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先生に知っておいて欲しい不登校のこと、子どもへの関わり方

はじめに


はじめまして。
NPO法人 D.Live(ドライブ)の田中と申します。

私は、滋賀県大津市で昼TRY部というフリースクールを運営しています。

自分自身、中学3年生の頃から学校がしんどくなり、なんとか高校へ進学したものの、秋くらいから不登校になりました。浪人して大学へ進学するも、1ヶ月ほどで行かなくなり、そこから1年半ほど引きこもっていました。

自分がしんどかったこともあり、大学時代にこの団体を立ち上げました。

この冊子は、先生向けに作成をしています。

「不登校の関わり方を知りたい」「どのように対応したらいいか分からない」という声をたくさんいただき、私たちとしてなにが出来るかと考え、この冊子を作ることにしました。

不登校に関して、まだまだ情報も少なく、実際にどのように関わっていけばいいのか、なにが正解なのか先生がたも分からない部分があると思います。

だからこそ、普段、不登校の子たちとずっと関わっている私たちがお伝えできることがあるのではと思い、記事を書きました。

ここに書いている多くは、考え方であったり、子どもへ関わるスタンスの話です。

先生がたは、親や子と関わるプロフェッショナルですよね。

だから、ハウツーなどはあまり書いておりません。

考え方や不登校の子を理解していただいた上で、ご自身のやりかたで保護者や子どもと関わってください。

不登校の課題は、「よく分からない」ということだと思います。

子どもがどうして学校へ行けないのか分からない。
どのように関わっていいのか分からない。
保護者になにができるのか分からない。
先生としてなにができるのか分からない。

そんな「分からない」と思うことについて書いたのがこの冊子です。

少しでも、子どもの未来を明るくするために日々、奮闘されている先生方にご覧いただき、少しでも参考になりましたら幸いです。


NPO法人 D.Live
代表理事 田中 洋輔


追記
YouTubeにて、不登校について分かる動画いくつかあげていますので、こちらにも貼っておきますね!


2. 不登校に関すること


不登校へのよくある勘違い

まずは、不登校のよくある勘違いについて見ていきましょう。ここの部分をわかっていないと、良かれと思ってとった行動が子どもを傷つけたり、関係性を悪化することにもつながります。

サボっている。怠けている。

不登校とは,多様な要因・背景により,結果として不登校状態になっているということであり,その行為を「問題行動」と判断してはならない。
『不登校児童生徒への支援の在り方について』(文部科学省 2016年)


文部科学省が言っているように、不登校は決して問題行動ではありません。
結果、学校へいけなくなっただけであり、怠けているわけではありません。むしろ、不登校になる子の多くは真面目な子が多く、学校に行かなければならないと思っています。


家の居心地が良いから学校へ来られない

例えば、学校へいかず家でゲームばかりしている子もいます。しかし、多くの子どもたちは、学校へ行けない時間の暇つぶしとしてゲームをしています。学校へは、行かないのではなく、行けないのです。家の居心地がどうのとか関係なく、学校へ行くのが怖かったり、どうしても体が動かないから学校へ行けないのです。

原因を取り除けば学校へ行ける

不登校になったとき、多くの場合にはきっかけがあります。しかし、実はきっかけよりも、背景の方が大事なのです。
不登校の素質と言うものがあり、それはどんな子どもでも少なからず持っています。例えば、特性として大きな声が苦手とか完璧主義でこだわりが強いなどです。彼らは、うまくいっている時は良いのですが、何かしらのきっかけで学校がしんどくなることがあります。しかし、彼らは少なからずもともと学校がしんどかったのです。目に見えていないだけで、不登校予備軍だったのです。それが、きっかけがあって爆発したに過ぎません。そのため、きっかけである原因を取り除いたからといって、すぐに学校へ復帰するとはならないのです。なぜなら、原因を取り除いたところで、そもそもの子どもの特性は変わらないからです。


育て方の問題

不登校になると、親の育て方が悪いんだと言う意見もありますが、全く関係ありません。もちろん、家庭環境が劣悪な場合は影響を受けますが、一般的に愛情を持って子育てをしている家庭において、不登校と育て方には関係性はありません。ただ、単純に子どもが学校に合わなかった、先生に合わなかった、クラスに合わなかっただけです。

学校へ来ると楽しそうにしているから、きっと来ることができる

行きしぶりや不登校の子が、たまに学校へ来ることがあります。すると、学校に来るのが嫌だったのが嘘のように楽しく過ごしていたりします。大人が見ると、「あれ? 楽しそうにしてるじゃない」と思います。そして、次の日学校へ来ないと、首をかしげるのです。あんなに楽しそうにしていたのにどうして学校へ来れないんだろう?
理由は簡単です。無理をしているからです。不登校になる子は真面目で、よく気を使い、人の目を気にする子が多いです。そんなこが、学校でしんどい姿を見せるでしょうか?
「大丈夫?」と、心配される方が絶対に嫌です。ならば、無理してでも明るく振る舞おうとするのです。一見すると楽しそうに見えても、必死で笑顔を作り、楽しそうに振る舞っているのです。もちろん、本当に楽しく感じているこもいるでしょう。しかし、多かれ少なかれ無理をしているのは確かです。なので、帰ってきてからは疲れが出たり翌日来られなかったりするのです。

励ませば、学校へ来ることができる

学校へは行きたくても行けないので、励ましたところでいけるものでもありません。むしろ励ますことによって、プレッシャーをかけることになり、子どもを追い詰めることになります。不登校の子どもへの励ましは、脅迫とほぼ同じ意味です。

不登校の原因でよくあること

不登校の原因は様々で、本人自体も自覚していないことも多くあります。そのため、大人がいくら聞いたところで「分からない」という返事が来ることも少なくありません。ただ、比較的多い原因がありますのでこちらでご紹介していきましょう。複合的なこともありますし、全く原因がわからないこともあります。そのため、無理に本人から原因を聞き出すのは控えてください。

生徒同士の人間関係

特に女子に多いのですが、人間関係についてです。例えばグループの中での揉め事やいじめなどもここに入ります。ただ、不登校はいじめなどわかりやすい原因は少なく、むしろ小さないざこざの方が原因だったりもします。要因としては、友達が何を言っているかわからない。気を使いすぎてしんどい。自分のことがわかってもらえない。などがあげられます。


コミュニケーション能力の課題

内向的な性格や人見知り、後は自閉傾向にある後などは、コミュニケーション能力が原因であることもあります。具体的に言うと、クラス替えをして仲の良い子と離れてしまうと、新しい子とコミュニケーションが取れない。挨拶をした後になんて声をかけていいかがわからない。友達から声をかけられたときにどのように返事をしていいかがわからない。など、コミュニケーションの技術が不足していることにより、ストレスを感じ学校へいけなくなることがあります。


