自然の観察 第1 #012

 (4) 科学的技能の修練に努め、日常生活に実践させるやうに指導すること。
 これは、理数科一般について注意すべき事項の最も重要なものの一つであるが、理科に於ては、特にこの点に注意を払はなくてはならない。例へば、理科に於ては、人体生理に関する事項を取扱ふのであるが、単に生理・衛生の知識を與へるのでなく、日常の生活を衛生的に営むやうな習慣をつけ、国民體位の向上を図るやうに指導しなくてはならない。又、機械・器具の取扱に関する技能は、観察・実験その他の作業に必要なものであるが、国民文化の進むにつれて、国民生活の実際に極めて重要なものとなつて来た。殊に、国防上からいつて、国民のこの技能を修練して置くことは、一刻もゆるがせに出来ないところである。随つて、機械・器具については、その構造・機能について理解を與へるだけでなく、これに慣れ親しませ、その取扱を身につけさせ、尚、進んでは改良の工夫まで行はせるやうに指導しなくてはならない。

 (5) 発見・創造の喜びを感じさせ、発見し創造する態度を養ふに努めること。
 これは、合理創造の精神を涵養する理数科の根本目的の一つであつて、理科の指導に当つては寸時も忘れてはならない事項である。観察・実験も新しいものを発見し、或は創造することを目標とする。生物愛育の念も、天地の化育創造に参ずる喜びに基づく。日常生活を秩序正しく、これを発展させるのも、つまりは新な生活の創造に外ならない。科学の発展の道は創造の道である。創造することに喜びを感ずる心を養ふことは、理科指導の積極的な最大の要諦である。しかも、かやうな心は、小さな事柄であつても、児童がみづから見出すやうに仕向け、又、工夫考案するやうに仕向けることによつて養はれることを考へて指導に当らなくてはならない。
 発見・創造は、その場その場の思ひつきで出来るものではない。うまずたゆまず努め、失敗してはその経験に省み、新な工夫考案をするのでなくては成功を期し得ない。かやうな持久的態度を養ふことに努むべきである。

 …#013へ続く

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