市場・国際基準から見た改善すべき点
・各企業のビジネスモデル、事業環境、強みと弱みを理解した上での意見
・ESGについて注目している点と投資判断に織り込む方法
・運用機関の強みを活かした分析に基づく指摘やアドバイス
・運用のプロとしての示唆を通じた企業価値向上につながる気づき
・事業戦略やポートフォリオの在り方についての提言

コメントの中には「企業を動かす原動力となってくれることを期待したい」という表現もあり、我々ファンドマネージャーが果たすべき役割の大きさを改めて認識させられます。


対話後の評価における実質重視の判断への期待

ミーティングの場の対応だけではなく、対話を経て運用機関が下す判断についても指摘がなされています。
具体的にはESG評価と議決権判断の二点について、どちらも形式にとらわれず実質を重視した判断を下してほしいという意見です。

この点については以前に企業側からこんな不満の声を聞いたことがあります。

「株主総会議案について時間をかけて説明したのに、ミーティングの最後に『ガイドラインで決められているので反対』と言われてしまった」

明確にはおっしゃられませんでしたが、運用機関との対話は意味があるのか?という疑問を持っているように見えました。

単にデータとガイドラインを照合するだけなら、人間が時間をかけて行う必要性はありません。
もちろん、社内のガイドラインが厳格なため、議決権の判断としては反対にせざるを得ないということはあります。
その上で、対話の場を設けるのであれば、単に説明を受けるだけということではなく、それぞれの意見を交わらせることで、双方が気付きを得る場にするという姿勢が必要でしょう。


まとめ

以上、GPIFの上場企業向けアンケート結果において記載されている、機関投資家への期待について見てみました。

IRミーティングでファンドマネージャーが求められていること。
一言でまとめると「相互を理解し合い、共に気付きを得る」ということになるのではないでしょうか。
その実現のためには、上場企業と運用機関の双方がより良い体制を目指すこと、そして一人ひとりが専門性を磨き、人間性を高めていくことが求められます。

私も現状に満足することなく、対話の中身をより意義あるものにできるよう精進してまいります。


<参考>
※ESGデータやエンゲージメントについて、私の運用におけるスタンスは過去の記事にまとめていますので、参考になさってください。

※GPIFアンケート「第6回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」


上記の記事で参照したページはこちらです↓


※内容は個人の見解を元に書いているため、スパークス全体の見解とは異なることがありますのでご了承ください。

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スパークス・アセット・マネジメント(https://note.sparx.co.jp/)所属。サステナブル投資チーム、ファンドマネージャー。ESGを軸とした経営改善企業を投資対象とする。対話を通じてその活動をサポートすることでステークホルダー価値と経済価値の両立を目指す。