HSC(過敏症)

比較的多い不登校の原因です。
学校へいけなくなった後はまず、この特性を疑ってかかってもいいくらい不登校の子に多いです。大体、5人家の居心地に1人はこの敏感な子であると言われています。学校へ行けない理由としては、先生の怒鳴り声が原因というのが多く聞かれます。誰か他の生徒を怒っていてもまるで自分のことを怒られているように感じてしまい、しんどくなってしまうのです。また、クラスがざわざわしている音が苦手というのもあります。HSCは、障害や病気ではなく、あくまでも本人の性質です。本人も周りも気づくことができにくいので、「気にしすぎ」くらいに思われてしまうことも多くあります。


学校のシステム

多動の子に多いのですが、じっとしていられないや「今はこの時間」と決められるのがしんどい子もいます。単純に、学校のシステムに合わない子もいます。制服がイヤ。規則がイヤなど。正義感が強い子も不登校の子には多く、ルールを守らないクラスメイトなどを見ていて不満が溜まり、イヤになることもあります。



不登校において気をつけるポイント


同じ手法は使えない

過去の成功体験をもとに「こうすれば大丈夫」と同じ手法をとる先生がいらっしゃいますが、少々危険です。子どもは十人十色。不登校になる理由も様々。以前はうまくいったかもしれませんが、今回は同じ方法が通用するとは限りません。生徒によって、声かけや叱り方を変えるように、不登校もそれぞれその子にあった関わり方が必要です。


時間がかかることもある

学校への復帰もそれぞれ生徒によって違います。学校へ来ず、フリースクールだけ通って卒業する子もいます。時間がたって学校へ行けるようになる子もいます。半年、1年たったからと言って、「そろそろだね」ということではありません。子どもによって成長が違うように、不登校の子もどれくらい時間がかかるかは様々です。


気持ちを理解することはできない

「学校へ行けていた人」と「行けない人」には、大きな溝があります。
学校へ行っていた人は、どこまでいっても不登校の気持ちを100%理解することはできません。
なぜなら、自分が体験していないからです。でも、だからといって、不登校の子と関わることができないということではありません。重要なのは、理解しようと心がけることです。ただし、「絶対に理解できない」という気持ちも持っておいてください。そうしないと、安易に「キミの気持ちは分かるよ」と言ってしまい、子どもから「あっ、この人、全然分かってないな」と信頼を失うことに繋がります。分からないからこそ、分かろうとすることが大事なのです。


また、学校へ行けなくなることもある

元気を取り戻し、再び学校へ行けるようになっても、また不登校になることもあります。
けれど、ショックをうける必要はありません。登校と不登校を繰り返す子もいます。本人のペースで学校へ来れるようサポートしてあげてください。「もう来れるようになったから、大丈夫だろ」と思い、無理強いはさせないでくださいね。


相性が合わないこともある

残念ながら、人間と人間のことなので、相性問題もあります。
どれだけ、「この子のためになにかしたい」と思っても、本人が「この先生は無理」と思うこともあります。そんなときは、無理をして子どもと関わろうとせず、保護者との関係作りを重視してください。

良かれと思うことが、悪いこともある

熱心な先生ほど、子どもにとって苦痛に感じることもあります。毎日の家庭訪問がとても大きなプレッシャーだと言う子も多いです。「なんとかしたい」という気持ちは分かりますが、子どもの気持ちを優先してください。


普通に接して欲しい

赤ちゃんをあやすように、まるで子どもみたいに接する先生がいます。また、同情の目で見る先生もいます。けれど、別に不登校の子は、赤ちゃんでもないし、傷ついているわけでもありません。同情されるのが一番イヤです。正直、そのような対応をされるとプライドが傷つけられます。ただ、他の子と同じように普通に接してください。


コラム   「不登校は、白ご飯が食べられない子と同じ」


学校へ行くというのは、大人にとって当たり前です。
そして、「白ご飯を食べる」ということもまた、日本人にとって当たり前です。でも、当たり前ってなんだろう? と思って書いた記事がこちらです。


炎鵬という力士がいる。
身長は、170cmに満たず、体重は関取70人の中で一番軽い。
それにも関わらず、史上最速で十両に昇進する異例の大出世を果たした。
僕は、炎鵬関と不登校を重ねてしまう。
彼が不登校だったわけじゃない。
彼のプロフィールを知ったときに、思ったのだ。
「不登校の子どもと同じじゃないか」と。
炎鵬関は、白米が食べられない。
白ご飯が嫌いなのだ。
日本人で、なおかつ、相撲取り。
誰もが、白米をがぶがぶ食べる姿を想像するだろう。
しかし、炎鵬関は違う。
米が嫌いなのだ。
僕は、「学校」は白米と同じだなと、思う。
みんな行って当たり前。
みんな食べて当たり前。
学校の先生をはじめ、保護者も近所の人たちも親戚もみんな学校には、楽しい思い出がある。
学校で友達ができた。
学校で勉強を学んだ。
学校でコミュニケーションを学んだ。
学校へ行くことが当たり前で、学校へ行かないという選択肢をそもそも知らない。
あなたは、白米が嫌いな日本人を知っているだろうか?
ほとんどの日本人は、ご飯が大好きで、白米を食べて生きてきた。
だから、「白米が嫌い」という人の気持ちは、全く理解ができないに違いない。
もし、子どもが「白米が嫌い」と言えば、どうするか?
きっと、必死で説得するはずだ。
なんとかして、ご飯の美味しさを伝えようとするだろう。
「きっとこの子は、白米の美味しさをまだ知らないだけ」だと思い、いろんな食べ方を教え、たくさんの美味しい米を食べさせる。
不登校も同じだ。
学校に楽しい思い出がたくさんある大人たちは、なんとかして学校の良さを伝えようとする。
なんとかして、学校へ行かせるようにする。
ご飯に明太子をかけたら食べられるんじゃないかと画策するように、別室登校を勧めたり、放課後だけ来ても良いよと促すこともある。
しかし、僕は思うのだ。
別に白米が食べられなくてもいいじゃないか、と。
炎鵬関は、餅やうどんを食べている。
栄養で考えると、炭水化物が取れれば、別に白ご飯でなくてもいいのだ。
パスタでもいいし、ラーメンでもいい。
白ご飯に固執する必要は、全くない。
大人は、「白ご飯を食べない」という選択肢を知らないから、なんとか食べさせようと思うけれど、本人からしたら、余計なお世話だ。
たくさんの食べ物がある現代において、無理に食べる必要なんて一切ない。
学校へ行けないなら、違う選択肢を選べば良いのだ。
フリースクール、ホームエデュケーションなど、いろんな方法がある。
炭水化物が白米だけでないように、学びの場は学校だけではない。
無理して食べるよりも、大好きな食べ物を食べたほうが成長するのは明らかだ。
炎鵬関は、白ご飯が嫌いでも、相撲で結果を出している。
学校へ行かないからそこで将来が終わるなんてことは無い。
世界は、可能性で満ちていて、どんなことでもできる。
いや、むしろ学校という場所に縛られないほうが、たくさんの可能性を伸ばしてくれるのではないかとさえ思う。
学校へ行けないことは問題じゃない。
白ご飯が嫌いな人がいるように、学校という場所が嫌いな子もいる。学校が苦手な子がいる。
無理して学校へ行く必要なんてない。
なにを食べても良いように、どこで学んでもいい。
不登校の子どもこそ、可能性で満ちている。


