インベストメント・チェーンをつなぐ架け橋~私がnoteに記事を書く理由~
見出し画像

インベストメント・チェーンをつなぐ架け橋~私がnoteに記事を書く理由~

私は2021年から個人名でnoteへの記事投稿を始めました。

なぜ書き始め、誰に向けて、何を伝えようとしているのか。
この記事では自己紹介もかねて、考えをお伝えしたいと思います。

使命感を見出した経緯

私は2005年にスパークス・アセット・マネジメントに入社し、2012年に日本株のファンドマネージャーになりました。そこから一貫して担当しているのは「サステナブル投資戦略」という、ESG(環境、社会、ガバナンス)をプロセスに組み込んだ投資戦略です。この戦略は元々社内に存在していたわけではなく、自分の考え方を投影したスタイルを追求した結果、独立して立ち上げることになりました。

そんな私がよく受けるのは「なぜ2012年にESG投資を始めたのか?」という質問です。
日本でまだESG投資が見向きもされない時期に取り組み始めたので、興味を持たれるのでしょう。

その答えには、東日本大震災が関係しています。
私は福島県の沿岸部、いわき市の出身です。
地震から数日後、福島第一原発で起きた水素爆発。実家はそこから50キロほどの距離。危険と判断して両親を迎えに行きました。
爆発しそうな原発の方角に車で向かっていくのは勇気が必要で、大袈裟ですが決死の覚悟でした。

一連の出来事を通じて気付いたのは、この世界は意外に脆いということ。
そして、命をかければ自分も誰かのためになれるという実感です。
胸の中に生まれた、小さな使命感。
しばらくしてファンドマネージャーに任命された私は「世の中への貢献」と「良質な投資パフォーマンス」という2つの使命を両立することを目指し始めました。


独自のESG投資手法を確立

本来、ビジネスパーソンとして事業を通じて世の中に貢献するというのは当たり前の話ですが、金融業界においてはその考え方が薄まっていたように感じます。実際、ESGという考え方が2006年から提唱されていましたが、2012年時点はまだ日本においては浸透していませんでした。

そのような中で「投資による貢献」ということについて考え始めてみたものの、今とは違いESG投資の教材はほとんどなかったため、文字通り手探りでのスタートとなりました。
ムハマド・ユヌス博士の講演、マイケル・ポーター教授の論文、サステナブル投資を啓蒙するNPOへの参加、ソーシャルビジネスの学校への通学など、あちらこちらに学びの機会を求め、時間をかけて自分なりのESG投資手法を構築しました。

5年間の試行錯誤の日々を経て、2017年には独自に確立した投資プロセスによって積み上げた、良質なパフォーマンスを構築することができていました。
5年間のトラックレコードがあると大手機関投資家に対しても十分な説明力を持つので、顧客開拓を本格化し始めました。

ただし、この時点ではまだ日本でESGファンドへのニーズはほとんどなかったため、アメリカやヨーロッパの機関投資家をターゲットにして、日本株の魅力やESGの状況についてのメッセージ発信に努めました。

多くの海外機関投資家は「日本で本格的にESG投資をするファンドマネージャーは珍しい」という反応で、私の話に興味をもって耳を傾けてくれました。
(この記事の執筆時点では、私の戦略運用資産残高の約95%以上を欧米の機関投資家からお預かりしています。)


投資家とIRの架け橋

少しずつ海外投資家とのミーティングにも慣れてきた頃、「自分が珍しい存在ならば、果たすべき役割があるはず」ということを意識するようになりました。

そして、たどり着いた答えは「架け橋になる」ということです。

海外投資家との交流を通じて、私は海外の最新ESG情報に触れています。
その中には日本ではまだ知られていない情報が多く含まれている。それを持ち帰って必要としている人たちに伝えよう。
そう考えて検討し始めたのがnoteでの記事投稿です。

noteを書くにあたって、主な読者のターゲットを「上場企業のIR担当者」に設定しました。
なぜなら上場企業のIR担当者が、ESG対応に苦慮されている様子が散見されたからです。
苦慮されている理由は様々です。経営陣がESG対応に消極的なケースもあれば、逆にESGを重視していても開示方法がまとまらないケースもあります。

それぞれの課題について解決策を練るIR担当者に対し、現役のファンドマネージャーがESGについての考え方を発信すれば、何かのヒントを提供できるのではないか。
特にそれが欧米のESGの状況に精通している立場からのメッセージであれば、きっと役に立つはずです。

