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【#4】直近のインバウンドから見る観光業界への投資について

はじめに

今回は観光に関する記事である。
すでにネットニュースにもなっている情報もあるが、観光について課題含め広く言及できればと思う。

1.日経新聞記事『訪日客、1~6月最高の1,778万人 持続性占う混雑対策』

訪れる度に圧倒される景観、京都駅中央口

【記事のポイント】

記事の内容を改めて整理すると以下の通りである。

訪日客数の増加

  • 2023年1~6月の訪日客数は1778万人で過去最高を更新し、通年で3500万人程度となる見込みだ。政府が掲げた4000万人の目標も射程に入るとのこと。円安の影響も追い風となったと思われるが、こうした定量的なデータで成果が上がっているということは日本の観光コンテンツとしての魅力の裏付けなのではと思う。

受入体制の課題

  • 観光産業においては資源の維持や財源確保が課題としてあげられる。昨今では二重価格の検討が進む自治体や施設が増加していることからも、今後は様々な形で財源を確保するための制度が整備されていくと推察する。

訪日客の国別動向

  • 訪日客としては韓国、中国、台湾、米国からの訪問者が多い。米国からの訪問者数は134万人でコロナ前の約1.5倍、中国からの訪問者数は307万人で、コロナ前の68%にとどまっている。過去最高の訪日客とはいえ、まだまだ伸びしろはあると言える。

訪日外国人の消費額

  • 2023年4~6月の訪日外国人消費額は2兆1370億円で過去最高。1人当たりの旅行支出は23.9万円で、2019年同期の15.5万円より5割以上増加。消費額が伸びている点についても、諸外国の経済成長やそれによる賃金増加が影響しているのではないか。

高額消費傾向

  • 米国と英国からの訪日客の消費額が高く(米国36.1万円、英国41.7万円)、免税売上高は中国人客が約6割を占める。韓国、台湾が訪日客として台頭してきているが、まだまだ中国からの観光客の影響度合いは大きいといえる。

政府の観光施策

  • 日本政府が観光産業において目指すべき到達地点について理解しておくことは、これから実行される施策の是非を検討・議論する上で押さえておくべき情報だ。2024年の訪日客数目標は3500万人、旅行消費額8兆円を視野に入れている。そのための施策として、国立公園での高級リゾートホテル誘致などを通じて観光消費拡大を目指す。また、地方空港の就航拡大のため、週150便相当の航空燃料確保の緊急対策を講じるなど、都市圏だけでなく地方へ受け皿を広げていくための検討を進めている。

オーバーツーリズム対策

  • 訪日客が増加する中で、一部地域で混雑やマナー違反についても増加している。これは訪日客が様々な国から来ていることや、文化の違いというのも影響しているだろう。

  • そうした観光資源維持や訪日客受け入れコスト反映のための二重価格検討が進んでいる。例えば、兵庫県姫路市の姫路城や大阪市の大阪城における価格差の設定について言及している。姫路城の入場料の取り扱いについては具体的には外国人を30ドル(約4,700円)、市民を5ドル(約780円程度)にする構想がある。

その他の対策

  • 観光庁が混雑対策やマナー違反対策に取り組む「先駆モデル地域」に6地域を追加した。これには銀山温泉(山形県)や大月(山梨県)などが含まれている。また、富士山では登山規制を実施し、登山者数を制限し始めた。

  • 二重価格設定や制限を設けることでのコンテンツ利用の入口を設けることは一部のハレーションが生まれる可能性があるが、観光やアクティビティにある種の付加価値を付けるという点で意義のある取り組みと言える。ぜひ日本に住む方々や観光に来られる方はこと観光産業における「ダブルスタンダード」というキーワードを意識していただきたい。

政府が掲げる長期目標:2030年・訪日客数6,000万人・消費額15兆円

  • 政府は2030年までに訪日客数6000万人、消費額15兆円を目指す。訪日客は自動車に次ぐ輸出産業として日本経済を支える柱となるため、投資を中心に、制度設計含め様々な議論を急ピッチで進める必要があるだろう。

以上のように、日本の観光産業については成長の余地が十分にあるとともに、検討すべき事項も山積しているといえる。

【参考】訪日客、1〜6月最高の1778万人 持続性占う混雑対策

2.政府による国立公園35箇所の魅力を向上する施策としての「高級ホテル誘致」の是非について

京都 Four Seasons Hotels

SNSを初め、高級ホテル誘致の報道について様々な意見が散見されるが、私自身はこの取り組みに賛成である。

2031年までに全国35カ所の国立公園で民間を活用した魅力の向上を推進、環境保全を前提に高級リゾートホテルの誘致を含む取り組みを実施し訪日消費の拡大を目指すというものだ。いわゆる日本のアセットの有効活用と、それをきっかけにした観光の許容量を拡大していくといった話といえるだろう。

そういった意味でも地方への誘客促進と、訪日客の急増に対応するオーバーツーリズム対策に重点的に取り組むのは非常に重要である。また、地方の空港では航空便の燃料不足により、新規の就航や増便ができない問題が表面化している点にも現実的な対策をとる必要がある。
ホテルという宿泊施設にしても、東京や京都、大阪、札幌、福岡では高級ホテル誘致の進んでいるが、それ以外の地方では旧態依然として古臭い旅館やビジネスホテルにとどまる印象がある。正直わざわざ観光で足を運んだのにも関わらずそのような宿泊施設に泊まることを考えると憂鬱になってしまう。これはお金を落とすような富裕層の消費機会を損失している可能性もある。すでにある国立公園という環境を活かしつつ、高級ホテルというラグジュアリーコンテンツがあるのであれば活用しない手はないだろう。

また、オーバーツーリズム対策として観光庁が補助金を出す「先駆モデル地域」に小豆島(香川県)や高山(岐阜県)、那覇(沖縄県)など6つの地域を加えるとも表明されている。日本各地のポテンシャルを有する地域での開発やモデルケースとすることで、日本の観光産業の機会が広がっていくとよいと思う。

【参考】首相「国立公園35カ所の魅力を向上」 高級ホテル誘致へ

おわりに

今回は日本の観光産業の直近の動向に関する記事と、それに対する私見を述べさせていただいた。日本は四季があり、自然と都市が調和した安全な街だ。そんな日本のポテンシャルを最大限に活かすために既存アセットを有効活用するのは賛成であるし、積極的かつスピーディーに進めていくべきである。
皆さんも日本各地を実際に回ってみたり、観光業の動向を追ってみると日本のまだ知らない魅力を見つける機会になるだろう。

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