3. 学校へ行けない子との関わり方

先生としての心得


みんな学校が楽しいわけじゃない

学校の先生の多くは、学校が楽しかったのではないでしょうか。もちろん、たまにはイヤなときもあったでしょう。でも、たいていは行けば楽しかったという思い出かと思います。しかし、子どもによっては学校がしんどい場所な子もいます。面談をした不登校の子は、「学校はお化け屋敷みたいで怖い」と言っていました。子どもによって感じ方は違うのです。人はそれぞれ感性が違うように、学校への感じ方も違います。自分が楽しかったから、きっと楽しい。なんて考えは、傲慢です。子どもが感じていることを聞いてあげ、寄り添ってあげてください。

自分の感覚と子どもの感覚は違う

匂いがダメな子。ざわざわしている音がダメな子。たくさんの穴がダメな子。汚いところがダメな子。大きな音がダメな子。食事にアレルギーがあるのと同じで、みんなが大丈夫でも、その子はダメな場合があります。「気にしすぎだよ」で片付けてしまうと、大変なことになります。そばアレルギーの子に、「みんな食べているんだから気にせず食べなよ」と言わないですよね? それと同じで、みんなとは違った感覚を持っている子もいることを決して忘れないでください。


リキみ過ぎない

「なんとかするぞー」と先生がいかに熱意を持ってみても、スグになんとかならないのが不登校です。ガツガツ来られると、子どもは引きます。そっとしておいて欲しいときもあります。保護者や子どもと相談しながら、距離感を保ちつつ接していきましょう。基本的に、不登校になる子の多くは、自分のパーソナルスペースに土足で入ってくる人を嫌います。そして、一度嫌うと、もう二度と心を開いてくれないことが多いです。


同情しない

決して、学校へ行けない子を「被害者」や「可哀想な子」という目で見ないでください。同情されることほどイヤなことはありません。無理にへりくだる必要もありませんし、哀れみを持って関わることも子どもは望んでいません。ただ、自分の気持ちをなにも言わずに、うんうんと聞いてくれる人が欲しいと思っているのです。


チームで取り組む

不登校はチーム戦です。先生やスクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラー、フリースクール、適応指導教室などなど、様々な人たちが関わるのが不登校です。
学校だけでなんとかしようとするのではなく、ぜひ、いろいろな機関なども使いながら、チームとして子どもを見ていくようにしていってください。野球は一人で出来ないように、子どももチームで見ていく必要があるのです。

自己満足になっていないか?を常に考える

子どものためと思っていても、ついつい自己満足的になってしまっていることがあります。「ここまでやってあげている」アピールではありませんが、”なにをするか”よりも”なんのためにそれをするのか”のほうが大事です。子どもに会いにご家庭へ行くのはなんのためでしょう? 学校へ来て欲しいから? ほんとうにその方法がベストな選択でしょうか? 今、行く意味はあるでしょうか? 他にもっと良い方法はないでしょうか? 先生のやる気も大事ですが、それが子どものためにならないと、とてももったいないですよね。『子どものためになるか』を一番において、なにをするかをぜひ考えてみてくださいね。


だまし討ちをしない

「校門まででいいからおいでよ」と言って、実際に校門まで行ったら「ここまで来たのだから教室に入っていきなよ」などということがよくあります。このとき、子どもは「騙された」と思います。どんな些細なことであっても、だまし討ちのようなことは厳禁です。


けしかけない

「みんな行っているよ」「やる気がないんじゃないの?」「根性はないのか?」などなど、芯が強い先生ほど、子どもをけしかけることがあります。強い子は、その方法でうまくいくでしょう。しかし、不登校の子は自信を失っています。みんなと同じことが出来ず、自分なんてダメだと思っています。そんな子に対して、どれだけけしかけたところで、ガンバれるわけがありません。骨折している子に、「なぜ、みんなと同じように走れないんだ? やる気がないのか」とは言わないですよね?


急かさない

「自分自身、明日がどうなるかも分からないんですよ」と不登校の子が言ったことがありました。本人ですら、自分がどうなっていくか分からない状況が不登校です。「待っているよ」「早く学校に来いよ」と言われたところで、どうにもできないのです。このような声かけは、ただ本人にプレッシャーをかけるだけです。


勉強は、最後

「休んでいる分、取り戻す」「遅れないようにする」「時間があるのだから、勉強くらいしよう」などがありますが、不登校の子にとって、勉強は最後です。基本的に、子どもたちは勉強が苦手です。ただでさえエネルギー不足なのです。「遅れると心配」という気持ちも分かりますが、元気になってくれば勉強にも取りかかれるようになります。まずは、一旦、勉強は横に置いてください。もし、やるにしても、できるだけ簡単なもの。子どもにとって負荷が少ないものにしてください。そして、この負荷は、先生が感じる負荷が少ないではなく、子どもにとって「これくらいなら出来る」という分量です。たとえ漢字の書き取りを1ページで少ないと思っても、子どもが「多い」「しんどい」と思えば、それは負荷が大きすぎます。

ゴールは、学校復帰ではない

「学校へ来れば、オッケー」「教室にさえ入れるようになればオッケー」ではありません。子どもの人生は、そのあとも続いていくのです。子どもがハッピーになること。子どもが自分らしく生きていけるようになることがなによりも重要です。「学校へ行かせる」ことをゴールにするのではなく、もっと広い視野で子どもを見てあげてくださいね。

[保護者の声]嬉しかった先生の関わり方

児童支援の30代の先生が、週一くらいで子どもと遊んでくれます。 家のすぐ前が運動場なので、サッカーをしたり雨の日は体育館でバスケットをしたりします。 校長先生と担任、児童支援の先生とで月1くらいで面談があり、無理なく学校と繋がれるように考えてくださっています。


