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電子書籍で読める近世ヨーロッパ文学・哲学書

 前回の記事(https://note.com/yskmas_k_66/n/n07771dd0c0bb)では、電子書籍で読める古代オリエント・古代ギリシア・古代ローマ・中世ヨーロッパの文献を紹介しました。今回の記事は、その第二弾、電子書籍で読める近世ヨーロッパの文学書・哲学書です。時代的には1453年から1789年くらい ¹⁾までの、地域的にはブリテン島・アイルランド島・イベリア半島およびスペイン語圏・イタリア半島・フランスやドイツなどヨーロッパの西〜中央部で書かれた本が対象です。


【イングランド/スコットランド/アイルランド】

マロリー(井村君江訳)『アーサー王物語(1〜5)』筑摩書房 2004〜2007年
トマス・モア(平井正穂訳)『ユートピア』岩波文庫 2011年
ベーコン(服部英次郎・多田英次訳)『学問の進歩/ノヴム・オルガヌム ほか(ワイド版世界の大思想2-4)』河出書房新社 2005年
シェイクスピア(中野好夫訳)『ヴェニスの商人』岩波文庫 1973年
シェイクスピア(平井正穂訳)『ロミオとジューリエット』岩波文庫 1988年
シェイクスピア(木下順二訳)『マクベス』岩波文庫 1997年
シェイクスピア(野島秀勝訳)『リア王』岩波文庫 2000年
シェイクスピア(野島秀勝訳)『ハムレット』岩波文庫 2002年
シェイクスピア(木下順二訳)『リチャード三世』岩波文庫 2002年
シェイクスピア(河合祥一郎訳)『新訳 ハムレット』角川文庫 2003年
シェイクスピア(河合祥一郎訳)『新訳 ロミオとジュリエット』角川文庫 2005年
シェイクスピア(河合祥一郎訳)『新訳 ヴェニスの商人』角川文庫 2005年
シェイクスピア(河合祥一郎訳)『新訳 リチャード三世』角川文庫 2007年
シェイクスピア(河合祥一郎訳)『新訳 マクベス』角川文庫 2009年
シェイクスピア(河合祥一郎訳)『新訳 十二夜』角川文庫 2011年
シェイクスピア(河合祥一郎訳)『新訳 夏の夜の夢』角川文庫 2013年
シェイクスピア(河合祥一郎訳)『新訳 から騒ぎ』角川文庫 2015年
シェイクスピア(河合祥一郎訳)『新訳 まちがいの喜劇』角川文庫 2017年
シェイクスピア(河合祥一郎訳)『新訳 お気に召すまま』角川文庫 2018年
シェイクスピア(河合祥一郎訳)『新訳 オセロー』角川文庫 2018年
シェイクスピア(河合祥一郎訳)『新訳 アテネのタイモン』角川文庫 2019年
シェイクスピア(安西徹雄訳)『リア王』光文社古典新訳文庫 2006年
シェイクスピア(安西徹雄訳)『ジュリアス・シーザー』光文社古典新訳文庫 2007年
シェイクスピア(安西徹雄訳)『ヴェニスの商人』光文社古典新訳文庫 2007年
シェイクスピア(安西徹雄訳)『十二夜』光文社古典新訳文庫 2007年
シェイクスピア(安西徹雄訳)『マクベス』光文社古典新訳文庫 2008年
シェイクスピア(安西徹雄訳)『ハムレット Q1』光文社古典新訳文庫 2010年
シェイクスピア(福田恆存訳)『ロミオとジュリエット(シェイクスピア全集3)』新潮社 1964年
シェイクスピア(福田恆存訳)『ヘンリー四世(シェイクスピア全集6)』新潮社 1967年
シェイクスピア(福田恆存訳)『コリオレイナス(シェイクスピア全集 補1)』新潮社 1971年
シェイクスピア(福田恆存訳)『十二夜(シェイクスピア全集 補2)』新潮社 1972年
シェイクスピア(福田恆存訳)『タイタス・アンドロニカス(シェイクスピア全集 補3)』新潮社 1977年
シェイクスピア(福田恆存訳)『リチャード二世(シェイクスピア全集 補4)』新潮社 1986年
