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2018年10月の記事一覧
【掌編小説】晩秋のサクラ
こたつに足を入れるとき、一度中を確認する癖が抜けない。冬になると飼っていた猫がこたつの中で、端から端まで体を伸ばして眠っていることが多かったからだ。猫がこたつで丸くなっていることなんてほとんどなくて、大体どこから足を入れても「ここはわたしの寝床だ」というように噛みつかれた。だから、いつも細心の注意を払って、彼女の邪魔にならないように暖を取らなければならなかった。
猫は今年の春に死んだから、もう
【掌編小説】夜を重ねて
足の爪を切っている。
親指から順番に、爪切り鋏を差し込んでいく。ぱちんと、さっきまでわたしだった部分が切り落とされる。わたしは爪切りがあまり得意ではない。いつも切りすぎてしまって、小指から血が滲むことも多かった。
「ポメラニアンが飼いたい」
隣でテレビを見ていた彼が、ぽつりと呟いた。
わたしは手を止めて顔を上げる。最近買い換えたばかりのテレビの画面には、転がるように走り回るポメラニアンの映