週一の支援の先生と遊びたくないと言う日もありますが、そういうときは無理強いすることなく、距離感を保ってくださるのもありがたいです。


連絡帳に、休みますと本人から連絡を入れたところ、返事を書いてくれて、毎日交換日記のようにやり取りが続いています。

訪問時に、学校に来いとは一切言わず、自宅訪問してくれて勉強を教えてくれたことがありがたかったです。

子どもの趣味を全力で受け止められる若い人を連れて来てくれ、その人と子どもがカードゲームを一緒にやるようになりました。

マンツーマンで補講をしてくださり、留年が迫っている教科のある日は、家まで迎えに来て、学校に連れて行ってくださりました。息子も何とか戻りたいという気持ちがあったので、このような対応はありがたかったです。息子の意思を尊重し、息子の気持ちに寄り添った対応をしてくださったことが嬉しかったです。

嬉しかったのは、丁寧にこちらの要望を聞き、受け入れ、一緒に考えてくださったことです。給食では、停止、再開の手続きなど柔軟に対応してくれました。また、教材やテストの購入はどうしたいか、クラスメイトに息子の状態をどのように説明して欲しいか、今後のプリント類の受け渡し方法など、随時こちらの意見を伺ってくれました。そして、いつでも好きなときに学校へ来てくださいと言われたこともとてもありがたかったです。

家に来てくれ、子どもと話をしてくれました。学校の話はほとんどせず、子どもが興味のある事をずっと一緒にしてくれました。話を聞いてくれ、ただそれだけして帰って行かれたのです。 それも、週に何度も。 その先生だけは、子どもも心待ちにしていました。

信頼関係をつくり、「どうしていく?」と、息子と話をすることからはじめてくれた先生がいました。息子にきちんと向き合い、息子の感覚過敏(HSC)にも理解を示してくれました。子どもができることをスモールステップでしてもらえて、とても良かったです。

これだけは、やめて!

あらゆる登校刺激は、NG

何とかして学校へ来させたいと思うかもしれませんが、じっくり見守ってあげてください。どんな形であれ、登校刺激や子どもへのプレッシャーになります。例えばどんなものが登校刺激になるのか、また、どのように子どもと関わったらいいのか見ていきましょう。

クラスメイトの手紙

「~ちゃんに手紙を書こう」なんて言って、手紙作戦をおこなう先生がいますが、絶対にやめてください。「ありがとう」よりも、「ごめんなさい」という気持ちにしかなりません。こういう手紙をもらって、暴れる子も少なくありません。はっきり言って、ただの嫌がらせです。

行事の写真

本人が参加してない行事の写真を送る先生もいますが、これもやめてください。みんな待ってるよと伝えたいのかもしれませんが、自分が行けなかった行事の写真を送られたところで、嬉しいはずがありません。

励ましの言葉

「ガンバろう」という言葉ほど不登校の子どもにとって謎なものはありません。
一体何を頑張れば良いのでしょうか?
学校へ行くこと? 頑張れないからこそ学校へ行けていないのです。頑張ろうと思っても学校へ行けないのです。励ましたところで、本人にはどうにもしようがありません。


学校楽しいアピール

学校楽しいからおいでよとアピールする先生もいらっしゃいますが、意味がありません。そもそも、学校が楽しくないからいけないわけでは無いのです。自分に合わなかったり行きたいけど行けないのです。楽しいことを伝えられたところで、本人にはなにもできません。


みんな待ってるよアピール

基本的に、クラスメイトから何かされるのは結構しんどいです。プレッシャーにもなります。行きたいけど行けないというギャップをより感じることにより、苦しみを増大させる可能性もあります。

仲の良い友達に訪問させる

ここは難しい問題ではあるのですが、仲の良い友達が行くことによって、次の日から学校へ行くこともあります。しかし、いけない場合にはとても大きなプレッシャーにもなってしまいます。そのため、もし仲の良い友達を訪問させたいなと思うのであれば、事前に本人の許可を取った方が良いです。


「このままじゃダメだ」と否定する

今のままじゃダメと言われたところで、子どもはガンバれません。今までなんとかガンバってやってきたけれど、息切れをして、しんどくなっているのです。フルマラソンを走り終えた人に、「こんなところで休んでいる場合じゃないぞ」と言うようなものです。


笑顔で言う脅迫の言葉

家庭訪問の帰り、面談の終わりなどに、「明日は来れるよね?」と言う先生がいます。
しかし、この言葉はほとんど脅迫です。
なぜなら、子どもは先生に対して「No」とは言えないからです。
同様に、「明日は学校へ来ようね」「明日は、来いよ」などもやめてください。
断るという選択肢がない声かけも、子どもにとってはすごくつらいです。

友達を紹介する

学校が楽しくないのは、友達がいないからだ。そのために、この子にあった友達を紹介してあげようと、先生が勝手に「この子と友達になればいいよ」と生徒同士を繋げることがあります。
本人が希望していない限り、この行為はただの嫌がらせです。


信頼関係をつくるときの流れ

教師として何とか子どもを学校に来させたいと思うでしょう。けれど、学校へ行けない子はいろんな形で傷ついています。原因がわからず学校へ行けない自分を責める子もたくさんいます。その子たちに対して、手を変え品を変え、何とかして学校にいかせようとしてもなかなか難しいところがあります。

そこで、まずは信頼関係づくりから始めてはいかがでしょうか?
思春期になると、なかなか大人に本音を話してくれません。不登校になる子は、少なからず大人への不信感を持っていることも多いので、頑なな子どもだったりします。
相性の問題もあったり、子どもの状況としてなかなか関係性を作れないこともあるかもしれませんが、できれば子どもと信頼関係を作ることを第一にして関わってみて下さい。

では、信頼関係を作るためにまず何ができるでしょうか?

学校へ来てもらったとしても、疲労困憊でほとんど何も話せないと思います。また、家庭訪問をしたところで、そもそも会ってくれないこともあるでしょう。


まず、理解していただきたいのが、不登校になってはじめの頃は、学校や先生の拒否反応が強くあります。

いけないことを思い出すと嫌になるし自分を責めてしまう。そのため、学校そのものを思い出すような事は全て排除したいと言う思考が働きます。

こういう時に、頻繁に子どもと接触するようにすると、子どもにとっては大きなストレスになってしまいます。

そこでしばらくの間は、主に親御さんとの情報交換に努め、無理をして子どもと接触しないのが賢明です。

不登校の子どもにとって、家と言う場所は絶対的な聖域、サンクチュアリです。

許可なくその聖域に踏み込んできた場合、怒る子どももいます。

家庭訪問する場合は、無理に子どもと会おうとはしないでください。

それでも、何とかして接触したいなと思いますよね。

そこで、どうするか。

子どもにアンケートをとってみましょう。


まず、接触をとりたい理由や目的を伝えます。
(どんな様子か知りたい、なにかサポートできることがないか一緒に考えていきたい など)

そのうえで、アンケートをとるのです。

具体的には、下記のような感じです。

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先生とコンタクトをとっても良いと思える方法をこの中から選び、○をつけてください。


会って話す
ドア越しに話す
電話で話す
スカイプで話す
メールでやりとりをおこなう
手紙でやりとりをおこなう
交換ノートをする

絶対にイヤ

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このような形にして、「会う or 会わない」という以外の選択肢を提示することで、断られる可能性が低くなります。

もちろん、断固として「イヤだ」という子もいるでしょう。

そのような場合には、時間をおいてからまたチャレンジしてみてください。


(会って話ができた場合)

会うことがスタートラインです。
しかし、ここからが本番。
ホンネを引き出すためには、まずは、信頼関係を作ることが重要です。

「この人なら分かってくれる」
「この人になら、なんでも話してもいいかも」

そのように思ってもらうのが当面でのゴールになります。

信頼関係を築く前に、「さぁ、悩みを話してごらん」と言ったところで、言えるはずがありません。

電車で隣に座った人に、「最近、どんな悩みがありますか?」と突然聞かれても、本当にしんどいことって言わないですよね?

