分子レベルで音を体感 映画『BLUE GIANT』超感想
ずっと見たいと思っていた映画『BLUE GIANT』、やっと見に行けた。
率直な感想、、
「感動した」なんて言葉じゃとてもとても収まらないくらい感動した。。
もっとふさわしい言葉がきっとあるはずだけれどなかなか見つからない。それがすごくもどかしくって。。
「なんていうか…とにかくすげぇ〜んだよ!!」
なんて、男子中学生が衝撃的なインディーズバンドを見つけて友だちに紹介するときような、言葉よりも表情と動きでぶつけたくなるような、そんな純粋な思いになった。
赤より熱い“青い炎”が私の心の底を突き破り、青の熱さを知る。
衝撃的だった。
鑑賞後はとにかく、嵐が去ったようだった。
私は、祭りの後のような気の抜けたような寂しさを胸に撫でながら、ただただひたすら熱い余韻に浸っていた訳で。。。
この余韻が消えてなくらないうちに感想を綴りたい。いや、奏でたい──!!
彼の人生は何度目?
まず、主人公の宮本 大(ダイ)。
私にとって彼は二度目の人生をやり直しているとしか思えてならなかった。
「俺はこのステージを絶対に忘れない」
彼が率いるバンド「JASS」のはじめてのライブで、心の中で大が言い放った言葉。
はじめてのステージなんて絶対そんなことを思える余裕なんてないはずなのに、まるで未来の自分を見据えているかのようなこの姿勢に私は驚いた。
1分1秒たりとも無駄にしたくない。
彼のジャズに対する直向きさは、一度目の人生で大きな失敗をして、その後悔の念をタイムトラベルしてなんとか取り戻そうとしている、それくらいの勢いさえ感じた。
“オレは世界一のジャズプレーヤーになる。”
「海賊王に俺はなる!」くらいの規模感で、少し照れてしまいそうな響きに半ば他人事と思ってしまいがちだが、彼の人間性と演奏を目の当たりにした途端、スクリーン越しに本気で彼を応援したくなる。
大が率いるバンド「JASS」のメンバーである、高校の同級生玉田 俊二(タマダ)や敏腕ピアニストの沢辺雪祈(ユキノリ)のストーリーにも涙が止まらなかった。
まるで彼らの人生を一番近くで応援してきたかのような、そんな錯覚さえ覚えた。
音を浴びるのではなく音の中に入る
本作品でなんと言っても象徴的なのがジャズの音楽。世界規模で活躍するジャズピアニスト、上原ひろみさんが音楽を監修しているのだから、これほど贅沢なことはないだろう。
十代のジャズバンド「JASS」。彼らの演奏はとても強く、生命力に満ち溢れている。冒頭1フレーズですぐに胸を掴まれた。
彼らの演奏は音それぞれの成分が感じられるようで、音を浴びるというより私もその分子の中に入り込んだような感覚になった。これはとにかく新体験だった。。
沸々と青の炎が湧き上がり、沸点に到達した途端、とめどないエネルギーがどどっと溢れ出す。
ちっぽけな人間ではどう足掻いても止めることのできない大自然の力、そんなエネルギーを感じた。
ダイナミックで宇宙(生命)を感じさせるような映像は圧倒的で、まるでアートのようだった。
彼らがジャズを演奏すると楽器が光る。楽器が鳴いているような、生き物のような印象でもあった。まるで楽器が彼らに生かされ、命が吹き込まれたようだ。
ピリッとした辛さ、まろんとした甘さ、大胆な味、繊細な味。ジャズのありとあらゆる味を五感で味わうような、そんな感じがした。
それはまるでジャズのフルコースをいただくよう。
料理とワインのマリアージュのように、音の成分と成分がぶつかって、化学反応を起こす。
ジャズってすごい。楽しくって、おいしい。
誰しもが抱く恍惚感!!
彼らの演奏を聴いていると、映画を観ているのにやさしく目を瞑り、耳をしっかりと傾けたくなった。それだけ彼らの音楽に真摯に向き合いたくなる瞬間がたくさんあったのだ。
映画の中の空間でありながら、彼らのステージを生で目の当たりにした観客が羨ましいとさえ思えた。
映画の中の観客と同じように、映画館の至るところで鼻をすする音がして、一体感とはこういうものだ、と教えてくれるかのよう。
鑑賞後、現実に引き戻された瞬間、隣に座っていた女性と「…ほぅ(すごかった…)」と同じような気持ちが通じ合った感じがして、なんだかすごく素敵な瞬間だった。
また、本作を観た人たちがどんな表情をして劇場から出てくるのか、シアター出口で待機して見てみたいとも思った。もちろん私はこの作品の制作に携わっている訳でもないのに(笑)
劇場を後にすると、どこかしらから聴こえるジャズに自然と耳が向く。
「JASS」がほんとうにいたら良いのに、と思いながら、いるはずもない彼らの存在を探してしまう。
これほど映画館のトイレで鼻をかんだ映画は久しぶりだったかもしれない…!
これからの続編が楽しみでならない。
まだ未鑑の方はぜひお早めに劇場まで!!
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