シェイクスピア(福田恆存訳)『夏の夜の夢・あらし』新潮文庫 2003年
シェイクスピア(福田恆存訳)『お気に召すまま』新潮文庫 2004年
シェイクスピア(福田恆存訳)『じゃじゃ馬ならし・空騒ぎ』新潮文庫 2004年
シェイクスピア(福田恆存訳)『リチャード三世』新潮文庫 2004年
シェイクスピア(福田恆存訳)『アントニーとクレオパトラ』新潮文庫 2005年
シェイクスピア(福田恆存訳)『ジュリアス・シーザー』新潮文庫 2005年
シェイクスピア(福田恆存訳)『マクベス』新潮文庫 2010年
シェイクスピア(福田恆存訳)『ハムレット』新潮文庫 2010年
シェイクスピア(福田恆存訳)『リア王』新潮文庫 2010年
シェイクスピア(福田恆存訳)『オセロー』新潮文庫 2011年
シェイクスピア(福田恆存訳)『ヴェニスの商人』新潮文庫 2014年
シェイクスピア(松岡和子訳)『ハムレット(シェイクスピア全集1)』ちくま文庫 1996年
シェイクスピア(松岡和子訳)『リア王(シェイクスピア全集5)』ちくま文庫 1997年
シェイクスピア(松岡和子訳)『ヴェニスの商人(シェイクスピア全集10)』ちくま文庫 2002年
シェイクスピア(松岡和子訳)『オセロー(シェイクスピア全集13)』ちくま文庫 2006年
シェイクスピア(松岡和子訳)『お気に召すまま(シェイクスピア全集15)』ちくま文庫 2007年
シェイクスピア(小田島雄志訳)『シェイクスピア全集(1〜37)』白水Uブックス 1983年
シェイクスピア&ジョン・フレッチャー(河合祥一郎訳)『二人の貴公子』白水社 2004年
ホッブズ(角田安正訳)『リヴァイアサン(1〜2)』光文社古典新訳文庫 2014〜2018年
ホッブズ(高野清弘訳)『法の原理: 自然法と政治的な法の原理』ちくま学芸文庫 2019年
ホッブズ(永井道雄・上田邦義訳)『リヴァイアサン(I〜II)』中公クラシックス 2009年
ロック(加藤節訳)『完訳 統治二論』岩波文庫 2010年
ロック(角田安正訳)『市民政府論』光文社古典新訳文庫 2011年
ロック(下川潔訳)『知性の正しい導き方』ちくま学芸文庫 2015年
ニュートン(中野猿人訳)『プリンシピア(1〜3)』講談社ブルーバックス 2019年
デフォー(平井正穂訳)『ロビンソン・クルーソー(上・下)』岩波文庫 2012年
デフォー(武田将明訳)『ロビンソン・クルーソー』河出文庫 2011年
デフォー(唐戸信嘉訳)『ロビンソン・クルーソー』光文社古典新訳文庫 2018年
デフォー(吉田健一訳)『ロビンソン漂流記』新潮文庫 2013年
デフォー(鈴木恵訳)『ロビンソン・クルーソー』新潮文庫 2019年
デフォー(平井正穂訳)『ペスト』中公文庫 2009年
デフォー(増田義郎訳)『完訳 ロビンソン・クルーソー』中公文庫 2010年
スウィフト(平井正穂訳)『ガリヴァー旅行記』岩波文庫 1980年
スウィフト(山田蘭訳)『ガリバー旅行記』角川文庫 2011年
スウィフト(中野好夫訳)『ガリヴァ旅行記』新潮文庫 1992年
スウィフト(原田範行訳)『召使心得: 他四篇』平凡社ライブラリー 2015年
ヒューム(土岐邦夫・小西嘉四郎訳)『人性論』中公クラシックス 2010年
ロレンス・スターン(朱牟田夏雄訳)『トリストラム・シャンディ(上・中・下)』岩波文庫 2009年
アダム・スミス(水田洋訳)『国富論(上・下) (ワイド版世界の大思想2-7、2-8)』河出書房新社 2005年
アダム・スミス(高哲男訳)『道徳感情論』講談社学術文庫 2013年
アダム・スミス(高哲男訳)『国富論(上)』講談社学術文庫 2020年
アダム・スミス(玉野井芳郎・田添京二・大河内暁男訳)『国富論(I〜IV)』中公クラシックス 2010年