関係性が出来ていないと、本心は決して見せることはありません。

そこで、まずは関係性づくりです。

初めの段階では、「尋問」をしないように心がけましょう。

「尋問」とは、

「どうして、学校来れないの?」
「いつになったら来れる?」
「勉強はしている?」
「将来はどう考えている?」

などです。

言うなら、子どもが聞かれて「イヤだなぁ」「答えたくないなぁ」と思う質問です。

聞きたい、知りたいと思うかもしれませんが、グッと堪えましょう。

ここでグイグイ聞いてしまうと、「もう会いたくない」と心のシャッターを下ろされる可能性が出てきます

関係性を作るためのポイントはこちら。


①相手のことを知る
②共通の話題を作る
③共同体験をおこなう
④自己開示をする
⑤否定しない
⑥決断を委ねる

まずは、雑談を増やして、ホンネを話してくれる関係性をつくっていきましょう。


①相手のことを知る

関係性を作るためには、まずは相手を知ることから始まります。

なにが好きなのか?
趣味はなにか?
家で何をしているのか?
今、ハマっていることはなにか?
普段、どんなことをしているのか?

など、聞いていきましょう。

話してもらう内容は、『子どもが興味あること』です。
こちらが興味があることよりも、子どもが興味があることを聞いたほうがたくさん話してくれます。

ハーバード大の研究によると、15分間に9回以上の質問をするのが良いと言われています。

そして、重要なのは、”フォローアップクエスチョン”です。

フォローアップクエスチョンとは、相手が発した言葉を繰り返して、質問をする話し方です。

「家では、Youtube見てる」
「Youtube見ているのかぁ。どんなの見ているの?」
「ゲーム実況」
「あぁ、みんなゲーム実況好きだよねぇ。たとえば、なんのゲーム?」

みたいな感じで、言葉に反応した上で、その内容を深掘りしていってください。


そうやって、相手の興味・関心を情報として得ていきましょう。

すると、今後の会話の糸口になります。

②共通の話題を作る

共通の話題ができると話が弾みます。
ただ、あまり学校の話題を中心にしない方が良いです。なぜなら、子どもによっては学校の話にとても敏感になる可能性があるからです。じゃぁ、何を話せばいいかと言うと、フォローアップクエスチョンをおこなって聞いた内容です。子どもの興味・関心に寄り添うことが大事です。
たとえば、共通の話題をつくるのが難しいのであれば、『偏愛マップ』をお互いにつくるのも一つの手です。
偏愛マップとは、紙に自分が好きなことをたくさん書くワークです。
ポイントは、できるだけ具体的に書くこと。
アニメなら、タイトル。できれば、そのキャラまで書くのが良いですね。
それを元にしながら共通の話題を見つけたり、「これなに?」と聞くこともできます。


③共同体験を作る(一緒になにかをする)

一緒になにかをいたり、共同体験があると親密度が増します。
文化祭や合唱コンクールなどが良い例です。
では、なにをすればいいか?
簡単なところでは、「同じお菓子を食べる」ことも共同体験になるとシカゴ大学の研究で分かっています。
他には、子どもが好きなカードゲームを一緒にする。
TVゲームを一緒にする。
好きな漫画を読む。

『チルドレン』(伊坂幸太郎)では、児童相談所の人が子どもの家へ行って、ただマンガを読んで帰る。という描写がありましたが、そのような感じです。

別に無理に「会話をしよう」としなくてもオッケーです。
ただ一緒になにかをすることが、同じ時間を共有することになるのです。


④自己開示をする

自己開示の返報性というものがあります。
簡単に言うと、自分が心を開くと相手も心を開くというものです。
大事なのは、”まずは自分から”ということです。
こちらから心を開くことで、子どもも次第に心を開いていくようになります。
「心を開かせるぞ」と焦らず、まずは、ご自分の失敗体験やプライベートな話をしてみてください。

⑤否定しない

即興劇のスキルに「Yes And」というものがあります。
相手の言葉を否定せずに聞きましょうといった感じのものです。
実はこれ、出来ている人が意外と少ない。
特に、子どもが否定的なことを言った場合です。

「僕、ダメな子だから学校行けないんだ」と子どもが言ったとしましょう。
つい否定してしまいますよね?
「そんなことないよ」と。

しかし、こうしてしまうと、本人は「自分の考えを否定された」と感じます。

そこで、『Yes,and』を使いましょう。

「そうかぁ。ダメな子だと思うのか。どうして?」と、一旦、受け容れた上で、パスを返すのです。

話を聞いた上で、「あなたはそのように思うのだね。先生は、こう思うよ」と、アイメッセージでこちらの考えを伝えてあげましょう。

大切なことは、いきなりこちらの意見を言わないこと。子どもの意見をスグに否定しないこと。

一旦、受け容れる。これがポイントです。


⑥ 決断を委ねる

関係性がだんだん出来てきて、「そろそろ学校へ来て欲しい」となったとき。
行事があり、誘いたいとき。
最終的な決断は、本人に委ねてください。

学校へ誘うポイント

登校意思を確認する

まずは、本人が「学校へ行きたい」のか「行きたくない」のかを確認することが重要です。
「行きたいけど、行けない」子も多いですし、「行きたくない」も「今は行きたくない」の場合もあります。
本人が現状、どのように思っているかを確認した上で、関わり方を考えていきましょう。
「行きたくない」と言うのなら、学校へ行くことを目標にせず、関係性を作って寄り添う存在を目指してください。時間がたてば、「やっぱり、行ってみようかな」と思うこともあります。


決断を本人に委ねる

どうするかの決断は、常に子どもに任せてください。
「そろそろ行けそうかなって思うけれど、どうかな? 明日、行ってみる? 無理そう?」
選択肢を用意し、本人に決めさせてください。
ただし、「No」と言えるように伝えてあげてくださいね。
そうしないと、いやいや「Yes」と言うことになり、プレッシャーを感じてしまいます。


