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キャスティングについて

▼演出家のもっとも大きな仕事

これは賛否両論あると思いますが…
キャスティングは演出家にとって最大の仕事だと考えております。
このキャスティングは演出家の仕事のうち、6,7割占めると思っておりますし、このキャスティングによって、作品の良し悪しが決まるとも過言ではない、と考えています。

▼キャスティングは一つじゃない。

一口にキャスティングと言っても、色々なパターンがあります。
大きく分けて3つのパターンがあると考えています。
 1.劇団などで出演する俳優が先に決まっている時
 2.プロデュース公演などでこれから出演する俳優さんに声をかける時。
 3.上記の二つの混合パターン

いずれの場合も…ぼくの場合は作業について大きく変わることはありません。

▼演出目標と照らし合わせる。

先の記事でも述べました通り、台本をもらったら、一番最初に演出目標を立てます。
これは、自分が物語(台本)を書いてもそうなのですが…台本を書く作業と演出の作業は別だと考えているからです。

演出目標に照らし合わせキャスティングを考えるわけですから、演出目標というのは公演の幕が下りるまでブレることのないものでないといけません。

先ほどの3つのパターンいずれもそうなのですが…
キャスティングの組み合わせは非常に数多く存在します。
学校でもない限り、経験も性別も年齢も様々な俳優さんがいらっしゃるわけですから、年齢が高い順、経験がある順に決めていくわけにはいきません。

では、どのように決定していくのか…

ぼくがやっている作業はつまるところ、
物語の登場人物について、数パターンキャスティング案をつくっていく作業が主です。
そのパターンの中から、一番『演出目標』に即したキャスティングを決定していきます。

▼まずは俳優さんを知ること。

キャスティングをする場合に、まずは俳優さんについて知らなければいけません。
劇団のように何回も公演を共にしていれば良いのですが、客演さんやゲストの方にお願いする場合、ともて難しい部分ではあります。
ぼく(劇団新和座)の場合、客演をお願いする俳優さんはオファーする前に、綿密にお話しさせていただくか、ワークショップなどで稽古を共にしていただいてからお願いするようにしております。

これは俳優さんを知ることだと考えていて、
 ・俳優さんがどのような演技をするか
 ・俳優さんの仕事に対する考え方
の2点は特に大事だと考えています。とくに2点目の「仕事に対する考え方」が大まかに合致していないと舞台は作れないと考えています。

▼数あるパターンをつくる。

出演する俳優さんが決まっていてもそうでなくても…
物語の登場人物について、数あるパターンをつくっていきます。
ここでは出演する俳優さんが決まっている場合を想定して記述していきます。

極論を言えば、総てのパターンをつくる、というのが基本だと考えています。
登場人物が3人いたとしたら…
 A役 あさん
 B役 いさん
 C役 うさん
が1パターン。
 A役 あさん
 B役 うさん
 C役 いさん
が1パターン、
 A役 いさん
 B役 あさん
 C役 うさん


というように3人であれば、3!(6通り)考えられます。
これの中で、一番「演出目標」に沿うものを最終キャスティングとして決定します。

▼そうは言っても…

そうは言っても…10名の登場人物なら、10!(3628800)通りも作らねばなりません。そんなことしてられません、実際。
ではどうしたらいいのか。
そこで大事になってくるのが、やはり『演出目標』なのです。

また、別に記述しますが、「物語に主役も脇役もない」と考えています。
しかしながら、物語にははやり、主となる登場人物がいるのも確かです。
その主となる人物、作りたい世界、シーンので登場人物を基本にパターンを考えていきます。

ぼくの場合は、少なくとも10パターンくらいは考えて、演出目標を表現できるかを判断するようにしています。

▼固定観念をなくして作業する

キャスティングのパターンを考える時に大事だと考えているのは、
 ・固定観念をなくす
ということです。

これは、「お芝居がうまいからこの役」とか「経験があるからこの役」ということや、「この人の芝居が好きだからこの役」というような”演出者”のある種思い込みを無くすようにしなければいけないと考えています。

何故ならば、演出者がすべきことは「その役」に命を吹き込める人を配役することで、うまい順だとか、好きな順でキャスティングすることではないと考えているからです。
俳優さんにも「向いている役」もあればそうでない場合もあります。
ですので、演出目標、台本と照らし合わせて、10パターンほどのキャスティング案をつくり、その中から一番自信のあるものを選択していく作業がキャスティングだと考えています。

▼キャスティングは・・・

キャスティングは、先に決めている「演出目標」と照らし合わせて、数パターンのキャスティング案を作成し、その中から一番自信のあるパターンを選択するのがキャスティングだと考えています。
その作業をするために、台本をよく読み、演出目標を決め、俳優さんを知り…キャスティングの作業をしていくことが大事だと考えています。

▼次回は…

次回は「ダメ出しが伝わらない」というテーマについて記述します。

舞台演出家の武藤と申します。お気に召しましたら、サポートのほど、よろしくお願いいたします!