食べ物の話②〜ビスコ編〜

みなさんこんにちは。村谷由香里です。noteをご覧いただきありがとうございます。

マシュマロで好きな食べ物を伺ったところ、こちらのメッセージをいただきました。

最上宇宙至極第一完全食ビスコ

見た瞬間笑いました。この字面で元気になるわ。ここまでビスコ持ち上げることある？
ビスコは完全食ですがちゃんとごはん食べてくださいね。インフルエンザに気をつけて。

わたしは地元の子ども服屋で働いていたころによくビスコを食べていました。当時のわたしの職場はショッピングモールの中のテナントで、スーパーとゼロ距離だったんですよね。休憩のときは一階の食料品売り場でお昼ごはんを買っていたんですが、午後から頑張るためにお菓子も一緒に買っていました。ビスコとチョコボールが多かったような気がする。あとプチシリーズ。

子ども服屋の仕事は楽しかったです。小学生の女の子をメインターゲットにしたお店だったので、小さな友達がたくさんできました。20代のころ、いちばん楽しかったのはあの店で働いていた3年半かもしれません。当時は別段そんな風には思っていなかったけど、過ぎ去ると幸せな思い出ばかり蘇るのは、良い職場だったからでしょうね。

昼休みに買って残ったビスコは、暇な時間に仲の良いお客さんにあげていました。小分けの袋を開けて、わたしも店の隅で一緒にビスコを食べながら(本当はダメです)、クラブ活動がどうとか、昨日見たテレビがどうとか、好きなアイドルグループがどうとかいう話を「へぇ〜」と言いながら聞いていました。

わたしが25歳のときに店がなくなったので、当時小学6年生だった女の子はもう高校生になっています。改めて考えるとびっくりを通り越して目眩がしますね。時の流れというのは恐ろしいものです。わたしは当時から何にも変わっていないのに、彼女たちは目まぐるしい勢いで成長したことでしょう。

彼女たちは、店の隅で一緒にビスコを食べた服屋の店員のことを、もう覚えていないと思います。わたしも正直、地元でお客さんとすれ違っても気付く自信がない。
それでも、今は跡形もない店の場所にいくたびに、あのころの面影を探してしまいます。そしてわたしの本が発売になったとき、一緒におしゃべりをした女の子がひとりでも、わたしとあの店を思い出してくれたら嬉しいなと、贅沢なことを想像します。