遠慮せずに伝える

行事ごとなど、学校イベントがあるとき、学校へ誘いたいとき。
「今、伝えてもよいかな? まだ早い?」と、迷うこともありますよね。
でも、大丈夫です。
遠慮なく伝えてあげてください。
「今度、体育祭があるよ」「文化祭あるよ」と。
決断を本人に任せることができれば、伝えても問題ありません。
「行ってもいいし、無理ならやめてもいい。少しだけ顔を出す方法もあるよ」と、選択肢を提示して、本人に決めさせてあげてください。
関係性が出来ていれば、無理なときは、「まだ無理かな」と正直に話してくれるでしょう。

学校復帰に向けて出来ること


学校復帰を考えるとき、イメージしやすいのは怪我のリハビリです。たとえば、骨折した人がいきなり体を動かすことはできないですよね。少しずつ少しずつ、体を動かしていくと思います。不登校も同じです。たとえ、元気になったように思えても、学校へ行くことは心理的なハードルが高いです。徐々に、徐々に。ステップバイステップでやっていきましょう。


不安なことを確認する

「学校へ行ってみたい」と本人が口にしたところから、学校復帰を目指していきましょう。そのとき、子どもに確認することは「なにが不安か」です。たとえば、「久しぶりに行ってみんなになんて言われるか分からない」と子どもが言ったとしましょう。そのとき「大丈夫。気にするな」と励ましてはダメです。まずは不安な気持ちをじっくり聞いてあげて、なにが不安かを明確にしてあげてください。「ズル休みしたと思われる」「みんなの注目の的になると恥ずかしい」など、不安な気持ちの裏には、なんかしらの理由があります。その不安な気持ちを受け取り、どうすればその不安を軽減することが出来るかを一緒に考えましょう。久々に行ってなんて言われるか分からないならば、「先生がみんなに腹痛で休んでいる」と伝えてあげるから、言ったときになにか言われたら「めっちゃお腹が痛かったんだよ」と言えばいいよと言ってあげると、不安は軽減されます。そうやって学校へ行きたくない理由を一つ一つ消していきましょう。


なにが出来るか、なにが出来ないかを明確にする

学校としてどういう対応ができるのか。子どもを受け容れる体制としてなにが出来るのかを明確にすること。そして、子ども自身もなにが出来るのか、出来ないのかを明確にしましょう。「教室にはまだ入られない」「校門までなら行ける」「歩いて登校することは出来ない」など、子どもの声を聞きながら(保護者に聞いてもらいながら)把握していきましょう。そして、出来ることをします。出来ないことは、無理しておこなう必要はありません。出来ることを積み上げていき、少しずつ「出来た!」を増やしていけばいいのです。


ゼロ、ヒャクではなく、加点式で考えていく

たとえば、保健室登校をすると決めても、実際には校門で立ちすくむかもしれません。しかし、それも成長です。今までは家から出られなかった。学校へ向かうことも出来なかった。でも、今回は校門まで来ることができた。とても大きな前進です。不登校になる子は、完璧主義な子が多いので、出来ないと落ち込みます。そんなとき、「こんなに成長しているじゃないか」と伝えてあげることで、「自分は大丈夫だ」と子どもは思うことが出来ます。


役割を持たしてみる

たとえば、文化祭や体育祭など、行事にだけ参加することもあるでしょう。そのとき、大抵は見学になると思います。しかし、見学だけだと手持ち無沙汰になります。なにもしていないと、余計なことを考えたり、みんなの目が気になります。そんなときは、ちょっとした役割を与えてください。簡単なもので結構です。たとえば、「記録用に写真を撮って」と言ってカメラ係を頼むなんていうのも良いかもしれません。本人の無理がない範囲で、出番を作ってあげましょう。

4. 保護者への対応

学校へ来られなくなると、家庭訪問や面談などで保護者と一緒に話す機会があるでしょう。そのときの注意点や心がけです。


どうして欲しいかを確認する。

保護者のかたに、「先生にどんなことをして欲しかったか?」とアンケートをとったとき、”一緒に考えていく姿勢が欲しかった”という声がありました。
学校側の考えなども大切かもしれませんが、まずは保護者の声に耳を傾ける。そして、一緒に考えていって欲しいのです。不登校対応は、家庭や子どもによって変わってきます。画一的な対応ではうまくいきません。保護者としてこうしたい。これは困るといったこともあるでしょう。だから、まずは保護者の声を聞き、一緒に考えていって欲しいのです。不登校は、チーム戦であたる必要があります。保護者だけ。先生だけがガンバってもうまくいきません。子どもと関わる大人たちが、役割分担をして、出来ることをやっていく必要があります。なにがしたいかバラバラな人たちが集まってもチームはうまく機能しませんよね? 保護者は、チームメイトの一人です。ただの顧客でもなければ、クレームを言う厄介な人でもありません。チームメイトなのです。だからこそ、情報共有も必要だし、お互いの意見交換をするのが重要です。


誠実に、誠実に、誠実に

不登校のことをよく分からないという先生もたくさんいらっしゃるでしょう。そのことは、悪いとは思いません。不登校と言っても、たくさんの子がいて、それぞれにおいて状況が違います。子どもによって対応も違います。だからこそ、敢えて言わせてください。とにかく、誠実に接してください。親御さんにも子どもにも。先生のなにげない言葉が親御さんや子どもを傷つけることがあります。「先生に裏切られた」「先生に尊厳を踏みにじられた」という保護者もいます。分からなくても良いです。けれど、分かろうとしてください。理解しようとしてください。できるだけ、保護者や子どもに歩み寄ってください。また、「自分でなんとかするぞ!」と力まなくて大丈夫です。

保護者を責めない

ほとんどの保護者は、自分自身を責めます。しかし、不登校は、誰の責任でもありません。環境や状況、本人の特性などの複合的なことにより、学校へ行けなくなったのです。保護者の関わり方を細かく聞くことやこれまでの育て方について聞くのは、できるだけ避けてください。保護者としては、責められている気がします。詮索されることにより、「先生は、私が悪いと思っているのだ」と保護者は感じます。責めるのではなく、ただ保護者のかたが感じている不安やしんどさを受け止めてあげてください。

先生の一言が保護者を傷つけることがある

子どもが不登校になったことで保護者は不安になっています。その中で、先生は唯一の味方です。にも関わらず、これまでの子育てやプライベートなこと(兄弟関係、夫婦関係など)を詮索されると、とても傷つきます。結果、保護者の子どもへの関わりにまで悪影響を及ぼします。


