見出し画像

春を待つ松のように、キャリアを歩む。

今月から転職をして、ある会社の広報・マーケティング担当として仕事をしている。業務としては未経験での入社であったが、入社して2週間で一本オウンドメディアの記事編集をさせてもらったり、ウェビナーの企画に携わったり、充実した日々を送っている。

ただ、ふと、「自分は本当に役に立てているのだろうか?」と立ち止まってしまう。前職時代には感じなかったような不安の風が、一瞬胸を横切ることがある。

・・・

前職は、3年半弁護士秘書の仕事をしていた。基本的には担当弁護士から指示を受けた事柄ーー例えばスケジュール・タスク管理、ファイリング、経費処理などーーを対応する。もちろん自ら必要だと考えて行う仕事もあったり、指示を受けた事も自分なりにより良い成果となるよう考えながら対応したりして、やりがいはあった。しかし、自分の中である程度「正解」という天井が見えてしまうことが多く、どこかそこに行き詰まりを感じていた。

同時期に趣味で続けていたライティングを中心に仕事の幅を広げ、企業の持つ想いなどを伝えてみたいと考え、未経験ながら広報やマーケティング業務の門を叩いた。

しかし、その業務を始めて3週間、思うことは「役に立つ」と実感することの難しさだった。例えばオウンドメディアに載せる記事を編集・公開したり、ウェビナーの企画を立てたり、SNSの告知をしたりしているが、それらはいずれも公開や運営を行なって終わりではない。それらは全て企業がより認知度を上げるため、顧客獲得のための仕事だ。もちろん各業務の後は効果測定も行なっているが、日も浅いこともありまだ何となく効果の実感をできていない。

今までの仕事は、担当弁護士からお礼言葉をもらったり、成果物を実物として見ることができたり、それなりに時間を要さず自分のアウトプットへの評価が見えた。しかし、今回の仕事は、目指すものが長期戦なため、自分のアウトプットに対して瞬時に評価は分かりにくい。どこか暖簾に腕押しのような感覚を抱いてしまうことは否めない。

ずっと、自分でなければできない仕事をしたい、正解のない仕事をしたいと思い続けていたが、それができる環境に身を置くと、その難しさをひしひしと感じた。

・・・

ただ、そういう悩みに直面すると同時に、思い出した感情があった。以前趣味で書き続けていたエッセイを誰かに見つけてもらい、誰かに響いたんだと感じた時、こだわったところが誰かに気がついてもらえたと思えた時、感じたこの上ない嬉しさ。決してエッセイを書き始めてすぐのタイミングではなくて、それなりの鍛錬期間を経て、誰かに見つけていただいた。「ああ、誰かに届いた…」あの時の満たされた感情は今でもありありと思い出される。

わたしは、今はまだまだ修行期間で、会社の想いや熱量をどう伝えていけば伝わるか、響くか、その方法を丹念に探し続けていかなければいけない。いつか、真摯に向き合えばその光は見えてくることを知っている。その時まで、まだまだ耐えて、修行を続けなければいけないのだ。

・・・

そんなことを思いながら、今日、遅れた自分の転職祝いとして「松雪」と名付けられた新しい名刺入れを買った。深い緑色から白色に向かうグラデーションに彩られた、柔らかな羊革の名刺入れだ。

この彩りには、「降り積もる雪に耐え、春を待つ松のように。」という想いが込められていた。まだ革が新しくて緑色が渋い感じもまさに、未熟な自分のようだなと思い、これからのキャリアを一緒に歩みたくなった。

この名刺入れを見るたびに、わたしは自分がいつか春を見れる存在であること、春を見るために、自らの能力に諦めず研鑽し続けるのだという、今日の気持ちを思い出すのだろうと思う。そして、この名刺入れから出された名刺を通じて、出会うことのできた方々と、より良いものを作り上げるために自分の力をより磨いていくのだろう。

仕事をする以上、誰かの役に立ちたいと願う。もちろん期待を背負いすぎては潰れてしまうが、自分のできることを磨き、誰かに自分や会社のこだわり・想いが届くことを強く願う。春を待つ、松のように、強く生きていきたい。

この名刺入れと共に、新たなキャリアを歩んでいくことが楽しみだ。


この記事が参加している募集

買ってよかったもの

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?