自然の観察 第1 #014
2. 「自然の観察」の体系
「自然の観察」は、上記の趣旨によつて設定せられたのであるから、この趣旨を達成するやうに内容が組織立てられなくてはならない。
前に記した理数科理科の体系中の第一期・第二期は、かやうな意味を汲んで定めたものであつて、此処にこれを再記して置く。
第一期
児童身辺の自然物・自然現象・製作物に関する素朴的な観察・操作をさせ、簡易な工作を課し、自然に対する眼を開かせると共に、処理方法の初歩を指導する。
第二期
次第に組織的な学習に向かはせる。
第一期の特殊性
第一期・第二期を通じて「自然の観察」といふことになつてゐるが、施行規則第一號表によると、第二期に対しては、「自然の観察」に、独立して一時間の毎週授業時数が配当されてゐるが、第一期に対しては、理数科全体として毎週授業時数が定められてゐて、「自然の観察」と「算数一般」とに分けて配当されてゐない。これは、等しく「自然の観察」といつても、第一期は特に算数との未分化的な度合を強くし、第二期は、次第に分化を明らかにすることを意味する。即ち、第一期は、理科指導の第一段階であつて、算数と未分化的な点をその特殊性とする。以下は、この第一期のみについて記すこととする。
対象
第一期に於ける考察・処理の対象は、自然界の事物現象並びに製作物であるが、この期の児童の環境は極めて狭く、児童の身辺の外にはあまり出ないのである。又、児童の身辺にあるものであつても、児童の興味を引くものか、必要を感ずるものか、若しくは、是非児童に考察させて置く必要のあるものかが選ばれなくてはならない。
考察・処理
この期のはたらきかけの特徴を一言でいへば、素朴的であるといふことに盡きる。これを稍ゝ詳細に記すこととする。
観察
感覚的直観を根基とする。
例 赤いきれいな花だ。
涼しい風だ。
全体的直観的な把握をする。
例 生き生きとした芽生えだ。
真直ぐな長い一本道だ。(算数へ分離発展)
動態の短時間に於ける全体的観察。
例 虫・鳥・魚・獣等の動く有様。
舟・車・飛行機などの動く有様。
数・形・大きさの変る有様。(算数)
静態の観察。
感覚的直観と全体的直観的な観察を主とし、分析的・部分的な観察にあまり立入らない。数・形・大きさは、算数へ分離発展する。
比較観察の初歩。
あまり細かい点に立入らないで、どんな点が等しく、どんな点が異なるかを重点的に観察する。
数・形・大きさの比較は、算数へ分離発展する。
…#015へ続く
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