こうして、私はnoteを書くことで欧米機関投資家と日本の上場企業の間に橋を架けるという取り組みを行うに至りました。


インベストメント・チェーンを良くする仲間探し

noteで「橋を架ける」という取り組みは、「インベストメント・チェーンをより良くしよう」という思いに共感し合える人を増やすことにつながっています。

インベストメント・チェーンとは投資を通じたつながりです。それは単なるお金の関係と理解されることがありますが、本当はもっと人間的な要素を含みます。
関係者たちが夢を語り、アイデアを生み出し、叱咤激励するというつながりです。

人と人のつながりを基盤とする投資は事業活動に推進力と規律をもたらし、価値創出を後押しすると私は信じています。時には失敗を共有することにもなりますが、その経験が次の知恵を生み出します。

私にとってnoteはつながりを実現するための大切なツールです。
投稿を始めて半年が経ち、記事を読んだというIR担当者の方々から経営戦略やESG対応についての問い合わせが寄せられるようになりました。
「インベストメント・チェーンを良くする」という考えに共感し合える仲間が着実に増えていると感じています。

noteを起点に生まれた人とのつながりに感謝しつつ、次のつながりが生まれることを期待して、今後も記事を書いていきます。
ご支援のほど、よろしくお願いいたします。


※内容は個人の見解を元に書いているため、スパークス全体の見解とは異なることがありますのでご了承ください。


清水裕<プロフィール>

1998年、慶應義塾大学卒。証券会社、資産運用会社を経て2005年にスパークス・アセット・マネジメント株式会社に入社。中国、復旦大学への留学を経て、2012年ファンドマネージャーに就任しサステナブル投資戦略を新規立ち上げ。現在、海外年金資金、国内外公募投資信託の資金を運用。グローバル投資家向けセミナーへの登壇やSNSでの記事投稿によって日本のESG状況や最新のESG投資手法について情報発信を行っている。日本証券アナリスト協会検定会員。日本サステナブル投資フォーラム運営委員。生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ。

Twitter: https://twitter.com/yushimizu0827
LinkedIn:https://www.linkedin.com/in/yu-shimizu/

<外部メディア記事>

「お金で世の中に彩りを」スパークスの清水氏、日本経済新聞 公開日2021年8月30日、アクセス日2021年8月30日
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB00005_V20C21A8000000

Japan Equity White Paper. CAMRADATA Analytical Service. Published August 2021. Accessed August 26, 2021.
https://www.camradata.com/wp-content/uploads/2021/08/Japan-Whitepaper-FINAL.pdf

Is saving face worth it? Why old cultural practices hinder engagement in Japanese boardrooms. Investment Week Website. Published June 7, 2021. Accessed August 26, 2021.
https://www.investmentweek.co.uk/feature/4032279/is-saving-face-worth-it-why-old-cultural-practices-hinder-engagement-in-japanese-boardrooms

Special Report: Sustainable Investing Opportunities in Japan. Institutional Investor Website. Published November 18, 2020. Accessed August 26, 2021.
https://www.institutionalinvestor.com/article/b1p715xxdr9hk9/Special-Report-Sustainable-Investing-Opportunities-in-Japan

<出演セミナー>

2021年9月(予定)
“ESG and Sustainable Investments: The Digital Series” 
Institutional Investor

「資産運用会社の未来像を考えるプロジェクト」シンポジウム
日経SDGsフェス、日本経済新聞社・日経BP
https://project.nikkeibp.co.jp/event/sdgs2021/09/asset_management/
登壇日時:9月14日(火) 16:10~16:30

2021年8月
「SDGs意見交換会」
ストックウェザー株式会社

「CIOカンファレンス:ESGデータを活用した投資戦略とワークフロー」
S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンス 

2021年4月
「コーポレートガバナンスコード改訂、東証新市場区分そしてESG、あるべき市場との対話のかたちとは」
株式会社シェアードリサーチ

2021年3月
“GLOBAL EAST GOVERNMENT FUNDS VIRTUAL ROUNDTABLE”
Institutional Investor

2020年11月
“ESG and Sustainable Investments: The Digital Series”
Institutional Investor

2019年6月
“Pan-European ESG Summit Zurich 2019”
Investment Europe

2019年2月
新春セミナー「2019年の投資視点~株式投資における非財務情報の活用方法~」
GAIA株式会社

2018年2月
新春セミナー「2018年の投資視点~コーポレートガバナンスから見る日本企業の変化~」
GAIA株式会社



この記事が参加している募集

自己紹介

SDGsへの向き合い方

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
スパークス・アセット・マネジメント(https://note.sparx.co.jp/)所属。サステナブル投資チーム、ファンドマネージャー。投資対象はESGを軸とした経営改善企業を中心とする。対話を通じてその活動をサポートすることでステークホルダー価値と経済価値の両立を目指す。