【ドイツ/プロイセン】

ルター(深井智朗訳)『宗教改革三大文書: 付「九五箇条の提題」』講談社学術文庫 2017年
アウグスチヌス/ルター(今泉三良・村治能就・徳沢得二訳)『告白/キリスト者の自由(ワイド版世界の大思想2-1)』河出書房新社 2005年
ライプニッツ(清水富雄・竹田篤司・飯塚勝久訳)『モナドロジー/形而上学叙説』中公クラシックス 2005年
ライプニッツ(秋保亘・大矢宗太朗訳)『形而上学叙説/ライプニッツ—アルノー往復書簡』平凡社ライブラリー 2013年
アレクサンダー・ゴットリープ・バウムガルテン(松尾大訳)『美学』講談社学術文庫 2016年
カント(波多野精一・宮本和吉・篠田英雄訳)『実践理性批判』岩波文庫 1979年
カント(宇都宮芳明訳)『永遠平和のために』岩波文庫 2009年
カント(樫山欽四郎・坂田徳男訳)『実践理性批判/判断力批判 ほか(ワイド版世界の大思想1-6)』河出書房新社 2004年
カント(天野貞祐訳)『純粋理性批判(1〜4)』講談社学術文庫 1979年
カント(金森誠也訳)『カント「視霊者の夢」』講談社学術文庫 2013年
カント(中山元訳)『永遠平和のために/啓蒙とは何か: 他3編』光文社古典新訳文庫 2006年
カント(中山元訳)『純粋理性批判(1〜7)』光文社古典新訳文庫 2010〜2012年
カント(中山元訳)『道徳形而上学の基礎づけ』光文社古典新訳文庫 2012年
カント(中山元訳)『実践理性批判(1〜2)』光文社古典新訳文庫 2013年
カント(池内紀訳)『永遠平和のために』集英社文庫 2015年
カント(土岐邦夫・観山雪陽・野田又夫訳)『プロレゴーメナ/人倫の形而上学の基礎づけ』中公クラシックス 2005年
ヨハン・ゴットフリート・ヘルダー(宮谷尚実訳)『言語起源論』講談社学術文庫 2017年

【フランス】

ラブレー(渡辺一夫訳)『ガルガンチュワ物語/パンタグリュエル物語(1〜5)』岩波文庫 2012年
ラブレー(宮下志朗訳)『ガルガンチュアとパンタグリュエル(1〜5)』ちくま文庫 2005〜2012年
エティエンヌ・ド・ラ・ボエシ(山上浩嗣訳)『自発的隷従論』ちくま学芸文庫 2013年
モンテーニュ(松浪信三郎訳)『エセー(上・下) (ワイド版世界の大思想2-2、2-3)』河出書房新社 2005年
モンテーニュ(宮下志朗訳)『エセー(1〜7)』白水社 2005〜2016年
デカルト(谷川多佳子訳)『方法序説』岩波文庫 1997年
デカルト(野田又夫訳)『精神指導の規則』岩波文庫 1974年
デカルト(小場瀬卓三訳)『方法序説』角川ソフィア文庫 2011年
デカルト(山本信・小場瀬卓三訳)『知能指導の規則/方法序説/省察 ほか(ワイド版世界の大思想1-3)』河出書房新社 2004年
デカルト(野田又夫ほか訳)『方法序説 ほか』中公クラシックス 2001年
デカルト(井上庄七・森啓訳)『省察/情念論』中公クラシックス 2002年
モリエール(内藤濯訳)『女学者・気で病む男』新潮文庫 1969年
モリエール(内藤濯訳)『人間ぎらい』新潮文庫 2012年
ラ・ロシュフコー(二宮フサ訳)『ラ・ロシュフコー箴言集』岩波文庫 1989年
ラ・ロシュフコー(武藤剛史訳)『箴言集』講談社学術文庫 2019年
パスカル(前田陽一・由木康訳)『パンセ(I〜II)』中公クラシックス 2001年
スピノザ(畠中尚志訳)『エチカ(上・下)』岩波文庫 2011年
スピノザ(高桑純夫・井上庄七訳)『倫理学(エティカ)/知性改善論(ワイド版世界の大思想1-4)』河出書房新社 2004年
スピノザ(吉田量彦訳)『神学・政治論(上・下)』光文社古典新訳文庫 2014年
スピノザ(工藤喜作・斎藤博訳)『エティカ』中公クラシックス 2007年
ラファイエット夫人(青柳瑞穂訳)『クレーヴの奥方』新潮文庫 1956年
ラファイエット夫人(永田千奈訳)『クレーヴの奥方』光文社古典新訳文庫 2016年
モンテスキュー(根岸国孝訳)『法の精神(ワイド版世界の大思想2-9)』河出書房新社 2005年
モンテスキュー(田口卓臣訳)『ペルシア人の手紙』講談社学術文庫 2020年
ヴォルテール(斉藤悦則訳)『カンディード』光文社古典新訳文庫 2015年
ヴォルテール(斉藤悦則訳)『寛容論』光文社古典新訳文庫 2016年
ヴォルテール(斉藤悦則訳)『哲学書簡』光文社古典新訳文庫 2017年
アベ・プレヴォー(青柳瑞穂訳)『マノン・レスコー』新潮文庫 2004年
プレヴォ(野崎歓訳)『マノン・レスコー』光文社古典新訳文庫 2017年
ルソー(今野一雄訳)『エミール(上・中・下)』岩波文庫 2007年
ルソー(作田啓一訳)『社会契約論』白水Uブックス 2010年
ルソー(平岡昇訳)『エミール(ワイド版世界の大思想2-10)』河出書房新社 2005年
ルソー(中村元訳)『人間不平等起源論』光文社古典新訳文庫 2008年
ルソー(中村元訳)『社会契約論/ジュネーヴ草稿』光文社古典新訳文庫 2008年
ルソー(永田千奈訳)『孤独な散歩者の夢想』光文社古典新訳文庫 2012年
ルソー(坂倉裕治訳)『人間不平等起源論: 付「戦争法原理」』講談社学術文庫 2016年
ルソー(青柳瑞穂訳)『孤独な散歩者の夢想』新潮文庫 2006年
エティエンヌ・ボノ・ド・コンディヤック(山口裕之訳)『論理学 考える技術の初歩』講談社学術文庫 2016年