とにかく、寄り添う

まずは、保護者の気持ちに寄り添ってあげてください。「これからどうなるのだろう?」「この子は、ほんとうに大丈夫なんだろうか?」「休みが続くと勉強がどんどん分からなくなっていくのでは?」など、たくさんの不安が渦巻いています。パニックになっていると言ってもいいでしょう。そのような状態で、これからの話などをしても、あまり頭には入ってきません。冷静になるのは難しいですよね。だから、まずは今の気持ちに寄り添い、ただじっと話を聞いてあげてください。「不安になりますよねぇ」と、ただじっと聞いてあげてください。「大丈夫です」「私に任せてください」「いつかは学校へ行けるようになりますよ」などの言葉は一切必要ありません。失恋した友達のそばに寄り添うかのように、ただじっと話を聞いてあげてください。そして、しんどい気持ちに共感することで、保護者のかたも「分かってもらえた」と感じることができます。


考えを尊重する

それぞれのご家庭にはスタイルがあります。親御さんによって考え方も違うでしょう。その考えを否定し、「それは違う」「間違っている」と一方的に決めつけるのは、やめてください。もしかしたら、「それで大丈夫?」と思うこともあるかもしれません。そのときは、「こういう考え方もありますよ」「この本にはこういうふうに書かれていましたよ」と伝えてあげましょう。その上で、どのようにしていくかを決断するのは、親御さんです。


出来るだけ要望には応える

たとえ、保護者の要望だとしても、学校として出来ないこともあるでしょう。そのときに、無下に断るのではなく、「ここまでは出来ます」「こういうふうにすれば出来ます」と代替案を提案していただきたいです。保護者としては、学校に対して藁にもすがる気持ちで要望をしています。ワガママに思われるかもしれないと思いながらも我が子のために思い切って提案していることが多いのです。出来ないのであれば、なにが問題、なにが課題で出来ないのかをキチンと伝えてあげてください。すべての希望を叶えるなんて難しいでしょう。しかし、対話をして、丁寧に状況を伝えることで、保護者としては、実現しなくても、ちゃんと要望を聞いてもらえたと思えます。そのようにすることで、保護者は学校や先生に信頼を置くことができるのです。

定期的に情報を伝える

学校の情報を伝えるとプレッシャーになるかもしれないと思い、遠慮をして、保護者にあまり連絡をしない先生がいます。しかし、保護者としては、学校の様子は気になるもの。なにも連絡がないと、見放された気がしています。「来いよ」「そろそろどうでしょう?」などと聞く必要はないのです。ただ、事実として「来週に体育祭があります」と伝え、「また、来るなら連絡ください」などと声をかけてください。もし、連絡していいのかな。嫌がられないかなと心配ならば、直接、保護者に聞いてください。「学校の行事ごとは連絡するようにしますが、よろしいでしょうか? イヤなら、手紙だけにしますが」などと。聞かないと分からないこともあるので、どうしようか迷う、悩むならば、対話をして確認をしましょう。たとえ同じ状況であっても、保護者によって感じ方も違うし、要望も違います。だからこそ、キチンと確認する。聞くことが重要なのです。

欠席連絡にこだわらない

状況を把握するためにも、欠席連絡は必要でしょう。しかし、保護者の立場になって考えてみてください。前日から「今日は行くだろうか?」と不安に思い、朝なんとか起こす。「どうする? 行く? 行ける?」と話し合い、ときにはケンカをして、今日は無理か……。となります。休むという決断を下すまでに、すでに消耗しています。その疲れた中で、さらに学校へ連絡するのはとてもしんどい。学校や先生に迷惑をかけている。なぜ行けないのか。ダメな親と思われるのではないのか。いろんな感情が出てきます。ただ電話一本かけるだけに思うかもしれません。でも、その電話が苦しいのです。虐待の心配や報告のためにも、先生としては連絡が欲しいのは分かります。ただ、出来るのであれば毎日の連絡にこだわるのではなく、1週間に1回にする、行くときだけ連絡をするなど、お互いに無理のないような方法を模索してください。

【コラム】   学校は、ショッピングモール


学校は、大型ショッピングモールみたいだと思う。
勉強を教えてもらえる。運動もできる。友達も作れる。図書室も理科室もある。パソコンもあって、広い運動場もある。旅行もできる。

なんでも揃っている。

これは、ショッピングモールと同じ。

ショッピングモールも全部ある。

魚も肉も靴も本もなんでも揃っている。
映画館もある。

そこに行けばすべて完結するくらい。


けれど、ショッピングモールが無いと僕たちは生きていけないだろうか?


もちろん、そんなことはない。


魚が欲しかったら、魚屋へ行けばいい。
テレビが欲しかったら、電気屋さんへ行けばいい。

不便だけれども、不可能ではない。


学校も同じ。

学校へ行かないことで、人生が詰むとか、社会へ出ていくことが出来ないなんて言う人もいるけど、そんなことはない。

不登校でも、社会へ出て活躍している人なんてたくさんいる。

指原莉乃さん、星野源さん、中川翔子さん、みんな不登校経験者だ。

ただ、やっぱり学校へ行かないことは、不便だ。

勉強も自分でするか、塾や家庭教師を雇う必要がある。

運動したいなら、自分で外へ行くかジムがいる。

友達も自分で探して来ないといけない。


僕たち大人は、学校行くことが当たり前で、行かないことをなかなか想像できない。

できないからこそ、「まずい」「危険」「ダメだ」と思う。

しかし、そんなことはない。

学校へ行けるなら行けたほうがいい。

便利だから。

ただ、行けないなら、違う選択肢もある。

ショッピングモールが近くにないなら、商店街へ行って肉を買うように。


学校なんていらないとは思わない。

でも、絶対に学校へ行かないとダメとも思わない。


学校は、便利なところ。

それ以上でも以下でもないと、僕は思う。

5. 参考になるサイトや活用できる情報


家庭で学習できる教材やサイト

有料学習教材)

スタディサプリ

小学4年生~大学受験まで全学年の授業を受けることが出来ます。
月額980円という安さも魅力です。

すらら

自宅のパソコンやタブレットで学習ができます。
対応は、国語・算数・英語の3教科。
学年に関係なく、無学年学習ができます。

スマイルゼミ

専用タブレットとデジタルペンで学習します。
国語・算数・理科・社会・英語の5教科に加えて、プログラミングも学べます。
教科書に合わせて、教材が毎月配信されます。


進研ゼミ(チャレンジタッチ)


スマイルゼミと仕様などはほとんど同じです。
ただ、こちらは赤ペン先生の添削があります。
また、タブレットだけではなく、紙媒体で学習する「チャレンジ」もあります。


Schoo(スクー)

参加型の生放送授業と、4,600本以上の動画教材で「仕事に活きる」知識・スキル・考え方を学べるサービスです。大人向けですが、プログラミングやデザインなども学べます。


無料学習サイト)


eboard(イーボード)

日本eラーニングアワードで「文部科学大臣賞」を受賞した小中高校生向けのオンライン学習サイトです。小中高生向けに、基礎レベル約2,000本の動画解説と 5,000問の問題集が用意されています。

NHK for schoool

学年別にも分かれていて、コンテンツも豊富。『香川照之の昆虫すごいぜ』は、もう必見です!