【イタリア】

ルイジ・コルナロ(中倉玄喜編訳)『無病法』PHP研究所 2012年(※注意! 英語からの重訳です)
マキアヴェッリ(河島英昭訳)『君主論』岩波文庫 1998年
マキァヴェッリ(齊藤寛海訳)『フィレンツェ史(上・下)』岩波文庫 2012年
マキアヴェリ(池田廉訳)『君主論 新版』中公文庫 2018年
マキァヴェッリ(永井三明訳)『ディスコルシ: 「ローマ史」論』ちくま学芸文庫 2011年
マキァヴェッリ(服部文彦訳)『戦争の技術』ちくま学芸文庫 2012年
ジョルジョ・ヴァザーリ(平川祐弘・小谷年司訳)『芸術家列伝(1〜3)』白水Uブックス 2011年
ジャンバッティスタ・デッラ・ポルタ(澤井繁男訳)『自然魔術』講談社学術文庫 2017年
ガリレオ・ガリレイ(伊藤和行訳)『星界の報告』講談社学術文庫 2017年
石鍋真澄訳『カラヴァッジョ伝記集』平凡社ライブラリー 2016年
ジャンバッティスタ・ヴィーコ(上村忠男訳)『自伝』平凡社ライブラリー 2012年

【スペイン/ヌエバ・エスパーニャ】

コロンブス(林屋永吉訳)『全航海の報告』岩波文庫 2011年
ラス・カサス(染田秀藤訳)『インディアスの破壊についての簡潔な報告』岩波文庫 2013年
ラス・カサス(長南実訳)『インディアス史(1〜7)』岩波文庫 2009年
セルバンテス(牛島信明訳)『ドン・キホーテ(前篇一〜三、後篇一〜三)』岩波文庫 2010〜2011年
セルバンテス(会田由訳)『ドン・キホーテ(前篇I〜II、後篇I〜II)』ちくま文庫 1987年
セルバンテス(荻内勝之訳)『ペルシーレス(上・下)』ちくま文庫 1994年
アベリャネーダ(岩根圀和訳)『贋作ドン・キホーテ(上・下)』ちくま文庫 1999年
ロペ・デ・ベガ(長南実訳)『オルメードの騎士』岩波文庫 2007年
ティルソ・デ・モリーナ(佐竹謙一訳)『セビーリャの色事師と石の招客: 他一篇』岩波文庫 2014年
バルタサール・グラシアン(東谷穎人訳)『処世の智恵』白水社 2011年
ソル・フアナ(旦敬介訳)『知への賛歌: 修道女フアナの手紙』光文社古典新訳文庫 2007年

【チェコ/オランダ】

コメニウス(井ノ口淳三訳)『世界図絵』平凡社ライブラリー 1995年


【図版について、あと補足】

図版出典: Wikimedia Commons "Leiden 1610"
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Leiden_1610.jpg

 まず記事全体について一言。どんな著作家も、またどの本も、「巨人の肩の上」に乗っています。この時代の著作家たちはラテン語であれ近代語に翻訳されたものであれギリシアやローマの古典を読み、それを整理したり加工したり(あるいは奪ったり)して、自らの興味関心へと引き寄せる形で著述活動を行いました。ユーラシアの極西部で文学文化の伝統が様々な手段で受け継がれていたことを考慮するならば、このように時代・地域別にスパッと切り分けることは、ナンセンスなのかもしれません。
 ただ、初学者さんを含めて、電子書籍で読める本を探したいという目的を挫いたり阻害したくはないので、あまり壮大すぎる分類よりも、ある種教科書的な地域別・時代順の切り分けをする方が親切なのかなと思っています。

 と、いけない。記事上部に掲げた図版の話でした。
 この絵ですが、1610年のライデン大学図書館を描いたものです。奥の方の書架には伝統的な学問である神学・法学・医学の本が配架されており、手前の方の書架には新しく再編された分類である文学・哲学・数学・歴史の本が並んでいます。近世ヨーロッパにおける、知識の再編を窺い知ることができる絵だと思います。
 実はこの絵、ピーター・バークの『知識の社会史』(井山弘幸・城戸淳訳、新曜社 2004年)にも引用されていまして ²⁾。近世ヨーロッパにおける知識の分類・管理・再編の歴史については、ぜひこの本を読んでみてください……と、言いたいところですが、ここ最近、本の入手が難しい状態にあるので、気軽にオススメがしにくい状態になってしまいました。

 こうした知識を蓄積し、誰にでも公開するはずの図書館の役割を、COVID-19は機能不全に陥れています。閲覧も、貸出も、集会場としての役割も出来なくなり、電話対応・メール対応のみの図書館が殆どといった状態です。実店舗をもつ書店はおおむね休業していますし、HontoやAmazonといったネット書店でも、本を買おうにも「取り扱いができません」「一時的に在庫がありません」といった表示が増えてきました。読書文化や勉強・研究の受難の時代です。
 その一方で、図書館や書店に出向かずとも本が読める環境も整備されつつあります。図書館に限って申し上げるならば、電子書籍を貸出サービスの対象としている図書館は少なからずあります。図書館がデジタル化し、Web上で公開した資料を、家にいながら閲覧することもできるようになりつつあります。ただ、これらはあくまでも途上にあります(永遠に完成することはないでしょう!)。

 電子書籍がこの時代の困難を解決できるかというと、そうとは言い難いです。未発達な部分や、課題も多くあります ³⁾。
 いずれにせよ、紙媒体の本が手に入りにくいいま、その代替手段としての電子書籍は有力なものです。COVID-19の流行がいつまで続くか、さっぱりわからなくなってしまった以上、電子書籍の活用の機会はこれからさらに増えていくことでしょう。


(1) 百年戦争の終結およびコンスタンティノープルの陥落(1453年)から、フランス革命の勃発(1789年)後数年の間に書かれた本を対象としました。ゲーテ(1749〜1832年)らをここに含めるか悩みましたが、割愛しました。
(2) バーク, P.(井山弘幸・城戸淳訳)『知識の社会史』新曜社 2004年、158〜162頁
(3) 例えば、電子書籍版の福田訳『アントニーとクレオパトラ』には解説が収録されていません。古典を読むにあたり、解説がないというのは不親切ですし、なんだかなぁと思います。また、前回の記事の補足説明欄(https://note.com/yskmas_k_66/n/n07771dd0c0bb#JpxlA)でも申し上げましたが、そもそも電子書籍化されている文学書・哲学書が少なく、このラインナップで文学・歴史学・哲学を大学で勉強する、というのはいかにしても厳しいです。検索・書き込みがしやすい、安く入手できるという利点が電子書籍にはありますが、やっぱり実際に紙媒体の本を持っていた方が良い、と思うことは多々あります。文句ばっかり言うのもなんなので、このくらいにしましょう。
 ともあれ電子化された本がもっと増えてほしい、というのが正直なところです。レッシングで検索するとドレッシングの本が最初に出てくるのは、ある意味微笑ましいですが、『賢者ナータン』が気軽に読めないのは寂しいですから。

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