これも学習マンガだっ!

こちらのサイトから、学習マンガの『選出全200作品一覧』を見ることができます。この中からお子さんに合った本を選んでみてはいかがでしょうか?


TED

いろんな分野の専門家がスピーチをするTED(Technology Entertainment Design)
魅せるプレゼンが多いので、子どもでも楽しく学ぶことができます。
知的好奇心を満たすにはぴったり。


MANAVIE(マナビー)

中学・高校生向けに勉強を教える講義動画約8000本を無料で閲覧できるWebサイト。
塾講師などがYouTubeに投稿した講義動画のうち、質の高いものを選んで掲載されています。

Newsサイト)

National Geographic
世界のニュースや驚きの写真などが掲載。
動物や自然に関する記事が豊富。

HUFFPOST

日本や世界のニュース、記者の取材記事などジャンルも多様。

NewsPicks

ソーシャル経済メディア。
一部、有料。

Cakes(有料)
いろんな切り口のコラムが連載されています。



不登校情報について知ることができるサイトやブログ

不登校専門のいばしょづくりサイト(掲示板)


お悩み相談や雑談など、保護者同士で交流できる掲示板。


オヤトコ発信所

不登校だった子と母親で運営しているブログ。
フリースクールまとめ なども掲載されています。


不登校新聞(有料)

日本で唯一の不登校専門紙。
不登校・ひきこもり本人の声がとても充実しています。


コノミチ

元青年海外協力隊 で、元仏教僧の著者が運営するブログサイト。
今は、福岡でフリースクールも運営中。


不登校のひろば(不登校Q&A)

サイトを運営している東京シューレは、不登校支援の老舗。
このサイトでは、分かりやすく不登校のことについてまとめられています。


D.Liveブログ

スタッフの不登校経験や不登校への関わりについて書いています。
記事は、1000ほどあり、下記は不登校の記事を100ほどまとめたものになります。


不登校のわが子にできること(Youtube)


D.Liveが運営しているYoutubeチャンネル。
動画で、不登校についてや保護者としてどのように関わればいいかを発信しています。


不登校の子を見てくれるカウンセリング情報(関西)

(※ ここで紹介している病院などは、実際に通ったことがある保護者さんに教えてもらった情報になります。そのため、私たちD.Liveとして「ここがいい」と保証しているものではありません。お子さんによって合う合わないもありますので、あくまで参考としてご覧ください)



守山こころのクリニック(守山市)
カウンセリング重視で評判が良い。ただ、人気すぎて予約が取りにくい。

奈良女子大学 臨床心理相談センター(奈良県奈良市)
http://www.nara-wu.ac.jp/cpsoudan/aboutus.html

センター長の伊藤美奈子先生は、元スクールカウンセラーであり、不登校に関する著書も多数。東京の自尊感情教育もおこなった人。

「辻メンタルクリニック」(大津市)
院長先生は、元滋賀県立精神医療センター病院長。洛南高校や膳所高校の生徒がよく通うところ。
http://tsuji-mental.jp/

「なかじまクリニック」(大津市)
院長先生は、穏やかな先生で、通う子には膳所高校の生徒が多い。
http://snakajima.com/index.htm

岡田クリニック(大阪府枚方市)
http://www.clinic.kokoro-support.net/index.html

認知行動療法やマインドフルネスなどもおこなっている。
院長は、著書も多数ある。

音羽病院/﨑濱 盛三 先生(京都市山科区)
http://www.rakuwa.or.jp/otowa/shinryoka/seishinka/

発達障害への理解が深い。

湖南病院/辻川 紀恵 先生(滋賀県野洲市)
http://www.konan-psy.or.jp/konan/
思春期年代の子のことをよく見てくれるという評判。


坂本診療所(滋賀県草津市)
http://www.mediawars.ne.jp/~ssakamot/index_001.htm
大量の薬を出さず、丁寧に調整してくれるところ。


いちメンタルクリニック(大阪市中央区)
http://1mental-clinic.com/
比較的早く見てくれ、「効果あり」との評判も多い。


『けいふう心療クリニック』(兵庫県姫路市) 
http://keifukai.or.jp/clinic/specialoutpatient/

心療内科の思春期外来があり、思春期の子に寄り添った診療をしてくれるとの評判。

いなおか耳鼻咽喉科(大阪府寝屋川市)


https://neya3387.com/counselingandplay.html

予約制で土曜日のみ診療。
ことばと発達の相談やカウンセリング(プレイセラピー)をおこなっている。
初めての方でも安心して話せる先生との評判。

聖泉大学・カウンセリングセンター(滋賀県彦根市)
https://www.seisen.ac.jp/fuzoku/counseling

薬は出さず、箱庭療法などをおこなっている。
進路や大学のことなどもアドバイスがもらえる。


[その他、機関や相談できるところ]


SNSで相談

LINEなどを使って、気軽に相談できるところもあります。


https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/soudan_sns.html
SNS相談等を行っている団体一覧(厚労省)

不登校 親の会

不登校の保護者が集まる「親の会」が全国にあります。
同じ境遇の人たちと話すことで、心が軽くなったり、相談することもできます。

http://www.futoko-net.org/oyanokai/
全国親の会 一覧(登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク)

6. さいごに


チームとして取り組もう

もしかしたら、厳しいことが書かれていたかもしれません。一つ言いたいことは、別に先生を責めるつもりはありません。たくさんの子どもの未来をつくる教員という仕事は、とても素晴らしいと思っています。
しかし、現状を考えると、どうしても先生だけでガンバっても手一杯ですよね。さすがに全員を丁寧に見ることは出来ない。不登校の子だけにかかりっきりというわけにもいきません。だからこそ、出来るだけチームとして、不登校の子と関わっていきましょう。スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー。そして、我々のようなNPOもいます。
たとえマラドーナやメッシであっても、一人だけで得点を獲ることは難しいでしょう。チームとして、みんなでパスをまわしながら、情報を共有しながら、話し合って、子どもと関わり合っていけたらいいなぁと思っています。

この記事を読み、分からないこと、もっと知りたいことがあれば、ぜひご連絡をください。

不登校に関する研修など、いつでもさせていただきます。

他にも知りたい情報があれば追記します。

いつでも我々を頼ってくださいね。

どうか一人で抱えて、先生だけでガンバらないでください。

最後までお読みいただきありがとうございます。

Ps
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